クロエ 裏方に徹したのち、久々に授業にでるも、追い出される。
やるだけやって、黒龍のお屋敷で眠ろうとしていたの。 夜にね。 後は、時間が【 祈り 】を、増やしてくれると思うのよ。 全部が、全部、上手く行ったとは思わないよ。 流石にね。 辺境に帰った人も、上手く行かないかも知れない。 手に職を持ってて、王都シンダイに居ついた人も、下職ばっかりで、つまんないかも知れない。
でもね、そこからは、その人の人となりなんだよ。 上手く行かなかったら、上手く行くように努力するんだよ。 行き詰ったら、知恵のある人に聞くんだよ。 そうして、自分の力を付けていくんだ。 そうしないと、世界の悪意に飲まれてしまうからね。
ボンヤリとそんな事を考えながら、天井のハンダイ龍王国の地図を見ながら微睡んでいたの。 もうちょっとで、意識を手放すなぁ……って思った時。 やっぱり、邪魔する、ノックの音。 そうだね、黒龍大公翁の、深夜の訪問だね。
来ると思ってたから、下着に成らずに横になってた。
直ぐに、隠し扉を開けて、黒龍大公翁に入ってもらった。 お茶出しして、お話をうかがったのよ。 お爺ちゃんニヤリって笑ってね。
「” 黒龍大公家の名 ” を使うとは、そういう事か…… 色々な所から要請と、相談が舞い込んだぞ。 ―――クロエ、よくやった。 お前は、やはり、カールの孫だ。 あやつも、果敢な漢じゃったからな。 それにしても、よくぞ、これだけの事を成したな」
「恐れ入ります。 アレクサス黒龍大公翁様から、受けた薫陶が役に立ちました。 敵を見定め、直接叩くのではなく、搦め手より力を削ぐ。 費用を掛けずに、敵の兵站を断ち切る…… まさに、わたくしが、している事です。 アレクサス御爺様…… 感謝しております」
「うむ……精霊様のお導きじゃな」
やっぱり、ニヤリって笑うのよ。 まだ、始まりの段階だし、黒龍大公翁が、「 よし 」って言ってくれないと、動き出さない事も多いのよ。 でも、やるだけやった。 それは、満足してるの。 無理言って、本当に、ごめんなさい。
後は、何時、ミハエル殿下が動き出すかが、問題なんだよ。 で、黒龍大公翁 曰く、そっちも手は打ってあるって。 アスカーナに繋ぎを付けて、なんやかんやと、引っ搔き回して、グレモリー様の時間を奪ってるんだって。 それでかぁ……なんか、動きが遅いなぁって思ってた。
グレモリー様の、何気ない一言を、ミハエル殿下が大きく受け取って、そんで、自分を大きく見せる為に、無茶な要望をあちこちに出して、その結果、グレモリー様の影に隠れている、ミルブール国教会の動きが加速された訳だって。 そんで、尻尾が捕まえられたって。
間接的にだけど、龍王国の為になった。 狙ってたのか? いや、思い過ごしだね。 あの方は、自らの欲求に非常に素直だから、ホントに、グレモリー様によく見て貰いたかっただけだね。 【素直な馬鹿】なままだったらいいな。 そんで、私と関わらなければ、もっといいのに……ミハエル殿下。 なんで、あの方の婚約者なんだろう、私……
黒龍大公翁の根回しで、青龍大公翁閣下、赤龍大公閣下、そして 驚いた事に、白龍大公翁閣下も、一枚噛んで下さったみたいね。 おかげで、辺境へ戻れる人の数が、予想してたより、はるかに多くなって…… 最初は、閣下に、お願いしていた、四台の大型駅馬車で賄えると思ってたんだけど ……足りなくなった。 予算は、もう無いし…… どうしよう。
「なに、心配するな。 名目上は、辺境伯達が自前で費用負担しとるんじゃろ? 建前を作っておいて、良かったの。 他の辺境伯は、本当に自前で、費用負担しとるよ。 北の辺境が上手く回ったお陰じゃの」
そうなんだ…… よかった。 ほんとに、よかった。 根付いたね。 ある程度したら、人材も枯渇するけど、そん時は、王都シンダイ生まれの浮浪者の人も、呼びかけに応じるかな? そうなれば、もっといいのにね。
「まぁ、其処までは、上手く行くとは思って居らん。 それでも、危機的な状態にあったスラム街の治安が、劇的に変化した。 警備の為の予算も、大幅に削減できる。 費用対効果としては、素晴らしい事じゃな。 セラフィムが、お前に宜しくと云っておったの」
「まぁ、嬉しいお言葉。 でも、アレクサス御爺様、わたくし、何もしておりませんわよ。 ただ、少ない予算を、精霊教会に必要な形で、割り振っただけですもの」
「おう、そうじゃな。 お前の名は、何処にも出ておらぬ。 セラフィム青龍大公翁、クーベル白龍大公翁、リカルド赤龍大公が、見抜いたようじゃな。 ” ……全く、黒龍の姫は、名を取らぬな ” と、皆申しておった。 儂はな、奴等に云うてやったわ! ”黒龍の姫御子は、その辺の有象無象とは、違うのだよ!” とな!! ハッハッハッ!!」
「……そんな……こと……ないですよ」
ちょっと、恥ずかしくなった。 私は只………… あいつ等の侵攻を妨害して、反撃する為に、こっちの姿を見えなくしただけだよ。 その方が、効果的だもの。 でも、黒龍大公翁、八大精霊教会の方は大丈夫なの?
「教主達も判っておるよ。 自分達がいかな者に狙われたかをな。 お前には、まぁ、その時が来れば、判るじゃろう」
そうなんだ。 よかった。 其処は、もう、黒龍大公翁にお任せだもん。 私じゃ何もできない領域だよね。
「……学院に帰るか ……楽しい時間じゃった。 久しく忘れておった、血の沸立ちを覚えたぞ」
「アレクサス御爺様。 ご尽力、誠に有難うございました。 わたくしは、学生ですので、学院に戻ります。 きっと、本番の時は、わたくしは呼ばれませんので、また、なにか御座いましたら、お教え願えませんか」
「うむ、判って居る。 しかし、第二王太子も見る目が無いの。 望みは……フランツ王太子のみか……ちと、心細いの。 アレが、モノにならんとなると……ハンダイ王家は……ダメかもしれん」
さらっと、怖い事を仰るね。 ダメってどういう意味かな? あんまり、深く追求しないでおこう…… フランツ殿下なら、大丈夫だよ。 とっても良く、勉強されているし、お爺ちゃんの動きだって、判っている筈だよ? ちょっと、優しすぎて、優柔不断な所有るけどね。
ほら、国王になるって云う、気負いが有れば、いいんじゃない? 責任も、選択する重さも、理解してると思うよ。 労ばっかりで、報いがほとんど無いのが、国王陛下に成るって事だもんね。 まぁ、 第二王太子の妻になったらね。 そうなれば、支える事はしますよ。 王家の一員としてね。
なれればね……
なんか、とっても、嫌な予感と、胸騒ぎがしてるの。 この話題になると、決まって、グルグルするのよ。 なんだろうね、この感じ…… 無理矢理、笑顔作って、黒龍大公翁に、おやすみなさいを言ったの。
学院に帰る、前の日の夜の、ちょっとしたお茶会。
勝利を確信したわ。
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学院にもどって、事務官様達に使用権限を貰った 【 予算 】 についての、収支報告書を出して、今回のお仕事は終了したの。 取り敢えず、八大精霊教会に対して、ミハエル殿下の思し召しは、行き渡ったってことで。 でね、グレモリー様が、八大精霊教会の方々に逢う日に、八十二の精霊教会の聖職者さん達も、みんなお礼に行くそうよ。
ミハエル殿下、喜びそうね…… うん、ただ、喜んでるだけね。 裏で、死闘してたなんて、思いもしないでしょうね。 問題はね、ミルブール国教会の人。 どういった反応示すんだろ。 あっちは、私が色々動いた事ぐらい、判ってるはずだしね……
で、やっとこ、授業に戻れた。
先ずは、魔法科の授業。 座学はさ、ほとんど終わってんだ! だから、実習が三年生、四年生の授業の主な勉強。 で、今日は久々の授業。 嬉しかったなぁ……
授業は、王城ドラゴンズリーチから、馬車で離れた所に行ったのよ。 ちょっと、街からも出た。 演習用の野外設備の有る所ね。 なんの授業かと言うと……
ゴーレム作成!
やっほい! 楽しい! 色んな素材と、魔石で出来た、ゴーレムの核が置いてあったの。 ほら、傀儡じゃなくて、本物のゴーレムね。 そんでね、術式とか、魔方陣とかは、座学ですでに勉強済みじゃない。 教官の指導の元、みんなで作ってみる授業なの。 制御術式とかもね。
そんでね、わたしが選んだのは 「 土 」 一番安価で、耐久力無いけど、其処は、ほら、色んな術式あるじゃない。 色々、詰め込めるし、楽しそうだし…… 教官も何も言って来ないしね。 生温かく、見られてる感じがする。 まぁ、やるだけやるよ。
エルは 「 鉄 」 使うみたいね。 素材が固ければ固い程、高度な術式使うから、一目置かれているね。 うん、いいね。 ニコニコしながら、見てた。 他の生徒さんは、私がサボりまくって、上手く作れないって思ってるのよね。 素材が、土くらいしか使えないんだろうってね。 だから、敢えて 「 土 」 を、使ったのよ。
他の生徒さん達、材料を浮遊魔法で浮かせて「人型」にしてね。 其処にゴーレムの核を埋め込んで、術式魔方陣展開して、起動させてた。
……なんか、普通ね。
そんで、制御術式が曖昧だったらしいのよ。 トチ狂った動きして、暴れまわるの。 教授が破壊魔法でぶっ壊して、やり直しとか……見てて、思わず笑っちゃった。
エルは、しっかり作って、しっかり制御出来てたよ。 みんなも感心して見てた。 教授もウンウン頷いてたよ。 いいよね。 エル、頑張ってるもの。
私……みんなに見えない様な所で、一人作業。
うん、ボッチ……
寂しくなんて、無いやい!
よく掘り返されてる地面に、核を埋め込んだのよ。 地面にね。 遠巻きに見てた、生徒さん達、土人形も作れないのかって目で見てくさりやがりました! でね、魔方陣展開。 いろんなモノ組み込んだちょっと、人には見せられない術式組み込んだからね。 魔力をちょびっと流し込んで、呪文の詠唱開始。
「我、クロエ=カタリナ=セシル=シュバルツハントが命ずる。 土の巨人 立ち上がり、我の勅命を遂行せよ!」
あっさりと、土の巨人 が、立ち上がるの。 身の丈4メルテ。 重量1500ガルン。 ちょっと、スリムな彫像の様なゴーレムさんのお出まし。 はい、完成。 うん、この子、私の言う事なんでも聴くよ。
そんで、鍛錬の二十番までの型、仕込んである。 出現して、まだ残ってる魔方陣から、土で出来た剣を引き抜いてた。 う~ん、素敵巨人の完成形。 つるっぱげだけどね。
表面硬度は、” 鋼鉄 ” と、同じ強度まで、【圧縮】してあるし、動きだって滑らかよ? だって、土だもん。 関節とかに、邪魔になる様な、ゴツゴツしたモノで作ってないし。 土と、水だけ……
「じゃぁ、一番から、二十番まで、通しで、やってみて」
ゴーレムさん、ブンブン剣を振り始めたの。 うはぁ~~~ 壮観! これ、面白いね。 限界まで表面硬度上げてるから、黒光りしてる、真っ裸の巨人が、これまた、限界まで硬度を上げてる黒い剣を振り回してるの。 戦場に投入したら…… いや、いかんね。 そんな事考えちゃねぇ……
ニヤァ~って笑って、教官を見たの。 そしたら、教官の表情が強張ってんのよ。 うん、教官なら、見たら判るよね、あれ。 ゴーレムの核、直撃しないと、止まんないよ? で、ゴーレムの核の周りは、鋼鉄並みの装甲だよ?
抜ける?
壊せる?
止められる?
フフッフ! どうだ、こんにゃろ! 面白いだろ!
「こ、高度な核だな。 あったのか? この演習場に」
「えっ? あれは、只のゴーレムの【 核 】ですよ? 普通の……魔方陣少し書き換えてあるだけです、教官」
「……あの動きもか?」
「ええ、自分の知っている、剣の型を制御魔方陣に書き込みました。 土ですので、動きが滑らかですよね」
「……強度は……限界まで上げているだと?」
教官、【鑑定の眼】つかったんね。
「ええ。 駆動術式とは別に、体組織の変動術式組み込みましたから。 いけませんでした?」
「……いや……シュバルツハント」
「はい……」
「おまえ、あれ、現状固定できるか?」
「ええ……10日くらいなら、出来ますが?」
「制御術式渡せるか?」
「ええ、そんなに難しいモノではありませんから……」
「他人に渡してもいいか?」
「まぁ……犯罪者以外なら……」
「魔法騎士団に見せたい」
「ええ。どうぞ。 術式はこれです」
手に紡ぎ出した魔方陣を、教官の手に押し当てる。 これで、教官に渡った筈。 よね? 教官、目を白黒させてたけど、大丈夫かしら? まぁ、いいわ、楽しかったし。 屋外に置いといても、ちょっとやそっとの雨じゃ溶けないだろうしね……
「……シュバルツハント」
「はい」
「おまえ、あしたっから、二か月休みな」
「えっ? えぇぇぇぇぇ!」
「お前に教える事なんぞない。 術式変換、書き換え、制御術式の多重化…… 全部、今日から教える所だ。 全部、出来てんじゃねぇか。 それを、よくこんな少量の魔力で…… ちょっと、研究させてもらう。 いや、しかし、これ、魔法騎士団でも運用無理なんじゃないか? あんまりにも精緻すぎる…… よくわからん連結術式使ってるしな…… いいか、おまえ、判らん事が有ったら、俺にじゃなく、魔法騎士団の団長に聞け。 いいな」
うわぁぁぁぁん! また、お休みになっちゃったよ~~~~~!!!!
一連の動きを終えた、土の巨人さんには、演習場の片隅で、片膝ついて、待機姿勢取ってもらったよ。 そんで、私の授業は終わり…… 終わっちゃったよ……
他の生徒さん…… もちろん、茫然と見てた。 エルもね…… その晩、エルに色々と質問されたよ。 勉強熱心だね。 うん、判った。 知ってる限りの事で、禁忌に触れない事は、バッチリ教えたげるよ。
バッチリね。
―――――
魔法科は、強制的にお休みになっちゃったからね…… で、翌日、今度は行政内務科の授業に出たんだ。 丁度、一月経ったからね。 教官が自信なさげに私に言って来た。 約束だから、仕方ないって顔してる。 どうでもいいけど、私も授業、受けたいんです!!
「では、シュバルツハント。 ミーナと対戦してもらう。 それでな、お前は一人、ミーナはほら、取り巻いていた、生徒たちと司令部を作ってもらう。 使うのは中規模盤。 所定時間は、三十季。 勝利条件は、相手側の首都を奪取、および、自国の国力を開始前の三割増しにする事。 いいか?」
「はい! 教官! 有難うございます! 全力で頑張ります!」
教室の一角で、準備が行われた。 私、ボッチ 対 ミーナ連合! 総勢十名! 中規模盤に対峙して、お昼から、状況開始! たのっし~~~! 久々のゲームだ!
…………
…………
…………
三十季って、こんなに早かったっけ? 兵站準備して、耕作地広げて、騎兵作って、槍兵作って…… 税率引き下げて、開墾して…… 防衛戦闘して……楔打ち込んで……重装騎兵作って……ちょっと税率上げて…… 軍資金作って…… また、税率落として…… 食料備蓄して…………
で、二十九季目…… 王道の全力運動戦! あっという間に、防衛線突破して、相手側王都手前に到着っと!…… 重装騎兵と、重装魔法騎士と、歩兵で、力押し!
たっのし~~~!! みるみる、相手の戦闘ユニットが減っていくね。 相手側の兵站線切ってるから、備蓄も凄い勢いで減ってるし! ほら、餓死者! ほら、暴動! ほら、王城防衛戦闘!
開城!!!!
勝利!!
うはぁ! た・の・し・い !!!!
……なんでだ……
また、教室、追い出された………… まだ、ダメだって…… 十人がかりで何やってんだって、ミーナ怒られてた…… ゴメン…… 本気出した…… 殲滅しちゃった。 国力三倍に成ってた……
私…… お部屋に帰るね…………
ちぇ
私
学生なのに……
何でだよ!!
ブックマーク、感想、評価 有難うございます。
大変励みなります!!
―――――
クロエは実戦で、鍛えられちゃったみたいです。
たのしんで、授業を受けたら、来なくて良いって・・・
そりゃないでしょ・・・
クロエの心の中は、暴風域に巻き込まれております。




