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ヌーヴォー・アヴェニール   作者: 龍槍 椀
ヌーヴォー・アヴェニール 本編 物語の始まり
9/111

クロエ 拝謁する

クロエ、天龍に拝謁する。 切望した物を手に入れる。



 

 《王太后様は美しく威厳に満ちた聖女様。 お妃様は慈愛に満ちた、素敵な御姫様。》




 世間の評判は、当てにならないって、知ってた。 侍従長に連れられて、【カメリアの大広間】の奥へ連れ込まれた。 まさしく連れ込まれたんだ。 小部屋に入ると、後ろでピタッと扉が閉じられ、舞踏会の音がきれいに聞こえなくなった。


 この部屋、「消音の魔法」でも掛けてんのかな? 静かすぎるよ…… でさ、小部屋の中に、二人の女性が立ってた。アナスタシア王太后様と、ナタリア妃殿下だった。 


 アナスタシア王太后様が私に氷の様に冷たい目を向けて、語り掛けて来た。





「さて、クロエ=カタリナ=セシル=シュバルツハント。 どのような手練手管を用いて黒龍大公家に潜り込んだのかは知りません。 しかし、古の契約に基づき、黒龍大公家の、”令嬢”となった、”あなた”が、”龍印を持つ者” か、調べねばなりません」





 か、感じ悪~~~。 手練手管って、此処に来た時、私まだ五歳だよ? どんな手を使うってのさ。 それに、私は、”お願い” されて来たんだよ!! 私は来たくなかったんだよ!!!





御義母様おかあさま、このような者に、尊い龍印など、あろう筈はございません!」





 キンキン声の ナタリア妃殿下(白塗りおばさん)が、そう喚く。 やっぱね。 そうだと思ってた。 別にそんな、 ” お調べ ” なんぞ、必要ないから、ロブソン開拓村へ帰してくれ! なんか、腹立ってきた。 妃殿下は続けて云うんだよ。





「ウラミル黒龍大公のお持ちになった、セシル様の【龍の宝珠】にしても、セシル=ニーア=ハンダイ殿下がどこぞの下郎に巻き上げられた物かもしれません。 このような素性のしれない者を、【降臨の間】に入れるなど、とても、正気の沙汰とは思えません!」





 ふーん、お前らが、婆様から母様に、そして、私が貰ったあの【宝玉】、取り上げたんだ…… もういい、要らない。 だから、解放しろよ。 もう、帰りたい…… ロブソン開拓村に帰りたい……





「ナタリヤ……龍印を持たぬ者は、そもそも【降臨の間】には、入る事すら出来ません。 ……クロエ=カタリナ=セシル=シュバルツハント。 私たちは、先に行きます。 ついて来れたなら、貴女を龍印を持つ者と、理解しましょう。 ついて来れたらね・・・・・・・・





 めっちゃ冷たい視線を私に向けた後、アナスタシア王太后様は、封印のしてある扉から、向こうに消えた。続いてナタリア妃殿下も、同じような蔑む視線で私を見てから、何かを一生懸命唱えて、同じ扉から消える。 後に残されたのは、私一人。 


 ふむ……このまま帰っていいかな。でもなぁ……なんか釈然としない。 例えば、このまま帰ったとする。 そしたら黒龍大公閣下の顔に思いっきり泥を塗らないか?


 そうだよ、閣下が、” この小娘に騙されました! ”って全力で云い回っても、汚名は残るよね。……ふむ。 閣下の面目丸つぶれ。 それは避けたい。 世話になってるしね。



 ここは、黒龍大公閣下の顔を潰さない様に努力だけはしてみよう。




 目の前に有るのは、封印の扉。 なにやら、古代キリル語で書かれている。 ナニナニ……



 ⦅我から彼方にかんと欲する者、我が宝珠に手を当てよ⦆



 ふむ……これか。 目の前にある、扉に埋め込まれた半球に手を当てた。 手がボンヤリと発光する。



 ⦅う、ウハッ! び、ビックリした!⦆



 なんか、ちっこいのが 飛び出して来たよ。 手のひらサイズのちっこい身体に、透明の羽根をバタつかせた、精霊。 なんの精霊だ、お前?




 ⦅おらっちは、「門の守護者ゲートキーパー」 あんた、だれ?⦆

 ⦅私? 私はクロエ=カタリナ=セシル=シュバルツハントって云う、”人の子”⦆

 ⦅ほえ? おらっちの姿と、声が、見たり聞いたりできるの?!⦆

 ⦅うん、できるよ。 ハッキリわかるよ⦆



 ちっこい精霊さんは、古代キリル語で話しかけて来た。小さい羽根をバタつかせて、その精霊さんは嬉しくて仕方ないって、事を全身で表してる。 ん? そんなに嬉しい事なのかな? これって?




 ⦅うはっ! すんげぇ! ちょっと待って、今、名簿見るから……………………無いね⦆

 ⦅初めて来たんだもん⦆

 ⦅そりゃ、無いよね。 でも、あんた、強い龍印もってるんだね⦆

 ⦅そう? 自分じゃわかんないけど⦆

 ⦅だろうね。 でも、まぁ、そんな事、どうでも、いいじゃん。 早速、登録しよっか⦆

 ⦅いいよ。 どうすんの?⦆

 ⦅宝珠に手を乗せて、名前を云えばいいよ⦆

 ⦅判った⦆




 精霊の言うとおりにした。 なんも変わらん。




 ⦅アッレッェ???? おかしいな…… ちょっと待って……あんたさ、名前違うよ?⦆

 ⦅ええ、違わないよ⦆

 ⦅……ゴメン、ちょっと言い間違えた。 ”真名マナ”を告げて⦆

 ⦅ ”真名マナ”??⦆

 ⦅【 ”真名マナ” 秘匿されし、本当の名前】 聞いた事無い? 普通、お父さんか、お母さんに聞くものだけどね⦆

 ⦅…………⦆





 記憶の奥を探ってみる。 父様も、母様も、そんな、 ” 名前 ” 教えてくれんかったよ……そう言えば、婆様に教えてもらった事があるような……なんだっけ? ええっと、……なんか、短くてね……ミドルネームが無かったような……そうだ、婆様が言ってたっけ。 忘れそうになったら、国の名前を思い出せって。




 ⦅思い出した?⦆

 ⦅うん、多分、コレだと思う⦆

 ⦅やってみ⦆

 ⦅判った⦆



 宝珠に手を当てて、婆様がそっと教えてくれた、”名前”を告げる。




 ⦅クロエ=ハンダイ⦆




 宝珠が、眩しく輝いたよ。 いいの? これで。




 ⦅はい、登録完了。 しっかし、凄い龍印だね。 あと、扉は三枚あって、各扉にそれぞれ「門の守護者ゲートキーパー」が居るけど、此処の登録で、全部の扉、問題なく開くよ。 これって、凄い事なんだよ⦆


 ⦅そうなんだ……でも、実感がないよ⦆


 ⦅……強い龍印の持ち主でも、「門の守護者ゲートキーパー」は、必ず名前を尋ねる事に成ってるんだけどね。 あんた程の龍印なら、近くに来ただけで問題なく開くよ。 そんで、天龍様にも、もう、届いていると思うよ、君の登録⦆


 ⦅天龍様? この城の中に居るの?⦆


 ⦅いやいや、あの方はこんな薄暗い中にはいらっしゃらないよ。 転移門半解放してあって、其処から顔をのぞかせるだけ。 まぁ、色々在るんだけどね。 行けば判るよ⦆


 ⦅ふーん、そっか。 行けばいいのね。 このまま通っても?⦆


 ⦅いいよ、いいよ、どうぞ通って。 先に進むと、二回、同じような扉があって、最後は床に転移門があるから、其処から転移するんだよ。 判った?⦆


 ⦅二回、扉をくぐって、床の転移門から転移?⦆


 ⦅そうそう。 頑張っておいで。 たぶん、天龍様来るから。 そんだけ強烈な龍印、ここ何百年ってなかったから、たぶん、……いや、きっと涎ダラダラで来るよ⦆


 ⦅え~~~食べられんの? 私⦆


 ⦅まぁ、喰われるっちゃぁ喰われるけど、肉では無くて、魔力をね。 龍印を帯びた魔力が必要なんだ。 天龍様の為にもね⦆


 ⦅ふ~ん、……死なない? 私⦆


 ⦅どちらかと言うと、強くなれるよ⦆


 ⦅そっかぁ……精霊さんは嘘、言えないからね。安心したよ⦆


 ⦅いいって事よ。 でも、あんた、言葉上手いね⦆


 ⦅習ったもん。 つぅか、友達との意思疎通が、古代キリル語でしか出来なかったからね⦆


 ⦅その友達に感謝だね⦆


 ⦅ホントに、そう思うよ。 そんじゃ、行ってきます!⦆


 ⦅おう、しっかりな⦆





 荒っぽい言葉だって判ってるけど、私にとって古代キリル語はこんな感じで、基本喋ってるのよ。 知らない人が聞いたら、キリル語の聖句を並べてるようにしか聞こえないらしいけどね。 んじゃ、行きますか。  ついて行けるからね・・・・・・・・・





 *************





 あの精霊の言った通り、二枚扉を通った。 別の精霊が、それぞれの扉から飛び出してきて、なんか、ニッコニコで喋りかけられた。 うん、”精霊には相応の対応を” が、基本。 楽しくお喋りをして、通してもらった。 なんか、久しぶりに友達と喋った感じ。 向こうもそうみたいね。 ポロって感じで、そう言ってた。


 で、最後の転移門。 


 床にでっかい転移魔方陣が彫り込まれていた。 中央にやっぱり宝珠があった。 近寄ってみたら、同じように、精霊が飛び出して来た。





 ⦅うほっ! 一の子が言ってた通りだ! 凄いのが来た!⦆


 ⦅何の事? 何が凄いのか、わかんないよ⦆


 ⦅いいの、いいの。 人の子には分かんないから。 いやまぁ、もうちょとしたら、天龍様も来るから⦆


 ⦅へっ?⦆


 ⦅一の子が、”君の登録” を天龍様に送った。 そしたら、すぐ来るって、さっき連絡があった。 そうだろうね、ウンウン⦆


 ⦅???⦆


 ⦅あんた見たいな強い龍印を持つ子、なかなか居なくてさぁ…… 天龍様もワクワクしてんじゃないかな⦆


 ⦅そっか…… で、私、どうしたらいいの?⦆


 ⦅うん、魔方陣の真ん中に立ってくれたらいいよ。 変な聖句も、なにも要らない。 ”行く”て思ってくれたら、ボクが飛ばす。 あっちの部屋にも同じモノがあるから、同じように真ん中に立って、”帰る”って思ってくれたら、後は僕がする。 簡単でしょ?⦆


 ⦅うん、とっても。 何から何までして貰っちゃって、とっても、有難う。⦆


 ⦅……いい、とってもいい、なんか、嬉しい。 君、いいね。 気に入った⦆


 ⦅なんで?⦆


 ⦅やる事やるって言って、感謝してもらっちゃった! どの位ぶりだろう?⦆


 ⦅え、でも、精霊さんでしょ、それも、「門の守護者ゲートキーパー」なんでしょ? この転移門を守ってくれてるんでしょ? 感謝して当たり前じゃんか⦆


 ⦅……その、当たり前が、ココの、”人の子” 出来ないんだよなぁ……⦆


 ⦅う~ん……なんか、ゴメン⦆


 ⦅いや、君はいいんだよ、君は。 おお、そう言えば、もうそろそろ、天龍様がいらっしゃる頃だ! 行くかい?⦆


 ⦅うん……あっちの部屋って?⦆


 ⦅割とデカい部屋なんだけど、壁に限定転移門の魔方陣が彫り込まれてる。 そっから、天龍様が顔を出されるんだよ。 行けば判るよ。行けば⦆


 ⦅そっか……んじゃ、行くね⦆


 ⦅また、来いよ⦆


 ⦅……あんま、機会ないと思うよ……でも、此処に来たらよろしくね⦆


 ⦅おうよ! んじゃ、飛ばすぜ!⦆


 ⦅うん!⦆





 転移も魔方陣の真ん中に居た私は、どっか知らない部屋に飛ばされた。 意識は飛ばない。 うん、かなり高度な魔方陣だね、コレ。 「門の守護者ゲートキーパー」には、ほんと、感謝だよ。





 *************





 飛んだ・・・先の部屋は、薄暗かった。 燭台はあるんだよ。 光も放ってる。 でも、圧倒的に数が足りない。 ホントにデカい部屋だった。 天井が遠いよ。 さっきの「門の守護者ゲートキーパー」の精霊さんが言ったように、目の前の壁面に、限定転移魔方陣が彫り込まれて、うっすらと緑色に光ってる。 周りを見回して、先に来ている筈の、王太后様と妃殿下を探してみた。 


 なんか、私を見て、固まってた。 





 ついて来れたからね・・・・・・・・・





 つまり、私には龍印が有ると云う事なんだよなぁ…… なんだ? 龍印って。 まぁ、いいか。 王太后様が気を取り直して、なんか、ゴモゴモ言ってる。 あぁ、聖句か……でも、あれじゃ。意味わかんないよなぁ……辛うじて、天龍様とか、御照覧とか、変に固い単語だけが判るくらい…… どうしよっかなぁ  ナタリヤ妃殿下、なんか下向いてプルプルしてる。 何でかなぁ……


 突然、限定転移魔方陣が眩しく光った。 おおおおお! すんげぇ!! 龍の首だぁ!!!




 ⦅ごちゃごちゃ、訳のわからん事言うなよ! 煩い!!⦆




 開口一発目にダメ出しだよ……王太后様が必死で唱えてる聖句に文句言ってる。 たぶん、私でも云うね。あれじゃぁね。




 ⦅ん? お前か! たしか、クロエ=ハンダイって云ったな!⦆


 ⦅天龍様? うん、そうだよ。 クロエ=ハンダイです。 宜しくね⦆


 ⦅おお、まともに話せるのか! これは、嬉しいな!!⦆





 ぱぁぁっと、周囲が明るくなった。 天龍様が光っとるよ。 だから、部屋が暗いんだね。 なんだ、天龍様仕様か。 なんで、王太后様がこっちを見て、怒ってるんだ? 知らんよ。 




 ⦅一の扉の門の守護者ゲートキーパーがよこしたお前の登録が、ホントかどうか、確かめさせてくれないか?⦆


 ⦅いいよ。 あっ、ゴメン。 言葉、こんな感じでしか喋れないのだけど、いい?⦆


 ⦅構わん。ちゃんと、会話に成っとるから、別に気にせんよ⦆


 ⦅そっか、ありがと! よかった!⦆


 ⦅ん。 それでな、儂の鼻に手を置け⦆


 ⦅こうですか?⦆





 でかい天龍様の鼻先に手を差し出して、当てる。 ひんやりしてた。 また、王太后様が睨みつけて来た。 知るか!! そしたら、手から光が湧き出して、天龍様に吸い込まれていった。 





 ⦅ほほう! 成程! いや、凄いな! あいつの言った通りだ! これは、美味い!⦆





 なんか、ちょっと魔力を吸われてる感じ。 でも、大量じゃない。 全然問題ないくらいだね。





 ⦅もういいぞ。 よくわかった。 そうだ、お前に遣る物が有る⦆





 天龍様の鼻先から、手を離すと、天龍様、げっぷみたいな音を出した。





 ⦅受け取れ!⦆





 なんか、降って来た。 琥珀色の雨粒見たいな形の石。 私の方に飛んできたから、受け取った。 なんか生暖かい。 なんだこれ?





 ⦅ドラゴンドロップだ。 これで、お前と儂はずっと繋がる⦆


 ⦅なんか、良い事有るの?⦆


 ⦅儂の加護がクロエ限定で、与えられる⦆


 ⦅いやいや、違うよ、天龍様にだよ。 貰っておいて何だけど、これ渡して、天龍様に何か良い事有るの?⦆


 ⦅鋭いな。 まぁ、いい事っていうか、儂の糧だな⦆


 ⦅腹ペコなの?⦆


 ⦅ある意味な。 人の子の中で練られる、魔力が儂にとって糧となる。 それも、儂と繋がりが持てる、龍印しるしを帯びた魔力がな。 お前の龍印は強大で、魔力は純粋だ。 ほんの少しで、絶大な清涼感を得られる。 これで、” 魔 ” に落ちずに済みそうだ。⦆


 ⦅魔に落ちる?⦆


 ⦅知らないのか? 長年生きて、身に汚濁を纏いつかせると、魂自体が変質して魔物に落ちるんだよ⦆


 ⦅あぁ、お爺さんが大往生した時に、体にまとわりつく、”陰気”。 あんな感じの物か……なんか判る気がする⦆




 天龍様が遠い目をして、語り出した。 なんか、大事な事を云うらしい。 





 ⦅人よりもずっと長生きする儂ら龍族は、穢れを払う必要があるのだ。 龍族同士、自分達では出来ない。 それで、人の子に頼む。 龍族が、”魔”に落ちずに済むためにな。 残念な事に、四年ほど前までは、きちんと送られてきた、 ” 浄化してくれる大き目の魔力 ” が、突然無くなった。 まぁ、ココ百年ほどは、徐々に落ちつつあって、儂が加護を与えられる範囲も随分と縮小していたな。 かなり、危なくなって来てたんだよ。 お前が来て、確認の為にさっき少し分けて貰った ” 浄化してくれる魔力 ”。 あれで、ずいぶん楽になった。 助けると思って、そのドラゴンドロップに、ちょっとづつでいいから、お前の魔力を注いでくれないか?⦆


 ⦅いいよ。 今、してみる?⦆


 ⦅おお、それは有り難い!⦆




 両手の手のひらの間に挟んで、魔力を送る。 どの位入るんだろう。 純粋に好奇心で、バンバン入れてみる。 感覚で、自分の魔力の半分くらいを注ぎ込んだら、反発して帰って来た。 この位か……足りるのかな? 琥珀色だった石が緑色で透明っぽく成った。 うん、エメラルド?みたいな感じかな。 天龍様、更に神々しく光ってるよ! そんで、その優しい目が大きく見開かれて、私を見てた。





 ⦅何というか……凄いな! 陽光の中を全力で飛んでいる様な爽快な気分になるぞ! 溢れんばかりに力が漲って来る!! それに、ドラゴンドロップの中には、まだまだ、大量に魔力が有るじゃないか!! 百年分、いや、二百年分、一気に貰った! これは、いい! とても、いい気分だ! おい、クロエ=ハンダイ! 何が欲しい! なんでも言ってみろ! 叶えてやるぞ!⦆





 ん? どっかで聞いた様な……・ でもなぁ……突然、言われてもなぁ……


 チリリって胸の奥で、焼ける様な感じがした。 四年前……大き目の魔力が消えた……それまで徐々に天龍様の力が衰えて来てて、加護の範囲が縮小してた? ……うん?


 なんだろう……縮小した加護の範囲 ……四年前 ……私が五歳か、六歳 ……そっか ……それでか ……なんか、納得出来るような気がした。天龍様にするお願いが、湧き上がって来た。




 ⦅一つお願いが有ります。 天龍様の御力をもってしても、難しいと思います。 ですが……私の願いはたった一つです、良いですか?⦆


 ⦅言ってみろ⦆


 ⦅この世界の生きとし生けるものに平安なる加護を⦆


 ⦅……それは、また……⦆


 ⦅難しいですよね。 でも、天龍様がやって下さるのなら、クロエの魔力は全部あげます⦆


 ⦅……そうか……その宝珠ドラゴンドロップに、お前の魔力を満たしさえしてくれれば、やってみようか。……最初は……そうだな、初代の御子が望んだくらいの範囲で⦆


 ⦅有難うございます!!!! 十分です!!!⦆





 そう、歴史の授業で習った。初代の御子って、初代の国王様の御妃様の事で、多分、聖女ガブリエラ様の事。 彼女が望んだのは龍王国の安寧。 その範囲は、龍王国に留まらず、周辺国もカバーする。 ロブソン開拓村も範囲に入る!もう、魔族の侵攻に怯える事が無くなる! うん、そう! 




 爺様が希望し放浪して

 婆様が切望し爺様を追いかけ 

 父様が努力して作り出し

 母様が護ろうとしたモノ! 




 ⦅懐かしく思うぞ。 人の子クロエ。 お前のような者を待って居ったのかもしれん。 わかった、お前を”愛し子”とする。 うん、そうだ、お前とお前の子孫の続く限り、お前の望みを受け継ぐものが居る限り、約束しよう。 加護を与えるとな⦆





 もう、十分だ! ホントに願っても無い事だった。 嫌がらせから始まった事だけど、とっても感謝してます。 王太后様!! これで、ロブソン開拓村にも辺境の村々にも、民に安寧が訪れます!





 ⦅降龍祭には、必ず来い。 待っているぞ⦆





 突然の天龍様の言葉に、狼狽えた。 今日は、”お調べ” で、本来、私は此処に来れる資格は無い。  降龍祭の事を授業で学んだ時に、先生がそう言っていた。【降龍祭】は、国事行為の中でも、秘儀であり、【降臨の間】で行われる、祭りに出席できるのは、本来、国王陛下と王妃様のみだって。 そんで、今の有資格者は、国王陛下、王妃様、王太后様、次代の国王陛下のご婚約者だけの筈だ。





 ⦅……そ、それは……お約束出来かねます⦆


 ⦅なんでだ?⦆


 ⦅私は、此処に来る資格がありません。 色々と規則があって……で、でも! ちゃんと宝珠ドラゴンドロップには、魔力を注ぎ入れますから!!⦆





 慌てて、天龍様にそう言ったけど、天龍様、とっても難しい顔をしてた。 そんで、王太后様に顔を向けて、厳かに、力強く、高圧的に、断定的に、ゆっくりと、王太后様が理解できるように、” 命令 ” したんだ。





 ⦅……そこに居る古き血の者に伝え置く。 クロエを降龍祭に連れてまいれ。 さもなくば、貴様等の召喚には応じん! 判ったか!⦆





 一句一句、かみ砕くように、聖句を告げる天龍様。 王太后様が、天龍様の言葉の意味を理解して、”その内容”に、彼女は震えてた。 なんか、物凄く青ざめてた。 ……私……龍王国の代表みたいに言われてるのが判った…… そうだよねぇ…… 妃殿下の言ってた、素性のしれない、十歳の女の子に、国の命運がかかっちゃたんだもんねぇ




  …… え、そう言う事なの?


      ……え、


         ……え、 


  えええええ!?!?!?!



 ちょ、ちょっと、まって!!! むり、むり、無理だよ~~~~!!!!



 にこやかに天龍様は微笑まれて、唐突に、魔方陣から消えた。 消える前に、”一言” 私に云った。




⦅必ず、来いよ! 待っている、我が、”愛し子” ⦆






 因みに、妃殿下は、天龍様の気に当てられて、失禁して気を失ってた。 どうでもいい事だけど……



 この人、どうやって、あの小部屋までもどそう………………








前提が、揃いつつあります。 

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