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ヌーヴォー・アヴェニール   作者: 龍槍 椀
泣き言は言わない
52/111

クロエ と、フーダイに咲いた花

 




 奥様と、ソフィア様による、集中外交講座が始まったよぉ~~。





 まぁ、そうなるんじゃ無いかなって思ってた。 今回、【精霊祭】にお呼びするのは、18ヶ国 四十人程度。 そんでね、問題の「ミルブール王国」は、大使と後、何人か来るらしい。 あくまで、 ” らしい ” のよ。 実際、まだ来れるかどうか、判んないみたいだけどね。


 各国の状況やら、繋がりやらを中心にね、勉強したの。 でね、イヴァン様が特別講師なのよ。 奥様のご存知のお話は、ちょっと古いのがあって、現状をイヴァン様が補完するのよ。


 面白いのは、周辺の王国とか共和国がね、近年、ミルブール王国と距離を置こうとしている事。 なんでも、ミルブール国教会の布教が、各国の偉い人達の逆鱗に触れたみたいね。 ミルブール国教会は、今では、国が援助してるけど、元は、ミール教って宗教なんだって。 そんで、ものっそい、教条主義で、政治にまで干渉して来るんだって。 


 各国とも、土地柄とか、独自文化とか有るのに、全部否定して、自分たちの ” 教え ” を押し付けるんだって。 まぁ、信じてる人にはいいけど、そうじゃない人には、果てしなく迷惑な話よね。 そんで、その上、領主様とかに取り入って、行政とか領の運営にも口を出すんだって




          ……最悪……




 砂漠の国に、水の豊かな地方の考え方を持ち込んだって、上手く行かないに決まってるのに……


 で、ミルブール王国はって言うと、その、 ” 教え ” が、上手くハマってね。 国王様のグラン=ミルブール様も入信しちゃったんだって……  どうすんだ? そしたら、もう、一気に広がってね。 今じゃ、ミルブール国教会って、結構強い力を得て、ミルブールの政治にも 「ご意見番」 みたいになってるって。 ミルブールの十二支族の人達もなんか、困ってるって。 


 ミルブールの十二支族って、国王様か、女王様を輩出する高位貴族家でね、国王様か女王様は家族を持たないんだって…… 一番、 ” 出来る ” 人を、王に頂いて、その方を、十二の高位貴族が支えるんだって。 不思議な政体よね……まぁ、血の繋がりより、能力を優先する、あの国らしいと思うわよ。 



 そんな話をイヴァン様が教えてくれた。


        ふーん。 そうなんだ。





「導師の方々は、国を強くし、富ませる事が出来ると、言い切っておられてな…… あの国だから、上手く行ってるって事も有るんだが……」





 なんか、物凄い歯切れ悪いね。 一応、ハンダイ龍王国とは友好国なんだしね。 うーん、友好国ねぇ…… ゲーム盤の上じゃ、完全に仮想敵国だよ? あの国。 脆弱な食料生産基盤、国力以上の軍事力、山の国だけあって、そんなに手広く出来ない貿易。 で、隣にある、ハンダイ龍王国の東側って、有数の穀倉地帯よ? 喉から手が出る程欲しいと思うのよ。 




     私なら、欲しいね。 あっちの指導者ならね。



  

 生臭い話に、奥様と、ソフィア様がちょっと引いてた。 判るよ…… その国と一番深く付き合ってるのが、白龍大公家だもんね。 一番、警戒しなくちゃならない国だから、一番外交力をもってる、白龍大公家が対応してんだもんね。 大丈夫か? ちょっと、色々と不安……


 まぁ、他の大公家も、警戒はしてるみたいだしね。 それに、あっちの十二支族の人達は、其処まで好戦的じゃないし…… 




『生き辛い環境は、世界が与えた試練。 

     乗り越えれば、ミルブールは高みに至る』 




 これ、あっちの国の国是なんだって。 


 こうやって、色々と背景を聞いておくと、来られたお客様へ、色んな、 ” 配慮が ” 出来るものね。 有難いわ。 色々と準備をしてたら、いよいよ、【精霊祭】本番の日が来たのよ。





 *************





【精霊祭】当日は、色々大変。 先ず、自分の支度ね。 この間の素敵ドレスの中で、イブニングドレスを選んだの。 奥様からの推薦でね。 あの、汚して失くしちゃった、素敵ドレスによく似た色味のドレスなんだけど、今度は、ちゃんとレースでデコルテと首を覆って、ハーフ袖に長手袋装備ね。


 んでね、ミーナと同じ位の、” 大魔法使い ” の、メイドさんが、お化粧と髪を結ってくれたの。 ちょっと、大人びた私が、なんか、とっても…… 自分じゃ無いみたいで…… 居心地悪いね。 でも、ホントに綺麗にしてくれた。



           ありがとう。



 これで、失礼は無いよね。 ホントに、気を遣うわ。


 でね、今度はお迎え。 豪華な馬車が次々と、アプローチに入って来るの。 その度に、お出迎え…… するのよ。 頭の中に、招待したお客様の情報を叩きこんで、誰が、何処に座るかとか、色んな事考えながらね。 にこやかに、微笑みを絶やさず、慌てず、何が有っても対応できるように…… 奥様に鍛えられてて、ホントに良かった。




         ありがとう! 奥様!!



 

 で、一通り、お客様がいらしたんだけど、開催、予定時間になっても、ミルブールの方が見えられないのよ…… 一番高位の方なんだけどね…… 仕方ないよね。 ある程度は待つんだけど……皆様の貴重な時間も、そうそう浪費できないし…… 奥様と、ソフィア様に目配せをしたら、頷かれたんで、始めちゃったよ。





「本日は、黒龍大公家の【精霊祭】にお集まりいただき、誠に有難うございます。 皆様に幸有らん事を祈願いたしまして、精霊様にお祈りを捧げたいと思います。 皆様に置かれましては、皆様の信奉する精霊様にお祈り頂けるよう、精霊坐さいだんをご用意いたしました。 どうぞ、お祈り下さいませ」





 声を張って、ゆっくりと、上品に、笑顔を絶やさず、開催を宣したの。 皆様、笑顔で頷かれて、それぞれが信奉する精霊様にお祈りを捧げられていたわ。 そうね、祈りに貴賤はないから、やっぱりここでも、とってもいい風が、上に向かって立ち昇って行ったわ。 




 ”精霊様に、祈りが届き、祝福の与えられん事を……”







 ―――――





 色んな、配慮が上手く行って、皆さん、とっても、『ご機嫌』よ。 私? うん、あっちへ行ったり、こっちに来たり。 一所懸命、皆さんが楽しめる様に頑張ったわよ。 そんで、色んなお話を聞かせて貰った。 情報交換の場ね。 大事な【お勤め】なんだよ。 これって。


 でね、お食事も一緒にしたよ。 各国の食材集めるのって、すんごく大変なんだって。 でも、お屋敷の人達やり切ったよ。 そんで、私、食べきったよ。


 ちょっと、普通じゃ食べない様なモノもあったけどね。 それでも、お屋敷の人達が、腕を振るってくれたんだもの、マズい訳ないでしょ? もう、なんの躊躇もなく口に入れてたのよ。 そしたら、お客様達が、喜んでくれてね。





「我等が食するモノを、同じように食してくださった!」





 ってね。 美味しいよ? なんで? そりゃ、カエルとか、イナゴとか、蛇だしね。 まぁ、私にとっては、慣れた食材だけど、奥様とソフィア様は、顔色変わってたね。 私? 全然、平気だし。 お客様、ヤンヤの喝采だったよ。 あとから、奥様と、ソフィア様がコッソリ、





「だ、大丈夫? ホントに、大丈夫?」





 って、聞いて来てたのが、面白かった。 だって、皆さん、食べてんだよ、普段。 もちろん、大丈夫にきまってるよ。 食べられないモノは、厨房の人、出さないって!


 そんで、和やかに時間は過ぎて、ちょこっとリュート弾いたりね。 今回は、南アフィカン王国の人来れなかったから、ピッパは置いて来た。 でも、持って来ればよかったって思ったね。 楽しかったもの。


 いやぁぁぁ~~ つっかれたけど、いい【精霊祭】だったよ。 ほんと。


 でね、深夜になる前に、お客様お帰りになったよ。 皆様、口々に、”来年も、是非お誘いください”ってさ。上手く行って良かったよ。 奥様も、ソフィア様も、ニッコニコだよ。 そうそう、男性陣。 色々、圧倒されてた。 奥様、ソフィア様の実力は、想定外みたいだったね。 そんな、男性陣の中で、さすがは実戦で鍛えられてる、イヴァン様。 ホントにあちこちで、情報収集に余念が無かったよ。 




      さっすがぁ~~~!




 お客様が、みんなお帰りになった後、黒龍の皆さんと、深夜のお茶したのよ。 いわゆる、反省会みたいな。 今年の反省点とか、話すんだけど…… 無かったよね。 失敗したとことか、配慮不足とか……ね。





「クロエは、もう、十分大人だね。 黒龍の家に咲いた、清楚で美しい「花」だよ」





 イヴァン様? 従妹いもうとを、からかうのは、辞めてくださいね。 これは、メイドさんが掛けてくれた、大魔法で、明日には解けるんだよ? いい? クロエは、そんなんじゃないよ? 美味しくカエルとか蛇とかを、食べられる子供なんだよ?



       笑って誤魔化しといた。



 でもね…… ミルブールの人が来なかったのって…… 何でだ?  一応、謝罪の使者は来たけどさぁ…… まぁ、あちらも、色々有るんだろうね。 別に気にしない。 事情は、人それぞれだもんね。 


 疲れたから、寝よう。 いいかな? いいって。 有難うございます。 子供は寝ますよ。 あとは、大人の人の時間でしょ? 



       じゃぁの!    おやすみなさい






 *************






 朝の鍛錬フルセットした後、お部屋に戻って、汗流して、また違うドレスを着せられた。 一体何着作ったんだ? 奥様…… 今日は、完全に予定を開けてある。 と云うより、昨日頑張ったから、皆さんまだ夢の中らしいよ。



 私? 一番に抜けたもん。 



 朝の清々しい空気と、キラキラした光を浴びながら、別荘の庭園をゆっくり散歩。 薔薇が咲いてた。 すんごく薫り高いの。 ちょっと、せそうになるくらい。 赤、白、ピンク、ちょこっとブルー……色々あるね。 先代の奥様が、薔薇好きだったんだって。 そっかぁ……アレクサス黒龍大公翁おじいちゃんの奥さんよね。 



 ちょっと会ってみたかったよ。



 薔薇園を後にして、緑の庭園の小道を歩いていると、東屋があったのよ。 白い小さなね。 ベンチも真っ白。 寄り道していこう。 


 でね、そのベンチに座ると、すんごく良く庭園が見えるのよ。 ほんと、まるで絵画。 狙って、作ったね、ココ。 ほんと、気持ちイイね。 そんで、ココ、お屋敷のメイドさんの詰所から見えるらしいの。 ぼ~~ってしてたら、お茶の用意を持って、ちょっと年嵩の、メイドさん達が来たの。





「クロエお嬢様。 此方においででしたか」


「皆様は?」


「まだ、お休みになって居られます」


「そうですか。 お疲れなのでしょうね。 貴方達も、ご苦労様でした」


「とんでも、御座いません。 このようなお客様事は、もう何年もしておりませんでしたから、屋敷の者も楽しみにしております」


「去年も、【精霊祭】を行いましたが?」


「はい、去年は……まだ、皆、半信半疑でしたので」


「奥様……ですね。 変わられましたものね」


「ええ、ええ、 そうなんです! これも、全て、クロエお嬢様のお手紙からですわ!!」





 え?  なんで?





「クロエお嬢様と……その……文通を始められてからですわ、奥様の御様子が変わられたのは……屋敷の一同、皆、感謝しておりますの」


「……そ、そうですの? わたくしは、ただ、教えを乞う為に……」


「クロエお嬢様、ご存知ですか?」


「はい?」


「奥様の勉強部屋の事を」


「はい?」


「クロエ様から届いた「お手紙」、大事に大事に保管されていて、誰にも、このお屋敷のメイド長のわたくしでさえ、触れさせて頂けませんのよ」


「……そうなんですか……」






 奥様、ホントに嬉しかったんだ。 やっぱり必要とされるって、凄い力を引き出すんだね。 うん、これからも、うんと甘えさせて貰おう。 分かんない事が有ったら、直ぐに聞くよ……エリカーナ奥様。


 お茶を入れて頂き、ほっと息をいれ、この庭園のお話を伺ったりしてたの。 アレクサス黒龍大公翁おじいちゃんの奥様の事、聞いたりね。 素敵な人だったみたいね。 


 ニコニコしながら話を聞いて居たら、マリオが速足でこっちに来た。 おう! マリオも来てたのか! なんか、マリオ、困惑してた。 珍しい…… マリオのこんな顔、初めて見た様な気がする。





「クロエお嬢様……お話が」


「ええ、何でしょうか?」


「はい、実は、今、玄関ホールに一人の貴族の女性が見えられて居ります」


「まぁ……こんな朝からですか? 前触れは?」


「ありません。 しかし、その方なのですが……謝罪に見えられたと……」


「……よく、判りません。 謝罪? ですか?」


「ええ。 そして、クロエ様にお会いして、謝罪したいと」


「わたくしに? ……わたくしの知っている方? 前触れも無しに?」


「外国の方なので、お引き取り頂けず……かといって、お待ちになって、貰うにも……」


「御一人で?」


「護衛の方は居られますが……」





 どうしよっかなぁ…… 危険はないみたいだし…… 閣下おじさまも、奥様もまだお休みだし……リヒター様も、ソフィア様も、イヴァン様も…… 私一人で対応していいのかなぁ……





「マリオ。 閣下おじさまがお目覚めに成るまで、わたくしが、対応しましょう。 どうも、このままでは、宜しくない気がします。」


「客間の方へ、ご案内しますか?」





 ……ええっと。 あそこは、閣下おじさまが、お客様対応に使われる部屋だし……私じゃ何か足りない……閣下おじさま達の準備が整うまでの、時間稼ぎだから…… ここで、いいじゃん。 みんなの目も届くし。





「では、此処へ。 東屋にて、ご対応いたしましょう。 皆様の準備が整うまで」


「はい、お嬢様。 お通しします」





 でね、東屋で待ってたのよ。 其処にね、朝日を浴びてキラキラと輝く、プラチナブロンドの、すんごくゴージャスな女性が入って来たのよ。 バインバインなスタイルでね、夜会から抜けて、駆けつけました!みたいな姿だった。 深い鳶色の瞳。 アーモンド形の綺麗で涼やかな目。 抜ける様に白い肌を、ちょっと赤くして…… 使い古された言い方だけど、東屋に、大輪の豪華な花が突然現れたみたいだったの。 


 そんで、薔薇の様に赤い唇から、言葉が紡ぎ出されたの。





「クロエ様! クロエ=カタリナ=セシル=シュバルツハント様! 申し訳ございませんでした!」





 鈴を転がす様な、耳に優しい、素敵な声で、いきなりの謝罪。 え? なに?





「あの……申し訳ございませんが……一体、なんの謝罪で御座いましょうか? それに、貴女様は?」


「も、申し遅れました。 わたくし、ミルブール王国、グレモリー=ベレット=ヴァサンゴと、申します。 ご招待頂きましたのに、此方の不手際で、遅参……いえ、欠席いたしました事、誠に申し訳ございませんでした」





       ミルブールの人? グレモリー? 


     いや、それよりも……ヴァサンゴ家って


           ……たしか


 ……ミルブール十二支族の内、次席の家柄の家名だった筈



        ……と、と、と言う事は……


            この人……



 


        ミルブール王国の、お姫様だ!!!!





 慌てて、ホントに、慌てて立ち上がって、バッチリカーテシーを決める。 本来なら、私が上座に居ちゃいけない人だ! やべ~~~~!!!





「これは、失礼いたしました! こ、此方に……」





 慌てて、上座を開けて、座ってもらう。 にこやかに微笑みながらも、申し訳なさそうに、座られたよ。 そうだね、礼を尽くされる立場の人だよね。 





「あの……座って下さい。 わたくし、自分がどれだけ非常識な事をしているか、知っております。 どうぞ」


「はい……では、座らせていただきます」





 何言ってんだ? 自分。 もうパニックよ。 ビックリ通り越したわ。 隣の国のお姫様だよ……もうね……





「よかった、優しそうな方で」


「はい?」


「……御噂はかねがね……」





 ” 御噂? ” なんだ、この間。 仕方ない、笑って誤魔化そう。 そうだね、やっぱ、そのままにしていたら、大変な事に成ってたよ……


              でね、



             この時ね、



            なんとも言えない




             予感がしてね

 




           私の、 ” 心の中 ” をね






             掻き混ぜたのよ

            







ブックマーク、感想、評価 誠に有難うございます。


とっても、とっても、嬉しいです。



さて、この物語で、最重要な人が出てきました。

正真正銘のお姫様であり、クロエと深く関りを持って行く人です



今後とも、宜しくお願い申し上げます。


また、明晩。 


お楽しみに。

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