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生霊神セブン

そして更に数年経ってこのような体験をした。


その頃、福岡に住んでいる僕の母が

要介護認定を受けることになって、

僕は月に何回か熊本と福岡を往復し、

市役所の方と面談したり、

母が入院している病院を見舞ったりしていた。


基本的には高速道路を使っていたのだが、

その時はうちの奥さんが仕事先の研修旅行でいなかったので、

なんとなく下道からゆっくり行ってみようと思い、

国道3号線を通って福岡まで行った。


そして福岡県の春日市のあたりまで来た時にトイレに行きたくなって、

ドラッグストアに寄ってトイレを借りた。

その後、しばらく走ってガソリンスタンドに寄った時に

財布が無いことに気付いた。

記憶をたどってドラックストアだろうと思い、

そこから引き返した。


時間はちょうど夕方のラッシュ時で、

ドラッグストアに戻るのに30分くらいかかった。

つまり、トイレに財布を置き忘れてから

そのトイレに戻るまでに約1時間かかっていたわけである。


でも財布はちゃんとトイレのタンクの上にあった。

財布には現金が10万円くらい入っていたがそれも無事だった。

これがポンコツ事件①


その後実家のマンションに帰って、

父と今後のことなど話し合っている時に

ささいなことから父と口論になり、

生涯最高くらいの激しい口喧嘩になった。

これがポンコツ事件②


その次の日、母を見舞ったあと、

熊本に帰ろうとしたら、

父が別れ際に交通費だと言って、

1万円札を手渡しでくれ、

僕はそれを素手で受け取ったまま、

荷物を車のトランクに入れたりしていたら、

いつのまにか車のそばに落としてしまい、

父が拾ってまた渡してくれた。

これがポンコツ事件③


車を発進させてからしばらくして、

もらった1万円札を財布に入れておこうとしてポーチを開けたら

さっき病院に母を見舞った時に預かっていた母の保険証を

ポーチに入れたままだったことに気付き、

そこから引き返して父に返した。

これがポンコツ事件④


これら一連のポンコツ事件について話していたら、

「それは生霊の仕業だね」と、霊感の強いうちの奥さんが看破した。


生霊が近づいて来ると物忘れをしたり、

精神的に不安定になって人とトラブルを起こしたりすることがあるそうだ。


「誰の生霊かじっくり考えてごらん」と言われ、

お風呂の中でここ数日の事を思い出していたら、

多分あの人だろうという心当たりのある人物が思い浮かんだ。


その人は僕と奥さんの共通の知人だが、

霊感の強いうちの奥さんに対して苦手意識を持っているようで

ここ数年は疎遠になっていた人だ。


どうもうちの奥さんがその人から僕を

ガードする結界になっていたようで、

うちの奥さんが旅行に行っているタイミングに

僕に攻撃をしかけて来ていたようだ。


それでこれまでに生霊が原因と思われる事件のことを

色々と思い出すきっかけになったのだが、

生霊(というか、身近にいる人の強い念の力)について、

身を持ってその存在を知ったのは20年ほど前のことだ。


その時は自主制作映画の上映会の準備をしていて、

夜遅くまでスタッフの家でミーティングをしていた。


ミーティングが終わり、

メンバーをそれぞれの家まで送ることになった。

その中にAさんという女性がいて、僕が運転し、

Aさんが助手席に乗って、

Hさんという男性が後部座席に乗った。


Aさんの家に向かっている途中、Aさんが、

「家に帰ったら、何かが部屋にいるようで怖い」と言い出した。

僕はとにかく家まで送ろうとしてAさんの家の方向に向かっていたら、

なぜか僕の身体の左半分、Aさんの座っている側にだけ、

鳥肌が立っているのだ。そんな不思議なことがあるのかと思った。


次に生霊の存在を教えてくれたのがBさんという女性だ。

Bさんはちょっと前に流行った「片付けられない女」で、

3LDKの自宅マンションはまさにカオスだった。


かつてはそのマンションで妹さんと一緒に暮らしていたらしく、

その前にはBさんと妹さんは別々に一人暮らしをしていたそうで、

Bさんのマンションには、食器棚も洋服ダンスも

Bさんの分と妹さんの分の2つずつ揃っていて、

そのどれもが空っぽで、食器類は棚の前の床に、

洋服類は押入れの中に入れられていた。

そして照明器具などは、壊れて天井から配線でブラさがっていた。

天井にも穴があいていた。


当時無職だった僕は、アルバイトとして、

Bさんの部屋を片付けるお手伝いをすることになったのだ。


そして、一緒に片付け作業をしている途中や、

昼食をとっている最中などにBさんが不思議な話をするのだ。


それは、UFOを見たことがあるとか、

目に見えないお友達がいるとか、

実在しない先輩と婚約しているとか。

つまりBさんは軽い精神疾患の人だった。


僕はだんだん怖くなり、というか、

Bさんの妄想に少しずつ自分の頭が侵食されていくのを感じ、

早めに片付け作業を終わらせようとした。


ところがBさんはそれに気付き、

片付け作業を長引かせようとするのだ。


例えば「照明器具を買うお金がない」と言う。

僕が「実家のお母さんにお金を振り込んでもらってください」と言うと、

次の日には「振り込まれました」と言うのだ。

Bさんの実家は福岡市から1時間ほどの所にあり、

お父さんは医者をしている、かなりの資産家だった。


こうやって作業が1日ずつ延ばされていったのだが、

少しずつ片付け作業は進んで行き、

後は部屋にカーテンをつけたら終わりというところまで来た。

そこでBさんが「実家にかつて乗っていた車があるのだが、

長く乗っていないので、バッテリーがあがっていると思う、

それを乗れるようにしたい」と言い出したのだ。


それで最後の日にBさんの実家まで同行し、

そのスポーツカーにキーを刺すと、

エンジンは一発で始動した。

お母さんが充電しておいてくれたのである。


こうやってまた1日延ばされたが、

やっと僕の「仕事」は完了し、

あとはBさんを自宅まで送るのみとなった。

ところがBさんの自宅が近づくにつれ、

だんだん僕の頭が重くなり、

なんとか自宅マンションの前の路上に車を停めた時には、

どうしても耐えられなくなって、

車のシートを倒して横になってしまった。

まるで目に見えない大男に

上から押さえつけられているようで身動きできない。

なんとか首を横に向けて、助手席のBさんを見たら

魂が抜けたような無表情で座っていた。


何故か僕はその時、

Bさんのマンションの近くの

展望台まで行きましょうかと言ってしまい、

そう言うと大男がいなくなったようにスッと身体が起きた。


その展望台の近くでBさんが何故か

「あっ、お父さんだ」と言った。

近くの路上を、中年の男性が歩いており、

それが本当にBさんのお父さんだったのか、

それともそれもBさんの妄想だったのかはわからないが、

とにかく僕はそれがきっかけで解放されたのだった。


次はCさん、この方も女性。

当時この方は僕と一緒に暮らしていた。

つまり僕の前の奥さんだったのだ。


ある日、仕事の休日、

朝から頭が痛くて、僕は横になっていた。

その頭痛は夕方になっても収まらず、

どんどん酷くなっていった。


ついに17時頃に耐えられなくなって、

Cさんに救急車を呼んでもらった。

ところがCさんが電話を切った途端、

僕の頭痛はピタリとおさまったのだ。

それまでは布団の上でのたうちまわっていたのが、

救急車のサイレンが近づいて来る頃には、

自分で立って歩けるようになっていた。

その日を境にCさんがその場にいなくても、

Cさんの生霊が僕のところに来ているのがわかるようになった。


例えば福岡県と愛媛県くらい離れていても、

Cさんの生霊が来ると、

胸がキュッと締め付けられるような感触がして、

僕はその瞬間に

「今、生霊を飛ばしましたね」とメールしていたのだ。


最初はCさんは「生霊なんか飛ばしてないよ」と言っていたが、

あまりにも僕のメールとタイミングが合うので、

Cさんもだんだん生霊を飛ばさなくなってきた。

つまりCさんは自分では自覚していなかったのだ。


次のDさんが、この前の話に書いた念力社長である。

その次はEさん、この方も男性である。

この方との関りは今も続いているので、

ここではまだ書くことはできない。


そして次に表れたのが今回のFさん、

こちらも男性で、現在は疎遠だが、

全く関りがないわけではないので、

今回こうして生霊として来ることになったのだ。

こうして顕著な例だけでも6人の能力者から

生霊によるアタックを受けている僕だが、

中でも一番の能力者は今の奥さんなのである。

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