神も仏も
宗教的なお話です。
神も仏も居ないことを、
既に人々は知っていた。
若い僧侶は溜息をついて、
担いでいた鍬を、地面に突き立てる。
神も仏も居ないことを、
この戦場を見れば、すぐ判る。
この世に主が居るならば、
これほどの乱痴気騒ぎを許す筈が無いことを。
失望する若僧の隣に、
老僧が並んで、こう云った。
それは、既に用意されていた言葉であった。
「これもみな、御仏の思し召しだ」
理由など、必要ない。
納得するより、他に無い。
若僧は仕方なく、亡骸の供養に取りかかった。
そうだ。
そのために、神や仏が必要なのだ。
虚ろな魂を埋めるため、
神や仏が産み出されたのだ。
聖書にもあります。「神のなさることは複雑であり、私たちの理解を越えるものなのだ」と――とはいえ、これは短編小説を作りたいだけのネタにすぎません。