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ヌーヴォー・アヴェニール   作者: 龍槍 椀
ヌーヴォー・アヴェニール 本編 物語の始まり
5/111

クロエ 舞踏する

6/24 国王様、一代間違えていました。

   × 第二十代フョードルハンダイ陛下 ⇒ 〇 第十九代モクスー=ハンダイ陛下

    その他、誤字、脱字 訂正




 王室舞踏会を目の前にぶら下げられた教師とメイドさん達……一層の努力をしてくれてる。 うん、大変ありがたいんだけど…………




 こっちの身にもなりやがれ!!!!




 鍛錬だけはどうにか続けていたけど、もうクタクタ。 特にダンス。 なん種類もステップ増やしやがって…… 基本はね、どうにか覚えたよ。 うん、基本はね。 中級編も何とかね。 高度ステップも形だけはね…… 教師のおっさん。 あれは絶対、加虐趣味者だ。 うん、間違いない。 毎日の鍛錬してなかったら、きっと、倒れてた。 


 黒龍大公様の顔を立てて、家名に泥を塗ったくらない様にしようと思ってたけど、それにしても、 ” デビュタントも一緒に ” だって! ……どこまでハードルあげるんだ、ってここの御当主様は! 私の精神力はもう、限界。



 お日様に向かって、悪態、吐きそう。



 朝の鍛錬の時に、七十二の型をおさらいして、呼吸鍛錬を始めた時にフッて思いついた。 剣の型だって、ゆっくりから、早くに。 正確な動作を確認するためにしてる。 どんなに手が重くたって、どんなに足がだるくたって、軌道がずれない様にピシッて決める。 これがぶれたら、剣筋が歪んで、ダメになる。



 なんか、頭の中がキ~~ンってした。 …………そうか、ダンスも同じかもしんないよね。



 呼吸鍛錬が終わって、ちょっとやってみた。 基本のステップ。 うん、これは長く練習したから、大丈夫。中級編。 ん? 軸がぶれとるな。 高度ステップ。 ゆっくり動いて、所作の曖昧な所を中心に修正。 ん? なんだコレ? 軸も、体幹も、手足の角度、振出のタイミング、バラバラじゃん。 そうか、そう言う事か。 じゃぁ……こうやって、こうやって。


 ん、馴染んだ感覚。 そっかぁ 剣の型と同じかぁ…… 体の使い方だもんね。 そういえば、爺様に言われてた、剣は手で振るうモノじゃない、体で振るもんだって。 ダンスも、同じ、手、足、頭なんかバラバラに覚えても、無理。 体幹を整えて、それに従うモノ、破綻なく付き従うモノ。 だから、もう一回おさらい。




 基本…… 中級…… 上級…… うん、そうだ、これだ。 じゃぁ、もう一回。




 夢中になってやってて、時間を忘れてた。 あはっ! やべぇ~~~ 今日もダンスのレッスンだった!! 早く部屋に帰らないと、アンナに叱られる~~~  ……って、アンナさん? なんで、バルコニーの入り口に立ってんですか?  あぁ、遅いから迎えに来たと。 そんで、超絶怒ってるって、事ですね。 分かります。





「お嬢様……私、誤解しておりました。 つるぎを振りまわす ” 乱暴なお嬢様 ” だと思っておりました。 今日、判りました。 お嬢様の朝の鍛錬とは、動きの、” しなやかさ ” と、 ” 洗練 ” さ、を追及されるものだったのですね。 誠に、感服いたしました」


 なんか、誤解された。 頭まで下げてる…… メイド頭のアンナさん、私の鍛錬は、まさに剣術用なんですよ。 ダンスの方は、たまたま……





「急ぎましょう。 先生をお待たせするわけには!」


「あっ、はい。 分かりましたわ」





 アンナの後に続いて自室に戻り、水浴び。 その後に、これまでと同じキッツキツのダンス用のドレスに着替える。 靴は爪先しかつかない、すんげーピンヒール。 アンナさんに髪を纏めて貰って、いざ練習室へ。




 あ”……   朝ごはん、食べ損ねた……




 ――――――――――





 先生とちょっと踊ったら、先生の態度が急に変わった。 ん? なんだこれ?  レッスンを中断して、先生がちょっと席を離して、帰って来た時、何人かの楽士が一緒に来た。 先生が手を取って、レッスンを始める。 おお、音付きだ!!


 朝から、体に染みつけた体の動きパターンは、抜けなかった。 音楽と一緒に踊ると、余計に判った。うん、音に乗るって、こういう感じかぁ ステップも好調だね。 間違えないし。 基本は入ってる。


 キッツキツのドレスは行動を制限してくれるから、指先まで気合を入れて、優雅に見えるように柔らかく、重い両手剣を振るう時の様にタメを入れて……。 背筋を伸ばし、背中をバキバキ云わせながら、優雅さを出す為に、ゆっくりとタメを作る。 この姿勢って、軽装備で、両手武器を使う時に似てるんだよね。大きく、大きく、ゆったりと動く。 視線は先生の顎先。 何とか笑えるようになった。 


 音楽が早くなる。 ステップも難しくなる。 でも平気。 なんの問題も無くなってる。 体幹が安定してるからね。 朝の鍛錬で気が付いた。 そうか、この感覚かぁ。 曲がどんどん変わる。 なんか、楽しくなってきた。 張り付けた笑顔が、本当の笑顔に変わってくるのが判る。 ちょっと先生の顔を見た。 先生も笑っていた。





「一日で、飛びぬけた進歩です。 何が有ったのですか?」





 汗を拭きつつ、先生が私に言ったんよ。 まさか、剣技の練習にヒントを得ましたなんて、言えないから、





「先生の熱心なレッスンにお答えしたくて……練習しましたの」





 って、上目遣いに言っておく。 うわっ、あざとい! 先生、なんで、赤くなってんの? 違うよ、好意じゃないよ? ”なにくそ”だよ? かなり動いて、私も赤く上気してるけど、これは、動き回ったからだよ? いいね、そこんとこ宜しく!


 その様子を執事長のマリオが見てた。 うん、そうだね。 色々問題あるもんね、私は。 だから、言ってみた。





「先生、舞踏会ではパートナーが、次々と代わると聞き及んでおります。 ですから、マリオとも踊った方が宜しいのでは?」





 よし、マリオ、かかってこいや! いっつも猛禽類みたいな目で見やがって! 先生なんか微妙な顔で頷いたよ。 そうだよ、あんたは先生なのよ! でだ、マリオ! てめーだ。 


 ダンス踊れんのか? 此処には先生と、私と、マリオと、二、三人のメイドさんしかいない。 男は、先生を除けばお前だけだ。 勘違いしつつある、ダンスの先生の為にも、マリオ、しっかり頼むよ! これは、あくまで授業だ! 私は、優しいだろ、ねぇ?





「……クロエ様、もう少し休憩されてからにされては?」





いいや、逃さんぞ。 絶対逃さん。 勘違いしつつある先生に引導渡す為にも是非、此処は協力してもらうぞ。





「もう少し、体に覚え込ませねばなりませんので……ダメですか?」


「……承知致しました、お嬢様。 わたくしで良ければ」





 よっしゃ! 引きずり込んだ! お前も苦労しろ!


 楽団よろしく! マリオ、お手を拝借!  そんじゃ、行きますよ!


 それ!  ワン・ツー・スリー・フォー!





 ――――――






 し、死ぬ。 マジで死ぬ…………



 なんで、マリオあんなに上手なの? 楽しかったけどさぁ…… 最後は疲れから、足が絡んで、私が大転倒。 みんな心配してくれてた。 マリオなんか私が、トンデモピンヒール履いてるの見て、申し訳なさそうにしてた。 


 練習だったから、ローファーだと思ってたんだって。 こんな靴履いてると思ってなかったんだって。 そうだよね、靴見えない位の裾だもんね。 行動制限用重装備だからねぇ…… つ、疲れた~~


 今日のレッスンはもうおしまいにします、って 先生がそう言ってくれて、助かった。 時間は、午後のお茶の時間を過ぎてた。 うわぁぁ……礼法の先生、待たせちゃったよぉ……





「急ぎます。 すみません。 礼法の先生、お気を悪くされてないでしょうか?」


「アンナが連絡を入れております。 先ずは、足をお医者様に」


「大丈夫ですわ、 先生をお待たせするわけにはいきませんから」


 汗だけ拭かせてもらって、いつもの場所に。 アンナが居た。 先生に頭を下げていた。


「すみません。 遅れました。 申し訳ございません」


「いえいえ、宜しいの? 足を痛められたとか?」


「先生をお待たせするわけには参りませんわ。 今日の課題は……御茶会での心得でしたわね」


「そうですわね。 では、始めましょうか」





 御茶会の心得は、是非とも聞いておきたかった。 学ばねば、これは、今後の為の武器さ。 良く覚えて身に着けてっと。


 アンナが下がってくれた。 心配かけたね。 ごめん。 心の中で土下座してるよ。 ほんと、有難い。 いい感じに、お話も出来るし、お茶も美味しい。 うん、たいへん美味。 願わくば


 ” 飼い葉桶 ” いっぱいの、水が飲みたい!!!!





 *************





 王室舞踏会でもう一つ困った事があった。 それは誰が私をエスコートするかって話。 伯父様と、その元王家の奥様は王室舞踏会では、いわば主催者側。 そんでもって実の娘じゃないから、いくらデビュタントと云えど、エスコートは無理。 そんじゃ、黒龍大公翁おじいさまはってえと、これは階位上無理って言ってた。 じゃぁ誰が? 



 従兄(いとこ)なら、良いじゃん って事で、若様と呼ばれる青年が呼び出される事になった。



 うん、若様。 ウラミル黒龍大公様の御長男様。 御名前はリヒター様。 リヒター=ルードヴィッヒ=シュバルツハント子爵。 御年十八歳の次代の当主様。 今は王立魔法学院の最高学年だそうだ。 怜悧な瞳の頭脳明晰なお方だと、アンナさんが言ってた。 


 今は、王立魔法学院の寮に入寮されているので、此方には住んで無い。 うん、そうだね、逢った事無いもんね。 もうひと方、息子様がいらっしゃる。 二男様で、御名前はイヴァン=エルシール=シュバルツハント子爵。 御年十六歳のこれまた素晴らしいと御噂の御方。 メイドさん達の間でも、リヒター派とイヴァン派があるそうな。


 兄弟の間柄は、大変仲良しさんらしい。 うん伝聞。 みんな、メイドさんとか、執事さんからの御言葉。 なんの含みも無くそう言い切っていたから、そうなんだろうなと思う事にした。 基本この家の人達、みんな、仲良しさんだから、楽っちゃ、楽だ。 


 イヴァン様はまだ・・十六歳という事で、今回の王室舞踏会には参加されないとの事。 なんでだ? 私、まだ・・九歳ですよ? なんで? 特別? き、基準が判らん。 アンナにでも聞いてみよう。


 怜悧な瞳の頭脳明晰なお方な、リヒターさん……怖そうだなぁ。 この家の男の人って、笑いながら怒る珍しい体質だし……怒らせない様にしなくちゃな。 さらに、そんな人には、とても素敵な婚約者さんがいるそうだ。 御年十六歳に成られ、聡明で大変お美しい、ハンダイ龍王国、第四王女、ソフィア様。


 マジ、勘弁してほしい。 婚約者がいる男性にエスコートされる身になってみろ。 それも、相手は王室の御姫様だぞ? 王室主催の舞踏会じぁ、絶対出席するじゃんか。 そんな中に、婚約者と腕組んで歩く女の子が居たら……絶対、目の敵にされる。 うん、間違いない。 うひゃ~~~。


 まさに、嵐を呼ぶ舞踏会じぁ~~。 欠席できないし…… ま、まぁ、子供らしくオトナシクシテイマショウネ……





 ――――





 忙しく準備をして、舞踏会まであと三日って時に、執事長のマリオが、声を掛けて来た。 真剣な眼つきだった。 いつもみたく笑ってくれよ~ なんで、緊張してるの?





「クロエお嬢様、 奥様がお越しです。 お仕度ください」





 き、キター!! エリカーナ奥様からの呼び出しだ! 絶対、釘差しタイムだ!! ウラミル伯父様から聴かされていたよ。 この奥様、先代第十九代モスクー=ハンダイ国王陛下の四女様だ。 たいそう気位が高いそうなんだ。


 あの・・ウラミル伯父様が持て余す方らしい。 ホントはいけない事らしいのだけど、結婚してからも、エリカーナ奥様はこの屋敷にお住まいではなく、王城ドラゴンズリーチの城内の自室にいらっしゃるそうな……


 えっ? どういう事? 御城に行くの?





「こちらにお運びになっております。 貴賓応接室でお待ちになられるそうです」


「御到着されているのでしょうか?」


「先触れが参りました。 あと、数刻先にと」


「では、急ぎ支度をいたします。 アンナお願いします」


「はい」





 うひゃ~~~、慌てるよねぇ…… アンナ様お願い。 ちょっとは見られるように。 失礼の無いように。 抑えめで。 控えめで。 オネガイイタシヤシュ!! 





 ―――――




 侍女さん達、総出で頑張ってくれました。 うん、 ”特殊メイク” です。 鏡に映る筈の自分の姿がありません。 誰っすか? この美少女。 こんなに、変わるんだ。 すんごいね、特殊メイク。 ブラシやら、刷毛やらを持った侍女さんが、やり切った! って顔をしてる。 うん、確かにやり切ったよ。 


 薄い金髪は、天使の輪が乗っかとるし、日によく焼けた小麦色の肌は、あんまり日が差さない処にばっかりいたから、真っ白になっちゃってたし、父様が好きだって言ってくれた ”涼やかで切れ長の目”とか、”愛らしい口もと”とか、 ”スッと通った綺麗な鼻筋”なんかは、侍女さん達の特殊メイクで、際だっちゃってるし……



 鏡よ、鏡よ、鏡さん、 私は何処に行ったの?



 思わず、習い覚えた ”会心の笑み” を作ってみた。 ウハッ! あざてぇ~~ なんだ、これは? うん、これなら、少なくとも、容姿で無礼な事にはならんだろう。 後はドレス。 後ろを見る。アンナがてきぱき指示を飛ばしてる。 うん、薄墨色のシンプルな奴らしい。 いいね。 豪華なのは、私には合わんからね。 ナイスチョイス!





飾らない・・・・、お嬢様を見ていただきましょう……ネ」





 ん? なんだ、この間? なんか引っかかるよ? なんでだろう? ちょっと不思議な感覚。 アンナがこんな事云うの、初めてじゃないかい? うん、そうだよ。 なんか含んでるよ。 このニュアンスは……そうだ、 ”当て擦り”だ! 誰に対して? 


 ……ゲゲッ! 問題の奥様かよ…… ヤバいよね、それって。


 つまりは、奥様、ゴテゴテのヌリヌリの人なんだ……気分が一気に降下したよ。 アンナぁ……もう、やめてよ。 精神がガリガリ削れるよ……マジで…… でも、そんな事も言ってられない。 じゃぁその薄墨色の戦闘服着せて。 気合い入れっから!





「アンナ、お願いします。 奥様に気に入って貰えると、良いですね」





 ニヤリと笑みを浮かべてみた。 アンナ気が付いた。 ニヤリと笑い返して来た。 よし、同士だ! 


 ドレスを着ると、ほんとに華奢に見えるね。 お胸のふくらみだって、ほとんど分かんないし……そう、九歳になっても、ちっとも膨れてこない、私の胸部。 これは、”ペッターン” 一直線だな。 御飾りも付けない。 マジ、シンプル路線だ。 よし、戦闘準備完了だ、 


 アンナさん、骨は拾ってくれ!  




王室付き侍従 覚書


王室舞踏会 招待状発送。 各家に到達。 各家より返信。 全員出席を確認。 黒龍大公家、招待者全員出席を確認。 

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