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紙片6

 消極的自殺


 優しさとは、自他を溶かす毒である。

 人に優しくすると言う事は、相手の汚点や欠点を見過ごすと言う事であり、そうする事で優しくされた人は汚点や欠点を別の人へと、集団へと、社会へと晒すことになるだろう

 無関心、と言い換えても良い。要するにその人と深く関わる事を避けたのだから

 人に優しくすると言う事は、相手の汚点や欠点を見逃すと言う事であり、そうする事で優しくした人は我慢をする事になる。些細な我慢だったとしても、塵も積もれば山となり、それが身近な人であるほど、重なる苛立ちも多くなるだろう。それを他所で解消するか、または本人にぶつけるか、それとも潰れるまで一人で抱え込むか、被害の大小はあれど益にならない事は確かだろう


 そんなものは優しさではないと言う者も居るだろう。だが違うのだ、優しさと厳しさは正反対のものでなくてはならない。厳しくする事が優しさだ、などと勘違いしては絶対にいけない。その思考の行く先は独善だ

 人に厳しくする時には、常に相手を傷つける覚悟を負わなくてはならない

 例えばその人は心身共に打ちのめされていて、優しくして欲しいのかも知れない

 そんな時に相手の為に、将来の為になるからと言って厳しくしても、或いは逆境の中で奮起する人かも知れないが、逆に絶望して二度と立ち上がれなくなるかも知れない

 正解などない。例えば夫婦、例えば親子だとしても、その関係性に胡座をかいて雑な対応を取れば、一瞬で積み上げた関係は破綻する

 閑話休題

 優しさとは毒である。が、赤子の頃から無菌室で育てられた人間がまともに生きていけるだろうか?

 何かしらの本で読んだが、子供は優しい嘘を覚える物らしい。クリスマスプレゼントに望みのものを貰えなくてもありがとうと言えるような

 だが世間では嘘は良くないと教え、馬鹿正直にそれを守って来た俺みたいのが馬鹿を見るんだ

 そんな俺に優しさと言う名の毒を溢れても溢れても注ぎ込み、心も体も爛れた醜い人間が出来てしまった

 話を戻すと、何事も程々に、と言う事だ

 優しさだけじゃ生きられない、愛だけじゃ生きられない、厳しさだけじゃ生きていけない、お金だけでは生きることしかできない。人間の身体にはバランスの良いビタミンが必要なように、人の心にはバランスの良い感情が必要なんだ




 人の言う事を鵜呑みにし、馬鹿正直に生きていた、事があった

 優しいだけの父親を見てきた、そうして潰れてもなお優しくするだけの父親を見てきた

 それに罵詈雑言を浴びせる母と姉を見てきた


 嘘を言わず、馬鹿正直に思った事を、こうすれば良くなると思い

 善意で、頑張って、努力して、そんなものは誰も求めていなかった


 潰れる前には努力も気遣いも何もかもしていなかった家族は

 潰れた事を責め立てて、臭い物に蓋でもする様に遠ざけた


 馬鹿らしいな、全てが


 何度か死のうとしてみたが、その度に死ななかった。だから死にたく無いんだと気づいた。身体を傷つけるのは痛いし、雨に打たれながら眠るのは辛いし、飢えるのは苦しい。そんなのは嫌だ、何故俺がこれ以上苦しまなければいけないんだ

 俺は死にたくない。真面目に生きる?死ね。母親は骨の髄までしゃぶり尽くしてやる。楽して楽しく生きてやる。どうしようもなくなれば人から奪ってでも自分を満たすためだけに生きてやる


 学習的無気力、だったか。何処かで聞き齧ったが、それに当てはまると言うわけでもないが

 惰性だ。死にたくない、苦しいのは嫌だ、だから社会に迎合し、その中でも強かに生きようとしている


 他人の事も自分の事もどうでも良い、今楽しく面白く気持ち良くあればそれで良い、抗いようもなく早死にしてくれれば嬉しいが

 どうでも良いとは少し違うか、関わりたく無い、考えたく無い

 色々とやけっぱちだ、仕事だってクビになっても良いと思いながら適当に感情のまま喚き散らしながら

 いや、そこまででもないけど

 結婚や恋人は、言うまでもなく興味がない。いやない訳では無いけど

 精神的に、経済的に、将来的に、自分が支える余裕も、飼う余裕も、愛する事も、信頼関係を築く事も、惰性や諦観で結婚する事も、それを続ける事も、何もかも無理無理無理

 恋愛だのセックスだのに興味はあるけど、そんなものに煩わされれば、下手したら今度こそ精神的に死ぬ

 そんな博打をするつもりはない。今でもそれなりに生きてはいるのだから

 友人も完全に居なくなったし、自由だ

 俺は昔からそう言う子だった


 人との関わりを極力絶って、親の脛を齧りながら子供でも出来るような仕事を短日数短時間だけして、家にいる間はずーっと寝てる様な

 そんな生活だけど、幸せだ

 このまま死ねたなら、もっと

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