1話_主人公はいつも
ポメラニアン。
なんでも日本のペットブームの幕開けとなったとかで、愛玩犬として女性に人気の生き物である。
「か〜わいいね?秀もそう思うでしょ?」
仔犬だしな、可愛いに決まってる。
そう。何事も小さければ大概は可愛いのだ。
ここは何処ぞのモールにあるペットショップ。
ガラス越しに、ポメラニアン様が世の女子を魅了し、それに取り憑かれた、高校2年になりたての乙女……いや、あいつはそんな言葉は似合わないな。そうだな、さらっと言葉を当てはめるとすれば、人懐っこい妹だ。
とは言っても、俺の妹はそいつよりか少々劣る。てか、今ここで俺といる女は他人。妹でもなければ彼女でもない。でも幼い頃からよ〜く知っているんだよ、これが。
「虹花よ。そいつは16万で自宅にお迎え出来るそうだ」
俺の一言が、夢心地の甘い時間から、現実の辛い時間へと叩き落とされ、顔を歪ませ涙ぐむ。
そんな顔で俺を見ても無駄だぞ?自慢じゃないが、そんな貢げる程の余裕はない。てかしてやる義理もない。ここは他人のフリをしてっと。
俺は他の犬を観る素振りをしながら、彼女との距離を自然に置いた。
いつもの事だと割り切って、彼女はため息を漏らし再び愛玩犬へ。
よし、そろそろここに居ても時間の無駄だな。俺は近くの服屋にでも……
「犬。お好きなんですか?」
背後から聞き覚えのない女性の声。
何だ?俺はそんな熱心に仔犬様を見てたとでも?ま、嫌いじゃないが、答えてやる義理もない。しかしだ。俺は答えるよ。なぜなら、俺に声を掛けたのは女の子だから~。
ニヤけた口元を整え振り返ると、俺の視界に映ったのは、可憐かつ清楚な女性の姿。
彼女の印象に脳が満たされ、小さい声量で思わず呟いた。
「俺は君の方が好みかな」
あ。
気付けば、心の言葉を声に出してしまった。
「ふふ。面白い人ですね」
女の子は、俺に向かって微笑み、軽く会釈をしながら、店の出口へと歩いて行く。
な、何なんだ?じゃね〜よ。それはあの子が思ってる事だぜ。
完全に俺がチャラい奴と思われたじゃね〜かって、自業自得なんだが。
それにしても……可愛いかったな。
「また、会えるといいな」
「私は最低週5で話してるよ?」
今度は聞き覚えのある声が、俺の右腕に両腕を絡ませ、上目遣いで目を合わせて来る女の子。
「そりゃお前は、ほぼ毎日のように話してるがな」
「ん?そうなの?もう友達同士だった?」
いまいち会話が噛み合わんが、どうせからかっているのだろう。
「もういいのか?16万だぞ?」
「そんな大金持ってないよ。ほんと秀は意地悪だね」
「いいからその両腕を離せ。貧祖な乳を押し付けて来るな」
無意識に、女の象徴を押し当てていた事に頬を赤らめ、俺を突き飛ばしながら離れると、少し苦笑いをして歩き出す。
何だあいつ?いつもなら言い返して来るのに、少し当たりがキツかったか。いくら”幼馴染”とは言え、彼女もいちを女の子だしな。後で優しくしてやるか。
◆◆◆
私立恋学愛日高等学校。
ここが俺の通う高校。男女の比率が極端で、学校の名前のせいもあってか、女子校と間違えられがちだが、そうではない。実際、俺は男だ。
だが、校内を見渡せば女子校感は否めない。ゆえに、この学校に入った男共は、女子から視線を集めやすいのだ。
そう、俺たち男は目立つ。言い方を変えると、興味の対象になるのだよ。興味は感心に変わり感情へと進化する。一体何が言いたいか?それはな……恋。
俺はこの高校で果たさなければならない事がある。
と言えば、大それた事を口にすると期待してしまうだろ?まあ待て。今から言う事は至ってシンプル。そしてほんと日常みたいなごく普通の事だ。
俺はな、高校卒業までに彼女をつくる。
な。
どこにでもある男の願望さ。
だが、俺は自信がある。
女子生徒が多いこの学校で、男子生徒は恋愛対象になりやすい。
授業態度、学業成績、信頼関係など。ありとあらゆる面から俺は努力し、女生徒からの評価も獲ている。
「無駄に1年もかけての下準備とは。しかも、もう下校時間だぜ?今日こそ付き合えよ?」
放課後の教室。俺の心の言葉に合わせ、何気なく話し掛けて来る不届きな男。
俺はコイツと友達になった覚えはないが、向こうは唯一無二の親友と解釈しているようだ。
「何で男とデートせにゃならんのだ?」
「無礼な。僕は君と恋人になるつもりなんて、かけらもないぞ」
「それを聞いて安心したぜ。なら答えはもういいな?”枠鳴”」
「いいや、今日こそ僕に付き合え”秀生”」
頑固な表情で顔を近づけて来る彼の名は”女衣枠鳴”。その名の通り、迷惑な奴だ。
そして、今更ながら俺の名は”奈緒秀生”。彼女をつくる為には努力を惜しまない。
「俺は目的遂行の為に忙しいんだよ」
「何を言ってる?お前は、その気になれば隣に居てくれる幼馴染がいるだろ?」
「馬鹿言え、あいつも俺も、そんな気はねえよ」
「お、まだ残ってたんだ。あ、女衣ちゃんも一緒だ」
噂をすればと言えばいいのか、お約束の登場と言えばいいのか。俺の幼馴染、”聖母虹花”がフロア違いの教室から、わざわざこちらの教室まで足を運んで下さった。
ちなみに、俺のクラスは2階にあり、虹花のクラスは何故か5階にある。話ついでに説明するとだな、ここの校舎は6階建てだ。1階と4階が1年生、2階と5階が2年生、3階と6階が3年生のクラス。なんとも斬新か複雑か、まあこの学校ならではのクラス配置だ。もちろん、部活に使用している部屋も言わなくても理解したよな?そう、各階に散らばっている。
「聖母さん。君からも彼を説得してくれないか?僕はただ、メイドーレに甘い物を食べに行こうと誘ってるだけなんだ」
「メイドーレ?あ、私も今から友達と行く予定だったんだ。秀も一緒に行こうよ、ね?」
いくら虹花の頼みだとしても俺は断る。大体何だ?メイドーレとは?怪しい上にいかがわしいではないか。甘い物ならそこいらのカフェとかコンビニでも行けばいいだろ。
そう言って2人を説得していると、静かに教室に入り、彼女に歩み寄る女の子の姿。
ん?この子は……どこかで?
いくら俺が1年を費して、全校生徒の女子を調べていると言えど、把握出来ているのは1階から3階までだ。何せこの学校の生徒は半端なく多いのでな。結論から言えば、俺は彼女のクラスの女の子は知らない。
でもな、最近会った事ないか?
彼女に用がある事は確定だし、同じクラスの友達か?などと心の中で呟きながら、彼女たちを眺めていると、女の子が彼女に向かって口を開く。
「ナナちゃん。そろそろ行かないと、あたし遅れちゃう」
「ええ?ごめんナギちゃん。早く行こう。ほら、2人も行くよ?メイドーレ」
ナギちゃん?苗字か?名前か?
まあ待て、そのナギちゃんは虹花の事をナナちゃんと言ったな。となれば名前同士の呼び合いの確率が高いな。
それにしても……このどこか懐かしい声は何だ?やはり俺は彼女を……って、今はそんな事を優先すべきではない。このままでは、俺はメイドーレと言う謎多き場所へと連行されちまう。
とりあえず、教室から学校の校門までは付き合ってやるが、そこからは別行動だ。
俺は校門から出て、左に曲がろとしている3人を確認してから右へと曲がり、皆に背を向け家路へと向かう。
虹花と枠鳴は話に夢中だ。何か共通の話題があったのだろう。
おかげで自然と離脱出来るってもんだぜ。
などと晴れやかな気持ちで歩を進めていると、とても爽やかでありながら力強い声が、俺の耳元に届く。
「そっちじゃないですよぉ。犬好きの人」
俺は驚き、声のした耳の方向へと視線を向けると、ナギと言う女の子が、片手を自分の頬に当て、俺の耳元に口を近づけていた。
「き、君は」
「あ。好きなのは、あたし……でしたっけ?」
気付いた俺を確認してから、今度は囁くように俺に伝えて距離を置く彼女。
な、どうしてそれを?
とか頭に過ったが、答えは直ぐに出たよ。
やはり俺は彼女を知ってた。そして再開を望んでいたんだ。
まさか、こんな早くに、しかもこの学校にいたなんて。更に虹花のクラスメイトだったとはな。
「あ、あの時はごめ…」
「こら。何で2人でボケるのよ?ナギちゃんも、時間ないとか言わなかった?」
「ゴメンね。ナナちゃん。さ、早く行こ」
彼女は虹花の手を取り走り出す。
彼女の後ろ姿に見惚れ、まだ脳内に残っている声が、俺の意志を軽く超えていく。
「…………行くか。メイドーレ」
俺は財布の中身を確認し、皆の元へと歩き始める。
◆◆◆
学校から西へ約1㎞歩くと、そのお店は見えて来る。
メイドカフェ『メイドーレ』。
その名の如く、店員がメイドさんの姿でアレやコレやと客をもてなしてくれて、至福の時を満喫出来る。
だが、一見さんはそれなりの覚悟が必要な場所である。
「おかえりなさいませ〜ご主人様、お嬢様」
一般人の俺には、少々抵抗がある所だ。
「ねえ?秀。もしかして来た事…」
「ねえよ。てか、何で甘い物を食べるだけなのにココなんだよ?」
「私はナギちゃんに協力してるだけで、そっちだって行くと言ってたじゃん」
「俺はコイツに誘われただけで、行くとは言ってねえよ」
「ふふっ。照れるな友よ。何だかんだで、お前は自ら店まで来たではないか」
「それは……」
確かに。それは否定しない。だが、お前らとは目的が違うのだよ。
俺はただもう1度、彼女に会いたいだけなんだ。
そう。会いたい……そして、あの時に漏らした言葉の”やり直し”をさせてほしい。
「「それは?」」
ご丁寧に、2人はハモって俺に同じ言葉。
しかし、馬鹿正直に教えてやるつもりもない。
「しかし虹花の友達はまだ来ないのか?店の前から姿が見えなくなったが?」
すかさず話題をすり替えて、俺への興味をなくさせる。
「ナギちゃん?あの子ならもう店に入ってるよ?呼ぶ?」
店に入ってる?わざわざ別行動して入る意味はあるのか?いや待て。もしかすると、御手洗の可能性もあるのか。だとしたら、急かす必要もあるまいて。
「いや、先に注文を決めようぜ」
そうさ。この店にはもう居るんだし、気長に待てばいいのさ。
俺たちは先に注文を決め、メイドーレ召喚ボタンを押す。
「お呼びでございますか?ご主人様、お嬢様」
「な。ウソ…………だろ?」
「「???」」
俺が見ているモノ。
それは、注文を受けにメイドが登場し、なんとも可愛い笑顔で心をくすぐっている訳だが。
皆は、いや、俺だけは、驚きのあまり言葉を漏らしてしまう程、異様な光景だ。
「知られたくなかったですが、これが現実ですよぉ。ご主人様」
この店に似合わない表情で、メイドの顔をガン見している事に気付き、少し小声で俺に言葉を差し出す、可憐かつ清楚なメイド。
「今日も可愛いよ、ナギちゃん」
「同級生メイド。生で見ると、なんとも破壊的だな」
「あはは。ありがとうございます。ご注文ですよね?」
そう。
今、目の前に立っているメイドは、俺の探し人。行方知れずのその人は、ボタン1つでここに召喚された。
しかもメイド衣装に包まれてな……
「本当にそうなのか?これも何かのドッキリじゃないよな?さては、お前ら俺をハメようとしてんのか?」
「ちょ、落ち着きなって。そんな大声出してると、お店に迷惑を掛けちゃう」
「そうだぞ。大体、お前をハメる利点が何処にあるんだ?」
人は、予測不能、想定外の出来事が突然やって来ると、思考、判断が鈍る。今、俺の前にいる彼女の姿は、想像の斜め上を軽く超え、独り歩きしている。要するに、どうしてこうなった?だ。
「なら彼女は、どうしてこんな格好をしているんだ」
言葉と同時に、俺の右手がメイドの彼女に向かって伸び、人差し指を突き出すと、彼女は少し驚き、1歩後ろへと下がってしまう。
「ご主人様、このメイドが何かご無礼をなさいましたか?」
彼女の隣にもう1人、別のメイドが現れて、彼女の腰辺りに手を伸ばし、護るようにして俺に問う。
「い、祈さん。あたしは大丈夫です。この方はナナちゃんのお友達で」
「こんにちは祈先輩。騒いじゃってゴメンなさい」
俺より先に虹花が口を開き、俺の手を下げ謝罪した。
少し冷静になれた事で、改めて状況を整理する。
目の前に現れた2人のメイド。片方はナギちゃんで、虹花のクラスメイト。そして、騒ぎに駆けつけたもう1人、彼女は祈さん。虹花は先輩と言ってたな。て事は、ナギちゃんの先輩って事か。
可憐で清楚な彼女の隣に居ても、眩しいくらいに美しい顔だ。
で、今はこのテーブル席で注文を承っている最中だよな。
「かしこまりましたぁ。少々お待ち下さいませぇ」
慣れた言葉と仕草で、ナギちゃんが注文を聞き終え去って行くのと同時に、一礼して彼女も歩き出す。
「あの、さっきは失礼しました」
既に背を向けていた彼女は回れ右をし、俺に微笑みながら、「ごゆっくりお寛ぎ下さいませ」と言い残し、再び歩き出す。
◆◆◆
あの不思議な空間で数時間。
気付けば普通に楽しんでいる自分がいた。
全く、慣れというものは恐ろしい。
俺の頭の中では既に、お気に入り店リストの最前列に並んだくらいだ。ポイントはやはり彼女の存在。
枠鳴と虹花には感謝だぜ。
空気を自然と読みやがる。
店の外に出てみれば、日は沈み月が静かに街を照らしていた。
そんな帰り道に、男と女が2人きり。
「ほんといいんですか?送ってもらって」
「気にしないでくれ。君こそ俺でよかったのか?」
「ええ。だって、ナナちゃんの代わりですし、こちらも気にしませんよぉ」
虹花には門限があり、親との約束を真面目に守って店を飛び出し、枠鳴は用事があるとか言って1人で帰った。店を出ようとする時間には、彼女も帰る時間となり、今の状況さ。
なかなかどうして、俺たちは一体何時間、店にいたんだってな。
でもまあそれもあって、今は彼女と2人と言う訳だ。
少しだが、店で彼女と話せたおかげで、お互い道中の会話は弾んでいた。
出会ったあの時のようなヘマは、絶対しないよう言葉を選びながら。
彼女も自然と楽しんで話してくれている。まるで幼馴染のあいつのような無防備さだ。
でも、何か忘れてないか?
俺は彼女に何か伝えたかったんじゃ?
「あは。ほんと奈緒くんて面白いね」
『ふふ。面白い人ですね』
あ。
彼女の一言が、俺の当初の目的を思い出させ、偶然にも近くに公園が見えたので、無理を言って彼女に寄り道を要求した。
当然、警戒されるかと思いきや、2つ返事と笑顔で付き合ってくれる彼女。
俺と彼女は、月が見やすいベンチに座って話し始めた。
流石にすぐに本題に入っては雰囲気を壊しかねない。ここは慎重に攻めていこうと決めていた。
そもそも彼女は、俺に対しては否定的ではない。むしろ好意を持っているとも思えて来る。これはやはり、俺の持つ特別スキルのせいなのか?
やはりそうだろうな。
俺はこの物語の主人公。本人が自覚していようがいまいが、日頃から備わっているスキルがある。それは何か知りたいか?まあ知りたくなくとも教えてやろう。
それは……"主人公の都合のいい展開にさせられるスキル"。
そう。どんな物語でも、主人公はモテるし、バットな結末にはならないのが鉄則。
大体のラノベ主人公はそうだろう。
この作品が素人の戯れにしろ、ラノベ感覚にしろ、雑記にしろ。主人公は優遇されて当然なのだ。
だから、俺はこのチャンスは逃がさない。むしろ、この展開じゃなきゃ物語は始まらないのだ。
「ペットショップの件だけど」
「ん?あ。あの時の言葉だね?」
数分話し、場の空気も頃合いと思った俺は、ようやく本題へと話を動かす。
「ああ。まずは謝りたい」
「何で?」
「君の質問にちゃんと答えなかった」
「答えたよ?」
「いや、そうじゃなくて」
彼女は身を乗り出して、俺の顔の近くまで顔を近づけ、やや上目の体勢になりながら囁く。
「もしかして、あの言葉はウソだった?」
彼女は表情を曇らせ、俺の言葉を待ってくれている。
それはとてもありがたい事なんだけど、なんか展開おかしくね?
俺はぶっちゃけ、あの事を謝罪して訂正し、告白する予定だったんだが。
もう告白していいんじゃね?
「嘘じゃない。俺は……君が……」
彼女の綺麗な瞳を見つめながら、人生初の告白を俺はする。
見つめ合ったまま数秒の静寂。それと同時に無意味な風が流れ、俺と君の髪を靡かせる。
体制を元に戻し、大して乱れてはいない髪を手ぐしで直しながら、彼女はベンチから腰を上げ、俺の目の前に立って微笑む。
俺の為に笑ってくれている。
それはすなわち……いいんだよな?
ふふふ。やはり俺は主人公。
俺の都合のいい展開へと事が運ぶぜ。まあ今の状況は、俺は初めから彼女にとって高評価だったのだろう。うむ。
て事はだ。
俺は1話から既に、目標を達成してしまったんじゃないか?
ああ、何と言う事だ。
この物語は、ここで終了してしまうと言う超展開。さぞかし作者は短編で安心し、読者は駄作と不満を投げるだろう。
でも仕方あるまい。事実、俺にはこうして目の前で微笑み背を向けて歩き出す彼女が……
って。何で俺から遠ざかって行く?
「ちょっと、何処へ?」
俺は急いでベンチから立ち、彼女を呼び止めると、彼女は振り向かず口を開く。
「話は終わったんだよね?あたし、帰るね」
「いや、どう言う事か意味が分からない」
そうだよ。さっき俺は告白した。彼女は笑顔で答えたよな?なのに帰る?これが現代の恋愛なのか?
「奈緒くんは、あたしの事を好きって伝えたかったから、ここで話をしたかったんだよね?」
「……ああ」
「なら話はもう終わったよ。だから帰るの」
「待ってくれ。どうしてそうなる?さっきの答えは……」
俺の言葉の途中で彼女は振り返り、左手を俺に向けて伸ばし、親指を上げる。要はいいねポーズだ。
そして……ここから全ては始まる……。
俺は主人公。
彼女はヒロイン。だと願いたい。
都合のいい展開になるつもりが、彼女の一言で、1話完結を逃れる物語がここに。
「あたし、キミの事は好きじゃありませんよぉ」
〜 1話_主人公はいつも 〜