クロエ 参内する
いよいよ始まる王家舞踏会。 どうなる、クロエ。 頑張れ、クロエ。
ハンダイ龍王国 王都シンダイ 王城ドラゴンズリーチ。 国王様のお住まい。
うん、名前はよく知ってるし、御屋敷が王城の敷地の北門を守る場所に建ってるから、バルコニーから、毎朝、見てた。 でも、行った事も、行く機会も無かったよ。 行く理由もなかったしね。
王室から舞踏会に出席してねって、招待状が黒龍大公閣下に来て、そこに、私も一緒に来てねってあったらしい。 伝聞なんだよ。 実際はどの様な文言が書かれているのか、知らない。 でも、御断りは出来ないんだよね。
リヒター様が、わざわざ、忙しい学業の合間を縫って、時間を作ってくれて、エスコートしてくれる手筈まで整えられてしまった。 うん、とっても迷惑よね、私。 なんか、私の存在自体が、黒龍大公家にとって、迷惑をかけ倒す、面倒な存在になっているとしか思えんよ。
ポロって、そんな事を口にしたら、今度は、メイドズの、「エル」、「ラージェ」、「ミーナ」が泣きそうな顔をして、否定してくるんだよ。
なんか、立場が……・微妙。
まぁ、精一杯、お務めしてこよう。 うん、黒龍大公閣下の立場を悪くするわけにはいかないよね。 それに、赤龍大公閣下もなんか、絡んでるみたいだし……激しく、後悔している。 なんで、あの時、とっととロブソン開拓村に帰らなかったんだろう。 時間が経つと共に、動きが取れなくなっていくよ。
でだ、 王室舞踏会の当日になった。 なってしまった。 目覚めたのは、いつも通り夜明け前。 もうメイドズが揃ってるよ。
「今日の鍛錬は、ご遠慮下さい。 お時間が惜しいです」
「嫌。 これだけは、する」
「……出来るだけ、時間をください」
「頑張ります」
そう言われたら、頑張るしかないよね。 七十二通りの型は、巻き気味で、呼吸鍛錬だけは、いつも通り、額がキ~~ンってするまで、なるだけ早く……頑張りました。 割と、早かったからか、メイドズも安心の時間で、用意開始ですよ。 お洗濯は、帰ってからする、と言う事で、水浴びをして、彼女達が待機する部屋へ。
で、まぁ、炸裂する特殊メイク、そして、豪華装備! 薄いピンク色のシンプルでも贅沢なドレス。 ちょっと重いかなって思えるほど宝石が連なったネックレス。 姿見の前で別人が立ち上がっているのですよ。 今日は、また、とんでもなく、別人感が漂ってますねぇ……
「す、凄い」
「お嬢様本来の御姿ですわ」
「い、いやいやいや…… で、この魔法の継続時間は?」
「はっ?」
「だから、この、特殊メイクと綺麗なドレス姿、どの位で解けるのかなって?」
顔を見合わせる、メイドズ。 ぷぷっ って笑って。
「そうですね、ご希望があれば、ずっとですよ?」
ま、マジ?
「上級魔法使いですね」
「素材が良く無ければ、魔法は掛かりません」
ぶっきら棒だけど、なんか、はにかみならが、ミーナがそう言ってくれた。 うん、母様綺麗だったしねぇ。 きっと、それを引き出してくれたんだ。 ありがとう!
「リヒター様が、玄関でお待ちです。 ご用意できましたでしょうか?」
アンナさんの声に、メイドズが、 ” ハーイ ” と、明るく答えてくれた。 私は、” 礼法 ” と云う ” 猫の鎧 ” を、一番上から装備した。
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お金持ちって………… 凄いね。
リヒター兄ちゃんが、玄関ホールで待っていてくれた。 彼の装備は、内務寮礼典用正装。 すんごく決まってる。……真面目に王子様ですハイ。 ごめんなさい、兄ちゃん呼ばわり。 ちゃんとリヒター様って心の中でも呼ぼう。 にこやかに笑顔で一杯の顔を見ると、ほんと、勘違いしそうだ。
玄関を一歩出ると、其処には、異空間の乗り物が待っていたよ。
この北門を護る屋敷から、王城ドラゴンズリーチまで、相当距離がある。 うん知ってる。 お隣の赤龍大公閣下の御屋敷まで歩いたことあるし、その距離は実感しているよ。
だからって、何も、こんな豪華な馬車じゃなくったって……いいじゃん!! 行くのは二人だよ? 小型のカブリオレでいいじゃん。 それが何、コレ。 六人は優に乗れる大型のコーチ。
後ろに衛士が二人立ってるよ。 御者一人に、馬六頭。馬の頭になんかの羽根飾り……
あ、あのね……もうちょっと、ほら……なんていうのかな……うん、普通に……
「クロエのデビュタントだ。 私も気合入れたよ。 父上もご了承してくれた。 御爺様はもっと豪華にするつもりだった様だが、これで勘弁願った。 いいものだろう?」
「も、もったいのう御座います…… クロエには……分不相応です」
「ん? なんだ? 黒龍大公家の ” 姫様 ” は、格が違うのだよ、他家とは。 もっと自信を持ちなさい」
「い、いえ……そ、その、初めてなもので……ごめんなさい」
「慣れるといい。 君は、その資格があるのだからネ」
ウインクをして、私の手を取り、馬車へと、さり気無くエスコートするリヒター様。 ダンスの要領で、そのまま馬車に乗り込んだ。
「行ってくれ」
「はっ!」
颯爽と走り出したよ。 パッカポッコ、パッカポッコ、軽快なリズムで走る。
「今日は、君のデビュタントだ。 先ずは、舞踏会の主催者である国王陛下にご挨拶する。 その後は、暫く私の側にいると云い。 開催の御言葉を戴いたら、一曲、踊ろう。 後は、流れで……きっと、君の周りは、人が集まるからネ」
「はい、粗相の無いよう、精一杯、務めさせていただきます」
「期待してるよ」
この王子様も、やっぱり黒龍大公家の一員だった。 ハードルさり気に、物すんごく高くにあげやがった。 よし、気合入れて行こうか!!
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王城ドラゴンズリーチ。 壮麗で巨大なそのお城は、近隣の国々にも、比類無き美しさで知れ渡っているのよね。 白亜の城壁、紺碧の屋根、巨大な回廊、幾重にも折り重なる建物、尖塔の数を数えるだけ、馬鹿らしくなるわよ。 城は王族の居城ってだけでは無いのよ。 外周部から内周へかけて、色んな行政機関の部屋が連なってるの。 お城の南側四分の一は、王立魔法学院が内包されているしね。
私たちが向かったのは、北の城門。 城門は東西南北の四つあって、北の城門は主に内政に関する人たちが使う門。 つまり、黒龍大公家が一番使ってると思う。 城門を入って直ぐに馬寄せがあって、外で止まる。 ここから先は、乗り物禁止なのね。 王族だけが許可されているんだって。 贅沢よね。
最外郭、第一の扉を通る。 この扉までは、平民でも入れる。 うん、許可は必要よ。 八百屋さんとか、お肉屋さんとか、行商の人とかね。 王城に入れるだけで、すんごいステータスになるからねぇ…… 王城御用達!って看板あげられるのよ。 で、私たちは、その先に行く。
外郭、第二の扉を通る。 この扉までは、下級貴族も大丈夫。 行政機関の部屋が連なっているのはこの外郭だしね。 今日は静かだけど、平日は、血走った目の官吏が走り回ってるって、そう聞いた。 そうよね、ハンダイ龍王国の心臓部分なんですものね。
中郭、第三の扉を通る。 ここからが本題の場所に近くなる。 この門は男爵は通れない。 一代限りの子爵も無理。 伯爵家以上の者に限られるの。 それでも、膨大な人数よ? 衛士の人達の物覚えの良さに脱帽するわ。 段々と扉の大きさが、知ってる寸法の物になってきている。 それでも、大きいわね。 公爵家や、大公家の夜会なんかもこの区画で行われるらしいのよ。 まぁ、私には関係ないわ♪
内外郭、第四の扉を通る。 さて、この扉を抜けると、王室舞踏会の会場だね。 兄さまも緊張してきたんじゃないかな。 この扉を通れるのは、基本上級貴族に限られるんだって。 侯爵位以上の人ってこと。 つまり、ここから先は、国王陛下の血縁関係者、および、ハンダイ龍王国に絶大な貢献をし続けている家柄の人達だけって事。
私は、一応、黒龍大公家の者だから、入れる。 本来なら、十二歳までは無理な筈なんだけど……閣下のごり押し? よく判んないけど、そういう事らしい。 中央の大階段を昇って行く。 ちょっと長いんじゃない? 何段あるのよ! ふと、振り返ると、かなり高い。 うん、三階分くらい上がってる。
「…………こんなに高い所に有るのですか?」
「ああ、内外郭の中で、外に出られるバルコニーが付いているのは、これから行く【カメリアの大広間】だけだらかね」
「外に……出られるんですの?」
「舞踏会の行われる部屋には、大きさは色々在るが、必ず外の空気を入れられる、バルコニーがついているよ。 何しろ人が多くてね」
成程、人いきれで、倒れる前に、空気を入れ替えるとか、ちょっと、涼みに行くとかか……考えてるね! それで、その【カメリアの大広間】とかいう部屋に着いた。
ん? なんだ此処? 広いよ。 魔法の光で満たした燭台が、これでもか!って置かれていて、外の様に明るい。 天井から吊るされている、でっかいシャンデリアが なんと、十基!!! ロブソン開拓村の畑何面あるんだ? ううううっ ほんと、私、場違い…… なんか、凹んで来た……
ファンファーレの大きな音が広がって、でっかい声が聞こえて来た。
「ハンダイ龍王国、フョードル国王陛下、御成りに成ります!!」
みんな頭を下げる。 私もそれに習って、お辞儀をする。 いよいよ、王室舞踏会の始まりだ!
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陛下にご挨拶に行く。 ちょっと、緊張してた。 なんかキラキラした「おじ様」だった。 ゴテゴテした装飾はなくて、シンプル路線な服を着てた。 バッチリ、カーテシー決めて、ご挨拶!
「恐れ多くも賢くも、国王陛下に置かれましては、王室舞踏会のご招待を頂き、誠に感謝にたえません。 お初にお目に掛かります。 クロエ=カタリナ=セシル=シュバルツハントに御座います。 何卒、宜しくお願い申し上げます」
「うむ。 楽しんでくれ」
「有り難きお言葉、感謝いたします」
国王陛下はあんまり興味なさそうだった。 隣にいるリヒター様の方を向いて、何やら意味ありげな笑みを浮かべている。
「リヒターよ」
「ははっ」
「ソフィアが待っている、行ってやってくれ」
手を胸に置いたリヒター様が困惑気味の表情を浮かべている。 そうだね、今日は私のエスコートに来てたんだもんな。 突然、趣旨が変わったら、そりゃ驚くよね。
玉座に座っている陛下の横に立ってた、ウラミル黒龍大公閣下も、突然の御言葉に、固まっている。 あぁ、白塗り仮面の遣り口かぁ……。 お屋敷で遣り込めたの、根に持ってたんだ。 そんで、後から腹立ってきたんだ。
そっか・・ そうだよねぇ……
ここで、反論しようものなら、伯父様の立場がなくなるよね。 陛下の御言葉だもんね。 そっか、判った。
「リヒター様、国王陛下の御前で、緊張してしまいました。 少し、あちらで休みますので、ご心配なく。 失礼いたします」
もう一回、ガッツリ、カーテシーを決めてから、その場を後にした。 視界にチラッと入ったのは、とっても綺麗な顔をした、胸周りのボリュームが、すんごく大きな女性が、リヒター様に手を伸ばしていた。
あれがソフィア様かぁ…… お綺麗な方だねぇ…… 兄さん!ガッツリ、行け! 許嫁なんだから、行ってしまえ! 私の事なんか、どうでもいいよ!!!
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デビュタントかぁ…… 壁の花、決定だね。 顔見知りも居ないし。 まぁ、普段は絶対に入れない場所なんだから、色々見てみよう。 豪華な花なんかもいいけど、壁に掛かっている絵画がまた、でっかくてね。
高い天井まで届くような一枚もあれば、横に ” 長~~い ” のもある。 一枚一枚、見て行くと、其処に、なんか時間の流れみたいな物が読み取れた。 玉座の方が時間的には、 ” 今 ” に近くて、入り口の方は建国当初みたいな感じ。 その中で、とっても印象に残る一枚があった。
荒れ野を行軍する龍王国軍。 近衛騎士が多く描かれている。 白いクロークには爺様が最後に着ていたのと同じ紋章があった。 その中の先頭にたって、剣を振るっている人……なんか、爺様に似てた。
「” ワールローの戦い ” 、混戦でどっちが勝つか見えない戦だった」
頭の上で、声がした。ふと香る匂いが、懐かしいモノに似てた。
「お嬢さんは、この絵の何処に惹かれたのだ?」
「はい、……この国を護り、人々の生命と誇りを護ろうと、奮戦している姿でしょうか」
「……血生臭い、醜悪だと、思わないか?」
「この国を思う者は、此処に描かれている人に敬意こそあれ、嫌悪を感じないでしょう。 もし、嫌悪を感じるならば、その人は、とても幸せな人です。 すべての人が、この国に好意だけを向けると、信じておられるのでしょうから。……そんな訳など無いのに……」
「……フフフフ、 そうか。 戦を悪とは取らぬのだな」
「御爺様に言われました。 ” 戦は外交の一方策だ。 使えるモノは何でも使わねば、国が滅びる ”と…………」
そこで、私は振り返った。 あんまり、突っ込んだ話をするにも、相手が誰なのか、気になったからだよ。 びっくりした。 爺様と色違いのクロークに身を包んだ、左腕の無い壮年の騎士が立っていた。 胸に略綬がびっしりと付いている。 きっと、物凄く偉い人なんだろうなぁ。
「申し訳ございません。 あの・・わたくし・・クロエ=カタリナ=セシル=シュバルツハントと、申します。 お初にお目に掛かります」
此処にいる人達は全員国王陛下の近しい人達だから、まずは、カーテシーを決める。
「ん。 あぁ、そうだ、私は、レオポルト。 レオポルト=ハンダイだ」
んぎゃぁぁぁぁ! お、王弟様!!!! 現国王、フョードル陛下の弟君だぁ!!! び、びっくりした!!
「クロエ嬢、 先ほど、この絵の騎士をジッと見ていたように思うが? それも、この人物を」
そう言って、王弟様が指し示したのは、さっき爺様みたいだなって思ってた人物画。 胡麻化すのもなんだし、正直に言おう。 もう一度、絵に向かい合い、その描き込まれた人物を見詰めながら、応えた。
「このローブに見覚えが有ります。 御爺様が最後の時に着用していたものと同じです。 白いクロークに ”月桂樹の葉”の紋章の縫い取り。 雄々しく叫びなら、先陣を切る様子、まさに わたくしの御爺様と同じです。 ……あの……王弟様は薄緑色のローブに同じ紋章……ですね。 同じ部隊なのでしょうか?」
私の答えに、王弟様は大きく目を見開かれた。 なんだろう?
「よ、良かったら、クロエ嬢の御爺様の御尊名を聞かせてもらえないだろうか?」
「カール=グスタフ=シュバルツハント と、申します。 ……黒龍大公家六男にして、元近衛騎士でした」
少し、沈黙があった。 感に堪えない様に、王弟様が低く唸る様に言葉を紡ぎ出した。
「なんと! やはりそうか! クロエ嬢は、カール筆頭の御令孫か!」
なんか、盛り上がってる。 なんでだ?
「カール筆頭には、この戦いで、命を救ってもらった! そうか、カール筆頭の御令孫だったのか!」
ん? 命? どういう事?
「この戦いは、最初から、双方とも死力を尽くした戦でな、親征も辞さずと、私が指揮を執った。 戦線は膠着し、双方とも甚大な被害が出た。 消耗戦だった。 やっと、光明が見え、もう少しと云う所までは来たのだが……最後の反撃を奇襲でくらってな……その時、切飛ばされ、このありさまだ。 其処に飛び込んで来たのが、カール筆頭だ」
そう言って、無くなった方の腕を振って見せてくれた。 そうか、王弟様は、戦い抜かれたんだ。 頑張ったんだ。 龍王国を、民を護る為に、一生懸命に、ボロボロになりながら……
「閣下の左腕は、龍王国の礎になったのですね。 ご立派です」
「クロエ嬢……。 私の無くなった左腕に、敬意を与えてくれるのか……」
一枚の絵画の前で、涙ぐんでる、壮年の傷ついた騎士と、十歳の私。 なんか、とんでもなく場違い。 でも、良い話聞けた。 良かった。 この話を聞けただけでも、今日、此処に来たかいが有ったってもんよ!
「クロエ嬢、何かお困りの事は無いか?」
突然、そう聞かれても……無いな。 あっ、そうだ、今日は私のデビュタントだった。 踊る相手いなかったから、頼んでみようかな? そうか……片腕じゃぁ 王弟様の方が嫌かもなぁ…… どうしよう? モジモジしてると、王弟様の方から誘ってきてくれた。
「せっかくの舞踏会、一曲お願いできますかな?」
「え? 宜しいのでしょうか? お願いしても?」
「王室舞踏会で壁の花は無いでしょうに」
「ええ、でも、わたくし、本日がデビュタントでして……」
「おお、それは、すまない。 で、お相手は?」
「はい、当初はリヒター=ルードヴィッヒ=シュバルツハント子爵……従兄にお願いするところでしたが……」
そう言って、玉座近くにソフィア様に拘束されているリヒター様を見たんだ。 レオポルト王弟様は、リヒター様と、ソフィア様をご覧になられて、ちょっと苦笑いをされた。
「ああなっては、もう無理でしょうな。 では、私と踊りましょう。 デビュタントで最初に踊る栄誉を貰えるならば、それも、あの カール筆頭の御令孫。 これに勝るものは無い。 さぁ!」
右手で私を誘って下さった。 ホントに自然に。 私も覚悟を決めた。 うん、頑張る。 これは、いい経験になる。 王弟様に手を引かれ、広間の真ん中に。 めっちゃ注目されてるよね。 今は王弟様しか見ない。 うん、見ないったら、見ない。 全神経を音楽とダンスに集中。 絶対に失礼にならない様に、無様な姿は決して見せない様に。
次の音楽に代わった。
ワン、ツー、スリー、フォー
今、私は、踊り出す。 全身全霊をもって、優雅に、可憐に、大胆に!
*************
レオポルト様、すんごく上手だった。 左腕のハンディ感じさせなかった。 凄いよ、ホントに。 その結果、私の周りには、ゴツイおじ様から、若いカッコいい人までが、群がった。
近衛、魔法、巡察、警護、親衛隊、もう役職名わかんないよ。次々に申し込まれるダンスの相手。 そう、私の周りは騎士さんのクロークで埋まった。 中心は私と王弟様。 口々に褒めてもらっている。 ちょっと、ちょっとだけ誇らしい。
でね、片っ端から受けた。 うん、受けに受けた。 頑張った。 かなり疲労した。 汗を浮かべて、にこやかに対応する私。 そんな私を見て、レオポルト様が助けて下さった。
「おい、お前ら、いい加減にしろ! クロエ嬢のご負担も考えろ!」
やっぱり偉い人の言葉は違うね。 一発で静まった。 ちょっと一息入れられた。 よかった。 倒れそうになってたの、判ったんだ。 さすがだねぇ。
そん時、声が掛かった。
「誠に申し訳ございません、皆さま」
「ん? どうした、オズワルド侍従長?」
「はい、……クロエ様、 王太后様がお呼びです」
侍従長がそう言うと、王弟様が、 ” 何事だ? ” って目で、私と侍従長を交互に見てた。 王太后様が何で私を? 全然、意味わからん。 でも、ちょっとはしゃぎ過ぎたか?
単に頑張っただけなんだけどな……。
うん、これは、お叱りだね。
ちょっと涙目になったよ。
調子に乗って書いたら、長くなった。 で、昨日あげられなかった。
すんません、マジ、勘弁してください。
次回、王太后に捕まったクロエ。 お楽しみに!