クロエ お友達と【精霊祭】を楽しむ。
王家主催の【精霊祭】は、終わった。 完全に不調。 もう、グルグル回ってる。 あ~妖魔精霊の邪気と、教皇の魔法にかなり削られた感じ……ふぅ…… ほぼ、一晩、鍛錬部屋に籠って聖句を唱えてた。 で、朝の鍛錬。 上手く行かない……キレが悪い……呼吸鍛錬をしたら、ちょっとマシになったよ……
もうね……こんなに変調きたすって……どうよ?
身に着けてたもの、全部焼いた。 聖水たっぷり使って、沐浴もした。 聖句を唱えて、精進潔斎した。 それで、これ。 ほんと、妖魔精霊って質悪いわぁ……
なんとか、普通に出来る感じだけどね……まだ、攻撃されてるみたいね……なんでだろ?
ボンヤリしてたんで、鍛錬部屋に籠って、聖句を唱えてた。
「クロエお嬢様、 マリーお嬢様の先触れが御座いました。 如何、お返事、致しましょう?」
ヴェルが、そう扉の外で、私に伝えたのよ。 あぁ……うん。 逢うよ。 ちょっと、サロンの方には出向けないけど…… お待ち申し上げますって、お答えしてね。 私も身支度するから……
「はい……しかし、お嬢様、かなり…… お疲れの模様……」
「いいの。 大丈夫。 来られるまで、身支度を整えた後、ここにいるから。 来られたら、呼んでね」
「……はい」
心配そうな声だったね。 ゴメンね。 ホントに、ちょっとしんどいのよ。 まぁ…… 相手が、相手だからね。 でも、あっちも只では済んで無い筈。 かなり、聖水で焼かれてた、” 筈 ” だもんね。 それに、猊下の精神系の魔法攻撃の対象は、ほとんど私向きだったから、その余波くらいしか、あの部屋に居た人には、掛って無い筈。
それに、光の大精霊様の祝福を皆が全身に浴びたんだもの…… まぁ……大丈夫よね。 私以外……
―――――
「クロエお嬢様、マリーお嬢様がいらっしゃいました」
「うん、今、行く」
鍛錬部屋を出たの。 ちょっと、足取り重いの…… マリーが心配そうに見てた。 にっこり笑ってみた。
「クロエ様、押し掛けてすみません。 とても、お疲れの御様子ですね…… 日をあらためましょうか?」
「ようこそ、お越しくださいました。 いえ、いえ、マリー様…… クロエは、大丈夫です。 ちょっと、日の光を浴びたいので…… ご一緒してもらっても?」
「ええ、わたくしは、問題ございませんが…… 本当に、大丈夫ですの? 御顔の色がお悪いわ」
「日の光に当たれば……大丈夫です」
**********
そんでね、二人して、中庭に向かったのよ。 ちょっと、よぼよぼしてるけどね。 マリーの心配が、心に沁みるよ。 中庭のいつもの東屋に着いたら、お茶の準備。 今日は、エルも、ラージェも、ミーナも居ないの。 うん、遠慮してもらった。 マリーと二人っきり。 まぁ、そうね、ほら、内緒話もあるしね。
東屋について、お茶の準備の為に、【ハッチポッチ】から、茶器やら何やらを振り出したの……
えっ? なにこれ? ポロンって、魔石が一個、転がりだしたの…… 途端に、全身に感じる、ものっそい爽快感! うひゃひゃひゃ! 今なら、空でも、飛べるかも!!!
一気に顔色も良くなって、体の中から、あふれ出る ” 私は元気! ” が、マリーを若干引かせてたね。 ゴメン、そんなつもりはなかったの。 でも、何でだ? あれだけの倦怠感…… どこから来たんだ? 余波じゃなかったのか? テーブルの上に転がってる魔石をもう一回見たのよ。 黒紫色に変色してた。 たしか、私の髪の毛と同じ色だった筈なんだけどなぁ……
でね、その魔石…… 私の傀儡の核だった筈。 衛生兵分隊の隊長さんが、あのオーガの残した、魔石の山から、見つけて、私に帰してくれた奴……
えぇぇぇ………… なんで、こんな色に成っちゃったんだ?
お茶の準備をこなしつつ、ちょっと離して、置いといた。 なんか禍々しいね、これ。
「それは……なんですの?」
「これは……魔石ですの。 ちょっと、魔法が掛かってるの。 マリー様は、【傀儡】の魔法ご存知?」
「ええ、名前だけは……たしか、”身代わり” でしたかしら?」
「ええ、使役用の魔法生物のようなモノですわ。 ゴーレムより、小さくて、色々な事が出来るんですの」
「では、これは?」
「その、傀儡の核ですのよ。 作りましたの……でも、なにかおかしいのです。 こんな色ではなかった筈ですし……」
マリーは、じっとその魔石を見てた。 なんか、気が付いた事有るのかな……
「クロエ様は……昨日、王家主催の【精霊祭】に、ご出席だったとか」
「ええ……」
「貴族科の授業で……習いました事が有ります。 でも、それなら……ハンダイ王家は大変な事に成っている事に成ります」
「ど、どういった……事でしょう?」
うわっ! なんか、バレてる!
「【傀儡】は、身代わりです。 本人に何らかの攻撃があった場合、何割かの影響が傀儡にも分散されます。 特に邪な精神に作用魔法を掛けられた場合は、傀儡が身代わりとなってくれると、習いました」
あいつらが、私の傀儡を蹂躙した時、物凄く大変だったもんなぁ。 でも、逆もあったんだ…… そっかぁ…… 魔法科ではそんな事は、座学で勉強しなかったもんなぁ…… 身代わりに使うのか…… だから、法で決まってるんだ、本人の姿しか、写せないって…… へぇ……それでかぁ…… 変な事に使えるからじゃ、無かったんだ…… 警戒とか、防御に使うって、目的は同じでも、使い方が、真逆だね。
「クロエ様が、魔石の状態でお持ちになって、それが、変色したとすれば、クロエ様が相当に害されたと言う事ですわ…… 恐ろしいですわね。 それに、それが、王家主催の【精霊祭】で起こったとなれば……いったい何があったのでしょうか? 王家の方々に影響はなかったのかしら? それとも、今までの事を考えれば、王家の人達が、クロエ様に?……」
うん、そうだね。 確かに、攻撃されてた。 自分の身は護ったけど……そうか……この傀儡に影響がでたのか……
「……マリー様。 あまり、大きな声では言えませんが、あの場には、ミルブール国教会の教皇様が同席されました。 あの方に、精神系の魔法を掛けられそうになったのです」
「まぁ! ……【 魅惑 】でしょうか?」
「それも有ります……お気を付けください。 ミルブール国教会の者とは、極力距離を置いてください」
「ええ、ええ、勿論ですわ! クロエ様に、このような事をする輩には近づきません! 近寄って来ても、断固拒否します!」
「そう言っていただけると、本当に、有難いですわ」
そうか……【ハッチポッチ】の中まで、確認してなかったよ。 これが原因か…… 原因さえわかれば、対処は出来るよね。 これ、ちょっと、封印しとこ。 そんで、魔法騎士団の処で、解析しよ。 あの人達なら、なんか判るだろうし。 影響っていっても、この核が、魔法を受けているんなら、そこから、相手が使ってる魔方陣の解析も出来る。 防衛策も取れる。 対抗策だって考えられるよね。
うん、マリーありがとう!
―――――
「ところで、マリー様。 最近ギルバート様は、お運びになられてますか?」
ちょっと、意地悪な質問。 だって、知ってるし。 私が居ない時に、ちょくちょく来てるの。 ボリスさんから、ちょろっと、”お話” 貰ってる。 だって、ほら、同じ「計画」の構成員だもの。 うふふ……で、どうなのさ。
「ええ……まぁ……お越しになって居られますわ」
「まぁ! そうですの……ギルバート様、お優しいですものね」
「ええ!!……ええ、そうですわね」
なんか、顔真っ赤にして、モゴモゴ言ってるね。 うん、これは、脈アリだね。 ものっそう、気にしてるしね。 順調、順調! このまま、育んでくれ給えよ! ハッハッハッ! はぁ~~~~。
いいなぁ~~~
慌てたマリー、今度は、私たちの【精霊祭】について、話し始めたの。 そうね、話題、変えたげる。 うん、どうしようか。 本チャンの【精霊祭】終わってるから……各家の使用人の皆さまいらっしゃらないわね…… どうでしょう……マリーのサロンで?
「ええ、わたくしもそのつもりで準備しております。 マーガレット様にも、ビジュリー様にも、アスカーナ様にも……ギ、ギルバート・・様にも……、そ、そうお伝えしております」
ほほぅ~~、そうかね、ギルバート様にもね。 良い事だね。 うん、私の知らんところで、随分、進んでた…… 楽しみだね。 何時にするのかな? ビジュリーの時間もあんまり取れないでしょ?
「明日の夕刻に。 ……と、思っておりますが、クロエ様は、大丈夫でしょうか?」
「はい、是非、お伺いします」
「ありがとう! 待っておりますわ!」
うん、とっても嬉しいね。 大変だったけど、また、お友達が楽しくしてくれる。 いいねぇ……これ。 そのあと、ちょこっと話をして、お部屋に戻ったのよ。 足取り軽くね。 そんな私をみて、ヴェルも嬉しそうだった。 何があったかは、聞かれなかったよ。 聞いてくれても、良かったのに。
あぁ、傀儡の核は、思いっきり封印したよ。 ちゃんと、それ用に容器も、” ひねり出して ” さ。 うん、あとで、魔法騎士団の団長さんに相談しよう。
**********
マリーの【精霊祭】に、行く前に、こいつ如何にかしよう って思ってさ。 やってきました、魔法騎士団の屯所。 でね、筆頭魔法騎士さんにお会いしたの。 なんか、驚いてるよ? なんで? あぁ、もう学院は夏の休暇に入ってるもんね。
「クロエ殿、夏の休暇は?」
「ええ、此方に居ります。 黒龍のお屋敷か、学院に。 ちょっと、気になる事がございまして……」
「なんでしょう」
「コレなんですけれど。 色々な魔法が掛かっております、わたくしの【傀儡】の核で御座います。 解析お願いできませんか? 解呪、無しで…… 」
「ほう、面白そうですな。 では、魔術研究員に、渡しましょう。 残念ながら、私は、此れより、近衛親衛隊にくっ付いて行く、護衛任務が発令されたのだよ。 まぁ、王族の護衛だから…… 帰ってこれる時間は判らんが、【降龍祭】までには、戻る」
「……左様で御座いますか。 では、お願いします」
くそ! またかよ。 邪魔ばっかりしやがって! まぁ、魔術研究員の人に渡せれば……なんとか……なるか? 魔術研究員の方は、研究熱心だけど、お話、してくんないけどね。 研究馬鹿だもんね。 成果は出してくれるかな? ボロボロになってそうね…… まぁ、頑張って下さいね。
筆頭様、行ってらっしゃい。 頑張ってね。 そちらも、大変だと思うけど…… どっかの避暑地にでも行くのかね。 予想だけど、エリーゼ様と、グレモリー様も一緒だよね。 近衛親衛隊と魔法騎士隊が共同で護衛に付くって……そういう事なんだと思うよ。
で、行先は…… 例えば、龍の啼く谷で有名な、リュウコクとかさ。 それとも、宝石ザクザク掘りだしてる鉱山街 キョウサーン で、お買い物? はたまた、広大な葡萄畑と、麦畑が広がる穀倉地帯の大都市、コナーンで、グルメ? まぁ、色々と考えられるね。
どうでもいいけど……
私は呼ばれて無いし、行く気も無い。 どうぞ、御勝手に。 さてと、みんなの処へ行こう。 楽しい、【精霊祭】だ!
**********
マリー頑張ったね。 サロンの、 ” お部屋 ” すんごいよ。 精霊様の祠が五つ。 対象は何でも大丈夫な祠。 部屋はちょと薄暗いね。 落ち着くよ。
んじゃ、一つ提案。
マリーのサロンの給仕さんとか、メイドさん、そんで、ボリスさんも一緒に、お祈り捧げようよ。 きっとその方が、精霊様もお喜びになるしね。 私の従者として、今日は、エルも、ラージェも、ミーナも来てもらったよ。 そんで、いつもへばり付いてる、ヴェルもいるし。 みんなで、お祈り捧げようよ。
「そうですわ!! 皆の祈りで、精霊様がお喜びになるのなら!!」
うん、ありがとう、マリー。 ちょっと、ビビってた使用人の方達も、ボリスさんが促して、みんなでサロンに入ったの。 うん、祈りは大切。
其々に、祠に向かって、一心に祈りを捧げるの。
” 龍王国の民への加護、本当に有難うございます。 精霊様の御心に安らかな平安を……”
マリーと、ギルバート様、並んでお祈り捧げてるよ。 アスカーナ、ビジュリー、マーガレット、それ見て、ニヨニヨしてたよ。 お屋敷から来た使用人の人達、なんか、涙ぐんでた…… うん、いいよねぇ……いいよねぇ……いいなぁ
ほんと、羨ましい!!!
ぱぁぁっと、私の周りに光が集まった。 ん? なんの魔法も発動してないよ? ここ、マリーのサロンだし、変な事しないよ? 安全だし……なんで? 光がドンドン強くなっていくのよ。 心地よい風が祝福された水分と、大地の匂いを運んできた。 光の中に優しい暗闇が帯になって回ってる…… ふっと炎がその中に混じる……
みんな……来たんだ。
ちっさな精霊様が、飛び回ってる……
祈りは通じたみたい…… それで…… お礼を言われた……
” ありがとう、 みなを助けてくれて ”
いやぁ…… まぁ、その、なんです。 いいじゃないですか、龍王国の大切な精霊様なんですから。 そうですよ、ずっと加護を頂いているんですから……
なんか、胸が熱くなったよ……そうだね、みんなの祈り通じたんだね。 部屋の中の精霊様の御姿、今日は、皆に見えてるのかなぁ…… ポカンと口開けて見てるよ。 そうだね、こんなにハッキリ具現化するのって、めずらしいよね。
そんでね、私はね、サロンとバルコニーの間のガラス扉を開けたの。 この祝福は、龍王国の民のモノ。 だから、開放するの。 精霊様、あまねく龍王国の民に、祝福と、加護を、お与えください。 開け放たれた扉から、精霊様達が一気に天空に帰って行かれた。 渦巻く光は、空高くに。 夜の帳の降りる前の、紺碧の空へ……
「【精霊祭】、精霊様へ捧げた皆様の祈り、受け取っていただけたようです」
振り返って、部屋の中に居る人たちに、そう伝えたの。 みんな、茫然とした顔から、めっちゃいい笑顔になったよ。 勿論、私もね。
楽しく、歓談して、楽器演奏して、美味しい晩餐を頂いて…… かなり、遅くまで、そうやっていたの。 まぁ、明日からは、また、黒龍のお屋敷とか、青龍様のお屋敷とかに行かなきゃなんだけどね。 ビジュリーも色んな所に、引っ張りだこでしょ?
アスカーナは私にくっ付いて、アレクサス御爺様の所。 あれ? マーガレットは?
「私は……学院に残るよ。 温室の世話もあるしね。 いつも通りさ」
「そっか……遊びに行ってもいい?」
「ははは。 何時でも。 お茶の準備しとくよ」
「先触れなしで行くよ?」
「いいよ、居たら、相手してあげる」
顔を見合わせ、クスクス笑い合うの。 やっぱり、こいつ、私に一番似てるよ。
今年の夏休暇は、何となくだけど、ゆっくり出来そうね。
不測の事態が起こらない限りね。
情報は、細かく拾っとくよ。
今日は、みんな楽しかったね。
来年も、素敵な【精霊祭】を、一緒に過ごそうね。
ブックマーク、感想、評価 とてもうれしいです。
頑張ります。 ええ、力湧いてきました!!
―――――
嫌な事が有ると、良い事もあるのです。
人間万事塞翁が馬です。 クロエの事が大好きな友人達に囲まれて、彼女は生き生きしてます。
状況は、依然厳しく、そして、厳しさを増していきますが・・・彼女は、誇り高く、穢れなく、生きて行きます。 自らの為すべきを成す為に。
暑い日が続いております。 読者の皆様、お体ご自愛くださいませ。
それでは、また、明晩!




