クロエ 天龍様の御依頼を果たす
一応ね、確認したんだ。
マリーの事、任せて貰えるんですよねって。 王族に龍印の事が知られるのが、時間の問題ってことで、お許しは貰えたのよ。 そんで、やり方も任された。 早い方がいいに決まってる。 でも、何処まで話すかが問題なのよね。
考えて、今のマリーが受け入れられて、そんで、隠匿する目的を果たすための、お話…… うん、そうだ、 ” 天龍様に会いに行こう! ” で、いいや。
マリーって割と好奇心旺盛だし、怖い話だって好きだよ、あの子。 きっと、それで大丈夫な筈。 門の精霊と、お話しちゃったのだって、好奇心からだもんね。
そんで、私の中では、マリーにどう話すかは、決まり。
お爺ちゃんズに、納得はして貰った。 マリーの守護は、私。 でもね、四六時中は、一緒に居られないからね。 ボリスさんに普段の護衛は今まで通り、お任せするよ。 だって、あの方、マリーの守護騎士なんでしょ? それも、かなり高度な・・
「ほう、ボリスにか…… クロエ、なんで判った?」
セラフィム青龍大公翁様が、聞いて来た。 えっ? あの方、身形は執事だけど、騎士でしょ? それも、多分、近衛親衛隊の。
「ボリス様、わたくしが、マリー様のサロンのお部屋に入る時に、いつもしっかりした、” ご挨拶 ” 頂きますもの。 あれ、騙り、害意の有る者の、排除が目的では? それに、ボリス様が、 ” ご挨拶 ” の時に、左胸に当てる御手…… いつも、軽く握られておりますもの。 リカルド赤龍大公閣下なら、その訳、ご存知ですわよね」
振ってやったよ。 赤龍大公閣下、頷いとるね。 そうさ、親衛隊の騎士の礼は、心臓に拳を捧げるのよ。 その癖が残ってるの。 ほら、マリオもするじゃん。 同じね。
「クロエはよく見ておるな。 そうだ、身に染みた礼法は、そうそう抜けない」
「うむ、では、ボリスに身辺は任せるか……ずっと、見て参って居ったしな。 了解した」
青龍大公翁様は、頷かれたわ。 絶大な信頼を置いておられるものね。 マリー様を見ていれば、その位 理解、出来るわよ。 私が、皆さんの了承を取り付けたら、皆さん、おもむろに頷かれた後、バラバラに部屋を出ていかれたの。 黙ってね。 あとに残ったのは、黒龍大公翁と私。 ちょっと、気になった事聞いてみた。 ほら、まだ薬の効果も残ってるしね。
「アレクサス御爺様、ご質問が……」
「うむ……」
「この夜遊びは、何時の頃から?」
「…… 先代までは、陛下もここにおった」
「……そうなんですか。 そんな以前から……」
やだ、まるで、冒険者が今後の方針を決める為に、酒場で額を寄せてコソコソやってるのと同じじゃない! それとも、山賊が次に狙う先を、本当に信頼できる仲間と悪巧みしてる感じ? う~ん、男の人って、こんな風に密談するの、好きよねぇ……
「もう一つ」
「答えられればの」
「わたくしに、役割が与えられたのは、王都シンダイから抜け出し、ロブソン開拓村に帰ろうとした時からですか?」
「……あの時、お前の行動力と、意志の力を見た。 ” クロエ ” に、膠着した計画に一縷の光を見たのだ。 お前なら、やってくれるとな」
やっぱりね。 それまでと、それからじゃ、何となくアレクサス様の態度が違ってたもんね。 でも、お屋敷の他の人達は、変わりないのよ…… つまりは、この《計画》ホントに今晩、此処にいた人しか、知らないのね。 ……そうだよね。 だから、ゲームで、国王暗殺オプションが在るって言った時、黒龍大公翁、あんなに狼狽したんだ……
「そうですか……では、わたくしは、自分なりの方法で事に当たれば、良いのですね」
「そうじゃな。 ……いや、そうして欲しい。 儂には、頼むことと、祈ることくらいしかできんがな」
「……承知しました。 誇り高く、穢れなく」
「うむ、……すまん」
黒龍大公翁、黙り込んじゃったよ。 ごめんね、変な質問して。 でも、聞きたい事は聞いた。 私の役割も理解した。 足掻くけどね。 罠とか悪意とか、絶対に喰い破ってやる。 そんで、マリー様とギルバート様には、幸せになってもらう。
ちょっと、握り込んだ拳が痛かった。
*****
お屋敷にコッソリかえって、お部屋に戻ったら、ヴェルが居た。 物凄く安堵した表情だったよ。 ヴェル、ずっとお膳立てしてたんだね。 凄いよ。 ホント。 黒龍大公翁の無茶振りを良く叶えてるよ。 感心する。 でね、眠いの…… 寝かせて呉れたら、嬉しいな。
「お嬢様……このヴェルに出来る事あれば、何なりとお申し付けください」
「ありがとう……眠りたいの。 一人で……静かに……」
「承知しました」
夜の闇に紛れる影のように、ヴェルは消えた。 きっと、監視はしてる。 危険の無いようにね。 何だかなぁ…… でも、いいや、寝よう。 疲れた。
―――――
ほら、この頃、色んな所に行くじゃない。 爺様の護剣を持ち歩くわけにはいかないから、ちょっと自分に細工したの。 「例の魔導書」 の中に面白い物が有ったのよ。 うん、人体に魔方陣を定着させる方法ね。 禁呪の一つなんだけど、良いよね。 使って良いって言われてるし。 でね、それ、体の一部を別空間につなげる魔方陣なの。
いわば、体にポケットを作った感じ? で、その魔方陣に【容量増大】とか、【収納鞄】とか組み込んだのよ。 それでね……ジャジャジャ~ン! 出来たのがコレ 【ハッチポッチ】の魔方陣。 可愛い名前と裏腹に、めっちゃ優れもの。 で、多分、誰も持ってないよ。 オリジナルかもね。
予備詠唱無し、魔方陣展開無し、重量制限なし、容量ほぼ無限大で機能する、私だけの収納空間。 収納する時は、右手で収納したい物を触って、” 入れとこう ” って、思うだけ。 色んなもの突っ込んで置くだけで、中で整理してくれるのよ。 そんで、取り出しも、脳裏に浮かび上がる目録から、” コレ! ” って思って、右手を振り出すだけ。 手に持てるモノなら、そのまま掴めるし、大きくて重いモノなら、少し先に出て来るの。
めっちゃ便利。
でね、爺様の護剣とか、学院で作って貰った騎士の軽装備とか、普段使わないけど、大事な物を持ち運びできるようになったのよ。 重量無視でね。 いや~~、ホントに便利!!
そんなこんなで、例の魔導書も、何時でも読めるよ。 この【ハッチポッチ】の中に入れといたら、誰にも見つからないもんね。
―――――
朝の鍛錬が終わって、水浴びをして、ダイニングで朝ごはん。 黒龍大公翁は、寝てるって。 そうだろうね。 私だってきついもん。 で、閣下と、楽しくお食事して、また、学院のお部屋に戻ったのよ。 ほら、一杯する事が出来ちゃったしね。
天龍様にお会いしないといけないし、マリーともお話しなくちゃいけない。 そんで、グレモリー様の件、もうそろそろ動かないと、マズいのよね。 もうすぐ精霊祭だし……あっという間に、降龍祭に成っちゃうもんね。
でね、こっそり、教室に行って、授業が始まる前に、なんとか、アスカーナを捕まえたの。 ちょっと、コソコソ感、出したかったからね。 ミハエル殿下へのミスリードも兼ねて…… 上手く行くかなぁ……
「アスカーナ様、 お願いがあるの」
「何でしょう? わたくしに出来る事?」
ニッコリ微笑んでくれた。 うん、アレクサス黒龍大公翁を紹介して、一緒に遊んでもらってるの、めっちゃ感謝されてるしね。
「はい、実は、グレモリー様と、お話がしたくて……学生会の人は抜きにして」
ちょっと、考えてから、アスカーナは答えてくれた。
「グレモリー様も、クロエ様とお話がしたいと、仰っておいででした。 でも……学生会の人抜きとなると……」
「今日は、わたくし、マリー様のサロンに居ります。 そう伝えて頂ければ……」
「……判りました。 ゲームの相談をするようなふりをして、お話いたします。 それと判らぬように」
「ありがとうございます」
うん、感の良い子ね。 ゲームの中では、良くメモを使うから、それに紛れてやり取りするね。 きっと。 さぁ、マリーのサロンに行っとこう!!
―――――
マリーのサロンで、ボリスさんとご挨拶。 めっちゃいい笑顔。 マリー様、いらっしゃるようね。 それと、昨晩のお話、されてるわね。 何となくだけど、そんな気がする。 青龍大公翁様、動き早いもの。 ちゃんと、右手を左胸に ” 拳を作って ” あてていらしたのよ。
うわっ、露骨……
ハイハイ、判っております。 そうですよね。 マリー様の守護騎士様ですよね。 そんで、私もマリーの龍印の保護者…… いや~、宜しくね。 なんか、苦笑いしか出んよね……
「マリー様! 遊びに来ました!」
「クロエ様! ようこそ! いらっしゃらないかなぁ・・って、思ってました!」
もうね、心、打ち抜かれたよ、マリーの笑顔に。 抱きしめて、グリグリしたい! ほんと、可愛い! 絶対にこの笑顔、護り切ってやるよ! 絶対にだ!! 王家の馬鹿共に絶対にあげない。
そんでね、ちょこっと ” お話 ” 大事な、お話の前に、グレモリー様を、この部屋に呼んだことを言ったのよ。 途端に、暗い表情のマリー…… あれ? グレモリー様の事、良く思ってなかったの? あんなに逢えたこと喜んでたじゃん。
「グレモリー様がいらっしゃるとなると…… その…… 殿下も……」
「大丈夫です。 ちゃんと、お一人で来られるように、お願いしました」
「大丈夫でしょうか……」
かなり不安気……そうだろうね。 でも、私、なぜか、確信に近いものが有るのよ。 あの方も、学生会を嫌ってるって。 そんで、暫く、楽しくお喋りしてたんだ。 天気もいいし、バルコニーでね。 そしたら、ボリスさんが来たのよ。 ちょっと、不思議そうな顔してらした。
「クロエお嬢様。 お部屋の外で、見知らぬ女子学生が、お会いしたいと。 供回りも、従者も付けずお一人で……」
「はい、今、行きます」
ほらね。 きっと、そうだと思った。グレモリー様もお転婆さんだったんだよね。 そんな気がしてた。 ほら、フーダイに空飛ぶ馬車で来たくらいだもの…… でね、サロンの入り口の扉の前にいらしたのよ。 ぼっさぼさの、灰色の髪で、でっかい眼鏡をかけて。 ちょっと、身に合ってない、ブカブカでヨレヨレの制服を着た、なんか薄汚れた女子学生さんがね。
「ようこそ、お越しくださいました。 入って!」
そう言って、お手を取って、扉の中に招き入れたの。 ズルって感じでね。 無言だったのだけど、扉の中に入って、彼女の後ろで扉が閉じたとたんに、
「お誘いありがとう! クロエ様!」
ってさ。 うん、【モーフ】、完璧じゃない! どっから見ても、グレモリー様に見えないよ。 体型とか、身長まで変えてるの? 凄いね。 そんで、お部屋の魔法関知に引っかからないのね…… ある意味、大盗賊クラスよね…… どうやったの?
「 【お忍び】のスタイルですから…… ミルブールの屋敷を抜け出す時によく使ってました。 まだ、誰にも見破られていませんわ。 あの国教会の導師様にも」
「凄いですわね! さぁ、此方へ。 ……あぁ、その前に、ボリスさん! 此方、ミルブール王国、次席公爵家 第一公女、グレモリー=ベレット=ヴァサンゴ 公爵令嬢様です」
ボリスさん、ちょっと驚いてから、にこやかな笑顔を差し出してくださったの。
「アズラクセルペンネ青龍大公家、令嬢マリー=ハンナ=アズラクセルペンネ様付の執事、ボリス=ウーランと申します。 以後、お見知り置きを」
私にして下さったように、右手の拳を左胸にあてて、深々と騎士の礼を取られたわ。 そんとき、パァ~っと、光って、グレモリー様が、【モーフ】を解かれた。 キラキラと輝く、プラチナブロンドの、バインバインなスタイルで、すんごくゴージャスな女性。 アーモンド形の綺麗で涼やかな目。 深い鳶色の瞳。 抜ける様に白い肌。 うわぁぁぁ 近くで見ると、やっぱり、素敵なお姫様ねぇ…… なんか、嫉妬しちゃうよ……主に ” お胸 ” 関連で……
「ヴァサンゴ公爵家 第一公女 グレモリー=ベレット=ヴァサンゴで御座います。 お見知りおきを。 あの、クロエ様? 此方…… 守護騎士…… ですわよね」
「……ご内密に」
「はい」
やっぱり、見る人が見れば、一発で判るよね。 判らん奴は……まぁ、そんだけの人だ。 でね、一緒に、マリーの処に行ったの。 ほら、このサロンの主催者だもんね。 ご挨拶は必須だもんね。 一通りのあれやこれやが済んで、お茶の入れ替えも終わって、ちょっと一息入った処で、グレモリー様が口を開いたの。
「クロエ様、本日のお招き、大変うれしく思いますが…… あの、なにか、特別な訳でも?」
うん、有る。 ものっそい、大事で、重要なお知らせがね。 そんで、私、怠け者だから、同じ説明二回も、三回もしたくないし、なんか抜けると思うから、関係者になりそうな人には、一気に、” お話 ” したいのよ。
なにをかって? 勿論、龍印の話よ。
ちょっと温くなった、お茶を飲んで、喉を潤し、” お話 ”に入ったの。
「申し訳ございません、グレモリー様。 お呼び立てしてしまったのは、他でもありません。 天龍様の御懸念をお伝えしたく」
「えっ?」
「ご存知の通り、龍印の保持者の役割は、龍族の穢れを払う事に有ります。 古の契約に則り、人の子が龍族の皆さまの穢れを払い、その対価に、領域安寧の加護を頂いております」
「ええ……そうですわね」
「天龍様のお話では、ミルブール王国が有る領域を、司っている、地龍様の穢れが年々溜まり、浄化が追いついていないそうですね。 なにか、間違いは、ないでしょうか?」
「お恥ずかしいですが……事実です。 ここ50年間に、龍印強き者が、何人も、”遠き時の輪の接する所” に、旅立っていきました。 次代を担う、わたくしの世代では、彼の者達の足元にも及ばないのです…… 地龍様のお力が衰え、各地で魔物達の不穏な動きが活発になりました。 今は、ミルブール国教会の導師たちがそれを抑えてくれております……」
「……そうですか……グレモリー様は、宝珠を、お受けになって居られますよね」
「ええ」
おかしいじゃない……気が付かないの? 宝珠を龍族が与える人は、強い、強い、龍印の持ち主にだけよ? その龍印を持つ者が、魔力を練って、龍印の力と合わせて、龍族に贈るのよ……只それだけの話よ。 それに、穢れを払うのに、そんなに大量の魔力は要らない筈。 人の子の魔力の総量なんて、龍族に比べたら、微々たるものだけど、龍印の魔力には特別な力が宿っているのよ? 沢山の龍印を持つ者が居て、龍族の穢れが払えなかったって…… 何かが阻害してたに決まってるでしょ?
「すみませんが、グレモリー様の宝珠をお見せいただけませんでしょうか?」
ちょっと、躊躇った、グレモリー様。 そうよね。 その反応は正しいわ。 でも、今は緊急事態なのよ。 お願い! いいわ、私のも、渡すから……
首から、「宝珠の首飾り」を、入れた袋を外して、中身を取り出し、グレモリー様に手渡したの。
「これが、わたくしの宝珠です」
グレモリー様、食い入るように見つめている。 太陽の光を受けて、キラキラと光る私の宝珠。 私の魔力と同じ透明な緑色なの。 意を決したように、グレモリー様、ブラウスの下から、彼女の宝珠を取り出して、渡してくれた。
首飾りの御飾り。 ひし形を縦に伸ばした感じのデザインの枠に嵌った、平べったくて、丸い石。 ぼんやりと、紫がかった、アメジストみたいな色。 この色が、グレモリー様の魔力の色…… でもね、揺らいでるのよ。 安定してないの…… そんで、薄いの。 此れじゃぁね…… でね、思い切ってね、御飾りを掌に挟んで、掛っている魔法を展開したの。
うん、これ、上位魔法。 強制展開。 かかっている魔法の魔方陣を、掛ったまま展開するの。 普通は、かけた本人以外は、” 展開 ”、出来ないんだけどね。 ほら、例の魔導書に乗ってるのよ。 コレ…… ヤバいんで、あの中に収録されて、本来は門外不出……って云うより、あの魔導書読んでない限り無理。
でね、展開された魔方陣見て、絶句した。 私だけじゃなく、グレモリー様もね…… ニコニコして、座ってたマリーも、同じようにね。
マリーは、なんだか良く判って無いみたいだったけどね。 展開された魔方陣の多さにびっくりしてたって所かしら。
グレモリー様は、きっと、内容までご覧になった。
いや、まぁ、そんなこったろうと、思ってたけどね。
【魔力吸引】【魔力流入阻害】【魔力転送】 うえぇぇ【妖魔精霊勧誘】まで……なんじゃこれは?
「う、嘘…… 導師様達は、守護だって…… そう言って、御飾りを…… なのに、これは……」
言葉、失ってるね。 うん、そうだね。 本来、地龍様に贈られる魔力をどっか別の場所に送っとるね。 いやらしいやり方だね。 そんで、宝珠に入る彼女の魔力を障壁たてて阻害しとる。 さらに、妖魔精霊に誘惑され易いように、彼女の色んな 【 欲 】 を、常に刺激しとる…… イカンね。 本当に、けしからんよ。
「御飾りを、壊します!」
「待ってください! ここで、壊すと、また、同じようなものを、今度はもっと巧妙に仕掛けられます!」
怒ったよ、グレモリー様。 そりゃそうさね。 で、御飾りの部分を、壊そうとしたんだ。 止めたよ。 ヤバいって。 これ壊しても、絶対にあいつ等、諦めないよ……次は、もっと巧妙に細工するって…… どうだろ、この魔方陣、書き換えちゃうってのは?
「グレモリー様……魔方陣はそのままに、内容を書き換えます。 本当にアブナイ物は、内外逆に……宜しいですね」
「えっ? クロエ、出来るの?」
「ええ、グレモリー様。 この程度の魔方陣ならば、如何様にも」
「そ、そうなの?」
なんにも、難しい事無いよ? 展開出来るって事は、書き換えも、簡単に出来るって事。 でね、たくさんの魔方陣をよく読んでみると、重複魔方陣使ってないのよ。 全部単発。 互いの連携とか、制御とかされてないし、何より警報関連が全く無いの…… ドンダケ甘く見られてるんだ?
早速、書き換え! 阻害系の魔方陣は、従来の機能はそのまま発動してるように見せかける為、魔力の出入り口、つないだった。 魔力転送系の魔方陣は、送る先は判らんけど、今現在送っている量以上の魔力は送れない様に制限したった。 そんで、一番ヤバイ奴……【妖魔精霊勧誘】は、内外逆転したった。 そうさ、彼女自身は清らかなまま、彼女に接する者達が、己の欲望を増大させるんだ。 アスカーナには、注意しとこ。 そんで、御守も渡しとこう!
よっしゃ完成!
で、御飾りを返した。
「グレモリー様……ご注意が有ります」
「何でしょう?」
「かなりの魔力を 宝珠は、吸い込みます。魔力枯渇にはご注意ください」
「ええ、クロエ、判った」
「それと」
「まだ何か?」
「はい、地龍様の穢れは、相当進んで居られるようです。 これは、あくまで仮の処置。 いずれ本格的に浄化しなければなりません。 お間違いの無いように」
「心得ました」
グレモリー様、御飾りを受け取り、両手で包み込むように持たれたの。 そう、私が私の宝珠を、最初に貰った時みたいにね。
ボンヤリと、薄紫色にグレモリー様の手が光る。 ドンドン光は強くなっていくのよ……あぁ……あんまり、やり過ぎないでね…… 御自分の魔力、枯渇しちゃうよ?
「す、凄いわ……地龍様と繋がった…… あぁ……全部、吸い込まれていく……」
「危ない!! お止め下さい!!!」
私は、思わず、グレモリー様の手を取っちゃった。 ドンドン吸い込まれていくグレモリー様の魔力を途中でぶった切った。 ちょっと、グレモリー様! 人の話、聞いてた?!
「ご注意くださいと、申し上げました!!」
「あっ……ご、ごめんなさい」
「普段通りにして下さい。 それでも、今までの、数千倍の魔力をお贈りする事が出来ます。 今までが少なすぎました。 これで、暫くは大丈夫です。 でも……」
「でも?」
「グレモリー様、かなりの倦怠感を覚えられる筈です。 慣れるまでは……ゆっくりしてくださいね」
「ありがとう」
グレモリー様、御飾りから手を放し、首に掛けられた。 うん、綺麗な菫色になってるよ。 揺らめいていた、魔力もしっかりと宝珠の中に、定着したしね…… よし。 これで、大丈夫。 暫くはね。
初夏の光の中。
なんか、一つお願いを果たした気がしたよ。
まだ、一つ目だけどね。
しっかし……
ミルブール国教会……
お前ら、何処まで……
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皆様の評価がとてもうれしいです。
読んで下さって、有難うございます。
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精霊祭前のお仕事です。 色んな意味で、クロエは忙しくなりました。
それでは、また、明晩お会いしましょう!




