表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヌーヴォー・アヴェニール   作者: 龍槍 椀
この ” 矜持 ” に賭けて
83/111

クロエ 新入生歓迎舞踏会の準備に取り掛かる

 




「多少、苦しくは御座いますが、毎日継続して、鍛錬されれば、御身の魔力が浄化されます。 龍族の方々は、大変お喜びになりますわ」




 ふぅ。 一通りの説明と、実地訓練が終わったよ。 うん、大分しんどかったよね。 二人とも、かなり消耗してる。 ホントは、子供の内から始めた方がいいんだけどね。 だって、幼児の回復力って、半端ないのよ。 それは、私が一番よく知ってるもの。 婆様から呼吸鍛錬教わったの三歳だったのよ。 一日目はしんどかったけど、二日目は気にするほどでも無かったもの。




「クロエ様……この、倦怠感は……どれ程続くのでしょうか? なんだか、不安になってきます」


「はい、人にも、よるのですが…… 先ずは三日、様子を見てください。 そこから、徐々に回復して来ると思います。 でも……」


「でも?」


「グレモリー様、不安になる事を敢えて、申し上げます。 御身の中に、妖魔精霊の穢れが、潜り込んでいた場合、グレモリー様の浄化された魔力と対消滅しますから…… もう少し、時間が掛かるやもしれません。 それは、グレモリー様が、どれ程、穢れに犯されておられたかにも依りますので……なんとも……」


「……」




 ごめんね、グレモリー様。 こんな事しか言えなくて…… でも、絶対に、やって! 間違いじゃ無いから。 身の内の魔力を浄化する事、魔力を練って純度を高め、高密度化する事。 この二つは、龍族様達への大いなる贈り物になるの。 ひいては、私たちの国の民への、大いなる加護に繋がるのよ。 判ってもらえたら……うれしいな。





「……ええ。 ええ、鍛錬します! ミルブールの民は、喘いでおりますもの。 必ずや、彼等に安寧を届けます」





 うん、いい顔。 決心したよっ! って、そんな顔。 眩しいね。 そんな、顔、大好きだよ。 うん。 で、マリーも同じように、頷いてる。 そうだね。 マリーにも、必要な鍛錬だもんね。 次にお逢いできる時、天龍様の度肝を抜いてやりなさいよ。 びっくりしてる、天龍様の御顔を想像すると、なんか、ワクワクするね。


 ちょっと、お疲れのお二人を、お部屋の中に誘って、持って来たお菓子で、歓待するの。 ……って、なんで、半分無くなってるの? アスカーナ? 貴女、ドンダケ、食べてるの?





「とても、とても、美味しいです。 クロエ様、お菓子作り、お上手なんですね!」





 あ、あのね…… それ…… 軽く十人分は、有るのよ? 半分って…… 食欲魔人の能力、読み間違ってた。 うわぁぁぁ…… 今度から、もっと沢山、作ってこよう……マリーのお部屋の人達にもって、思ってたのに……


 ……この後は、皆で楽しく、お喋りしながら、持って来たお菓子食べて、ボリスさんの入れてくれた美味しいお茶を飲んで、楽しい時間を過ごしたよ。 


 うん、楽しい時間の筈だったんだよね……





 グレモリー様が、『新入生歓迎舞踏会』の、話をされるまでは。  





 なんだかね、また、私の婚約者様が、要らん事を考えているらしいの。 主に、私の排除の為に。 今年の歓迎舞踏会をね、二組に分けようかと思ってるんだって。 一つは、高位貴族だけの歓迎舞踏会。 もう一つは、低位貴族と庶民階層の人達用のパーティ。



 たしか…… ” 学院の生徒は、広く交友を深め、互いに、尊重する ” …………とかなんとか。



 真っ向から対決するつもりね、設立理念と。 そんで、高位貴族組では、その方々の推薦を受ければ、低位貴族も参加できるとかなんとか…… そのうえ、高位貴族でも、三分の二以上の評決で、参加を認めない高位貴族を決められると……


 なんかね。 ……もう、狙い撃ちな感じ…… で、その準備を、私に押し付けようとしてるって……去年みたいに、お手伝い要員でね。 ほら、二年連続で「受付」は、させられない規則になってるから、策を弄した感じ? 




        なんか、急にお茶が渋くなった。




 単に、来んなって、言われた方が楽な気がしたよ。 なんで、そんな回りくどい方法取るかねぇ…… その答えをさ、アスカーナが教えてくれた。





「クロエ様は、ミハエル殿下の婚約者様です。 舞踏会、夜会、などの、公式な社交の場には、クロエ様をエスコートする義務が有ります。 なにも対策せず、歓迎舞踏会を実施した場合、去年【受付】をされた、クロエ様は、” 昨年の慰労を兼ねて ” という、理由から、出席は確定しております。 さらに……」





 冷めつつあるお茶を飲みつつ、アスカーナ続ける。





「昨年同様、グレモリー様が国賓待遇になる可能性は高く、その場合、クロエ様と殿下が、饗応役となり、ずっと一緒に行動される事と相成ります。 推測ですが……エリーゼ様が嫌がられた…… または、エリーゼ様と、ミハエル殿下が共謀された…… そう、思います」





 はぁぁ……そんな裏も考えられるね。 わたしも、思い当たってた。 そんで、私の排除目的で、高位貴族と、低位貴族 及び、庶民階層に分けたんだ。 そんで、高位貴族の三分の二の決議を突きつけて、不参加を強いるってこと? 馬鹿じゃない? 云われなくても、行きたくねぇよ。 あぁ、くそ、なんかイライラして来た。





「クロエ様…… 多分、ご依頼は来ると思います。 また、『学生会執行委員の依頼』 を、持ち出して、命令して来ると思われます。 二つの歓迎会になりますね……」





 えぇっと、そうだね。 どうせ、出るつもりなかったし、なんか理由考えとこ! そんで多分、振られる、” お仕事 ” には、事務方の力、最大限に借りよう。 あの方達だったら、きっと大丈夫。 去年の事もあるしね。 


 なんか、後味悪いね…… ちょっと、考え込んじゃったよ。 それでも、まぁ、楽しい御茶会だった。 また、御茶しようね。 グレモリー様、なんか申し訳なさそうにしてたけど、気にする事無いよ。 だって、ほら……




          私、嫌われ者だもの!!




 ちょっと経ってから、再度、【 モーフ 】を掛けたグレモリー様と、アスカーナが、お部屋に帰られた。 マリーと二人残って、顔を見合わせてたの。 ほら、また、マリー涙目になってるよ。 大丈夫だよ。 こんなの、平気だから。 それに、反対に、あの人達から離れられて、清々する感じ? だからね、泣かないで、お願い。 





「わたくし…… 悔しいの…… こんな酷い事をされて居るクロエ様に、なにもしてあげられない……」


「お気持ちだけで、嬉しいわ」


「そ、そんな……」


「もともと、わたくし、出席するつもりも御座いませんでしたし…… なにか、良い理由が無いモノかと、思っておりましたの。 お手伝いは致しますが、当日、なにか…… 回避できる理由が出来ないものかと思っておりました」


「クロエ様……」


「だから、お気になさらないで、マリー様」





 ウインクして、ニッコリ笑っといた。 なんか、マリーの前だと、色んな表情が出来るよね。 ホント。 友達って有難いね。 お礼を言って、マリーのお部屋を辞したの。 使わせてくれてありがとう。 マリー、 鍛錬サボっちゃダメよ♪





 **********





 御休み明け…… 人事局のお部屋に行ったのよ。 係の人にお会いしたのよ。 うん、次の課題を貰いにね。 そしたらさ、なんか、滅茶苦茶、苦い顔されてたの。




「シュバルツハント……すまない。 会議が紛糾した」


「はっ? どういった意味でしょうか?」


「各寮より出た案件のすり合わせをしたのだが…… どれも、大きな案件でな…… どれを主にするかで、揉めた」


「あの……なにが、起こっているのですか?」


「シュバルツハントにやらせてみたい案件が……と云うより、何年も膠着している案件が複数有るのだ。 この際、それを遣って貰おうと、各寮其々が動いた……動いた結果……まぁ、なんだ、収拾がつかなくなった」


「と、言いますと? もしかして、それまで、各寮で極秘扱いになっていた、他寮への介入とか、干渉とかが明るみに出たのでしょうか?」


「よく見える……まさしくな。 一部、殴り合いになった…… いやはや、大人げない……」




 よく見ると、係官様の目の周りが少し青い……こぶしでする、肉体言語で、説得されたのですね…… 相手は……騎士団の方々かしら…… お疲れ様です。 でも、私の課題は、どうなるのでしょうか?




「大型案件三件まで、絞りつつある…… もう少し、待っていて欲しい。 そうだな……新入生歓迎舞踏会が終わる頃には……すり合わせが終わる」


「……あい分かりました。 お待ち申し上げます」


「うむ。 すまぬ」


「それでは……ごきげんよう」




 しょんぼりだよ…… せっかく、このイライラ、お仕事にぶつけようと、思ってたのに!! でね、トボトボ、お部屋へ帰ろうとしてたのよ…… そん時ね、ほんと、偶然なんだけど、逢っちゃったのよ。 一番会いたくない人に……


 出たよ…… ミハエル殿下と、その金魚のフン達


 あからさまに、蔑んだ目を投げかけて来たよ。





「クロエか。 丁度いい時に逢った。 落ちこぼれて、教室にも入れて貰えないお前に、仕事をやろう。 ” 学生会執行委員の依頼 ” だ。 来たる新入生歓迎舞踏会の準備だ。 詳細は、事務官に伝えてある。 去年のように、簡単な ” 受付 ” とは、違うぞ! まぁ、張り切って、いい所を見せてくれ。 まぁ、去年は、お前の名を使って、色々としたようだが、今年は全責任を取ってもらうぞ! よいな!」





 もうね、溜息しか出ないよ…… 後ろに控えていた、金魚のフン達……みんな、冷たい目をしとるね。 どっから、その認識が出て来るのか…… 聞いてみたいよ。 



      聞かないけど。



 まぁ、去年は、全部私に ” 苦情 ” を、持って来させて、事務方の人に文句を付けさせなかったからね。 その事で、色々と敵作っちゃったしね。 今年は、本格的に、” 詰め腹切らせよう ” と、してるんだね。 判ったよ。 やってやるよ。





「御意に。 事務方のお手伝いをいたします。 幸い、現在、暇な(案件が確定しない)ので、時間はあります。 ご希望に添える様、努力いたしますわ」





 ニッコリ、「氷の微笑」、炸裂させといた。 なんか、引いてた。 うん、どこまでも、下がっていいよ。 ちょっと、イライラが亢進した。 決めた、まとめて潰す。 そんで、新入生には、楽しんでもらう。 見てろよ!!






 **********






 そう命令を受けたから、早速、事務方の部屋に行ったの。 ヤな予感したしね。 うん、修羅場ってるね。 事務長、私を見て、ホッとしてた。 出来るだけの事をしようとしてたのは判る。 でも、まさか、舞踏会を分けるなんて思ってなかったから、半分、壊れとるね。




「事務長様。 良き案が御座います。 お任せいただけますか?」




 今度は、ニッコリ笑うのよ。 いい感じの笑顔でね。 




         縋りつかれた。




 なに、簡単な事。 ほら、高位貴族だけの舞踏会の開催を念頭に置けばいいのよ。 そんで、グレモリー様が国賓待遇。 だったら、ほら、良い所あるでしょ? それに、よい組織が。 完全に対応してもらえるわ。 だってね、 




 ハンダイ龍王国、ハンダイ王家の第二王太子ミハエル殿下が主催する、『国賓の迎賓舞踏会(新入生歓迎舞踏会)』よ? 判るわよね、事務長。 




 そう、侍従長(薄ら禿げ)呼び出して! 今直ぐ!!




 学院長経由で、侍従長(薄ら禿げ)呼び出して貰ったのよ。 うん、学院長同席でね。 だって、事は、『国賓の迎賓舞踏会(新入生歓迎舞踏会)』だもの、対応は国家レベルよね♪  だから、本職に来てもらった。 そんで、ミハエル殿下の要望をお伝えしたのよ。


 うん、無茶苦茶な奴ね。 『使えるモノは何でも使って良い』って、ミハエル殿下の要望書にも書いてあるもの。 だって、要望されてる対応が、王室舞踏会と同等か、それよりも上なんだもの。 王室舞踏会以上の権威の有る舞踏会は無いよね。 だから、丸投げするの、国家レベルの組織にね。


 冷たい笑みを侍従長(薄ら禿げ)に、差出してあげた。 




「侍従長様、此れだけの要望は、もはや学院での舞踏会の範疇を越えます。 よって、この度の高位貴族様方の新入生歓迎舞踏会は、ハンダイ王家主催とさせて頂きとう御座います。 なにか、不都合な点は、御座いましょうか?」


「……あまりにも……」


「何で御座いましょうか? 恐れ多くもミハエル殿下の御意思で御座います」


「……それにしても……」


「国賓待遇をお求めになって居られます。 さらに、ミルブール国教会の最高指導者であらせられます、教皇ボディウス猊下の御臨席も「 ご要望 」の中に有ります。 もはや、国事行為です。 学院ではお受けいたしかねます」


「……時間が……」


「あら、わたくしに、招待状の内容が変更になったのを、” 直前まで ” お知らせ下さらなかった方とは、思えぬ発言ですわね。 まだ、十日以上御座いましてよ?」




 退路は、断った。 逃がさんよ。 押し付ける。 絶対にだ!! 侍従長(薄ら禿げ)、私は、怒っているんだ。 根に持ってるんだよ! 





      御託は、いいから、やれよ。 





 強い視線で、睨んどいた。 そうだよ、要望されてる、こんなデカい舞踏会、学院の予算じゃ無理さ。 馬鹿でも判る。 だから、王家の予算で遣って貰う。 グダグダ言うな。 なにせ、国賓待遇なんだ。 問題はないさ。 いいな、やるんだぞ!!




「では、侍従長様、宜しくお願い申し上げます。 殿下からの追加の要望は、直接そちらにお回しいたしますわ。 宜しいですわね。」


「いや……あの……」


「宜しいですわね」


「……はい」


「では、ごきげんようアバヨ!」




 決まった。 押し付けた。 後は、そっちでやれ。 名簿だのなんだの、勝手にやればいい。 ちゃんと期限切ってやるんだぞ。 こっちは、こっちでやるからな。  ニッコリと、もう一回にこやかに、冷たい笑顔を差し出してあげたの。 いつも、我儘に振り回されて、それを他人に振ってるんだろ? たまには、振り回されろ! 自分の主人のケツ拭くのも、お前らの仕事だ! いつまでも、甘ったれんな! じゃぁな!


 席を立ち、学院長にも軽く頭を下げておく。 なんか、苦笑いしてたね。 そうさ、今回に限って言えば、学院長は私の味方だよ。 ミハエル殿下の我儘は、もう、暴走の域だからね。 そんで、今はそれを抑えてくれた、フランツ殿下も居ないからね。 流石に、学院長も国王陛下に直訴する訳にいかないらしいしね。 


 まぁ、そんな感じで、半分の支度は終わった。 と、云うか押し付けた。 残り半分。 低位貴族と、庶民階層の人達用の歓迎舞踏会。 これは、簡単。 例年通りでいいんだ。 ただね、挨拶する人が居ないのよ。 でね、考えたの。 誰か、” いい人 ” いないかなって…… 




     居たね。 一組。 バッチリな人達が。




 私は、ギルバート様が居る時間を狙って、マリーのサロンに向かったのよ。 ギルバート様の訪問時間は…… うん、ヴェルが調べ尽くして呉れてたから、知ってた。



     だって、ホントは、邪魔したくないじゃん♪



 先触れ出して、逃げられない内に、お邪魔したの。 ボリスさんが苦笑いしてた。 いいの、私、悪者だからね。 二ヤッて、笑っといた。 同じ感じの、もっと上品な笑みを返された。 頼もしいね。 ヴェル、見習いなさいよ! 






「クロエです。  マリー様! ギルバート様! お忙しい所、申し訳ございません! 至急のお願いがあって参りましたぁ!!!」








ブックマーク、評価、感想 有難うございます。

とっても、嬉しくて、小躍りしています。


―――――


四年目の歓迎舞踏会の準備です。 とことんヤラレますが、反撃しました。


クロエ、確実に強くなってます。 見限りました。


どこまで、強くなるの?



また、明晩、お逢いしましょう!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ