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ヌーヴォー・アヴェニール   作者: 龍槍 椀
泣き言は言わない
49/111

クロエ 内緒話をする

 


 奥様と、ソフィア様、私のドレスを物凄く気にしてくれてた。 ほら、今、ドレスないじゃん。 クッキー事件の時に、素敵ドレスダメにしちゃったでしょ? その前に作ってもらった、薄緑色のドレスは、サイズが合わなくなって、着れなくなってたでしょ? だから、制服しかないのよ。 


【精霊祭】の後って、社交シーズンだし、黒龍の別荘で外国の方々の接待有るでしょ…… 前は制服着てたけど、今度は、そう言う訳にはいかないって。 奥様が云うのよ。  前は、わざわざ、前々日まで私に知らせなくって、緊急で呼び出された呈にしたから、制服でも良かったんだって。


 でも、今回は、きちんと招待状に私の名前を書くから、ホストとして、ドレスアップをしなくちゃならないんだって。 本当は、あの汚しちゃった、ドレスが一番良かったんだけどね。 仕方ないよね。 でね、本来なら、ドレスの採寸とか時間をかけてする事に成るんだけど、校外実習であんな事に成ったもんだから、時間が取れなくなって、今に至ると。


 奥様、ソフィア様、なんか力はいってんね。





「明日、ギリーガ服飾店の方が見えられます。 三日間お泊りになります。 今シーズンのクロエのドレスを、最低三着は作ります。 いいですね。 ギリーガは、明日の朝到着です」


「はい」





 なんかね…… これが、黒龍大公家の御威光だね。 黒龍大公家の御威光最大限に生かしての無茶振り。 一体、何人来るんだ? 簡単な普段着縫うのでも、布からだったら、丸三日かかるよ? ドレスだよ? いろいろ難しいよ? どうすんのさ。


 でも、まぁ、そう言われて、嫌ですとは言えないし、素直に頷くしかなかったよ。 そんで、その日は解散になった。 夜ご飯は、みんなで食べた。 美味しかったよ。 なんか、厨房の人、私が帰って来てるって聞いて、張り切っちゃったみたい…… ねぇ、どんだけ、娯楽無いのよ。 私は珍獣か?


 美味しいごはん頂いて、厨房の人にお礼を伝えて貰って、お部屋に帰った。 やっと一息つける。 


 お叱りを受けるって思って、かなり身構えて来たけど、なんかね。 ……なんか、歓迎されてるよね。 おっかしいなぁ…… なんかしたっけ? 取り敢えずは、お風呂! エルにお願いして、沐浴にして貰った。 水浴びでも良かったんだけど、明日の事が有るしね。 それと、ラージェに、鍛錬用の木の棒もって来てもらった。


 そんで、眠ったよ。 疲れたもん。 一体何が起こってるのか判らない位、周りの動きが速いの。 対応しきれないよ…… 




――――――




  微睡に堕ちる前……エル達も侍女部屋に帰った後。 灯火を最小まで絞った、薄暗い部屋……聞こえるのよ……微かなノックの音が。 


 ビビった。 ホントにビビった。


 ワイト? レイス? でも、ココお屋敷だよね。 私、ほぼ、無防備だよ? 取り敢えず、魔力を練る。 





「誰?」





 ノックの音にビビりながらも、そう聞いたのさ。 どうも、衣裳部屋の奥から聞こえる。 ベッドを抜け出して、音のする方に行くと、衣裳部屋の奥の壁に、パッと見判んない様に、扉があったの。 其処から、ノックの音が聞こえる。 もう一回、聞いたのよ。





「誰……ですか?」





 ハッキリとしたノックの音だから、魔物じゃ無いよね。 そんで、低い男の人の声が聞こえた。 うん、良く知ってる声。 そんで、この部屋を作った人。





「儂じゃ」


「アレクサス黒龍大公翁おじいちゃん!!」


「開けと命ずると、開く。 ちょっとした、魔法が掛かっておるからの」





 ……驚かすなよぉ・・はいはい、・・んじゃ、命じますよ。





「我は、命ずる、開け」





 あっさりと、隠し扉は開いた。 へぇ……面白い仕掛けだねぇ…… お爺ちゃん、向こう側に立ってたよ。 そんで、短い通路の先に、あっちの部屋が見えたよ。 その部屋、すんごく見覚えが有るんだ。 そう、軟禁されてた、黒龍大公翁おじいちゃんの旧執務室…… 



         繋げんな!!!






「夜分、すまぬな。 内密で話したい事があったんじゃ」





 怪しい……内密に、それも、私にだけって所が、凄く怪しい。 軽く睨んどいた。 黒龍大公翁おじいちゃんを、部屋に招き入れて、居間に行ってもらった。 流石に寝室は無い。 でも、私、今、寝る時の恰好だよ? 殆ど、下着姿だよ? 


 取り合えず、ブラウスを羽織って、スカートを履く。 素足だけどね。 いくら、お忍びでも、余りにも失礼すぎるもんね。 そんで、お茶の準備をして、居間にいる、黒龍大公翁おじいちゃんの元に行った。





「すまぬな、・・茶まで。」


「いえ……お話とは?」





 お茶を入れながら、話を聞いたよ。 なんで、内密なのか、なんで、黒龍大公翁おじいちゃんだけなのか、その話を聞いて判った。


 色々、有るんだろうけど、私が知っておくべき情報だった。 そんで、その対応方法だった。 黒龍大公翁おじいちゃん、私を狙った人達、当たり付けてたよ。 


 「ミルブール国教会」で、間違いが無いらしい。 丹念に調べて、あのクッキー事件も、ミルブール国教会が仕組んだのが、判ったって。 エクスター子爵おばかさんを、けしかけたのは、舞踏会で自分で仕掛けて、そんで恥かいた、エドガー=パンナレル子爵。 そう、私をダンスに誘った、馬鹿。 宮廷魔術師のノガード=パンナレル侯爵の息子。 


 でも、『ガーダモン』ってハーブを渡したのは、エドガー経由だけど、ミルブールの大使館の人。宮廷魔術師のパンナレル侯爵は知らなかったらしい。 熱を加えても、薬効が落ちない事を教えたのも、その人なんだって。 だから、エクスター子爵は、クッキーに混ぜたらしい。 使用人に作らせたってさ。 確信犯だね。


 良くそこまで、調べられたと、思ったね。 ホント凄いよ。 でも、今は情報収集だけで、なんの行動も起こしてないって。 今、行動を起こしても、ネズミの尻尾を切るだけで、また、別な経路を作られるって。


 それなら、観察しやすい、今の経路を残す方が安全度が上がるってさ。 ほう…… 馬鹿の処分はしないんだね。 まぁ、つまみ食いした、妹さんのマリアベルが、死にそうになったんだもんね、そうは動けないよね。 でも、気を付けよう。


 そんで、黒龍大公翁おじいちゃんが、この部屋に来たのは、ウラミル閣下おじさまにも、聞かせたくない内容が有ったから。




          おとりに成れってさ。




 将来的危険を、早い段階で潰すって。 そんで、その経路の幹を見つける為に、暫くの間、表面上は、従来通りの警護しか付けないって。 


 唯一変わる事があるの。 学院のお部屋、もう二部屋、従者用にって開いてるでしょ? まぁ、その内一部屋は、鍛錬部屋にしてるけどね。 残ってる一部屋に、執事を置くって。 ヴェル様だって。 すんごく勉強してて、次の執事長も彼じゃないかって噂のヴェル様。


 マリオも成長著しい彼に一目を置いているって。 でね、此処からは内緒話なんだけど、ヴェル様、黒龍のお屋敷の暗部の一部隊を任せられてるんだって。 その部隊ごと、私の護衛に入るんだって…… なんだそれ? 部屋一杯になるんじゃないか? 





「そんな訳、あるか。 みな隠遁の専門家だ。 それとなく張り付くんじゃよ。 それの司令塔がヴェルじゃ。 これは、決定事項じゃからな。 いいな」


「 ” 嫌です ” とは、言えませんね。 お受けいたします。 わたくしは、何をすれば、一番良いのでしょうか?」


「普段通り……じゃな。 警戒していると、悟られんようにの」


「はい、アレクサス様」


「うむ。 お前をおとりに使うなどとは、ウラミルにもリヒターにも言えんな。 アレ等は、クロエに関しては、飛びぬけて甘い…… バレぬようにせねばな」





 悪戯っぽく、黒龍大公翁おじいちゃんが笑う。 へぇ、こんな笑い方も出来たんだ。 いいよ、乗ったげるよ、この話。 炙りだしかぁ…… 効くと良いねぇ。 


 お茶、二杯分の話は終わった。 黒龍大公翁おじいちゃんは、来た時と同じように、静かに帰って行った。 ふぅ…… 何かな……ホントに、囲い込まれてきたみたいね。 


 取り敢えず、寝よう! それからだ!!






 *************






 翌日から、三日間は目が回ったよ。 朝の鍛錬が終わったあと、水浴びして、新しい下着に変えて、制服着て待ってたの。 そんで、朝ご飯の時間が来る前に、エル達が駆け込んできた。 とっても慌ててね。 びっくりしたよ。 あのいつも冷静なエルがよ?





「クロエお嬢様! 大変です! 奥様と、ソフィア様が!」


「どうしたの? そんなに慌てて…… えっ、奥様?」





 エルの後ろに奥様が居た。 その後ろにソフィア様も。 うえぇぇ…… ” 前触れ ” 直後かよ…… 着替えて待っててよかった。 ゆったりとした、微笑みを浮かべて奥様が、口を開いたの。 有無を言わせない、何とも言えない迫力が有るのよ……流石ね。





「支度は出来ているようね。 広間に…… ギリーガ服飾店の者が、待っています」


「はい、奥様」





 でぇぇぇぇ……・ 黒龍大公家のメンツを賭けた、無茶ぶりだよ。 今何時だよ。 まだ、朝ご飯、前だよ。 お腹すいたよ…… トボトボと、奥様とソフィア様に、挟まれるようにして、大広間に向かったよ。


 大広間はね、言葉通り広いの。 ウラミル閣下おじさまが、お役所の偉い人全部集めて、お話したり、お屋敷の使用人全部集めて、お話したりする場所なのよ。 だから、軽く百人単位で入れるの。 でね、その大広間に、奥様に連れられて入ってビックリ! 中央にでっかい長テーブルがコの字に置かれてて、その上に、服地が ”ドッサリ” 積みあがってんの。 


 そんでね、 正面と、両脇の壁際に、ずら~~って椅子に座った人達。  ベランダに出るガラスの扉の所以外は、全部埋まってんの……何人いるのよ……





「「「エリカーナ奥様、ソフィア若奥様、クロエ御嬢様! おはようございます!!」」」





 そんで、全員が、立ち上がって、そう言って頭を下げるのよ…… 



       もうね、圧巻。



 思わず後ずさったわよ。 ギリーガのおっちゃん、丁寧に頭を下げて、奥様の前に来たの。 奥様、笑顔で、ものっそい無茶振りを始めたよ。 何か奥様が言う度に、おっちゃん、顔色なくなってたよ…… ゴメンね……ほんと、なんか、ゴメン。





「宜しくね。 ギリーガ。 クロエは時間が無いの。 六着同時にお願いするわ。 イブニング・ドレス、パーティ・ドレス、デイ・ドレスの三種類。 各、二着ずつね。 各国の貴人の方のお相手をする予定なので、気品を忘れない様に。 デザインは、クロエの趣味を一番に考えてね。 クロエが、素敵になる様に、よろしくね」


「……はい、奥様……」





 もう、……なんも言えない…… ギリーガのおっちゃん、ほんと、顔色無いのよ。 それでも、私を笑顔で見てた。 まぁ……そうだよね。 うん、私も、笑顔で応えるよ。 そうしないと、なんか、ぶっ飛びそうだし……


 先ず、ギリーガ服飾店のデザイナーの人が三人来て、私の要望を聞くのよ。 唯々、豪華さを出さない様に、使い勝手が良くて、シンプルに……コレしか言えない。 ギリーガのおっちゃんも知ってるよね。 ずっと、そう言ってるもんね。


 んで、さらさらって、デザイナーの人が、スケッチ描くのよ、何枚も、何枚も。 早いのよ……でも、ゴージャス系が多いの……  ダメじゃん…… ほら、私、ストンだし、お胸も無いし……お尻はデカいよ、乗馬で鍛えたもん。 


 んで……段々と、絞れてくるのよ…… 私の要望がシンプルって判ったのか、ソッチ系のスケッチが、量産されるのよ…… もうね……流石は専門家ね……


 で、なんだかんだで、決まる訳よ。 大筋が…… 其処にね、奥様と、ソフィア様が登場! うん、真打だね。 そのデザイン画を見て、……ちょっと、ご不満な感じ。





「クロエが望むなら、いいでしょう。 でも……質素ね」


「エリカーナ御義母様おかあさま、クロエは華美なドレスを好みませんわ……質素と、云うより、清楚ですわ」


「そうねぇ……ソフィア、 貴方はどう思う?」


「クロエらしくて、とても素敵だと思いますわ、御義母様おかあさま。 クロエは、他家のお嬢様の様に、自らを飾り立てる様な事は、好みませんわよ、御義母様おかあさまもご存知な筈。 うふふ、とても楽しみ」


「そうね、ギリーガ、進めて下さる?」


「御意に……皆! 始めるぞ!」





 もうね、技術職の人って、目の前に難しい条件が有れば、有るほど、燃えるらしいの…… ギリーガのおっちゃんの言葉で、火が付いた職人さん達、私を取り囲んで、あちこち計るのよ。


 為すがままね。 棒立ち。 で、中央の服地の山を、他の職人さんが、デザイナーさんと、あれやこれや言いながら、引っこ抜いてるのよ…… まるで、砂糖に群がるアリみたい……


 用意されていた椅子に座って……試着の仮縫いが出来るまで暫し休息…… 戦場が、目の前にある所で、お茶なんぞ出来んよ…… でも、私が出来る事なんて……



         なんか、無いかな……


 

 この人達の、荒みそうになる気分を和らげる何か……



            なんか



         なんか…… そうだ!






「ヴェル♪ お願いが有るの」






 マリオの代わりに、傍に控える様になったヴェル。 初めてのお願い。 聞いてくれる?






「お嬢様、何なりと」


「ありがとう。 では、私が使っていた、リュートを持ってきて」


「リュートで御座いますね。 暫しお待ちを」






 驚きもしないし、理由も聞かないのね。 何にでも対応できるって自信? それとも、覚悟? まぁ、伝説に残る様な、執事を目指している事は、判る。 ヴェル、頑張れ! ” クロエ、対応 ” は、厳しいぞ!! 私、” 無茶ばっかり ” するからな! 


 でも、ヴェル、ほんと、直ぐに、リュート持って来たよ…… すんげー。


 でさ、前にビジュリーに云われてた事有るんだ! ”音楽ってね、一番の鎮静剤なのぉ” ってね。 おもいだしたの。 ほら、運指の練習にもなるし、職人さんに気持ちよく、仕事してもらいたいじゃん。 そんでね、弾き始めたの。 色々ね。 色々。 主に鎮静楽曲をね。


 そしたら、職人さん、ビックリしてたよ。 ちょっとだけ、殺伐とした雰囲気が、収まった。 なんか、作業も早まったみたい。 私の休憩は、試着の時だけ…… そう、なんせ、六着分だもの……なんやかんやで、度々止まったよ。






「お嬢様、皆、喜んでおります。 御嬢様が、皆の事を思い、奏でて頂いて・・皆の手がはかどります。 レースの職長など、ほら、あのように…… 誠、有難い思し召しです」


「皆様の、お気持ちに少しでも安らぎが有れば、良いのですが……」


「勿体なく。 みな、全力を出す事でしょう。 我が家の下職を全員集めた甲斐が御座います」






 全員……つまり、ほぼ街区丸々一つ…… ほんと、黒龍大公家の方々は無茶をするね……町の方は大丈夫なのか? 心配になって来た。 でも、三日間だし……私も頑張るね。



     頑張る



      頑張る



        がん



           が

 



             ……





                死ぬ……





ブックマーク、感想、評価ありがとございます。


とても、励みになり、執筆が加速します。 蛇足も増えます。


お楽しみ頂いているのでしょか? 不安になります。


クロエも頑張りますが、中の人も頑張ってます。


今後とも、宜しくお願い申し上げます。



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