僕と金毘羅さんの不思議な話 その1
次は「僕と金毘羅さんの不思議な話」全3話です。
まずは、1993年頃の話である。
当時僕は東京で、
ある映画会社の系列のCM制作会社に勤めていたのだが、
なんとなくその仕事は自分に合っていないように感じており、
色々悩んだ末にその会社を辞めて、
しばらく自宅で無職の引きこもりのような生活を送っていた。
そんな僕のことをなにかと気にかけてくださる、
Hさんという方がいた。
この方はある有名なバンドのカリスマ的なボーカリストで、
僕なんかよりも数倍社会不適合者だったため、
僕の悩みに真摯に共感してくださっていた。
ちなみにHさんのバンドは、
メジャーとインディーズから数枚のアルバムが発売されていて、
ライブをすればライブハウスが超満員で
入れない人が会場の周りにあふれるくらいの人気だったのだが、
Hさんはそのようなショービジネスに乗っかるつもりはまったくなく、
普段は工場でハンダ付けの仕事をしており、
印税やライブのギャラは、全て練習のスタジオ代に消えていたそうだ。
そのHさんが、自分も仕事を辞めて苦労している時があり、
その時にここに行って解決してもらったからと、
僕を、ある宗教団体の道場のような所に連れて行ってくれた。
そこはとても不思議な場所で、
朝5時に相談者が並んで整理券をもらい、
実際に見てもらうのは夕方くらいになるくらいの人気で、
相談者の悩みに対して、不思議な、
おまじないのような「処方箋」をくれて、
その通りにすると悩みが解決する、と言われている所であった。
「自分が望んでいるような仕事に就きたいのですが」という、
僕の相談に対して出していただいた「処方箋」は、
①家から西南の方角にある神社を探し、
ろうそく2本を灯してお酒をそなえ、
ろうそくは消して賽銭箱に入れ、お酒は境内にまいて帰る。
これを3日間続ける。
②家の西南の方角に水を一升に酒を一勺(盃一杯)入れたもの、
そして大根一本を、金毘羅さんのためにと言ってそなえる。
水と酒は毎日取り替えて、大根はしなびてきたら新しくする、
これを21日間続ける。
というものであった。
ちなみに僕の前に相談している人や
前の前に相談している人の話が聞こえていたのだが、
みんな違う「処方箋」をもらっていた。
僕は言われた通りにやってみたが、
その時点では「金毘羅さん」については、
名前はうっすらと聞いたことがあるような気がするが、
それ以外は何も知らなかったし、
今のようになんでもネット調べられる時代ではなかったので、
結局よく知らないまま、ただ、
「金毘羅さん、よろしくお願いします」と唱えていただけであった。