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ヌーヴォー・アヴェニール   作者: 龍槍 椀
たとえ、悪者になっても
57/111

クロエ マリーのサロンへ、お手伝いに行くことを決める。

 


 行政内務科の授業は、あれ以降、まともになったよ。 うん、ミハエル殿下のお出ましが、少々、少なくなったね。 グレモリー様は、キッチリと出席されて、課題もこなされているよ。 流石ね。 たじろぎもしないから、凄いよ。 わかんないトコあったら、どんどん質問されるし、ミルブール王国との比較対照とかも、積極的にされて居るのよ…… 


 勉強しに来たって、仰ってたけど、本気ね。 


 女王陛下候補ってだけのことあるわ……負けない様に頑張ろう! とは、いっても、授業の中には、【ちから】が、入んない奴、有るんだよね。 そう、例のゲームの時間。 いわゆる、兵棋演習な訳よ。 今は、例題的なのやってるの。 架空の国の国王として、外敵を牽制しつつ、不安定な国内情勢の均衡を取りつつ、三十季を凌げってやつ。


    なんかね……


 凌ぐだけだもん。 他の生徒さん達は、ルールブック読込んで無いから、ボロボロ…… グレモリー様も、初見だから、手古摺てこずってるみたい。 で、その横で、ミハエル殿下が間違ったルールをごちゃごちゃいうもんだから、グレモリー様、とうとう、ブチ切れてた……


 何やってんだか…… で、教官がグレモリー様の相手に、アスカーナを指名してね……メキメキ腕あげてるようよ。 まぁ、頭もいいし、「国家運営」の、基本とか、肝とか、よくご存じだし……当たり前よね。


 私は、適当に……可もなく、不可もなく……教官が近くに寄って来て、ボソッと漏らすのよ……





「シュバルツハント…… あまり露骨に手を抜くな。 リヒターから聴いているぞ…… アレクサス様から、薫陶を受けたと」


「先生、買いかぶりですわ…… わたくしは、すこし手解きを受けただけですもの」


「シュバルツハント、 ……俺はな、アレクサス様に、 ” 手解き ” を、受けた事があるんだ。 ずっと昔な。 あの方に、 ” 少し ” とか、 ” 慈悲 ” などと言う概念は無い」


「……御意に……」





 あぁぁぁぁ!! 黒龍大公翁おじいちゃんの馬鹿!! なんで、こんなに、あちこちに、罠を仕掛けてあんのよ! でも、まぁ……私が、目立ちたくないって云うのは、伝わってるみたい。 だから、”露骨に手を抜くな” に、なるのね。 わかった。 ちょっとだけ、本気出して、手早く終わらせるね……





 ―――――





 時間が開いた…… うん、だいぶ余った。  ちょっとしか、本気出して無いよ? 三十季もあれば、国力、倍くらいにはなるじゃん! 敵だって、諜報戦仕掛ける様な本気の敵が設定されてる訳じゃ無いし…… 単に、力の強い魔物のスタンピード対策みたいなものじゃん。 通常対応で、どうとでもなるのに…… 経過を纏めて、図表も一緒に時間内に提出したよ。 そしたら、教官、目を剥いてた……



 あれ? あれれ?  ほんとに、教室、追い出されたよ…… 教官…… 二、三日、来なくていいって。




       なんでじゃ!!!




 仕方ない…… なんか他の事しよう。 いつも、部屋の中でゴソゴソしてるから、たまには、思いっきり体を動かすのもいいよね…… うん、そうしよう。 でね、ラージェが所属してる、行政騎士科の自主鍛錬にお邪魔する事にしたの。


 勿論、学長と法務官に申請書出してね。 受理されたのよ。 だって、正規の授業じゃ無くて、自主鍛錬でしょ? 教官もさ、正規の騎士さんが何人か居るだけ。 鍛錬場にもあんまり人居なくて、居残り授業とか、落第しそうな人とか、そんな人ばっかりだったからね。 だから、簡単に申請が通ったのよ。


 邪魔して来るかなぁ…… って、思ってたけど、ミハエル殿下、それどころじゃ、無かったみたいね。


 でね、ラージェにお願いして、一緒に行ってもらったのよ。 だって、行政内務科の生徒が一体何しに来たって、思われるじゃない…… まぁ、実際そうだしね。 でね、一緒に行って、「何」したかったかと言うと、鍛錬に使う防具を作りによ。 ハンダイ龍王国の正規の装備品だからね、採寸とかフィッテイングとか、有る訳よ。


 そんで、ラージェにお願いしたのよ。 一応、「 従者 」、扱いだし……  ” 地方視察の際に、身を守る為に…… ” なんて、 ” 方便 ” 使い倒してね。  で、装備一式を手に入れたの。 これさ、学院の持ち物なんだけど、学生個人専用になるから、卒業時に下賜されるのよ。 つまり、ロハただで、貰えるの。 規則上は…… 学院の希望する生徒は、誰でも貰えるのよ。 



 記念にって、作ってく人もいるのよね。



 だって、正規の装備よ? 街で作ったら、金貨2枚は固いね。 わたしは、女の子だし、体も大きく無いから、重装備は無理。 着たら、重くて動けないよ。 重量問題で、中装備も無理。 結局、軽装備になるのよね。 革装備ね。 所々に強化目的の金属プレートが縫い込んであるのよ。 



 メティア、 胸当てチェストプレート、 腕当てガントレット、 脛当てレガース、 腰当てヒップガード、 短靴ショートブーツ。 それと、分厚めのキルティング生地の鎧下で、全部。 良い物使ってるわね。 軽いし、動きやすいし、適度な防御力もあるし。 まぁ、軽装騎兵用の鎧だからね。 本来なら、この上にサーコートを羽織るんだけど、私は行政騎士科じゃないから、もらえなかったよ……



 あれ、カッコいいんだけどなぁ……



 でね、本来なら、ここで、武器も貰うんだけど、私には、護剣があるから、辞退したの。 装備係の人も、私の護剣みたら、納得してくれたね。 


 でね、行ったのよ。 鍛錬場に。 まぁ…… 広いね。 色んなモノおいてあったけど、私は護剣をふりまわすつもりマンマンだったから、あえて、何にも無い開けた場所にいったのよ。 ラージェと一緒にね。





「クロエお嬢様、如何致します? お相手、致しましょうか?」


「う~ん…… いいや。 ちょっと、動きたいだけだから……ね。 ラージェも、自主鍛錬あるんでしょ? やってきなよ」


「御側に居ります」


「……護衛ね。 ……わかった。 でも、ちょっと大きく動くから、離れててね」


「御意に」





 でね、朝の鍛錬でお部屋の関係上、完璧に出来ない、五十一番から、七十二番を普通の歩幅でやってみたのよ。 最初はゆっくり、剣筋を確かめる様に。 で、確認して、問題が無さそうだったから、大きく踏み出した。 一歩目から、リキ入れてみた。 うん、いいね、護剣の重みで、振り回されない。 きっちり、回してる感がある。 手元にバランスが来る。 思い描く通り、振れてる。



           ザン


       ザン


                 ザン



 廻し、振り下ろし、横に薙ぐ。 その度に空気を断つ音が心地いいのよ。 剣筋が乱れずに走ると、なんか、光の線が引かれるみたいでさ…… 六十番以降の型は、跳躍も入って来るから、かなりの空間が必要。 でね、振りも更に大きく重くなるから、きちんと脚捌きしないと、剣に引っ張られるのよ。 体幹もブレたら、ひっくり返るしね。


 あぁぁぁ、いい汗かいた!!! ラージェ、待っててくれて……・ラージェ!! どうしたの?





「お、お嬢様…… その技は……」


「技? 何の事?」


「なんどか…… 剣が光を放っておりました……ので。 それに…… 教官殿が…… 自慢されて居た、技が、最初の方に…… たしか…… 奥義とか……」


「えぇ~~~違うよ、 ” 奥義 ” は、この上に有るのよ? 爺様がそう言ってたよ。 七十二通り全部をこなせるようになって、初めて、 ” 奥義 ” の入口に立てるって…… だから…… 違う……よ?」





 そうなの…… 奥義の入口…… だよね。  入口?  どういう事?





「……教官殿が、おっしゃってました。 型は、筆頭近衛騎士 カール=グスタフ=シュバルツハント子爵が編み出されたと。 カール様が仰られた言葉に、 ” すべてが、必然とされる動きに集約されると、剣撃が倍加される。それが、【 奥義 】 ” と。 教官殿も、長い鍛錬の末、掴んだ物だと。 鍛錬を怠るなと言われたと思っておりました。 ……お嬢様は ……教官殿を、越えた動きを、されて居られました」


 爺様…… そういう事か…… 十二歳に成れば、ある程度、体も出来上がるし…… だから、もう一段上げるって事か…… 剣筋の確かさと、力の入れ具合。 何となく掴んだ気がする。 気合いを入れて、全力で振ったら…… 越えられるモノがあるのかな? 



 爺様、嘘ついてなかったよ……



 ごめん、” うそつき ” って、云って。



 なんか、あの、でっかい手で、頭を撫でられた様な気がした。






 *************






 中庭で、お茶してた。 いつも通り、一人でね。 だって、みんな忙しいんだもの。 エル達は側に居たがってたけど、私を理由に、勉強が疎かになる事は、避けたいもんね。 いやいや、ちゃんと、勉強しようね。だって、貴方達、




       ”御養育子はぐくみ” 



なんだよ? 黒龍のお屋敷の、全使用人さんの、憧れの的なんだよ? 


 ちゃんと、成果だして、” やり切ってまいりました! ” って、胸張って、黒龍のお屋敷に帰らないと、閣下おじさまに悪いじゃん。 ” 出来ませんでした! ”って云うのが、私の ” せい ” だったら、閣下おじさまに申し訳ないじゃん。 だから、がんばって!


 そんでね、時間は昼下がり。 ホントなら、今は、授業の時間なんだけどさ…… 行政内務科も、魔法科もね…… サボりじゃ無いよ…… だって、教室に来んなって、行政内務科のゲームの教官と、魔法科の実技の先生に、云われちゃったんだもん…… 


 行政内務科のゲームの教官からは、もうちょっと、みんなのレベルが上がったら、対戦するから、それまで、待機ってさ…… ちょっと、買いかぶり過ぎ……


  魔法科の方も、三年になっても、理論ばっかり…… なんか、あの実習での報告が、学院の魔法科にも来ててさ…… 実技免除に成ってた。 


 だ~か~ら~………… みんなと一緒に、 ” 火球ファイアーボール ”の、的当てしたいよ…… 私……。 エルに言わせると、





「的は、大きいんですよ? 皆さま、魔法の制御は、クロエお嬢様みたいに、得意では御座いませんから、見ていて、イライラされると思いますわ」 





だって。 当のエルも、かなりイラついてたしね…… はぁ……


 と、云う訳で、とても、良い日差し中庭の東屋で、一人お茶してたの。 其処にね、めっちゃ驚いた事に、マリーが来たのよ。 貴女、貴族科の授業は!? あぁ、いいのか…… 結構、自由度高いもんね…… 貴族科って……




「此処でしたの! 探しましたわ!」




 ちょっと、赤く上気したマリーの顔。 かわいいね。 でね、私の居所わかんなくて、色々探してたみたい。 なんでじゃ? 授業はサボらずに毎日出てたし、授業が無くても、図書館か自室に居るって言ってたからか……  そうだよね、お昼下がりに、中庭でお茶してる方が異常だよね。 ゴメンね!





「如何されましたの?」


「それが…… コレ……」





 一通の通達。 ナニナニ…… 差出人は、学生会執行部。 うん、つまりは、ミハエル殿下。 内容は、グレモリー様が、各サロンにお運びになるので、準備するようにとの、お達し。 ほう……  貴族外交の一環か。 言い出したのは、どっちだ? まぁ、良いんじゃない? 貴族科の本分だし。





「で? 何かお困りでも?」


「そ、それが…… わたくし、外国の方との交流は、今までした事がありませんの…… どなたかに助けて貰わないと…… ちゃんとした準備も出来ないのではと。 それで、思い出しましたの。 クロエ様が、黒龍様のシンダイの御領地での【精霊祭】で、外国の方々へ素晴らしい対応をされていたとの御噂を……」


「えっ? どなたが?」


「エル様ですわ。 ……それとは別に、アスカーナ様にも、お願いされている事が御座いまして…… アスカーナ様、授業で、グレモリー様と、お親しくなられた様で、色々とお話頂けるのですが……」





 チッ、エルには後で、文句いっとこ。 私の事は、あんまり喋んない様にって言ってんのに…… で、アスカーナのお願いって? なんなのさ。 気になるね。 マリーの御顔がなんか曇ってるよ。 そんな、表情に合わないよ。 なんだろう?





「なにか、問題でも?」


「ええ、アスカーナ様が仰るには……グレモリー様が、お気にされて居る事柄が有ると……」


「なんでしょう?」


「グレモリー様…… クロエ様に、嫌われたかもしれないと…… そう仰っていて…… それで、アスカーナ様にも、是非、クロエ様にも、ご一緒してほしいと、ご依頼されていますの」





 ん~~。 なんで、そうなるのかな? 別に避けてる訳じゃ無いし…… 教官に、教室に来んな、って言われてるだけだし…… 後は、時間が合わないのと、学生会執行部がいっつも、周囲を取り囲んでるしね。


 同じ教室に居ても、喋る機会すら無いよね、確かに。 別に嫌ってる訳じゃ無いし…… それに、天龍様のお願いもあるから、そろそろ接触しないと、いけないのは判ってるのよ。


 ただね…… お話の内容が内容だけに……ね。 どうしようか、迷ってるうちに、時間だけが過ぎてんのよ。 はぁ~~~ 頭痛い。


 で、通達では、多分サロン巡回の最後の方ね。 時間的に見て。 で、学生会執行部もついてくると。 ふ~ん、やっぱり、そこじゃ、お話できそうもないね。 でも、まぁ…… 顔だけでも、出すか!





 マリーのお願いだしさ!





 日時と、出席者を確認して、ドレスコードも確認したのよ。 別段、不審な点はないね。 まぁ、私は普段通り、制服での出席だけどね。 奥様には悪いけど、やっぱり、距離を置くって難しいね。 それも、あっちが近寄ってくる場合は特にね。



 んじゃ! 気合い入れて! やってみっか!







「はい、是非、お邪魔させていただきます」





ブックマーク、感想、評価 有難うございます。


読んでもらえるのは、大変喜ばしいのです。 感謝感謝なのです。


―――――


次回は、第一種接近遭遇? かな?


また、明晩、お会いしましょう!!

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