クロエ 地龍様の穢れを払う 水先案内をする
飛び込んで来た、グレモリー様。 なんか様子がとてもおかしい。 切羽詰まっているって感じがするの。 ほら、【 モーフ 】の掛け方が雑だし…… 雰囲気残っちゃってるよ? なんだろうね。 こんなに慌てて。
「どうしました? グレモリー様」
「クロエ様! た、助けて……わたくしでは、方法が!」
ヴェルの横を抜けて、部屋の中に倒れ込むように入って来た、グレモリー様。 【 モーフ 】が、剥がれ落ちてるよ。 膝を付いてる彼女の側に行って、しゃがんで、肩に手を乗せてたのよ。 ウルウルしてる瞳を向けて、縋りつくように、私の手を握って来たの。
「クロエ様! 地龍様から悲鳴が! 穢れに犯されていると! でも、でも、わたくし、この国では、どうしようも無いんです! 今直ぐに、ミルブール本国に帰って、本国の【降臨の間】に行ってるのでは、間に合いません!! 地龍様が、穢れに堕ちてしまいます!」
あぁ…… 王家主催の【精霊祭】で、ミルブール国教会の奴らが、なんか、やらかしたな。 龍王国の精霊様を贄に差出せなくて、自分が喰われそうになったんだ。 で、奴等、ミールフルールの怒りを抑えるために、グレモリー様の御飾りを通して、地龍様の、” 気 ” を、喰らわせた……そんな所か。 ギリギリの処だったからなぁ、地龍様の穢れ……
「グレモリー様、暫しお待ちを。 門の精霊様に、お尋ね申し上げる儀が御座います」
「お、お願いします!」
でね、ヴェル達にお願いしたのよ。 ちょっと、天龍様関連でデカい術式使うから、部屋を出てて欲しいって。 多人数の意識が室内に存在すると、上手く行かない可能性があるのよ。 ゴメンね。 えっと、そうだね、マリーのサロンに行ってて貰えるかな。 大丈夫、マリーのサロンにいる人達なら、ちゃんと受け入れてくれるから。
取り敢えず、四人を送り出して、部屋の中にグレモリー様と二人になったのよ。 なにも置いてない壁に、門の精霊様を召喚したのね。 一応これ、古代魔法だからね。 グレモリー様、ちょっと目を見張ってた。
⦅お願いします、天龍様に取次ぎを!⦆
⦅やぁ、クロエ! どうしたんだい?⦆
⦅はい、地龍様の「愛し子」様から、救いを求められました⦆
⦅へぇ! 珍しいね。 そんな事言って来た「人の子」って、久しぶりだよ。 うん、判った。 取り次ぐね⦆
⦅ありがとう!!⦆
多分ね、この遣り取りも、グレモリー様聞こえてると思うし、門の精霊様の、姿も見えてると思うよ。 しっかり視線が合ってたもん。 さて、天龍様、どうするかな? グレモリー様の龍印の魔力は、絶対に高まってる。 うん、ちゃんと鍛錬してたらね。 で、彼女の胸の御飾りは、綺麗な菫色をしているものね
プルプル震えている、グレモリー様の手を握りながら、待ってたの。 ジリジリするよね。 こうやってる間にも、地龍様の声は彼女に届いてる筈。 ……何、遣りやがったんだ、あのバカ達。
⦅おまたせ! うん、凄い騒ぎに成ってるって! 今直ぐ来いって⦆
⦅判った、直ぐ扉開けて貰える?⦆
⦅いいよ! あっ! ちょっと、待って!! そっちの子! なに付けてるの!! ダメだよ、君は入れない⦆
⦅えっ? なんで?⦆
⦅邪悪な魔法が掛かってる。 あそこに、そんなモノ、くっつけてる人の子、連れて行けない!⦆
門の精霊様が、指差していたのが、グレモリー様……の、御飾り。 あぁ……そうだった。 この御飾り、色んな魔法が掛かってんだった。 あいつ等が、込めた黒魔法、邪法がね。 ちょっと、いじったけど、まだ、機能してたんだ…… もしかして、これを介して地龍様から、なにか引き出したのか? マズイ……
「グレモリー様、御飾りに掛けられている魔方陣が……入室を拒んでいます」
「こ、こんなもの!! これでハッキリした。 ミルブール国教会は、ミルブール王国の敵。 王国の民の敵! こんなもの!」
グレモリー様、御飾りを首から引きちぎって、宝珠を無理矢理、引っぺがしたよ。 まぁ、御飾りは、ぐっちゃり 潰れて、掛ってた魔法も、バラケタけどね。 うん、なんか嫌な瘴気が広がりそうになったから、水の精霊様の祝福された水を、水玉にして、御飾りの残骸を包み込んどいた。
うわぁ! 水玉、黒紫色になったよ……すんげぇ汚染だ…… グレモリー様、これ、付けてたの? ある意味、すんげぇよ。 怒りに目を吊り上げた、グレモリー様、なんか解放されたみたいに、輝いて見えるね。
⦅これで、いい?⦆
⦅う~ん、まぁ……大丈夫かな?⦆
⦅じゃぁ、一緒に飛ぶよ。 おねがいします⦆
⦅わかった。 気を付けて! 天龍様も結構慌ててた⦆
⦅ありがとう、じゃぁ、行くね⦆
扉を通り、転移魔方陣を抜け、【 降臨の間 】に到着したのよ。 グレモリー様は、この経路を知ってた。 あっちの国も、同じ様に【 降臨の間 】に行くんだって。 ただね、この門の形状が違って、本当に門型で、玉座の後ろに有るんだって。 だから、私が門の精霊様を召喚したの、驚いたんだって。 まぁ……ね。 天龍様に直接貰った、魔方陣だし……他の人には使えないしね……
でね、【 降臨の間 】
相変わらず、暗いの。 でも、直ぐに天龍様、降臨されたの。 ” ボワン ” ってね。 キンキラの天龍様、ホントに慌ててた。 擬人化して、言うなら、汗をダラダラ流してる感じ? そんな、切羽詰まった感じがしたのよ。
⦅おお、クロエか! 来てくれたのか! 最悪だ!! 地龍が悪龍に堕ちそうだ!! ん?……そっちは?⦆
⦅天龍様! すみません、色々省きます。 此方、グレモリー=ベレット=ヴァサンゴ公爵令嬢、『地龍様』の『愛し子』で御座います⦆
⦅そうか! そうであったか! いま、地龍が大変苦しんで居る。 何者かが、アレに直接穢れを送り込んできよったのだ! 戯け者がっ! このままでは、穢れがアレを、悪龍に堕とす。 直ぐに浄化をしなくてはならん!!⦆
⦅グレモリー様の内なる魔力は、溜まっております……が、それ程の穢れであれば……予断は許しません⦆
⦅クロエ、手伝うてくれぬか?⦆
⦅御意に……その為に来ました⦆
⦅感謝する。 暫し、待て⦆
そう言って、天龍様は、一旦、限定召喚大魔方陣から、消えたのよ。 辺りが暗くなった…… ゴゴゴゴって音がしたかと思うと、天龍様の限定召喚大魔方陣の横に、新たな魔方陣が、浮かび上がって来たの。 ものっそい、複雑な魔方陣なんだけどね…… あぁ……そうか、龍の方達、一人一人、魔方陣の形が違うんだ……
「く、クロエ様……あれは……地龍様の降臨魔方陣……う、動かせない筈……」
「天龍様です。 ……龍の意思が、此処に限定召喚大魔方陣を紡ぎ出したのでしょう……」
「……龍の意思……」
天龍様が、戻って来た。 うん、連れて来て呉れるんだね。 ありがとう! 天龍様の優しい目が、私を捉えているのよ。 そんでね、頷かれたの。 地龍様の限定召喚大魔方陣に天龍様の魔力が通るの。 金色に魔方陣が染まっていくの…… そんでね、
ボワン
って、出たのよ。 ものっそい、穢れた龍の頭が…… ゴツゴツした、なんか禍々しい奴。 うわ、一気に瘴気が……うえぇぇ……気持ち悪りぃ……
体表に穢れの膜が、厚くへばりついてるの……ほんと、バッチイなぁ!
⦅クロエ! いま、奴を強制的に眠らして居る。 先ずは表面の穢れを祓ってくれ! 地龍の愛し子! 鼻先に手を当て、奴の浄化を!!⦆
直ぐにかかったの。 両手に、水と光の精霊様の力を借りた【 瘴気の祓い 】の魔方陣を、作り出して、地龍様の鼻先の穢れの膜を祓っていくの。 すんごいよ! この穢れ。 ジャワジャワ言いながら、黒紫色の煙が上がるの。 でもねぇ、なかなか、鼻先まで、到達しないの。 必死で、祓ってるんだけど…… あぁ、面倒!! 使うか!あれ。
⦅天龍様、目を御閉じ下さい。 グレモリー様も!⦆
両手の瘴気の祓いは、残したまま、もう一個、魔方陣を紡ぎ出したの。 うん、ちょっと、デカい奴。【 潔斎 】 ほら、、内郭【 祈りの間 】の床に書かれてた奴。 もうね、直接、呼んじゃうの。 光の大精霊様の、浄化の光をね。 とっても、眩しい奴。
いけぇぇぇ!!
ごっそり、私の魔力が毟り取られるのが判るの…… でも、術式は、完成したわ! 眩い光が、地龍様の鼻先に炸裂したのよ。 一気よ、一気! 地龍様の鼻先が露出したわ。 ほんと、やっとね。 もう、斑に漆黒の斑紋が出てるの。 本気で、ヤバい状態よ。
「グレモリー様! 鼻先に手を!! 浄化を始めてください!!」
私の絶叫ともいえる声に、グレモリー様きちんと反応してくれた。 まだ、眩い光が収まらない中、彼女は地龍様の鼻先に、両手を置いたの。
ポワン
って、彼女の両手が、薄紫色に光る。 パリパリいう音と共に、穢れが光の粒に代わって行くの。 そんで、光の粒は、キラキラ光りながら、立ち昇って行くのよ。 ユラユラとした、黄金色の光の煙…… それまで、頑固にくっ付いてた、穢れの膜が内側から剥がされ、一気に浄化されたわ。 いやぁ……壮観だよ。
頭しか見えてないけど、これ、全身で起こってるんだ…… 初めて、地龍様の頭が全部見えた…… 天龍様と違って、かなりゴツゴツしてるけど、なんか、カッコいいね。 斑に出てた漆黒の斑紋が、剥がれるみたいに浮き上がって、光の粒に代わるの……
そんでね、そんでね、地龍様の御色が変化していくのよ、薄汚れた感じから、赤銅色にね。 こんな、お色の龍様だったんだ……へぇ…… グレモリー様、肩で息してる…… つらいんだろうね……でも、コレ、彼女の役目だから……私は、なにも言えないんだよね。 あらかた、赤銅色になった地龍様の目が、うっすらと開いたの。 瞳も、同じ、赤銅色よ。
⦅グレモリーか…… すまぬ⦆
めっちゃ渋い声だ! 天龍様も、心配そうに見てたけど、何処かホッとされてる……うん、成功した!
⦅何者かが、鎖を付けた……引き摺られる⦆
ミルブール国教会の奴らが、急激に力を付けたの、何となく理解した。 奴等、地龍様の力を使って、やらかしてたんだ…… 窓口は……グレモリー様かぁ…… 彼女と地龍様の交流を絶って、横取りしてたんだ……あの、御飾りでね。 グレモリー様は自分の力不足と認識してたけど……ね。
⦅それは、わしが、引き千切ってやる。⦆
天龍様の目が光る。地龍様、ちょっと苦し気……でもね、 バチン!! って音がしたあと、なんか、めっちゃ、ホッとした表情になったのよ。 あぁ、これで、変な頸木から逃げられたんだ……そう理解したよ。
グレモリー様、がっくりと膝を付いたの。
当然よね。 多分、多分だけど、グレモリー様、魔力が減り過ぎて、立ってるのもやっとの状態だろうね。 御役目、お疲れさまでした。 ゆっくり休もうね、グレモリー様。
⦅クロエ……と言ったか⦆
⦅はい、地龍様⦆
⦅……礼を言う⦆
⦅すべては、古のお約束。 天龍様の御意思。 お礼ならば、天龍様、その他の龍族の方に⦆
⦅……うむ……⦆
ちょっと、やつれた感じ有るけど、これから、また、力を取り戻されるだろうし…… 天龍様、とってもご機嫌だし、良かったよ。 ほんと、間に合って…… 【 降臨の間 】に、拡散した、穢れも、さっきの浄化の光で、綺麗に成ったしね。
⦅クロエ……礼を言う。 龍族の大事、人の子のお前に託す事に成るとは、想わなんだ。 改めて礼を言おう……もう時間か……クロエ、ありがとう⦆
そう言って、天龍様、地龍様が、目を伏せられたのよ。 ものっそい、栄誉よね。 私も思いっきり頭を下げて……送還の言祝ぎを口にしたの。 天龍様、よかったね。 地龍様、ミルブールを、お願いします。
暗くなった、【 降臨の間 】。 残ったのは、グレモリー様と二人。
「グレモリー様……帰りましょうか。 人の子の世界に」
「はい……有難うございます……誠に、誠に……」
二人して、転移魔方陣に乗っかって、心に思うの。
帰る!!
ってね。
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扉を抜けて、お部屋に帰ったのよ。 ほっと、一息つけた。 床に水玉に包まれた、御飾りの残骸があるのよ。 そう、グレモリー様のね。 でね、このままに、して置けなくて……水の精霊様にお願いして、汚れた聖水引き取ってもらった。 あれは…… 多分、また、光の精霊様と一緒に浄化するね。 ゴメンなさい…… 今、私、魔力枯渇寸前だから、処理できないのよ……
床に転がった、もう、なんの力の持っていない、御飾りの残骸を取り上げたの。 グレモリー様、宝珠を手にぐったりしてるの。 そんでね、ちょっとした贈り物。 グレモリー様に【 ハッチポッチ 】の魔方陣を教えてあげたのよ。
「これは……良いものですね」
「身から離したくないものは、この中に入れて置けます。 宝珠も、機能しながら、安全に保管できますよ」
「ほんとね。 ありがとう」
早速、右手に魔方陣を定着させて、起動させてた。 ウンウン頷いてた。 よく勉強されているから、一発で理解されたよ、【 ハッチポッチ 】の構造。 で、大切な宝珠を入れられたの。 二人して、見詰め合って、笑ってたの。
バン!!
大きな音がして、部屋の中に、誰かが乱入したのよ。 ちょっと、今は、無理。 対応できない位、魔力が枯渇してるのよ!! あぁ……そうだ、ヴェル達、マリーのサロンに行ってもらってたんだ……
「何をしている!! おい! それは、何だ!! ボディウス教皇猊下が、グレモリーに危機が迫っていると、仰っていた! やはり、お前か! クロエ!! お前、グレモリーを害したな!!! 許さんぞ!!!」
何を言ってるのかな? ん?
「その手に持っているのはなんだ!! グレモリーの首飾りか!!! な、なんて事を!!! それに、グレモリーが、こんなに…… お前!!! これは、許せん! グレモリー、もう大丈夫だ! 此方へ! こんな奴の処に、一人で来るなんて、なんて、無茶な…… もう心配はいらない」
そう言って、私の手から、御飾りの残骸を捥ぎ取って、ぐったりしているグレモリー様を、横抱きに抱き上げ、部屋を颯爽と出て行ったのよ。 あぁ~ あれ、自分がカッコいいって思ってるね。 そんで、私が、グレモリー様を害し奉ったと。
御飾りが破壊された時に、ボディウス教皇が危機を感じたんだ。 彼女が頸木から離れるって……その上、地龍様が、自分達の拘束から、離れたって判って…… そんで、自分の手は汚さず、ミハエル殿下を御遣わしになったんだ。
まぁ…… この状態を見れば…… そういう解釈だって出来るよね。 グレモリー様だって、普通は、あんなに消耗しないしね。
まぁ、グレモリー様が、なんか言うと思うけど……
ダメかな……
ミルブール 国教会の奴等……
自分達の危機を
私に擦り付けて
嵌めようと、してやがんのか……
これは……
なんか、遣るね。
絶対に
なんか、遣るね。
うん、理解した。
殲滅してやる。
ブクマーク、感想、評価、誠に有難うございます。
本当に嬉しく思っております。 皆様に読んで頂ける幸いに、胸が震えます。
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クロエが、グレモリーのお手伝いをして、地龍様の穢れを払います。 やっと、ミルブール王国にも明るい兆しが見える事でしょう。
勘違いヒーロー登場で、物語は一気に進みます。
クロエが何故、悪役令嬢にされてしまったか・・・ その罠をどうやって喰い破るか。
また、明晩、お逢い致しましょう!!




