タクシー運転手の怪
マジな怪談を聞くと、
なんだかどこかで聞いたような、
ベタな話だなと感じることがよくあるのだが、
どう考えてもその人が受け売りの話をしているとは思えず、
案外ベタな話の中には、マジな体験もあるんだなと、
あらためて感心することもある。
これは福岡の年配のタクシー運転手の間では、
かなり有名な話らしいのだが、
あるタクシー運転手が、
深夜に平尾霊園の前を走っていたら、
制服姿の女子中学生がそのタクシーを止めた。
「こんな深夜に中学生が一人で」と、
不信に思ったが、言われるままに走りはじめた。
かなりの遠距離で、久留米まで行ったらしい。
女子中学生はある家の前でタクシーを止め、
「お金をもらって来ますから」と言って、
その家に入ったきり、いつまでも出て来ない。
タクシー運転手がその家の呼び鈴を鳴らし、
出て来た人に事情を説明すると、
「その子というのはこの子ですか」と、
写真を見せられたが、それは確かにその女子中学生だった。
その写真は遺影で、
その日に平尾霊園に納骨したばかりだったという。
もう午前3時頃になっており、
そのまま朝までその家に引き留められて、
夜が明けたらその子の母親を乗せて、
もう一度平尾霊園まで送った。
そしてそのタクシー運転手さんは、
その一件のあと、タクシーの仕事を辞めたそうだ。
これは今から40年ほど前にあった出来事のようで、
現在配車係をやっている方が
体験したタクシー運転手さんの同僚の方から
聞いた話だということでした。