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ヌーヴォー・アヴェニール   作者: 龍槍 椀
たとえ、悪者になっても
58/111

クロエ 受付嬢になる事を承諾する

 


 さってと…… 一応、マリーには、ミルブール王国の俗習やら、成り立ちを云ってみた。 基本、ハンダイ龍王国とそう変わりは無いのよ。 ほぼ、兄弟国みたいなものだしね。 ただ、彼方は、山がちな地形で街道の整備も進んではいないの。 だから、国の特色として、希少な金属の産地として有名なのよ。


 魔法金属とか、ワクワクしちゃうじゃない。 反面、平地が少ないから、食料自給率は低いの…… 残念な事にね。 だから、ミルブール王国の人に、過剰な晩餐は禁物なのよ。 龍王国では、普通に食べているモノでも、彼方では御馳走になったりするから。 貿易に必要な産物は有るのだけれど、街道の整備が遅れているせいで、商業はあんまり盛んでは無いの。


 だから、ミルブールの民は、みんな質素なのを好むのよ。 でね、もう一つ。 山と森と湖で出来たミルブール王国は、魔物の跋扈する土地としても、有名なの。 発生原因はよくわかってなくて、でも、大きな町の近くでも、結構強い魔物が出現するから、街道の整備も遅れてるってわけ。 


 彼方の騎士さんが強いのも、常に臨戦態勢だからね。 


 よく分かっていない、発生原因…… 理由は、地龍様の穢れなんだけどね……。 ほら、ミルブール国教会が、黒魔術で魔物を退けたりしてるでしょ。 対症療法が上手く行きすぎて、根本治療が出来ていないって事なんだよ。 で、其処には、必ず、権益とかが出来ちゃって…… ミルブール国教会が強い権能を持ち始めてるんだよ…… これ、黒龍大公翁おじいちゃんの情報ね。


 だから、高位貴族であり、十二支族の第二位ヴァサンゴ家のお嬢様であり、女王陛下候補のグレモリー様には、ミルブール国教会がらみの話は、あんまり良くないよって、伝えといた。





「色々と、ありますのね」


「はい、お隣の国で、ほぼ、兄弟国とはいえ、お国柄がかなり、龍王国とは違います。 話題にはお気を付けください」


「ありがとう、クロエ様。 お茶菓子とかは……」


「お茶は、普通に飲まれています。 が、黒茶が宜しいかと。 また、お茶菓子ですが、焼き菓子がお好きなようです」


「そうなんですの…… 判りました。 あと……お気づきの点は?」


「特別な対応はされない方が宜しいかと。 グレモリー様は、龍王国に留学されて居られます。 そして、学生として実に真剣に勉強されて居られます。 真面目な方ですので、 ” 王族 ” 対応されますと、反対に困惑されてしまわれるかと…… このあたりの事は、アスカーナ様がよくご存知な筈です」


「そうですね。 確かに、アスカーナ様から、そう、聞き及んでおりますわ……」





 マリー、考え込んでるよね。 いいね、いい傾向だよ。 社交嫌いのマリーが、一生懸命、ホストを務めようとしてるんだもん。 マリーは【サロン】を作ってから、精神的に成長したと思うよ。 ニッコニッコ笑いながら、マリーとお話出来たし、こんな日が有っても、いいよね。





 *************





 その日は、マリーと、アスカーナ、そんで、マーガレットが、サロンの部屋に居たの。 ビジュリーは、何でも、宮廷楽士さん達と、歓迎舞踏会の、お話があって、来てなかった。 そっか…… もうすぐ新入生の歓迎舞踏会があったんだっけ…… 忘れる所だった。 今年こそ、出ないぞ!


 私が、制服でお邪魔したら、三人が、ビックリしてたよ。 みんなそれなりに、ドレスを着用してたし、バッチリお化粧もしてた。 私は、いつも通り。 






「宜しいのですか?」


「なんの事でしょうか?」


「ドレスで、お迎えでは?」


「通達には、” 普段通りで ” と、書かれておりましたので」


「そ、そうですわね」






 なんで、そんなに慌ててるの? あっ、そうか、貴族科の人って、普段からドレス着用だったね。アスカーナも、マーガレットもそれに合わせたっと。 うん、私はしない。 だって、制服って学生の正装よ? なにがいけないのかしら?


 そうこうしている内に、御一行様の到着になりました。 ボリスさんが恭しく、招き入れておられてますね。 まぁ、私にとっては、居るだけでいいんだから、簡単なお仕事ですよね。


 御一行様、ミハエル殿下を筆頭に、学生会執行委員の主要人物が、くっついてたよ。 エーリッヒ=ディ=ブラウン子爵、フンベルト=オスカー=クラインハルト子爵、エドガー=パンナレル子爵…… お前ら、本当に金魚のフンだな。 でだ、なんでか、エリーゼ様も居たよ。 で、真打のグレモリー様っと。





「なんだ、小さい部屋だな」





 開口一発目から、失礼な奴だな! ミハエル殿下よ、あんた、本当に空気読めないよね。 頭ついてんのか? 






「お越し下さり、誠に光栄に存じます。 拙きサロンでは、御座いますが、どうぞごゆるりと」






 マリー、頑張ってるね。 そんで、入室された御一行様がた、バラバラに座られたよ。 ホント、自由奔放だね。 エリーゼ様、ぐるぐる見回して、粗探し真っ最中。 他の方もね。 そんで、やっぱり、目に留まるのは、 わ ・ た ・ し ♪






「あら、誰かと思えば、……制服姿で……まぁドレスも、お持ちでないでしょうから!」






 なんにも答えず、氷の微笑を張り付けたまま、眺めてた。 珍獣見る感じね。 






「ご挨拶も、頂けないの? ホントに、コレだから、下賤な者は!」






 なんで、上から目線なの? まぁね、マリーのサロンでは、私はお客様なのよね…… だから、敢えて何もしないの。 したら、マリーの顔、潰すしね。 マリーからの紹介か、彼方から挨拶が有れば、するけど。 勿論、私よりも上位者である、グレモリー様と、あの 「失礼小僧」 には、入室と同時にカーテシーバッチリ決めといたよ。 


 あとの有象無象には、なんもしない。 貴族年鑑よく読め! エリーゼ、あんたと、私は同格だ! そっちから売った喧嘩だ、敢えて買わないけどね。


 でだ、本題に移るっと! 






「グレモリー様、本日はお目に掛かれ、誠に嬉しく存じます。 教室での真摯な御姿に、クロエは感服しております。 学院での授業は、いかがでしょうか?」





 グレモリー様、なんか、下向いて詰まんなさそうにしてたけど、私が声を掛けたら、パッと顔を上げて、にこやかに微笑まれた。 うん、とっても綺麗ね。 美しいって思うよ。 でね、思う訳よ、精霊様って本当に不公平…… ゴージャスで、ボリューミーなグレモリー様の前に居ると、自分の姿が…… なんかね。





「クロエ様、なかなかと時間が取れず、いつも、遠くから御姿拝見するだけになって居りました…… お声がけするのが難しくて……」





 そう言って、ミハエル殿下とその金魚のフンを流し目で見ておられた。 そうだね、いっつも一緒で、誰かが近寄ろうもんなら、ガッチガチにガードするもんね、こいつら。





「いつでも、お声をおかけ下さいませ。 わたくしは、大丈夫ですから」





 ニッコリ笑っとく。 そうだね、護衛対象から動くと、護衛は対処できないからね。 グレモリー様、更に笑みを増して、大きく頷かれた。 反対に、ミハエル殿下、めっちゃ渋い顔。 そんなに、私と話すの嫌かね……どうでも、いいけど。





「グレモリー様、こんな下賤の者と話をするなど、高貴なグレモリー様に傷が付くやもしれません!」





 エリーゼ様の言葉に、あからさまな不快感を醸すグレモリー様…… ” 何言ってんだ、こいつ? ” って、顔。 そうだね、私も、そう思うよ。  





「そうですとも、グレモリー様のお相手は、我ら学生会執行委員が御用意いたします! このような者とは違う、青き血の持ち主達が、グレモリー様とご歓談致します!」





 エーリッヒ、こいつもグレモリー様の美貌にイカれた口か…… なんか、キラキラした目で、グレモリー様を見詰めてるね。 ほら、ミハエル殿下の御機嫌が更に悪くなったよ。 もうね、奴らが口を開く度に、空気が悪くなる。 グレモリー様、だんだん萎れて来る…… 大丈夫か?  原因は私か?


 なんとか、気を取り戻そうとして、グレモリー様、思い出したのが、新入生歓迎舞踏会。 そんで、それを口に出した。 なんとか、変な方向に話が向かない様に……





 結果…… とっても変な話になりました……






 *************






「お姫様……唖然としてたね」





 マーガレットが、溜息交じりにそう口火を切ったのよ。 御一行様が部屋を出られてから、沈黙が部屋を押し包んでたよ。 ボリスさん…… 絶句したままだったしね。 黒茶も焼き菓子も手を付けて無いよ……。 一体、何しに来たの? あの連中。 グレモリー様が可哀想だよ……





 ―――――





 グレモリー様が、歓迎舞踏会の話を切り出した後、なぜか、ミハエル殿下のやる気スイッチが入って、喜色満面になって、過去の栄光の話を、始められたよ。 そんで、いかに私が、ミハエル殿下の気を引こうと、似合わないドレス姿で、壁の花に成ってたかを、脚色交えながら、滔々と語ってくれやがりました。



 ほうほう、そういう見方もあったんだ。



 別段、気にもせず、その話を伺ってると、唐突にミハエル殿下が、私に申し渡したよ。 






「お前が、ボールルームに居るだけで、気が散るな。 そうだな…… お前、受付しろ。 ん~、 学生会執行委員の依頼だ! 指名された者は、学生会の執行委員の手助けをする事になってたな! そうだ! なっ!」





 横に居た、エーリッヒに同意を求めてたよ。 そしたら、エーリッヒ、おもいっきり頷いてた。 






「ええ、その通りです。 学生会の執行委員は、補助を指名し、学生主体の行事の進行を手助けさせることが出来ます。 まさしく!」






 ほうほう、知ってますよ、その規則。 お手盛り規則でね、それ。 執行委員の手が足りない時に、任命するんだよ、本来ならば。 でだ、間違った使い方としては、学生会執行委員で無い者を、学生会執行委員室に長期間いる事が出来るように、補助って役割を与えるんだよ。 お気に入りの巣窟が出来上がる訳だ。



 で、今回は、お邪魔虫わたしの排除。 



 歓迎舞踏会の受付ってね…… ボールルームに入れないよ。 だから、普通は、学院の職員がするのよ。 別段、手が足りない訳じゃ無いのよ?  歓迎舞踏会に出席の返事を出した生徒さん達の名前をチェックして、ホントに来たかどうか、遅参は無いか、を確認する役。 


 ほら、遅参のペナルティ あるじゃない。 毎年、何かしら騒動が有るのよね…… で、それを押し付けたと。 うん、上手い手だね。 まさしくお手伝いだもんね。 ここで、私が、ミハエル殿下の言うとおりの、” 計算高くて、ミハエル殿下の気を引こうとして、色々やらかす女 ” ならば、泣いて嫌がるだろうって事。






    ざ ・ ん ・ ね ・ ん ・ で ・ し ・ た






 丁度、欠席しようかどうか、悩んでた所だったんだ! ほら、フランツ殿下の手前、王族の婚約者が欠席とはいかないからね。 もし、フランツ殿下が居なければ、あっさり、欠席してたよ。 渡りに船! まさに、望んでいた展開!





「謹んで、承ります。 詳細は、事務官様にお聞き致します」





 って、答えたんだ。 もう、笑いを堪えるの、必死! ちょっと、肩が震えるくらいね。 何を勘違いしたか、ミハエル殿下、そんな私を見て、ものっそう、満足してた。 ほんと、何を勘違いしたんだ? 判らんなぁ……


 でだ、その勘違い…… 他の人にも伝染したよ。 金魚のフン達は、ふんぞり返るし、マリー達は、青白く顔色を失ってた。 ボリス様は……別な意味で、殺気が漏れてた……


 グレモリー様? うん、さっぱり状況が呑み込めてないよ。 知らないもんね。 そんで、グレモリー様にニッコリと笑ってあげた。 彼女も、空気を読んで、笑い返してくれた。 きっと後で、侍女の人に詳細を聞くね。 そん時の情景は、あとで、エル辺りに聞いておこう。 まぁ、ヴェルでもいいけどね。


 凍り付いたサロンは、さぞや居心地が悪かったんだろうね。 ミハエル殿下以下、金魚のフン、および、エリーゼ様が、グレモリー様を促して、退出されたよ。 うん、最後は気分よく帰れたんだろうね、廊下でミハエル殿下の大笑いの声がしてた。





 ―――――





「いいのかい? クロエ」


「ええ、問題御座いませんわ、マーガレット様」






 微妙な雰囲気だね…… みんな、私が舞踏会に出るの嫌がってたの、知ってたんじゃないのか? それで、この反応はなんだ? いつも元気印のマーガレットまで、眉が下がってるよ? なんでじゃ?





「あ、あんまりですわ!!」





 マリー、どうしたの? そんなに、怒る事でもないよ? ” 学生会執行委員が ”、” 非常手段の ”、” お手伝いで ”、” 私を ”、” 受付に ”、” 任命した。 ”


 うん、間違ってない。 そんで、私には、拒否権は無い。 身内の不幸とか、遠くに出てるとか、やむを得ない事情なんて、無い物。





「マリー様……クロエは、大丈夫ですわ。 そんなに怒らないで? ボリスさん、黒茶、入れ直して頂けますか?」





 ちょっと、落ち着こうか、みんな。 まぁ、ちょっとメンドクサイ御役目だけど、十分に対応できるしね。 ボリス様が、黒茶を入れ直してくれた。 普段は流れる様な手捌きなんだけど、ちょっと震えてる。 で、ボリス様の顔を見上げてみた。





「クロエお嬢様……」


「はい?」


「あそこまで、蔑ろにされて居たとは……」


「良いのですよ。 ボリス様、わたくしに関して、とやかく云うのは、別段、気にはしていませんわ。 眼のある人は、見えますもの」


「……恐れ入りました」





 恭しく、黒茶を入れ直してくれたよ。 今度は、冷めないうちに、飲もうよ、みんな。 美味しい焼き菓子もあるしね。 なんで、アスカーナ涙目なのよ。 なんで、マリー顔真っ赤なのよ。 そんで、マーガレット、あんた、なに企んでんの? 目付きがヤバいよ……






        そんな、こんなで、受付になりました!









             やってやんよ!








ブックマーク、感想、評価 とっても嬉しいです。

読んで頂き、誠に有難うございます。


―――――


例年通り、新入生歓迎舞踏会のシーズンです。


何が起こるか・・・また、厄介な目に合うのでしょうか?

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