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ヌーヴォー・アヴェニール   作者: 龍槍 椀
泣き言は言わない
55/111

クロエ 爺様の剣を取り戻す。

累計 100,000 PV を越えました。


ひとえに皆様のお陰です。 


誠に有難うございます!!

 



 私………………




 盛大にやらかしたね。 でも、後悔はないよ。 


 去年、謁見の間から、お部屋に帰ってたから、順路は覚えてた。 うん、一回、歩いた道は忘れないのよ、私。 とっとこ歩いて、お部屋に帰った。 迷わなかったよ。 途中で、何人かの侍従らしき人が居たけど、まるっと無視しておいた。


 お部屋には、マリーが待っててくれた。 お願いしたとおりにね。 やっぱり、友達は、有難いね。 マリーの顔を見て、ホッとしたよ。




「お帰りなさい、クロエ様♪」




 なんか、ほんわかした。 ささくれ立ってた、気分が丸くなったよ。 




「只今、戻りました。 マリー様。 待って貰って、本当にすみませんでした。 実は……今日は、わたくしの誕生日なのです…… 一人では……ちょっと、嫌だったので……」


「まぁ! そんな! どうしましょ! ……っ! サロンの方にいらして下さらない?」


「えっ、は、はい……」





 なんだろう、マリー、猛然と部屋を出て行ったよ。 サロンの部屋に来いって事だろうね。 うん、行くよ…… あれ? なんで、こうなったの? エル…… どうしよう。





「マリー様のお誘いです。 本日は、お召し物も、ドレスですので、問題無いかと思いますが」


「そうね……うん。 そうね、行く 行くわ!」


「クロエお嬢様……」


「ん?」


「お誕生、おめでとうございます。 エルは、クロエお嬢様に逢えた幸せに感謝いたします」


「……何よりの、贈り物だね。 その言葉……しっかり受け取ったよ。 エル…………ありがとう」






 ニッコリと笑って、頷いたよ。 エルも、喜んでくれた。 なんか、嬉しいね。 ホントに…… これまでとは、大違いだ。 嫌な事が有っても、楽しい事で、上書きするんだ! 記憶はね、そうやって塗り替えるんだ! 「生まれて来て、良かった! 生んでくれた母様、ありがとう!」って思えるじゃん!






 ―――――






 でね、マリーのサロンに行ったのよ。 なんかバタバタしてるね。 どうしたんだろう? でね、マリーの処の、執事のボリスさんが、恭しくお辞儀してきたのよ。 びっちりと銀髪をオールバックに撫でつけて、一部の隙も無い姿でね。 すんごく、カッコいいの! ヴェル……君も、こうなるのかなぁ…… なって欲しいなぁ……




「クロエ=カタリナ=セシル=シュバルツハント令嬢様。 本日は、お誕生日、誠におめでとうございます。 青龍大公家、使用人一同、お喜びを申し上げます」


「いたみいります。 ボリス様、御顔をお上げください…… 過分なお祝い、誠に有難うございます」


「クロエ様、主人、マリー様がお待ちで御座います、どうぞ中へ」


「有難うございます」




 ん~~。 凄いね。 ほんと。 完璧。 恐縮しちゃうよね。 でね、お部屋の中に入ったのよ。 そしたらね、いつものシックな調度品に囲まれた、センターテーブルに、真っ白なテーブルクロスが掛かっててね、マリーがその向こうに居たのよ。 ニッコニコな笑顔でね。





「さぁ、クロエ様、此方に。 なぜ、もっと早く、教えて下さらなかったの?」


「えっ…… まぁ…… あまり、大事にしたく無くて……」




 そうなんだ……開拓村に居た時は、父様、母様、爺様、婆様に、それは、それは、盛大にお祝いしてもらってたんだ…… でもね、あの日から、誕生日になると、どうしても、思い出しちゃうんだよ……みんなの最後の姿をね。 どんなに上書きしようとしても……出来ないんだ。 みんなの覚悟の決まった笑顔と、むくろが脳裏に浮かび上がってね…… だから、シンダイに来てからは、敢えて言わなかったんだよ……



 マリーの顔を見て……なんか、言っちゃったんだけど……ね



 困った顔をしていた、マリー。 どやどやと、扉の方から人が入って来た。 ビジュリー! マーガレット! アスカーナ! みんな、ニッコニコの顔だよ! 





     「「「 クロエ! お誕生日、おめでとう!!! 」」」





 その声と一緒に、マリーの処の使用人さんが、でっかいケーキを持って来たよ。 ホントにデカい奴! 





「さぁ、お席について! クロエ様は、此方へ。 皆様で、精霊様に感謝を!」





 うん、そうする。 なんか、とっても暖かいね。 とろけそうだよ……





 ”精霊様……クロエは生まれて来て良かった……本当によかった。 この世に生を授けて下さった事、感謝いたします”





 みんなで、お祈りした後、ケーキ三昧だった。 あんまり量が多くて、マリーの処の使用人さん達にも手伝ってもらった。 みなさん、ニッコニコだったよ。 あぁ…… ヴェルも一緒に食べてたよ。 ボリス様の横でね。 嫌な事、上書き出来たうえ、誕生日も、楽しい日になったよ。




          ありがとう……マリー






**************






【降龍祭】が終わったら、もうすぐ、三年生だね。 いよいよ、専門分野の勉強に入るのよ。 制度とか、仕組みとか、大まかな所は、二年生で勉強したけど、三年生はもっと突っ込んだ所を勉強するの。


 でね、可笑しいのは、内政の勉強の一環として、ゲームを使うの。 黒龍の家の男の子たちが、ドハマりする訳だ。 戦争ゲームじゃ無くて、いかに国力を増強するかとか、外敵に如何に対処するかとかね。 戦争に勝ちました、国内が疲弊しきって、国民が生きて行けません、じゃぁダメなのよ。


 教育課程を眺めてたら、結構な時間をそれに当ててるのよ…… まぁ、大規模な地図使ったら、一ヶ月なんかあっという間に過ぎるしね…… ゲームルールも、限定無しだし…… まぁ、アスカーナ、一人勝ちね。 アレクサス黒龍大公翁おじいちゃんの折り紙付きだものね!




     ―――――




「クロエ様……わたくし、とても不安なのです……」




 アスカーナが、中庭でのお茶の時に、マドレーヌを口にしながら、そんな事言って来た。 なんでだ? 




「ご存知だとは、思いますが、アレクサス黒龍大公翁様に、それは、それは、良くして頂いております。 大変有難いと思っております。 また、アレクサス黒龍大公翁様にも、お褒め頂いております。 素直に嬉しく存じております。 でも……」


「でも?」


「一度、……一度だけなんですが、アレクサス黒龍大公翁様が、間違えられて、ある棋譜を渡されたのです……開始時の条件が、余りにも厳しいモノでした…… 当然、厳しい条件の方が、アレクサス黒龍大公翁様だと、思って、時系列を読んでいきましたの…… 違いました。 アレクサス黒龍大公翁様が、攻め手でした……」




 あれだ…… あの時のだ…… アレは…… 無いよね。 その前のゲームの時に、国王陛下、暗殺オプションが有ったって言ったら、アレ出して来たんだよね…… しんどかったよ……





「無理です…… あんな条件で…… 国力を保ちつつ、大魔法発動条件に触らない様に、戦力をギリギリに絞って、局地戦を戦いながら…… 防諜、諜報、調略、はては、非正規戦…… 無理です…… あのような作戦を立案しながら、内政も両立するなど…… そんな方がいらしたなんて…… わたくし………… 自信が……」




 あぁ~あ。 なんて、言ったら良いかなぁ~。 生き残る為の手立てを、全部突っ込んだんだよアレ…… 




「アスカーナ様、お一人では無かったのでは? 数人が、いえ、十数人がかりで、対処されたのでは?」


「……そうなのでしょうか」


「アスカーナ様程の人が、無理と仰るのならば、そうなので御座いましょう。 アレクサス黒龍大公翁おじいちゃん様も、時々、お人が悪くなられます。 わたくしも、覚えが有ります。 わたくしが、自信を持ち始めると……いきなりの無茶。 きっと、そうで御座いますわ」


「……ええ……」




 よし、誤魔化せた。 アレクサス黒龍大公翁おじいちゃんには、ちょっと説教してこよう。 ついでもあるしね。 何なら、その棋譜、燃やしてこよう。 ヤバいよね。 アレ。





          ―――――





 次の日、鍛錬が終わってから、水浴びをしてる時に、考えてたのよ…… 


 学院の授業の方は……目立たない様にしておこう…… と、なると、すんごく時間が余るねぇ……ってね。 前から考えては、いたんだ。 鍛錬の時に使ってる、鉄心入りの木の棒……あれ、ちょっと合わなくなってきてるんだな。 うん、そうだね。 やっぱり、返して欲しいね、アレ。


 わたしの背が伸びて、体重も増えて……お胸とかお尻とか大きくなって……軽すぎるんだよね…… で、爺様の剣。 あれ、あの時は重くて振り回されぎみだったけど、今ならってね。


 そんで、私は、黒龍のお屋敷に、ちょっと戻る事にしたんだ。 ヴェルが一緒に来たよ。





「お嬢様、 馬車の準備をいたします、暫し、お待ちを」


「あぁ、必要、ありません。 これは私用です。 私用に黒龍の家のモノは使いません。 歩きます」


「お、お嬢様!?」


「ついてくるの? それとも、待ちますか?」


「お供いたします」





 ヴェル、残念だったな。 華々しく凱旋するつもりだったんだろ?  しないよ、そんな事。 「 わたくし事 」で、黒龍のお屋敷に行くのに、黒龍のお屋敷のモノなんか使える訳ないじゃん。 でね、テクテク歩いて行くのよ。 軍事関連の役所が集中して配されてる、ドラゴンズリーチの東側を通るの。 外郭だけどね。 


 色んな話が、聞こえるのよ。 ホント。 ほら、赤龍大公様が、レオポルト王弟殿下と一緒に龍王国東側の砦の視察に回ってらしたじゃない。 そん時の話とかね。 下級騎士さん、結構口が軽い上に、噂好きだもんね。 色々と判ったよね。


 ミルブールの正規兵が、チョコチョコ移動してるってね。 あれ、ホントの話みたいね。 主に重装騎士だって。 そんで、必ず、魔法使いらしい人が付いてるんだって。 なんだろ? ミルブールって魔法騎士いない筈なんだけどね。




       ……魔法使いねぇ……  




 頭の片隅に、ミルブール国教会の影が浮かんだよ。 そうじゃ、無いかな。 でも、まぁ、大部隊の移動って訳じゃ無いし…… 情報は取り続けるって。 ヴェル、聞いた? ちゃんと聞いてた?




「お嬢様の目的は……これでしたか」


「生の情報って、大事よ。 上に上げる報告書にあやふやな事、書けないでしょ。 でも、肌感覚で、感じる事って、重要なのよ。 報告書には乗らない情報がね」




 ヴェルには、ウインクしといた。 ほら、なんでも、かんでも報告しろっていう、指揮官いるじゃない、私から言うとね、違うんじゃないかな?、だね。 報告書のちょっとした違和感を、大事に出来たら、自分が直接行って、確かめるのよ。 決断する時、役に立つわね。 より、情報が多い方が、選択の幅も広がるし……


 そんなこんなで、ドラゴンズリーチ外郭、北側に来たよ。 此処は、もう、黒龍大公家の庭みたいなものね。 ここでは、内政に関する、噂話が良く聴けるの。 単に歩いてる、学生だから、みなさんあんまり意識してないのよね。 だから、噂話も明け透けなものが多いの。 ほら、官吏って、仕事の半分は噂話の真偽の確認みたいなものじゃない。 ここでも、面白い話が聴けるのよ。


 金貨の流通量が減って来たとか、麦の値段がジンワリと上がって来たとか。関税が協議が不調だったとかね。


 なんか、くすぶってるね。 ヴェル……変な顔しない。 聞き耳立ててんの、わかっちゃうじゃん! サラッと流す! 




「クロエ様……」


「さぁ! 後は、お外ね。 黒龍のお屋敷まであとちょっとね。 大丈夫?」




 ヴェル、なんか思いっきり、ため息ついてた。 わたしが、「歩く!」って、言った時よりも、大きくね。 そうよ。 これが、私の普通。 しんどいよ? 私専属の ” 執事 ” に、なったら。 エル達にはこんな事させられないでしょ? だから、私一人でしてたの。 ヴェルは、黒龍大公翁おじいちゃんが無理矢理付けた、 ” 執事 ” なんだよ? そんで、貴方、やります!って、言ったらしいじゃん。 




           ヴェル、 頑張って! 




 晩夏の日差しの中、私とヴェルは、お屋敷に向かったのよ。 テクテクね。 遠いよ? ホントに遠い。 でも、気持ちイイね。 空は高いし。 風は爽やかだし。  胸いっぱいに、吸い込む、空気は、秋の予感を感じさせるしね。 




 さぁ、もう、ちょっとだよ!





 *************





 暗い黒龍大公翁おじいちゃんの執務室。 睨みつける黒龍大公翁おじいちゃん。 いつもの風景だね。 道すがらの情報を伝えたし、【降龍祭】での天龍様のお話も伝えた。 黒龍大公翁おじいちゃんには、正確な予測をして貰う為に、私の知ってる情報は、包み隠さず全部話す事にしてる。 で、アスカーナに、 ” 間違って ” 渡した、 ” アノ棋譜 ” についてもね。




「アレクサス黒龍大公翁様。 困ります」




 黒龍大公翁おじいちゃん、なんか、みるみる萎れた。 私、めっちゃ怒った顔してるらしい。 そうでも無いよ? ただね、、” 悪魔を身の内にとんでもない飼う女童めのわらわ ”は、居ないのよ!!


 でね、お願いをしてみたのよ。 許してあげる代わりにね。





「アレクサス黒龍大公翁様。 お願いが有ります」


「なんじゃ? かしこまって」


「剣を……御爺様の剣を、頂けませんか?」


「儂は、剣など持っておらんぞ?」


御爺様・・・の剣です」


「……あぁ ……カールのか ……そうだな ……ん、……判った」




 黒龍大公翁おじいちゃんめっちゃ、渋々、腰を上げた。 んで、執務室を出て行ったんだよ。 宝物庫に行くのかなぁ~って思ってたら、全然違う場所に向かってた。 なんか、覚えのある廊下…… そっか、あそこに有るんだ。 この廊下を歩いたのは二度目。 一度目は、ウラミル閣下おじさまと、アレクサス黒龍大公翁おじいちゃんに挟まれて歩いたよ。 


 薄暗い廊下だね、相変わらず。 もう、部屋の主居ないんだから…… って言っても、変えないよね。 精神的大黒柱(心の拠り所)だもんね。 黒龍の家のおとこの人達の。 聞いたよ、使用人の皆さんに。 とっても敬愛されてるんだね。 そんで、いまでも、なんか、困った事とか、重いモノを背負った時とか、ウラミル閣下おじさま、お一人で、その部屋に行くんだってね。




          そうだね。 



       何となく判る気がする。


 


 その部屋、パウエル曾祖父おおじいさまのお部屋だもんね。 私が、【永久の別れ】を、奏上させて頂いた、パウエル曾祖父おおじいさまのお部屋。 最後の御顔は…… 遣り切った人の顔だったね。 今、ご遺体は、お墓の中。 でも、寝台はそのままになってるね。 で、その寝台の上に一振りの剣が、安置されていた。 



         ここだったのか……




「カールがこの屋敷を出て行く時に、パウエル父上が与えた剣じゃ。 父上の護剣じゃ……。 クロエ、お前、使えるのか?」


「ずっと、使っていました。 私と、御爺様の生きた証でもあります」


「そうか…… そうじゃったな。 わかった。 ウラミルには、儂から伝えよう。 剣は持つべき者が持ったとな」




 そう言って、アレクサス黒龍大公翁おじいちゃんは、寝台から剣を取り、私に授けて下さった。 懐かしい……本当に、懐かしい…… 持ち手のシックリ感、重量配分の完璧さ、爺様に教えて貰った時の事が、鮮明に思い出されたよ。 剣を手にし、押し頂き、お礼を言った。 本当に心からのお礼をね。




「有難うございます。 大事にします。 クロエの護剣です」


「うむ。 いいか、クロエ」


「はい」


「人の血は吸わすなよ」


「はい」




 アレクサス黒龍大公翁おじいちゃんの真剣な目。 そう、この剣は護剣。 人を護る為の剣。 不殺の剣。 約束するよ、この剣に人の血は絶対に吸わせないとね。 剣の上に手を載せて、心の中で、爺様に語り掛けたよ。 なんか、久しぶりに逢えたような気がしたからね。


       

      爺様……久しぶりね。 本当に久しぶりね。


         クロエは、大きくなりました。




            ねえ、爺様……




        教えてくれるって言ったじゃない。




       十二歳に成ったら、”奥義” ってのを。




          クロエ、もう、十四歳だよ?






              うそつき…… 









今朝、アクセス解析見て、ビックリしました。

PVが100,000アクセスを突破してました。

また、総合評価も500ポイントを越えておりました。

ひとえに、皆様のお陰です。 


ブックマーク、感想、評価、大変ありがとうございます。


中の人のモチベーション、爆上がりしてます。


三年生突入は、明晩から。 いよいよ、佳境への階段を上がります。


また、明晩、お会いしましょう!!

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