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ヌーヴォー・アヴェニール   作者: 龍槍 椀
たとえ、悪者になっても
61/111

クロエ 精霊教会を訪ねる事になる



 


 新入生歓迎舞踏会、大盛況だったって!!





 要望は許す限り詰め込んだしね。 ミハエル殿下もお喜びだったって。 グレモリー様、ちょっと窮屈そうだって。 んで、高位貴族の方々、私が居なくてよかったって。




         やっぱりな!!!




 豪雪地帯の壁の氷花は要らんよね。 うん、自分でも判る。 理由は違うけど、結果的に変な空気出さずに済んだ事を、素直に喜んどこう! で、今年は、フランツ殿下いらっしゃらなかったんだって…… ふーん、そうなんだ。 暴走は、近衛親衛隊が止めたって事ね。


 そんでも、一番に踊ったのは、ミハエル殿下と、グレモリー様だって。 うはぁ…… それって、エリーゼ様、荒れたんじゃね? 今年は、フランツ殿下いらっしゃらなかったんでしょ? えっ? 二番目に踊ったって? いいのかよ……


 まぁ、どうでもいいけどね。 そんで、私はって言うと…… うん、寝てた。 中庭から帰って、まだ、みんな帰ってなかったから、一人で水浴びして、着替えて寝た。 流石にヴェルには手伝わせられんもんなぁ。 ヴェル、シレッと、やりそうだけどね…… いかんだろそれは。 で、疲れたもんな、色んな意味で。 グースカ寝てたんだよ。 ホントに。



 次の日、起きて鍛錬始める前に、テーブルの上に載った、 ” メモ ” を、見つけた。




         ” ごめんなさい ”




            そんだけ。


      宛名も無く、芳名も無い 一枚のメモ……



 ” 誰が、誰に、何を、 ” 謝ってるの? ほんと、テーブルの上に置かれた ” メモ ” が、ちょっと、怖かったよ。 メモを見て、首を傾げてたら、ヴェルが来てお話してくれた。 どうも、夜半、みんなが帰ってくるのと一緒に、ビジュリー来たみたいなんだけどね…… ゴメン、本気で寝てた。 知らんかったもん。





「深夜、エル達が帰って来るのと同時に、ビジュリー様がお見えになられまして…… クロエ様はもうお休みで有ると、お伝えしたところ…… その……」


「はい? なんでしょう?」


「泣き崩れられまして……」


「はいぃぃぃ??? なんで?」


「……お嬢様とのお約束が果たせなかったと……」


「う~ん、状況が、状況ですよ? 仕方ないでしょうに」


「……左様では御座いますが…… それに、ビジュリー様に、お捧げになった曲と、伝えられた御言葉の事も……」


「ええ、拙い手でしたね…… 宮廷楽士のコンマスで有られる、ビジュリー様の御兄さまに聞いて頂けるようなモノでは……」


「……バンデンバーグ子爵様が、どの様にお伝えになったかは、判りかねます。 しかし、ビジュリー様はとても悲しんでおいででした……」





           ちょっと、絶句した。





「……あとで、ビジュリー様のお部屋にお伺いするわ。 先触れお願い」


「御意」





 うん、行っとこう。 なんか、思いつめるタイプだしね。 この間みたいに、感情大爆発状態だったら、ヤバいもんね。 気にしてないよって、伝えないとね。 そんで、また、中庭でお茶するんだ!  でね、フルセットの鍛錬して、水浴びして、朝ごはん食べに食堂に向かったのよ。 エル達は別行動ね。 ヴェルだけ一緒。 





       ―――――





 食堂で朝ごはん食べてると、ヒソヒソが悪化しとる…… なんだこれ? 上級生、下級生を問わず…… なんか、痛いモノを見る目で見られた…… エルのレポートを精査しよう。 ラージェと、ミーナにも聞き取りだね。 パンと、ソーセージと、目玉焼きを食べて、なんも言わず、食堂を出たのさ。 そういえば、マーガレットと、アスカーナいなかったな…… まぁいいか。


 さて、今日は、授業に出る日だ。 来なくて良いって言われたけど、何日かに一度は顔を出しとく。 行政内務科の授業だよね。 ここんとこ、暫く集中されて行われている、ゲームの授業。 まぁ、遊びじゃないんだ。 ゲームを通した模擬実験だもんね。  


 ほうほう、結構、進んでるね。 中規模盤かぁ…… 二国間の遣り取り用だね。 今日からだってね。 ふーん。 アスカーナは、グレモリー様に付きっ切り。 そしたら、もれなくミハエル殿下もついてくる。 そんで、取り巻きもね。 うん、埋もれてる。 まぁ、頑張れ! 


 ミーナも頑張ってるみたいだね。 こっちは、こっちで、真面目な学生たちに取り囲まれとる。 頭いいし、綺麗だし、お姉さんだし…… 男の子たちの憧れっすね! うんうん。 おい、そこのお前、ミーナのこと、やらしい変な目で見んなよ! 


 さて、私…… どうしたもんかな…… ルールブック読込んでおこう。 教官も忙しそうだし……





     ―――――






 やっぱり、厄介ごとは、私の事、大好きみたいね。 



 静かに、オトナシクしてたのに、厄介ごとが歩いて来た。 見目麗しい、ミハエル殿下。 なんか底意地の悪そうな笑みを浮かべてたよ。 ゲーム盤 見て、思考する事に、飽きたのか?





「おい、お前に命じる事がある」


「何で御座いましょうか?」


「落ちこぼれて、誰にも相手にされて居ないお前に、仕事をやろう。 嬉しいだろう」





 ちょっと、言われた言葉の意味わかんなくって、ポカンと殿下の顔、見ちゃったよ。 ……そうだねぇ…… 状況的にみると、私、ボッチで、授業サボりまくってる様に見えるよね…… だれも、相手してくれない様に、見えちゃうよね。 ……教官 ……ゲームの相手してくれよ……





「はぁ……」


「グレモリーが言うにはな、ミルブールでは、高位の貴族は、社会奉仕をしなくてはならないのだそうだ」


「はい、存じております」





 そうだね、ミルブールの貴族達が各地のミルブール国教会の教会に、 ” 施し ” として、かなりの額の金銭を送ってるってね。 名目は、寄進。 実情は 賄賂。 そんで、民は助かってるのか? たんに、ミルブール国教会の私腹が肥えとるだけじゃ無いのか? あぁ、これ、黒龍大公翁おじいちゃんの情報だったな。 知らんのか……





「ふん、グレモリーが、ハンダイ龍王国ではしないのかと、俺に尋ねて来たんだ。 モチロンするさ、精霊教会に施しをな。 グレモリーは優しいだろ、それに習い、同様にな。 ……お前が仕切れ」


「……ミルブール王国の貴族の方達と同様に、此方でも、精霊教会に寄進を?」


「そうだ。 王都シンダイにある精霊教会に対してな! いくつあるかは知らんが。 ああ、八大精霊大教会はグレモリーと一緒に、俺と学生会が回る。 お前がするのは、細々したところだ」


「では、予算は?」


「事務官と相談しろ!」


「……御意に」


「落ちこぼれのお前の顔を見なくて済む、実に爽快だ」


「はぁ……では、学生会執行委員からの、即時発行の、 ” お手伝い ” として、承ります。」


「しっかりやれよ。 俺にいい所見せたかったらな!!」





 言うだけ言って、ミハエル殿下は去って行った。 勿論、グレモリー様の処にね。 はぁぁぁぁ…… やってらんないね。 まぁ、私的には、時間が潰れていいかもだけどね。 


 それにしても、何をしろってんだ? 施し? 援助ってなら判る。 一生懸命に生きていても、不測の事態で収入が無くなって、一時的に困窮する事はある。 ほら、長雨で極端に農作物がやられちゃったり、魔獣の襲撃で、備蓄倉庫が空に成ったりね…… でもね。


 ほら、施しって奴は違うんだよ。 その施しが収入の全部とかいう人いるじゃん、大体、大きな町にね。 あれって、どうかと思うのよ。 ちゃんと、働ける頑健な体が有って、その体を使う能力も有るのに、怠惰から働かない人とかね……


 そんなのに施すくらいなら、ザックリとまとめて、過疎ってる辺境に送り込んじゃえばいいのにね……


 仕方ないね、教官に許可を貰うよ、退出の。 教官、なんだか、申し訳なさそうにしてた。 そんな顔するんなら、私の相手してくれよ? 小声で教えてくれた。 なに? 教官が苦戦してるのを見られたら困るって? なにそれ…… そんで、私の実力に合わせるために、急いでいるのだそうだけれど、ミハエル殿下が足を引っ張ってるって?


 私の実力? 誰に聞いたのよ…… えっ、黒龍大公翁? あの爺ちゃん、なんつったのよ!





「アレクサス黒龍大公翁様にお問い合わせしたところ、ハンダイ龍王国、および 周辺国全土の盤面も問題なく処理でき、且つ、周辺国数国を纏めて処理できると。 ……シュバルツハント、アレクサス黒龍大公翁にそう云わせる君は、一体何者なのだ?」


「買いかぶりですわ……」


「誤魔化されんぞ、シュバルツハント。 先日の歓迎舞踏会を仕切った手腕見せて貰っている」


「……御意に……」





 あぁ~あ……もう、仕切った事、伝わってるんだ…… やらかしてたんだ、私…… んじゃ、暫く来れないけど、いいのね? マジで来ないよ? また、サボりって言われるような事にはしないでよ。 ホントにもう!





「そうだな。 少なくとも、この月は来なくて良い。 ひと月で、どの位、他の生徒の実力をあげる事が出来るか、それに掛かっているがな……」





 ホントに、暫く来なくて良くなったよ ……なんなんだ? わたしにも、勉強させろよ!!!






 *************






 トボトボと事務官の部屋に向かったのね。 で、事務長への面会を申請したの。 何時になるかなぁ……って思ってたら、ズッコケ眼鏡の女性事務官が、いきなり言ったのよ。





「クロエお嬢様、直ぐにこちらに。 バウワー事務長がおいでに成ります」


「あ、有難うございます。 なぜ、……その ……特別な配慮を?」


「それは、クロエお嬢様 ですから!!」





 い、 ……いや、いや、いや ……その反応は、おかしいだろ? 頭に疑問符が沢山出た状態で、事務長室に入って行ったのよ。 直ぐに女性事務官は退出したのね。 めっちゃいい笑顔でね……  でだ、目の前にニッコニコ顔の事務長が座ってる。





「どうぞ、おかけください」


「突然の訪問、誠に申し訳なく思います。 また、特別な配慮を賜り、有難うございます。 でも……なぜですの?」


「それは、シュバルツハント様ですから」





 ありゃりゃ? 


 ここにも、おかしい人が居るよ? まぁいいかっ! 時間の節約になったし。 でね、状況を説明したのよ。 ミハエル殿下の、 ” 施し ” の件ね。 予算とか分配率とか…… そしたらさ、スンゴイ要望が有ったんだって。 





   ―――――





 龍王国にもそれなりの、福祉予算ってあるのよ。 本当に困窮した人に一時貸出したり、国王様からの救済ってことでね。 青龍大公様が色々とやって、捻出しているらしいの。 浮浪者が王都に溢れると治安が悪くなって、警備用人員が増大して、経費がかさむって。 でね、経費と浮浪者に成らない様にするための予算をバランス見て配分してるんだって。 で、年間予算が決まるのよ。 




 ミハエル殿下、福祉予算の半年分をよこせって…… 馬鹿じゃない?




 でね、その分配率も、八大精霊教会が大半。 分捕った分の八割くらい持ってく心算つもり…… そりゃね、光、闇、樹、土、火、鉱、水、風、の大精霊への祈りは大事よ。 でも、直接お金を精霊教会に寄進するって…… もっと使い道有るんじゃないの? 精霊様は、貨幣価値に祈りを感じないわよ? 人が真摯に祈る事が、精霊様の最大の喜びに繋がるのよ? 


 もうね ……わかんない。 考えている事が…… ミルブール国教会の様式が一番良いって思ってるのかしら? 


 事務長さんも頭抱えてた。 物凄い嫌味を青龍大公系の事務方に浴びせられたって…… うん、その気持ち判るわ。 バランスが崩れて…… ” ひずむ” わね。 最近は、天候にも恵まれて、餓える心配はないけどね。 それでも、微妙な線なのよ。 


 ほんの十年程前までは、天龍様の加護が龍王国全土に行き渡ってなかったでしょ。 だから、王都シンダイから離れた地域が魔物の襲撃に晒されていたのよ。 そんで、大人の人が少なくなって…… 村を放棄して、王都シンダイに来ちゃったって人が多いのよ。 仕事が急に増える事無いのにね…… でも、まぁ、天龍様の御加護も復活して、辺境にも安寧が訪れ始めてるの。


 一旦放棄した村の人達は、やっぱり故郷には帰りづらいのか、王都シンダイに留まっているって状況。



    その上ね……






「やはり、子供たちですか……」


「ええ、内務寮と財務寮の事務官様が仰っておいででした」






 そうなのよ…… 王都シンダイに来た大人たちは、家族連れ。 そんで、慣れない王都暮らしで疲弊して…… 子供を捨てちゃったりするわけよ……。  辺境じゃ、ホントにどうしようもない時にね…… 森に置いてくるって事するんだよね……。 もうね、目をそむけたくなる現実なんだよ。 直視しないと、いずれ大問題になるけどね。 





「でも…… それって一過性の問題じゃありませんよね」


「そうなんです。 単なる、 ” 施し ” では、すみません。 継続的な支援が必要なんです。 その為の予算だったんですが……」





 一回、行ってみるか。 王都シンダイの精霊教会に…… 幾つあるんだろう? 見回りに行きたい旨を事務長に伝えて、王都シンダイに登録されている精霊教会全部を表にして貰った。



 うわぁぁぁ!!全部で八十二か所? 八大精霊教会抜いて?  



        マジ……? 



 辺境じゃ三つ、四つの村に一個くらいだったよ? でも……仕方ないね…… 行くか…… 丁寧にお礼を言ってから、お部屋に戻った。 ちょっと、眩暈がしたよ。 ヴェルに街に出るよって言ったら、目を丸くされた。 仕方ないじゃん、 ” お仕事 ” なんだもん。 


 取り敢えず、街に降りるのは、明日からにしよう。 ヴェルたちの準備も必要だしね。 そんで、私は、ビジュリーの部屋に向かう事にしたんだよ。 もう、先触れは出してあるしね。 お返事無かったけど……





 *************





 ビジュリーの部屋の前まで来たら、見知った人影が二つあったのよ。 アスカーナとマーガレット。 なんか口々に扉に向かって言ってるのだけど、まだ何言ってるか判らん。 で、近寄って行ったら、二人とも、私をみて、驚いた顔したんだよ。 えっ? なんで? 





「い、今はダメ……行っちゃぁダメだ……」





 なんか、マーガレットの絞り出す様な声。 アスカーナも頷いて私を扉から引き離そうとしてる。 えっ、もう授業おわったの? 





「ミハエル殿下の集中力がなくなって、仕方なく…… グレモリー様もお疲れの様で、今日は中止と……」





 ふぅ…… やっぱな。 結構頭使うのよね。 そんで、緻密な計算も要求されるのよ、ゲームってね。 アスカーナ大丈夫?





「わたくしは、問題ありません。 ミーナ様の処に行こうかと思ったのですが、教官様が本日はもういいと」





 そうなんだ…… まぁ、アスカーナは良くやってるから、ご褒美的な奴かな? そんで、なんで、ココに?





「……ボクが呼んだ。 一人じゃ無理だったから……」





 しょんぼりしてるマーガレット。 何時になく凹んどるな。 どうした?





「……ビジュリーが部屋から出てこない。 と云うより、部屋にも入らせてくれない。 クロエは知らないと思うけど…… 素で喋ってる…… どうしようもない……」





 アスカーナも心配してるね。 隣で頷いてるよ…… 


 あぁぁ……やっぱり。 感情が溢れだして、自分じゃどうしようもなくなってんだね。 癇癪爆発状態だねぇ……自分が何に怒っているのかも分からないんだよ、それ。  誰の言葉も耳に入らないんよ、その状態。 諫めても、慰めても、何をしても、耳に届かない。 抜け出す為の糸口すら、感情の奔流の中に埋まってるんだよ。 



          なんで、判るかって? そりゃ、経験者だもんね。


                で、治め方も知ってる。


                ダイジョブ、任せろ!!



 つっとヴェルの方を向いて、彼に言葉を紡いだ。 荒れ狂ってるビジュリーの心を癒す為の方法は、彼女の、 ” 一番 ” を、用意する事。





「ヴェル、お願いが」


「はい、お嬢様」


「私の部屋から、ヴィヴィ妃殿下のピッパを取ってきて」


「御意」





 ヴェルは優秀な従者だよ。 幾許もしない内に、ピッパを持って現れた。 うん、ありがと。 部屋の中から、なんか叫んでる声がする、 ビジュリーの声だよね、あれ。 でも、なんか、凄い暴れてて……ね。 




⦅来ないでって言ってるのよ! ほっといてよ! なにもしたくないの! なにも…… なにも…… もう、嫌ぁぁぁぁぁ!!⦆




 来てるね、相当。 うん、そっか。 そんでね、私は、手渡されたピッパをもって、ビジュリーの部屋の扉の前に座り込んだ。 二人が驚いてた。 そっか…… 二人は、知らないんだね、この楽器。 





      うん、この楽器から、流れ出る音、聞いて、驚け!





 奏でる曲は、勿論、【降龍祭】の晩餐会の時に弾いた曲。 南アフィカン王国の民族音楽なんだよ。


 微妙な和音、聞きなれない音の集まり、たぶんビジュリーには歪んだ音にしか聞こえない筈。 でもね、不快ではない筈よ。 だって、この曲、あの国で長い事親しまれてる曲なんだもん。 



 その旋律には、人の何かを 揺さぶる、 ” モノ ” が、あるの。



 その調べを聴くと、心が、 ” ザワザワ ” するのよ。



 でね、そのザワザワはね、ワクワクとか、ドキドキとかも混ざってるのよ……



 多分、揺さぶるね。 感情が爆発してるビジュリーもね。



 だって、あの子、





        【 音楽 】、大好きなんだもん。





 ほらね、叫び声が聞こえなくなったよ。 そんでさ、あん時と同じに、自分で考えたアレンジを付け加えるのよ。 


 ダランダールの 『新しき未来ヌーヴォー・アヴェニール』 第四楽章 最終部分、俗に ” 夜明け ”って言われる処。 


 イメージは、サバンナに昇る朝日。 徐々に周囲が明るくなり、夜の帳が上がる。 天空は、深い青から、水色のグラデーション。一片の雲も無く晴れ渡った朝。 地平線はマルーン。 輝かしい陽光の束が、地平線から立ち昇っていく。 ピッパの音が大きく強くなっていく。


 あぁ、精霊様。 ビジュリーに届けてください。 無明の闇をさまよう彼女に、私はココに居ると、伝えてください。 感情が音に乗る。 大きく力強く。 


 東の空に太陽が昇るように、クライマックス。 最大音量、一途に、一途に、届くように、祈ります。 




          ビジュリーの心に、平安を!




 最後の一音が終わった。 扉の前に座ったまま、動かない私。 じ~~っと扉の向こう側を伺っているの。 アスカーナも、マーガレットも、黙ったまま、私と、ビジュリーの部屋の扉を見てたのよ。








              カチャ





 ほらね、やっぱり、扉が開いた。 ビジュリー、自分から開けたよ、 泣きはらした目を瞬かせながら、ビジュリーが覗いてきたんだ。 感情の爆発は収まったかな? もう、自分の心を取り戻したかな?





    「 お帰りなさい、ビジュリー。 お邪魔しても、いいかしら 」





 ビジュリーの目から、大粒の涙が零れ落ちたの。 でも、朗らかな笑顔だった。 恥ずかし気に下を向いた後、扉を大きく開いて、飛び出して来た。 そんで、座ってピッパを持ってる私に、抱きついて来たのよ。 しっかりと、……ホントにしっかりとね。



           もう、痛いよぉ……  


             

       精霊様、届けてくれて有難うございます。




            ねぇ、ビジュリー。





           今度は、何、弾こっか? 






ブックマーク、感想、評価 誠に有難う御座います。

中の人、とてもうれしいです。 頑張って行こう! おー!


―――――


ミハエル殿下の勘違い発言が炸裂中です。 何だろう、この人・・・中の人も彼の思考過程を作っている時に、”こんだけの自信、どっから来るんだ?” と不安に思いましたね・・・でも、居るんですよ、リアルで、何をしたって、自分は愛されている、と勘違いしてる人・・・  うむ、何事もネタ集めでしょうか・・・



では、また、明晩、お会いしましょう!

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