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ヌーヴォー・アヴェニール   作者: 龍槍 椀
この ” 矜持 ” に賭けて
81/111

クロエ 「例のアレ」の処置に困り、マーガレットに相談する

 




 アスカーナとお話してから、暫くして、グレモリー様の伝言を彼女から貰ったの。 そうね、五日後のお休みの日が都合がいいらしいの。 了承したわ。 そんで、アスカーナに連絡を取って、その旨を伝えて貰って、私は、マリーにサロンの使用を許可してもらったの。





「許可だなんて…… いつでも使ってもらって、宜しいのですよ?」





 優しくそう言われたわよ。 でもね、サロンはマリーのモノだし…… そんで、マリーも一緒に居て貰いたいもの…… いいかなぁ……





「ご一緒させて頂けるなら、喜んで…… 今回も、なにか大事なお話が有りますの?」


「はい、マリー様にも、グレモリー様にも必要な事をお知らせしなくてはなりませんので」


「判っておりますわ…… クロエ様が、そのように真剣な目をなされるときは、とても大事なお話が有る時。 わたくし、理解いたしましたのよ。 天龍様とのお約束が、どの様な物かも。 そして、クロエ様が成そうとされている事も。 わたくしが出来る事が有るのなら……すべてを受け入れております」





 そうだね……マリーも覚悟を求められたんだもんね。 そんで、覚悟したと。 全ては、この国の民を、世界の悪意から護る為だもんね…… うん、そうだね。




「マリー様…… 気負わずに、自然にしましょう。 マリー様ならば、出来ます。 マリー様のお優しいお人柄ならば、激情を秘めた御心ならば、きっと大丈夫です。 クロエ、いつでも、御側に控えますから」


「クロエ様……」




 手を取り合って、互いに目を見詰め合って、頷いたの。 私のこの ” 鷹の目 ” の強い視線を、マリーは事も無げに受け止める。 だから、彼女は余人に代えがたいのよ…… 何のてらいも無い、彼女の微笑み…… 護んなきゃね。


 了承はとった、同席もしてくれる。 五日後…… うん、彼女達に鍛錬を教える。 ついでに、魔力の練り方も…… 天龍様や、地龍様の穢れを祓える、唯一の方法だもんね。 そして、私たちの消耗を抑える為の鍛錬だもんね…… きちんと教えないとね。






 ―――――






 人事局の人のいる部屋へは、日参してるのだけど…… まぁ、なんだ、ちょっと間が開いた。 各寮の担当者さん達が、次の課題を考えてるんだって…… 集まって。 なんだ? どういう事? で、質問してみた。





「案件を片付ける速さと、実績が想像を上回っております。 だから、私は言ったのです。 そう易々と案件を回さぬようにと。 今更、彼等は事の重大さに気が付いております。 それで、連絡会議なる物を作って、シュバルツハント様にしてもらう案件の吟味を始めました。 多分……暫くかかるでしょう。 これまで、バラバラで出されていた要望が、きちんと擦りあわされて、来ると思いますので……」


「暫く……とは?」


「そうですね、次回の公休日明けまでは ……ですか」


「判りました…… では、それまで」


「ええ、臨時のお休みです。 ゆっくりとしてください」


「有難うございます。 では、休み明けに…… ごきげんよう」





 うん、ここでも、お休み貰っちゃったよ……でも、まぁ、次の実習は、たぶん、厄介な物になるかな? まぁ、いつも通り、全力でしますけど! 





 **********





 時間余っちゃったから、魔法騎士団の駐屯地に行ったのよ。ほれ、「例のアレ」、そろそろ、解析できたと思うし……


 でね、筆頭魔法騎士さんとお逢いしたの。 お久しぶり、夏休みの間、グレモリー様とか、ミハエル殿下に引きずり回されたんでしょ? 聞いたわ。 お疲れ様。





「シュバルツハント……来たか。 何故、君が一緒に、” 御接待 ” に、来ないか…… 理解できたよ、この夏にな」


「ええっと、どういった意味ででしょうか?」


「護衛の間中、ミハエル殿下から、君の名は一切出なかった。 グレモリー様が、君の話題を、出された時も、エリーゼ様が、”下賤な者の話題は、ミハエル殿下のお気に触りますわ” とかなんとか言って、切り上げられていた。 ……なんなんだ、あれは?」


「その事で御座いますか。 ミハエル殿下におかれましては、わたくしが、” 婚約者で有る ” という『事実』すら、お気に召さないご様子でしたでしょ? よほど、なにか、気に障られることが有るのか、誰かにそう吹き込まれているか……そういった事でしょう。 でも…… その事については、わたくしは、気にいたしませんわ」


「何故だ? と、聞きたいが……」


「理由は、……ただ、『 気にする必要も無い 』……と、言う事でしょうか」


「……そうか」 





 ニッコリと、” 冷ややかな頬笑み ” を、口元に浮かべるの。 これで、判ると思うわ。 なんか、とても、悪し様に罵られているらしい・・・から、それに、乗っかってるの。 だって、絡みたくないじゃん。 ほんと、今になって、自分の判断は、間違ってなかったって思うよ。 だって、絡んでたら、否が応でも、あの・・教皇猊下と絡んでたわ…… 嫌だもの、穢されるの。




「ところで、” 例のアレ ” の、解析は如何でしょうか?」


「あぁ…… 担当の者が頭を抱えていた。 ちょっと、顔を出してやって呉れ。 相当、悩んでいる。 解析は終わったと聞いているが……」


「はい、有難うございます。 では、行ってまいります」





 そんで、あの実験室に向かったのよ。 中に、魔法研究員の筆頭が居られたの。 でね、机の上には、前に展開した時と全く変わらずに、私の傀儡の核が、魔方陣を展開させて置いてあったの。





「ごきげんよう…… 如何でしたでしょうか?」


「シュバルツハント……か。 あぁ、解析は終わった。 研究員の何人か……いや、俺以外は寝込んでいると言えば、状況はわかるな」


「手を突っ込まれたのですね? だから、お気を付けてと……」


「成果を焦った奴がな……それを助けるために、二人ほど…… まぁ、今は安定している。 と、思う」


「魔法療法士さまには?」


「すでに…… シュバルツハントが言った通り、魂の汚染が起こっていたと。 今も浄化していると。 少し…… いや、大分かかるが、復帰は可能だ。 あいつがその気ならばな」


「闇の深淵を覗き込んだ方ですから、黒魔法の解析を担当されなければ、宜しいかと」


「うむ、奴の専攻は白魔法と聖属性の魔法だ…… 気を付けるよ。 そんな奴が、防壁を立てまくって手を突っ込んだにも関わらずだ。 強力にすぎるな」


「ええ、行き着いた先は…… 教皇猊下ですね」


「あぁ…… そうだ。 詳細な報告を、上にあげたくても、今の状況ではな…… こっちの身が危ない」


「よき判断です。 では、これは、回収しておきますね」


「そうしてくれると、有難い」





 展開された魔方陣を収納して、傀儡の核の隔離処置を施した。 もう、手に持っても、影響は無い筈。 うん、確認した。 でも、これ、このまま傀儡にしたら…… どうなるんだろう? ちょっと、興味湧くよね。 私に繋がるんだし…… わたし、いきなり汚染されるのかな…… それは、ちょっと嫌かな……そうだ、マーガレットに相談してみよう!





「有難うございました。解析結果の報告書は頂けますの?」


「極秘文書として、筆頭魔法騎士には渡した。 俺には手に負えない。 コレは写しだ…… 受け取ってくれると、有難い。 今の我らの出来得る限りだ」


「有り難く頂戴いたします。 極秘と言う事なので、誰にも言いません」


「うむ…… そうだな。 頼む」





 はいはい、それは、もう、決して。 こんな物が公になれば、それこそ大騒動。 何処に影響がでるか、判ったモノでは御座いませんし。 ……これを利用したい方ならば、この龍王国にも、沢山おられるでしょうね。 では、秘匿、秘匿っと!





「それでは、ごきげんよう!」





 踵を返す私に、魔法研究員筆頭が声を掛けられた。





「シュバルツハント! なにか有ったら、俺達に頼れ! 全面的に協力する、君は…… 《 至宝 》だ」





 首だけを彼に向けて、ニッコリと笑っといた。 変な綽名あだな、また、つけられそうだよ。 薄暗い実験室の中にいる魔法研究員筆頭の目だけが、なんか、とっても輝いてたよ。 龍王国随一って言われている、魔法騎士団の魔法研究員のそれも筆頭に、そんな事言われたら……こそばゆいよ……




 まぁ、なんかあったら…… ね。  さてと、マーガレットの処に行くか……





 ―――――





 マーガレットの部屋に行って、ノック ノック…… 居ねぇ…… んじゃ、研究室の方か……先触れ出しとくんだった…… ヴェルにはちょっと調べもの、お願いしたし…… 今は一人で、ウロウロだもんね。 


 学院の植物園の奥の部屋。 マーガレットの居城。 だよね~。 いたよ~。 この子、ほとんど、此処にいるって、言ってたしね。 制服にもいっつもなんかの  ” シミ ” 付けとるしね…… ほんと、研究熱心だ事! まぁ、ろくでもないもの、研究してんだろうけどね……


 あれ? 珍しい。  研究室に二つあるよ、人の影。 一つは、紛れもなく、彼女。 もう一つ……小柄な影があるね。 実験台の上の機器を二人して覗き込んどる…… また、ヤベー物生成しとるんじゃないか? まぁいいや、被った ” 猫 ” 、降ろさずに、対応だね。


 ノック ノック♪





「マーガレット様、いらっしゃいますか? クロエです」





 知らない女の子と一緒に、ビクッ!って、体、ユラしとる。 あははは、おもしれ~~! マーガレットが首だけ廻して、私を見てるの。 まぁ、非礼は承知の上よ。 先触れも出さずに、此処に来ちゃったんだしね。


 眼をパチクリしてる、マーガレットに、” 何か? ” 的な視線を投げてみた。 うん、ビックリしてる原因は知ってる。 彼女、実験室の周りに接近注意用の魔法糸張り巡らしてるもんね。 うん、ヤバいものバッカリ扱ってるから、警戒は必要っと! 



 でもね、それ、割と簡単に無効化出来るよ? 魔力を同調させればね。 そんで、体に魔力を纏うの。 これ、ヴェルに教えて貰ったというか、見て盗んだ方法。 


 以前ね、ヴェルが体に魔力纏ってんなぁ~って思ってたら、魔法糸、”お部屋の周り” に、張り巡らしてた。 そんで、それが、外部警戒用だって理解したの。 暗部の人達、みんな、ヴェルと同じようにしてたから、この警戒に引っかかるのは、それ以外の人達。 お部屋に出入りする人の管理用だって、気が付いたのよ。


 で、気付いたの、私だけ。 エルも、ラージェも、ミーナも知らなかったらしい。 ちょこっと悪戯もした。 ヴェルと同じように同調した魔力を纏って、お部屋に戻って、お茶してたの。 ヴェルには別件頼んでた日ね。 帰って来たヴェルが、驚いてた。 遠隔地からでも、お部屋に侵入する者は判るらしかったし、床の糸に触れれば、誰か判るし、もし、不審人物だったら、扉は決して開かない様に、調整してあるんだってね。 


 で、全く何の反応も無いのに、私が居たと。 で、お茶飲んでると。 お疲れ様でしたって、お茶勧めてると。 狼狽した、ヴェルの顔思い出したら、笑えてきた…… 



 同じ警戒だもの……糸をチョイと調べて、魔力同調させたら、無いのと一緒だよ。 マーガレット、警戒は、一種類じゃなくて、複合しないと!




「ク、クロエ……ど、どうして」


「あら、何時お邪魔しても、宜しくてよ!、と、お言葉頂いておりましたよ、マーガレット様?」


「い、いや、そうなんだけど……私が引いた警戒は?」


「あら……あれでは、魔法糸の無駄遣いですわよ?」


「そういう問題じゃ…… み、見直そう……」


「何をしておいでですか? 少し、ご相談が……」




 そう言った時に、もう一人の少女が、声を上げたの。 マントの色が同じだから、同学年ね。 魔術科の子だろうけど…… 誰だろう? 




「あの…… マーガレット様………… こ、此方は? それと…… ダメでした………… 核の生成が出来ませんでした」




 なんか、二人でやってたんだね。 ふーん、綺麗な色の瞳だね。 アッシュグレーの髪を短く切りそろえて、その下から除く視線は、やたらと、強いね。 あぁ~この子、銀製の渦巻きの記章があるね。 魔法科特進教室の学生さんだ。 取り敢えず、ご挨拶しとこう。 なんか、実験の邪魔しちゃったみたいだし……




「クロエ=カタリナ=セシル=シュバルツハント と、申します。 どうぞ、よしなに」




 その子、固まった。 あぁ~ 何だかなぁ~ どうしようか? マーガレットに聞いてみようか? そんで、マーガレットに視線を移す。 マーガレット、なんか茫然としとった。




「あの? どうされましたの?」


「い、いや…… おい、ミルヒー ……おまえ、知り合いだって」


「………………」




 ミルヒー? 誰だろう? でも、なんかその名前…… すこ~し、覚えがあるような…… それも、この魔術科の教室が有る、この区画で…… ん~~ ん~~~~ ん~~~~~




            チン!





「エックスさん? もしかしたら、ミルヒー=エックスさん? 一年生の時に、魔術科の廊下で、三人組の男子生徒に囲まれて、困っていた」





 沈黙を守って、私を見詰めていた、その子こと、ミルヒー、その綺麗な目にみるみる涙が浮かんできた。 そんで、白かったお肌が、見る間に真っ赤になって来て…………



      ポロッ って 涙が頬を伝い落ちたの。



 えぇ~~、なんで、泣かれるの?  ちょっと、待って。 もう、何が何だか…… 落ち着こうよ。 うんそうだね、落ち着こう。 取り敢えず、こっちに座るよ。 いいよね、マーガレット! 




 ―――――




 話を伺ってね…… ちょっと、呆れてしまった。 この子、もとい、ミルヒーさん、確かに、一年生の時の ” いじめられてた子 ” だったよ。 うん、ゴメン、名前聞くまで、思い出せなかった。 でもね、幾らなんでも、私の事を、『お姉様』って…… 同学年だよ? 


 何でも、庶民階層の出身者で、お年は今年19歳に成られるんだって。 でも、見た目は……うん、変わんないね。 そんでも、精霊教会で魔力が大きいって事が判明して、勉強して、学院に入ったのが、四年前。 つう事は……あんとき、今の私と同じ十五歳だって事かぁ…… 


 で、後ろ盾もなにも無くて、教会の偉いさんが、魔法科の教授の ウランフ=ボリス=エイグストス伯爵に身柄の保障をお願いしたんだと。 そんで、魔法科特進教室の学生さんになったんだと…… でも、やっぱり、庶民階層だから、お貴族様に色々とイジコジされてたんだと……


 ふむ…… で、そんな、イジコジされてた所を、私が、一喝して、止めたんだと…… それから、何か言われるたんびに、 ”……氷の令嬢に言いつけますよ?” って、言ってたんだって。 あ~~~。 そっかぁ~~~~ 




              うん、不許可である!




「ごべんなざい~~」




 なんか、鼻水とか涙とか、色んなモノでぐちゃぐちゃに成りながら、謝って来てる。 まぁ…………ね。 ちょっと、呆然としちゃったけど……まぁ、判らんでもないか……





「ミルヒー様? 此れからは、ダメよ? わたくしだって、知らない処で、名前を使われるのは……ちょっと……」


「ずみばぜんんでじだ~~」





 マーガレットも、ちょっと呆れ顔。 そりゃ、知り合いだと思うよね。 でも、優秀なんでしょ、彼女? 今日も一緒に実験してたんでしょ? 





「うん、まぁ……ね。 優秀は優秀なんだよ。 魔力も豊富だし、制御も綺麗に出来てる。 ただ、ちょっと引っ込み思案で…… 上手くできない処なんかを、聞きに来てた。 ほら、特進教室の人達って、めっちゃプライド高いじゃん。 頑張ってんだけどね…… お友達が居ないって言うか……なんていうか……」


「それで、マーガレットが?」


「うん、ほら、わたしも、クロエと友達だって、知れ渡ってるからね。 吹聴はしてないよ! 知られてるだけだから!!」


「そうでしょうね。 だから、他の方が、貴女にお願いしたと」


「そうだよ! お願いされたんだよ! 教授にね!!」





 ふ~ん、そっか。 ミルヒー、何時までも、グズグズ泣いてないで、私を見てね。 そんで、答えてね。





「ミルヒーさん。 貴女は、この学院で何を学んで何を得ましたか? 得た物を使って、何がしたいのですか?」





 やっと、泣き止んだよ…… 先ずポカァ~ンと、私を見た後、グッと口を引き結び言ったわ、彼女。





「い、色んな魔法を覚えました。…… きゅ、宮廷…… 宮廷魔術師になる事はありません。 市井に戻って、精霊教会で、人の役に立ちたいと思っています。 ……わ、わたし、ち、治療魔術が、使えますから、精霊教会の、孤児院の子供達に……なにか、あったら……治療してあげたいと…… 私が居たころ……みんな、お医者様にすら……掛れなかったから。 何人も、遠い時の輪の接する所に送り出したから……」





 にっこりと、笑ったよ。 その答えにね。 うん、見えた。 確かに、ミルヒーの覚悟が、見えた。 大事な人だ。 よし、わかった。 歓迎するよ。 貴女の想いは、一つの在り方だと思うよ。 龍王国の民の、一番、幸薄い人に差し伸べる、暖かな手。 その手の、温もりは、その人達の希望に繋がるからね。 いいよ、うん、とってもいい。 





「ミルヒーさん、わたくしの名前を勝手に使わないと約束してくれるなら、お友達になりましょう。 そうね、中庭のお茶席にでも、何時でもいいので来てください。 もしくは……、マーガレット様に、マリー様のサロンに連れて来てもらってもいいのよ? それで、いい?」





 そっと、差し出した手に、ミルヒーは戸惑ったね。 マーガレットが、ニヤニヤして、見とるな。 ん? ミルヒーの背中を押しよったよ。 ミルヒー、私の手を、両手で握りしめた。 また、両目からポロポロ涙をこぼしてる。





「ど、どうぞ、どうぞ…………よ、宜しくお願いします」





 うん、また一人、お友達が出来た。 なんか、嬉しいね。 頑張って、足掻いている人は、好きよ。 その能力を何に使うか決めてる人もね。 大変だと思うけど、ちゃんと、道は有るんだ。 迷わず、行こう。 素敵な友達が出来たよ。 ……ところで、なんの実験してたの?





「あぁ……うん…… 傀儡の核作ってた…… 私も興味あったんだけど…… 上手く行かなくてね」





 ふーん、そうなんだ。 で、机の上を見てみると…… ちょこっと材料足んないね。 これじゃぁ、生成は無理だよ。 それに、全部一緒に放り込んでるでしょ…… 段階、踏まなきゃ。 でね、教えてあげたのよ。 制御とか、魔力の量とかじゃなくて、生成手順をね。 ほら、あんまり大っぴらに出来ない魔法だから、参考書だって、詳細には書かないのよね、この手の魔法は。 


 知識が、ちょっと不足気味。 どっちの傀儡作るの?





「どっちって?」


「ミルヒーさんか、マーガレット様、” どちらの ”、という意味ですが?」


「え、なんで?」


「対象者の御髪が必要ですよ? 割と沢山」


「えっ? 書いてないよ?」


「あ~~、その本、不完全ですよ。 それじゃぁ、出来ませんよ。 いくら強大な魔術師でもねぇ ……材料が足りないんですもの」





 なんか、二人とも、ビックリしてたよ。 仕方ないから、自分の髪の毛をつかったの。 核を作るだけだから、毛先を少し、切り落としたの。 まぁ、枝毛を切る感じでね…… あとで、ミーナに怒られるかなぁ……


 ガラス瓶を貸して貰って、水と、アルコールと、特別な薬草を放り込んだの。 其処に、自分の切った髪を入れて、よく混ぜてから、魔方陣を展開。 呪文を唱えると、髪が溶けて、薄い蜂蜜色の液体になるのよ。 うん、コレコレ! こうでなくっちゃね。 そんでね、此処からが、私のオリジナル、爪を切って、指先を針でつついて、血と爪を、それに加えたの…… ショワショワ云って、溶けていったわ。


 そんでさ、準備されてた、魔石をね、ポインって、放り込んだのよ。 魔石がね、ドンドン、その液体を吸って、薄い蜂蜜色に変わっていくの。 あんまり大きな魔石じゃ無かったけど、ちょうど、いい感じに全部を吸い込んだわ。


 コロンって、作業台の上に出したのよね。





「はい、出来上がり。 傀儡の核だよ?」


「す、スゲー!! 何度やっても、出来なかったんだ。 手順と、材料か……」


「ほら、マーガレットも、特に危険な毒物の調合のレシピ、敢えて、大事な所、ぼやかして書くでしょ? あれと、同じよ。 大体、今、傀儡を作ってるのって、高位貴族様のお抱えの人達バッカリでしょ? 返しの風がきつくって、軍事部門じゃ、あんまり使わないし。 ゴーレムさんの方が使い勝手良いし……ねぇ あっ、でも、これ、私の髪の毛使ったから、あげられないよ? 作り方判ったんだったら、自分で作ってね」


「あ、あの……それで、作った核から、実際の傀儡を作る時なんですが……」


「さっき、マーガレットにチラッと、見せて貰った本に載ってた通りよ。 其処は、大丈夫みたいね。 人以外の動物の血肉と、髪の毛が必要。 よく馴染ませてから、魔方陣展開、呪文詠唱。 これでいけるわ」


「そうなんですね。 有難うございます。 勉強になりました」





 ミルヒーって…… とっても素直だ。 どこぞの誰かとは、大違いだ。 マーガレット、今、目の前で作った傀儡の核、クレクレして来る。 おまえ、大馬鹿者なんだろ。 これは、渡せないよ!





「どうしても? 絶対? ダメなの?」


「ええ、ダメ。 絶対ダメ。 マーガレットが、これ使って、傀儡を作ったら、それこそ、法律違反だよ…… ダメったらダメ!」

 

「う~ん、そっか…… 研究素材に欲しかった……」


「だったら、自分で作ったら、いいじゃない!」


「……なんか、ヤダ。 クロエのが欲しい」





 こ、こいつは! でも、絶対やんねぇ! そうそう、此処に来た目的忘れる所だった。 まぁ、同じ様なものだけどね。 汚染された傀儡の核、どうしよっかって相談。 なんか、無いかなぁ……って思ってね。 そんで、マーガレットに聞こうと思ってたんだった。




     で、「例のアレ」見せた。 めっちゃ食いついた。




 それから、三人で、あーでも無い、こーでも無いって、いろいろ話し合った。 最後は、やっぱりクレクレされたよ。 研究熱心なのはいいけど、あんたの場合、危ないったら、ありゃしない。 そうそう、いつの間にか、素で喋ってた。 ミルヒーなんか、驚いてたけど…… ぜんぶ、マーガレットのせいって事で!!!



            あぁ~疲れた。



     明日から、ちょっと、此処に通う事になったよ。



         色々と、実験もしたいって



         でね、傀儡も立てるって



         その準備もするって……



        そんで、ミルヒーも来るって……





            いいけど





        マリーのサロンに行くまでに




           終わるかなぁ……





ブックマーク、評価、感想誠に有難うございます。

本日、初めて、レビューなるものを頂きました。


なんか、本当に、涙が出るくらい、嬉しかったです。


皆様のお陰です。 モチベーションが高まる度に、物語が深く紡がれていきます。

本当に、本当に、有難うございます。


―――――


クロエ、四年目。 インターンとして、色んな所に顔を出してます。

で、色んな人と、モノと、出逢います。


為すべきことも、山積みです。


頑張っていきましょう!


また、明晩、お逢いしましょう!!

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