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whole history  作者: S・S
1/6

変化が欲しかった たとえ悲劇を生むとしても


息が乱れるのを抑え込み、背中の彼女を背負い直す

鬱蒼として進みにくい森をまた一歩踏みしめる、そんな私を見て彼女が声をかける

「ヘリアンちゃんありがとう、私もう歩けるから、、」

そう言うが彼女の足首は明らかにさっきより悪化している

とても歩ける状態ではない

「大丈夫よ、もうすぐ村に着くから私に任せて」

反論は許さないという意思を込めて背中に語りかける

「、、ごめんね」

その小さな呟きには答えず前へ、足を進める

急がなければ、日が沈むまでそこまで余裕はない


とは言っても物理的な限界というものはあるわけで既に私の足は

生まれたてで更に人を乗っけられた小鹿の様に震えていた

まぁそんな鬼畜な光景を見たことなどないが

そんな現実逃避まがいなことをしていたら

近くの草むらを揺らしながら何かがこちらに近づいてくるのに気づいた

もうとっくに出尽くしたと思われていた汗が額を流れる

まずい、今獣に襲われたら間違いなく二人とも逃げられない

背中の彼女の、肩に捕まる手がギュッと強まり祈るような呟きが聞こえた

「父さん」


背の高い草をかき分け出てきたのは、人だった

その人は私達を見つけると両手を上げながら喋りかけてきた

「:@>~*<‘¥」

何を言っているのか全く聞き取れなかった

容姿からしても恐らくこの国の人間ではないのだろう

その顔は少し彫りが浅く瞳は黒かった

服装こそ何の変哲も無いのが逆にに怪しい

両手を上げているのは恐らく危害を加えるつもりはないというアピールだろう

黙り込み見つめる私を、困った様に見たその人が一歩前に歩み出たのを見て

私は反射的に叫んだ

「来ないで!」

その声に反応して出した足を引っ込めて、私の目を見た

「大丈夫、私、危険、無い」

その人は片言ながら喋りかけてきた

「私達の言葉分かるの?」

「少し」

言葉が通じるからといっても安心できるわけではないが、

それでもコミニケーションがとれるといのは安心できるものだ

まぁどうせ逃げれないという状況もあるけれど

安心して気が抜けたのか私の体が限界に達したのか

バランスを崩して倒れこんでしまった

「きゃっ!」

背中にいた彼女が悲鳴を上げる

見かねて駆け寄ってきたその人が大丈夫?と声をかけてくるが

私はもう体も心も疲れきっていて返事ができない

その人は彼女が足を痛めていることに気づくと

「足、見せて」

「えっ!」

彼女は赤くなり困った様にこちらを見た、その視線を追いわたしを見たその人は

「痛い、消す」

「治療してくれるの?」

頷き返し静かに私の返事を待っている、視線を横にずらし彼女を見て私は頷いた

その人は慎重に足を持ち確かめる様に彼女に言葉をかける

「痛い、見る、教えて」

そう言うと腫れ上がった箇所を見回して、指で軽く押したりして

何かを確認している様だった

そして荷物から水筒を取り出し怪我をした箇所に水をゆっくりかけていった

すると彼女は気持ちよさそうにゆっくり息を吐き出した

次にはいきなり自分の服を破りはじめ布きれを作り怪我をした箇所に

慎重に巻き始めた

彼女は申し訳なさそうにオロオロしているが、

その人はおかまいなしで取り付く島もない

治療?が終わると心なしか彼女は楽になっている様だった

ひとつ息を吐くとその人は

「家、近い?」

と聞いてきた、なんと答えたものかと考えていると、

その人は彼女を立たせ自分の背に乗るように促した

彼女は困った様にこちらを見てきた、乗り掛かった舟という言葉が

正しいかはわからないが正直もう何も考えたくなかった私は

この怪しさ満点の男を村に連れて行くことにした


辺りは夕焼け色に染まっていた、彼女を背負う彼を先導しながら私は

最初に聞いておかなければいけない事を思い出した

「名前!、あなたの名前は何?」

私は自分を指さしながら

「私はヘリアン、その子はベスペル」

彼は少し考え込み

「、、ヌマ」

と答えた

ホントかよ、何だかこのまま村に連れていっていいのか不安になってきた




「いもうと」が生まれた

ベットの上でお母さんがあやしている

ぼくはどうしたらいいのか分からず、ただその様子を見ていた

「何をしてるのそんな所で、あなたの妹よ、もっと近くで顔をみてあげなさい」

お母さんがおかしそうにぼくに喋りかける

恐る恐る近づいてお母さんの腕の中をのぞき込む

その「いもうと」は何がおかしいのかキャッキャ笑いながら両手を

ぼくに伸ばしてきた

その手はすごくやわらかそうで、触ったら壊してしまいそうだった

「だいじょうぶ?」

不安になってお母さんに聞いてみると

「?、大丈夫よ握ってあげなさい」

ぼくはゆっくり「いもうと」の手に触れた


「いもうと」はやわらかくて、ちいさくて、とてもあたたかかった

こんなちいさな体なのにどうしてこんなにあったかいんだろう


「いもうと」の手を握っていると、ふと頭に重みを感じて見上げてみると

お父さんがぼくの頭を撫でていた

「お前が守ってやるんだぞ」

妹に視線を戻しぼくはお父さんの言葉をくりかえした

「うん」


「ぼくが守るよ」


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