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ヌーヴォー・アヴェニール   作者: 龍槍 椀
この ” 矜持 ” に賭けて
80/111

クロエ 四年目の初めに、貰った物に困惑する。

 


 良い 【卒業式】 だったわね。 



           でね。



 その五日後に、新入生が学院前の広場に集まってるのよ。 そうよ、入学式なの。 あぁぁぁ…… 在校生がみんな出る事に成ってるからね。 新しい制服の、ピッカピカの新入生を見てたのよ。 この中で、騎士団団長になる人もいれば、宮廷魔術師にだってなれる人もいるんだろうね……




        頑張って欲しいね。




 少なくとも、お貴族様達のように、地位と爵位に胡坐かいて、ふんぞり返って生きてるだけ、みたいな人には、ならないでほしいなぁ…… キラキラした瞳をみながら、そんな事思ってた。 と、云うのも、学院長の横っちょで、グレモリー様とエリーゼ様の間に挟まれた、ミハエル殿下が、ニヨニヨしてるんだよ……


 鼻の下伸ばしまくってるのよね。 もうね……あれは、無いよね。  見てた、こっちの方が、イラっとくるのよね。 思わず、壇上に上がって、拳で語り合いたくなったね。 もちろん、しないよ。 でもねぇ……そんな気になっちゃうのよ…… はぁ……


 でっかい溜息ついてたら、エルに睨まれた。 そうね、ゴメン。 新入生の前だもんね。 わたくしとした事が、おほほほほ…… ダメだ、自分すら誤魔化せない……




 そんで、恙なく入学式が終わって、さあ、教室に向かうぞっ! って思ってたら、スルスルって学長が近くに寄って来た。 オヤジ、なんかの魔法でも使ってんのか? 足音が全くしないぞ? 気配だって薄いし…… あぁ、そういえば、この人、侍従長(薄ら禿げ)の縁者なんだったなぁ…… なんか、含む処でも、有るんかなぁ…… 



   いままで、そんなに絡んだ事、無かったんだけどなぁ……



 そんで、学長がね、私に笑いかけてんのよ。 至って、和やかな笑みなの。 不穏よねぇ。 私も、同じような笑みを浮かべて、見詰めてみたの。 変な空気が、私らの周りに流れてるね。 うん、ほら、他の生徒さん達、よけて、真空状態になってるよ…… 教室に行くために、流れてる人の波の中に、ぽっかりと開いた空間…… 


 いや、いたたまれないよね。





「あの、何か御用事でも?」


「シュバルツハント、ちょっと一緒に来て欲しい」


「あの、これから、教室に行くのですが??」


「あぁ、君は行かなくてもよい。 授業を受ける必要も無いしな。 先日、シュバルツハントは、” 飛び級判定 ” が、下された。 専用の部屋を設けた。 人事局の出張所と云ったところか。 まぁ、非常に特別(・・)な処置だよ。 今後、君はそこへ行くことになる」





 うわぁぁぁぁ。 完全に切り離された…… 学習内容をすっ飛ばして、六年次にするってだけなら判るけど、もう、これ、学生への対応じゃ無いよね…… 勘弁してください! 私、まだ、十五歳の王立魔法学院の生徒です!!! ここは、声を大にして言いたいよ。 でね、そのお部屋に向かう前に、一度、貴賓応接室に連れ込まれた。



        はい、連れ込まれました。



 貴賓応接室に、ものっそい ” 懐かしい人 ” が、居られたの。 お逢いしたかったんだ! マジで。 そう、其処には王弟、レオポルト様がいらっしゃったの。


 ほんと、お忙しい人でね、なかなか御姿を見られないのよ。 ここんとこ、ずっと龍王国の東側の領域を歩き回ってるのよ。 「勅命」でね。 その根拠が、” 天龍様のお言葉 ” なのよ。 間接的に私のお伝えした言葉…… ゴメン、王弟様。 でも、伝えないと、龍王国がヤバいのよ。 


 にこやかに笑っておいでだった。 隻腕で勇猛な騎士様…… その凛とした佇まいに、痺れるわね。 ゆっくりと、ガッツリ、カーテシーを決めた。 もう、これ以上膝、折れませんってくらい、折った。 制服のスカート摘み上げて、頭を深々と下げるの。





「クロエ、他人行儀だな。 いや、お前らしいか。 久しいな」


「レオポルト様。 御久しゅうございます。 日々の任務、大変では御座いましょうが、龍王国の民として、感謝申し上げます」


「うむ……そう言ってもらえると、疲れも吹っ飛ぶな。 また、頑張れそうな気がして来た」


「もったいのう御座います」





 豪華で、フワフワのソファを勧められたの。 オトナシク座った。 改めて見ると、大きな人だなぁ、って思う。 胸の厚みが尋常じゃ無いのよ。 きっと、戦斧とか、ハルバードとか、ぶん回してるね。 一分の隙も無くね。 





「学院での事、聞き及んでいる。 それにな、各寮からの誘いも、大変な事に成っているようだな」


「勿体なく。 わたくしのような非才なモノに、お目を掛けて頂き、有難く思っております」


「まぁ、お前ならそう云うだろう。 学長に聞いた、四年次の最初に各寮から誘いが来て、その調整をするために、人事局が動いたとな。 魔法騎士団もお前を手に入れたがっていると聞く」


「はい、過分なご評価を頂いております」


「うむ、実はな、私の部隊の参謀も、お前の噂をしておったのだ。 先んずれば人を制すと言うしな。 これを、お前につかわす。 受け取るがいい。 まぁ、個人的な ” 援助 ” だと、思ってくれていい」





 そう言って、レオポルト様は、従者の方に目配せをしたのよ。 中くらいの箱を持ってたの。  なんか、重そうね。 従者様は、箱をテーブルの上に置いたの。 レオポルト様が、目で開けてみろって言ってるのよ。 




「宜しいですか?」


「無論だ。 ささっ、早う。」




 箱の蓋を開けたのよ。 眼に飛び込んで来たのは、 薄緑色の布に深紅の縫い取りの、『 月に、二重の月桂樹の葉 』 の紋章。 紋章の右下に 黒い糸で縫い取った、” XIII ” の文字。  こ、これは……




「近衛騎士親衛隊に、新たな部隊を設立させてたのだ。 私の直下だ。 誰も間に入らない。 部隊名は、『近衛騎士親衛隊 第十三番隊』。 現在、近衛騎士親衛隊は、十二隊で編成されているが、遊撃隊として、一隊編成した。 まぁ、状況が、状況だけに、あっさり認められたがな。 リカルドにも、相談した。 十三番隊を組織するにあたって、現状認められる予算は、一人分のみだ」


「……あの……それでは……」


「クロエ、お前だけだ。 まぁ、お前が集合を掛ければ、直ぐに参集する連中も居るし、その配下もついてくるから、直ぐに、一個中隊くらいにはなるだろう?」


「い、いえ、そ、その……」




 ちょっと待ってくれよ! なんだよ、それって、何もかも飛び越して、いきなり近衛騎士親衛隊の隊長職に就けって、ことでしょ? 十五歳だよ、私。 人望も、経験も、何もかも無いのよ? 普通、その職に当たる人って、軍歴が20年以上あるような、えら~~~い、おじさまが、なるんでしょ? なんで、小娘の私が、そんな、滅茶苦茶「重い職位」に就けるのよ!!!


 レオポルト様、とっても優しい目をしながら、お話を始められた。




「わからんか?  ―――リカルドとも、話し合ったのだ。 今後、クロエの立場は、さらに難しくなる。 今でも、龍王国の内情を知り過ぎている感がある。 とても、一人には出来ない位にはな。 しかし、お前は特殊な立場に立たされている。 常に周囲に侍るようなモノ(軍事力)が何もない。 己の才覚だけで、対処せねばならない。 ……黒龍大公翁も何を考えているのやら」




 レオポルト様が、遠い目をされて、一旦、口を閉じられた。 何となく判った気がする。 要は、御守にしろって事だよね。 王弟様が、私の目を覗き込んで、口を開かれた。




「 ……なにかあった時、そうだ、なにか非常の事態が有った時。 一時的にでも、匿う場所が有れば、それも、王宮に近い所であればいいと、リカルドと話した。 中に割符も入っている。 それを見せれば、王城内どこでも入り放題だし、周囲も、ヘタな事は出来まい。 なにせ、それを見せられてもなお、敵意を出せば、内郭に居る騎士達全員が敵に回る。 そんな危険は冒さない筈だ……だから、受け取れ」




 もう……過保護だね。 このマント羽織って、割符を出しながら、レオポルト様よりの至急報です! って叫んだら、国王陛下の御側まで、辿り着けちゃうよ。 と言う事は、王城内はどこでも、いけちゃうって事ね。 つまり、逃走が楽になる。 だれも、要件を尋ねず、扉を開けてくれるって事。 うん、最強ね。




 でも……ホントにいいのかしら?




「な、頼むよ。 受け取ってくれ。 クロエが無茶するのは、目に見えて判っている。 僅か九歳の時の事だったな、私の手の中で、震えていたのは……。 もう、あんな気持ちになるのは、ゴメンなんだよ。 リカルドだって、同じ気持ちだ」




 そっか……あれから、もう六年たったんだねぇ…… うん、判った。 このマントに恥じない様にします。 爺様と父様の紋章を合わせたような紋章…… うん、大事にします。 





「判りました。 お気持ち、とても……痛いほどに判りました。 受け取ります。 そして、必要と思われる・・・・・・・場合までは、きちんと保管しておきます」


「うむ。 判ってくれたか。 よし、話は以上だ。 賢く使え」


「御意に」





 そう言って、王弟様は立ち上がると、颯爽と部屋を出て行かれた。 その後ろ姿に、深々と頭を下げたの。 ホントにもう…… 大好きですよ。 お気持ち、有難く頂戴いたします。





 **********





 まぁ、授業はね…… 教室にすら入れなくなりました。


 そんで、用意された部屋に行って、人事局の人とお話して、行く先と、お仕事の内容を教えて貰って…… そんで、行くの。 短期間の奴もあるし、長期間のもあるのよ。 並行して行うのもね。 仕事の内容は、多岐に渡るのよ。


 財務寮行って、昨年度分の支出明細と、領収書の突き合わせとか。 まぁ、魔法使ったら、一瞬で合致出来るけど…… そんで、合わないものとか、疑義の有るモノとかを、まとめて、報告書に書いて、提出。


 そうね、財務官の人、二か月かかると思って渡したらしいのよ、それを翌日報告に行ったら、





「なにか、質問でも?」





 とか、言ってんのよ。 そんで、報告書を提出して、何点かの不正支出を指摘したら……



         固まってた。 



 だって、合致するの、よけただけだよ? そんで、誤魔化してるの、丸わかりなのを、抽出しただけよ? こんなの、村のガキンチョの方が、もっと上手く誤魔化してたよ? だって、バレたら、丸一日、ご飯抜きとか、お尻が腫れ上がるくらい、ぶっ叩かれたりしちゃうもん。 


 かく言う私も、二、三日 お外の雑草と、炙った魔物の肉でお腹、満たした事、有るもん。 何処を誤魔化してんのかくらい、お見通しだぜ! チクって、村長さん所の悪ガキ、腹ペコにさせるの、楽しかったもん。 その延長…… 諸表見て、台帳みたら、判るじゃん。 最初から、おかしい所がある場所なんだし……




 まぁ、そんなこんなを繰り返してたら、なんか、内容がドンドン高度化するのね。 かなり、面白かったわ。 




 内務寮のお仕事は、王都シンダイの周辺での実地検分とかね。 境界線争いの現場とか、商工ギルドの目を盗んで開かれてた、闇市の摘発とかね。


 そんで、大量のヤバイ魔法薬を隠し持ってる、倉庫に摘発に行ったときなんかは、面白かった。 係官が突入する前に、建物周囲に、【 フリーズ 】の魔法を掛けといたのよ。 でね、係官が突入した時と同時に、発動するの。 


 私のその魔法ね……ちょっと、面白い書き換えがしてあるの。 普通の 【 フリーズ 】は、面で規定されているんだけど、私の魔法は空間で規定してあるの。 そう、建物周囲を、丸く厚みのある 【 フリーズ 】 空間で閉じ込めてみたのよ。 だって、危険だからって、私、外で見てるだけなんだもん。 もし、その ” いけない御薬 ”を取り扱ってる、人達が出て来ても、逃げろって……




     嫌だねっ! とっ捕まえて、とっちめなきゃね。 




 で、係官が突入と同時に魔法は発動。 暫く、ドッタン バッタン やってたけど、なんか、引っかかった感じがしたのよ。 でも、暫く、様子見。 係官が何人かとっ捕まえてんだけど、全員じゃないって、残念そうにしてたから、教えてあげたのよ。


 【 フリーズ 】で固まってる悪い人達が足止め喰らってるって。 でね、その魔方陣の中に係官が入ったら、同じように、固まっちゃうでしょ? だから、魔方陣に、【 スタン 】 を流して、気絶させといた。 意識は刈り取れたから、後は、ふん縛って、捕縛するだけ。




 めっちゃ、感謝された。 一組織、完全壊滅だって。 やったね! 




 あとで、色んな所に顔出してたら、闇市の ” いけない御薬 ” の値段が、三倍に成ってたって…… ほほぅ…… そうかい、 ふんふん……




           やっほい! 




 アレクサス御爺様…… 悪い夜遊び、やりにくくなるでしょ? クロエは、お仕事したまでですよ? 悪い事してませんよ? ちょこっと、黒龍のお屋敷に戻った時、ものっそい、暗い顔しとったな…… アレクサス御爺様。 




         程々にしておこう……



 ―――――




 そんでね、天龍様とのお約束もあるから、お仕事の合間を見て、グレモリー様に ご連絡を取ったのよ。 また、時間を見つけて、マリーのサロンに来て欲しいって……


 アスカーナ、上手く連絡取ってくれたみたいね。 そうそう、今、行政科の授業で、大規模盤使って、ゲーム始めたそうよ。 架空の大帝国の内政だって…… まだ、そこなんだ…… アスカーナ、面白くないでしょ……


 えっ? アスカーナの処と、ミーナの処あとで、くっつけて、大戦略すんの? ……いいなぁ…… 面白そう……





「クロエ様……私が、圧倒的に不利になります」


「何故ですの?」


「相手は、ミーナさんです。 アレクサス黒龍大公翁の元で、何度も手合わせ致しました…… 強いです。  諜報、調略戦も…… それに……」


「それに?」


「ミーナさん、庶民階層の有能な方を手足のように使いこなして居られます…… わたくしは…… 一人」


「何故ですの? 有能な方々がいらっしゃるじゃありませんか」


「……本気で仰ってますの?」





 睨まれた…… ゴメン、ちょっとワルノリした…… でも、グレモリー様はいい線行くんじゃ?





「少なくとも、グレモリー様は戦力になりませんか?」


「はい…… いいえ……」





 ん? なんじゃ? やけに口が重いね。





「……あの方が何かされようとすると、学生会の方々が…… 構想を全て破壊して行かれます……」





 あ~~~~。 ゴメン、それについては、何も言えん。 それで、グレモリー様が傍観しているんだね…… そんでも、他の奴等、グレモリー様にいいとこ見せようと、無茶するんじゃない?





「……一応の定石は、学んでおられます。 ブラウン子爵などは、それのみです」


「いざ、大戦略になったら……」


「考えたくありません。 地図盤の一部を自領として、凌ぐことを考えています」


「負けるよ?」


「ええ……必敗です」


「無能な働き者ですね…… 方々が、退場するまで、持ちこたえてください。 そうしたら、興味が失せますから、後は、自由にできます」


「でしょうか……? 心配です」





 アスカーナの苦労判る気がするよ。 でも、手助け出来ないよ? お話は、聞いてあげる。 愚痴だって、いいよ。 ストレス発散に、なんか美味しいもの、作ろうか? って、優しく聞いてみた。





「お、お願いします……・」





 うわっ! 本気で、追い詰められとる…… よし分かった。 こんど、グレモリー様が来る日、作って持ってくよ、マリーのサロンに。 それでいいよね? 嬉しそうに、アスカーナは頷いてくれた。 機嫌も、いくらか良くなったと思うよ? 




       さて、グレモリー様お迎えしなくちゃ。




        そんで、呼吸鍛錬覚えて貰うの。




 ちょっと、急速鍛錬になるけど、時間があんまり無いみたいなのよ。




           天龍様とのお約束……




            果たせるように、






             頑張ります!






ブックマーク、感想、評価、誠に誠に有難うございます。

本当に、嬉しいです。



**********


クロエ、無双回です。


書いてて楽しいですね。どんどん、クロエの重要度が上がっていきます。 無くてはならない人になる日も近いんでは、無いでしょうか?


そんなクロエの活躍を、読んで頂けるのならば、・・・


また、明晩、お逢いしましょう!!

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