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ヌーヴォー・アヴェニール   作者: 龍槍 椀
ヌーヴォー・アヴェニール 本編 物語の始まり
4/111

クロエ 勉強する

 朝の鮮烈な空気はいい!

 とっても、気持ちいい!!!

 体を動かして、呼吸して。 




 気持ちいい!!!!! 





 そうだね、今の私のストレスの源は、”生活”そのものだもんね。 ふぅ……

 朝の日課を認めて貰うのに、結構かかった。


 ”大公家の面目に関わるので、お止め下さい。”  って、執事長のマリオに言われたり……

 ”お嬢様がはしたない真似をしないでください。”  って、メイド頭のアンナに目を剥かれたり…… 


 その度に、”ロブソン開拓村に帰してくれ!” って、ウラミル黒龍大公閣下に告げ口したね!


 ウラミル黒龍大公閣下おじちゃんも困り果ててた。ウラミル伯父ちゃん、とっても忙しい方だもんね。 私ごときの些末な事に関わってる暇ないもんね。 ごめん。 でね、みんなが其々に困った状態になったんだよね。そん時に、アレクサスお爺ちゃん、もとい、アレクサス黒龍大公翁が、言ってくれた。


 執事長のマリオと、メイド頭のアンナと、私。 三人がアレクサス黒龍大公翁閣下の部屋に呼ばれた。 なんか、笑ってるよ。 でも、目が笑ってないよ、 怖いよ、この人。 爺様の兄弟の中で、一番偉い人なんよね。 笑いながら、怒気を込められるって……こりゃ、怒られるな。





「儂の兄弟の孫であり、甥の娘だぞ? 龍王国でも最強と言われた騎士職だった男達の。 彼らの薫陶は受けている筈だ。 それに、礼節も護っている。 何がいけない? 東のバルコニーが空いているではないか。 あの男達も、いつも、あそこで鍛錬していた。 女児は部屋で大人しくするべき? 何を言っている、良いでは、ないか。 女児でも身体の頑強さは必要だ。 儂が許す。 以降、この事について、苦情は聞かぬ。 いいな、マリオ、アンナ」





 やっほい!





「クロエ、お前も、黒龍大公家の淑女となる身だ。 淑女の身嗜みと礼節を覚えよ。 龍王国、国王陛下に謁見する機会もあろう。 お前の恥は、大公家の恥にもなる。 よいか、良く学べ。 身に付けよ。 その為の助けは惜しまん」





 うへぇ……





 日課の鍛錬は認められたけどねぇ…… 鍛錬が終わって、水浴びしたら、後は一日中お勉強の毎日だった。 ウラミル黒龍大公閣下が付けてくれた教師達は、なんでも超一流だったそうな。 ハイハイ、勉強ですね。 分かりました。 



 歴史、算学、地理、風土、外国語……



 一日があっという間に過ぎていく。 ご飯の時間も、お勉強の一環。 テーブルマナーとかのね。 全部教師が付いてた。 覚えが悪いと、死ぬね。 これ。 最初は田舎娘って事で、気合入ってたけど、一通り教えて貰ったら、そんなに難しくなかった。 ただ、ひたすら面倒くさいだけだった。



 笑っちゃたのが、外国語の時間。



 教師のおっちゃんが、色んな言葉で挨拶するんだ。 大体意味は分かる。 難しそうな顔をしていた教師が、私が挨拶をきちんと返すと、いっつも破顔するんだ。 馬鹿にしやがったのは、キリル語の教師だけだ。 最初はこっちの言葉でいうと ⦅おはよう。お天気で良かったでちゅねぇ⦆ って、キリル語の赤ちゃん言葉で挨拶しやがったから、





 ⦅おはようございます。 本日も大変結構なお天気で御座います。 先生の一日に幸多かれと、精霊様に祈りを捧げておりました。 どうぞ、よしなに⦆





 って、古代キリル語で返してやったら、目の玉落ちそうなくらい目を見開いて、慌てて部屋を出て行った。


 その日の外国語の時間はそれで終わり。 なんだったんだろう? アンナが飛んできた。 そん時、私は、机に向かって、片手間に本のページをめくってたんだ。 授業で使う筈だった教科書? 童話みたいなやつをね。 ぼんやりと、読んでたんだ。 する事無かったからね。 真っ青な顔をして、私に、





「先生に、何をされたんですか?」





 って、聞いて来たから、ニッコリ笑って、





「ご挨拶申し上げましたのですが、その後直ぐに出て行かれて……如何いたしましたでしょうか?」





 って、言ってやった。 キリル語は難しくって、龍王国にも先生はあんまりいないそうなんだ。 だから、キリル語の先生は大抵めっちゃ上から目線そんだいなんだって。 そんな、先生が顔を真っ赤にして、「私には無理です!!」って叫びながら、飛び出して行ったんだって。 やっぱ、古代キリル語がわるかったんだろうなぁ…… 謝罪はするが、反省はしない。 


 幼いと思って、人を舐め腐った罰だ!


 その夜、アレクサス黒龍大公翁おじいさまに呼ばれた。 ニッコニコの顔をして、迎えてくれた。 絶対に怒られると思っていたから、めっちゃ意外だった。 せっかく付けてくれた、きっと給金もバカ高な教師を撃退しちゃったから……





「よくやった。 あの者、儂は嫌っておった。 あやつ、龍王国であの者以上にキリル語が出来る者など居ないと踏んでおったのであろうな、すこし驕慢でな。 しかし、クロエ、お前の口から出た古代キリル語が、あの者にとっては恐怖でしかなかったようだ。 紡ぎ出される言葉が古代キリル語で、その意味も大まかには判ったそうだ。 挨拶程度で、何を言っていると、尋ねたら、あやつ、”精霊の言葉を操る少女に教える事は出来ません。 ご容赦ください”とな、云いおった。 それでな、一冊の魔導書を渡してきたのだ」





 アレクサス黒龍大公翁、一冊の本を手渡してくれた。 表紙は見た覚えのある紋章が刻み込まれている。 うん、父様の手持ちの魔導書だ。 開いた時にめっちゃ怒られた奴と同じ……





「あの……これは?」


「ふむ、なんでも、魔導書と云うもので、開くことが出来たら、古代の英知が己の物になるそうだ。 やってみるか?」


「……ここで、ですか?」


「ああ、見てみたい」





 たしか、あんときは……何の準備も無しに開いたから、そこら中に魔法陣が飛び出したっけ……表紙をもう一回見る。 紋章……、違うね……これは、古代キリル語で書かれている、取扱説明書だ、 文章が取っ散らかってる。 それ自体を魔法陣にしてるからか…… 


 ええっと。 此処がこうなって、こっちが、こうなってて……大体わかった。 たんに開くだけなら、問題なさそう。





「じゃぁ、開きますね」





 敢えて、無邪気そうにそう言って、御爺様を見た。めっちゃ好奇心溢れる目で見られた。



 ⦅過ぎ去りし、過去の英知、その姿、我に示せ⦆



 書いてあった通りの文言を唱えて、表紙をめくる。 うん、開いた。 開錠の呪文みたいだ。 分厚い羊皮紙のバックルが解かれて、本が開いた。 うわぁ、めっちゃ細かい字だ……





「うむ、奴が言っておった、この魔導書を開くことが出来るのならば、この龍王国にお前を教える事の出来るキリル語の教師はいないと。 後の研鑽は、その本を読み、内容を理解する事だそうだ」


「……はい。 でも……これ、……魔導書ですよ? 読んで、理解したら、使いたくなりますよ?」


「何が問題か?」


「チラッと見ただけですけど、中の魔法陣と説明ですが、天候とか、地形とか直接弄れるような、大魔法ばっかりです。 ……ホントに、いいんでしょうか?」





 一瞬戸惑ったような視線を、私に向ける御爺様。 その後、破顔した。





「クロエの常識に任せる。 お前が必要と思うなら使え」


「はい。 有難うございます」





 此れってさ、無制限使用許可だよね。 使うんなら、自己責任ってことだよね。 ……うわぁぁぁぁ。 どうするよ、コレ。 まぁ、勉強に使えってなら、読みますけど……ねぇ そんな、おっそろしい物を渡されて、御爺様の部屋を後にした。 本は、もう一回しっかり封印した。 その辺に開けたままにして置いておくと、トンデモナイ事になりそうだもんね。


 疲れたから寝る。







 *************









 なんだかんだで、勉強に追われる毎日を過ごして居たら、もう、四年もたってた。 もうすぐ、十歳になる。 毎日、毎日、毎日……詰め込まれ続けた日々だった。 うん、頭の中、パンパン。 精霊祭の日も、降龍祭の日も、ちょっとだけ外に出られただけだった。 朝の鍛錬以外は、全部、言う事を聞いてたらねぇ……どんどん色んな事を追加されてった。


 楽器を使って音楽を奏でる事。 うん、これは楽しかったよ。 何でもいいって云うんで、村に来た楽団が使ってた、リュートを習ってみたいって言うと、なんか、とっても変な顔をされたけど、習わせてくれた。 めっちゃ楽しい。 先生もなんか”やわこい”感じの吟遊詩人って云うの? そんな人。 一杯笑わしてくれた。 内緒で悪い事も教えてくれたんだけど、それは、村でやってた事だから、笑顔で聞いてた。先生の方が甘い。 指摘はしなかったけどネ。


 ダンスの時間はねぇ……先生に怒られ通しだよ。 所作が荒っぽいって。 もっと優雅にって。 アンナから、鍛錬をやめて欲しいって言われたよ。 うん、”嫌だ!” 即答したね。 もっと、優雅に! 心配されているのは判るんだけどね。 それと、これとは別の話。 でだ、頑張ったよ。 早く動くとダメなんだから、ゆっくり動けるように、ギッチギチの服でね。 アンナに言って、ダンス用の服はそれにして貰った。 


 さらに、心配された。 アンナにはホント、頭上がんない。 ごめん。


 テーブルマナーは、先生にも、アンナにも及第点貰えた。 何処に行っても、恥ずかしい事はないって。田舎娘にこんだけ仕込んでくれたんだ、感謝しかないね。 ほんと、ありがとう。


 それは、めっちゃ暑い日だった。 お日様がカンカン言ってる様な、そんな日だった。 ウラミル伯父様から、部屋に来るように言われた。 珍しい…… 




 なんか、したっけ? 




 算学の教師と、設問について討議したり、地理の先生に周辺国の政情について、詳しく教えてもらったんがいかんかったか? だって、面白いじゃん。 

 それとも、歴史の先生に、父様と爺様の事悪く言われて、反対に遣り込めちゃったんのが悪かったか? 



 あれか! リュートの先生と勝手に街に出て、劇場の楽団席で小劇団の公演の演奏したの! 



 あれは、ヤバいよね。 先生が執事長のマリオに、”あれは授業の一環です” って云い切ってくれたから、大丈夫だと思ってたけど、普通、怒られるよね……マリオの監視が強化されたよ……


 う~~ん、心当たりが多すぎる。


 取り敢えず、行ってみた。 怒られるんなら、スパッと怒られた方が気持ちいいし、下手に隠すと、もっと怒られる。 黒龍大公家では、居候みたいなもんだからね! ご主人様の顔に泥を塗ったくったら、下手すりゃ首が飛ぶ。 うん、気を付けよう。


 コンコンコン





「クロエです。 お呼びでしょうか?」


「おう、来てくれたね。 入って」





 およ? 声は穏やかだ。 でも、油断できねぇ。 この家の人達、笑いながら怒る達人だからねぇ。




「失礼いたしま……」




 でっかい男の人が居た。 声が、途切れてしまった。 ヤバいぞ! この人、記憶にある。 うん、赤龍大公様だ。 御身内ぶっ叩いた事、まだ、根に持っててんだ……怖えぇ…… おっと、挨拶挨拶!





「赤龍大公閣下、お久しぶりで御座います。 過日はその……申し訳ございませんでした」





 赤龍大公様、私の挨拶を聞いて、爆笑した! いや、ほんと、爆笑。 部屋が揺れるかと思った。





「なんの! 此方こそ、そなたには力になってもらった。 騎士の本分を忘れかけておった連中に気合を入れてもらったぞ、礼を言う。 それとな、アルバートル=ヌクイヌスから、くれぐれも宜しく伝えてくれと、伝言を預かった。 あれは、南アフィカン王国に帰ったぞ。 此方の礼法を身につけてな」


「それは、宜しゅうございました。 アリ様はアフィカンの誇り高き戦士。 その気概は騎士にも勝るとも劣りません。 本当に宜しゅうございました」


「はははは、全くクロエは、凄いな。 うん、まさしくその通りだ。 奴め、胸を張って帰りおった。 それでな、これを」





 赤龍大公は一枚の紙を差し出して来たんだ。 【誓紙】だよ、これ。 上等の紙に、南アフィカンの言葉で書かれているよ……



 ⦅我。アルバートル=ヌクイヌス。 天と地の精霊に誓約す。龍王国 民 クロエ=カタリナ=セシル=シュバルツハント に誓約する。 その身、危機に陥る時、我、参じ、一命を賭し護り抜かん。 我が生涯を掛ける誓約なり⦆



 やべえよ、こんな、大それたモノ。 これって何かい? 精霊誓約で、私を護るって事、宣言しちゃってるの? たしか、アリはあっちの国の偉い人護ってたんでしょ? いいの? ホントに?





「こ、これは……わたくしにで御座いますか?」


「ああ、紛れもなくな。 クロエ、受け取ってやってくれ。 アルバートルが、この国で見つけた大切な友だと云っていた。 誇り高い魂に、自分の魂を捧げるとな」


「あうううう…… ウラミル黒龍大公様……」


「南アフィカン王国の民は誇り高い。 受け取らねばなるまいな」


「あううう……謹んで、お受け取りします」


「よかった。 何かの折に伝えておく」


「では、その時に、一緒に手紙をお渡しできますでしょうか?」


「良いが?」


「伯父様、御机お借りしても?」


「いいよ。 マリオ! 手紙を書く!」





 マリオから紙とペンを受け取る。 とりあえず、お礼。 んで、”そんなに気にしなくていいよって、これからも、優しくって、誇り高いアリで居てね”って。 丁寧な手紙言葉で書く。 封筒には入れず、赤龍大公様にお渡しした。





「必ず、届くように手配する。 ……見事だな。 黒龍大公、「至極の珠」を手に入れられましたな」





 はて? 何を言っているのかな?





「まさしく、まさしく」





 ん? 伯父様、なんで、頷いているのかな? なんの事? まぁ、私には関係ないし、用事は済んだのかな? あんま、此処には来たくないよ……緊張するし。 赤龍大公様が、ウラミル閣下に目配せした。 うん、そんな感じだ。 目ざといよ、私。




「でだな、本題だ」




 やっぱり……なんか、あると思ってた。 お叱りだね♪ 赤龍大公閣下がいらっしゃるって事は、やっぱり、練兵場の事だろうね。 う~~~ん、頼む、死刑だけは。 そうだ、開拓村に帰してもらうってのでどうよ。 それで、お願いします!!! 何卒!!!!





「クロエ、君宛の、正式な王室舞踏会の招待状だ。 デビュタントを兼ねてな。 もうすぐクロエも十歳に成るのだろう? そろそろ、社交界に出なくてはならない時期に来たようだ。 黒龍大公家うちの面目を立ててくれ」





  う、うへあぁぁぁぁぁ!! 

      お、王室舞踏会ぃぃぃぃ!!

           来たよ、 ついに、来たよ。 


恐れてたもんが!!!! 


           内心ずっと怖かったよ。 

       王室関係者と会うの? ムリムリムリ~~~~~。

   でも、口から零れ落ちた言葉は……







「謹んで、お受けいたします」






 何言ってんだ? 私? ……居候だからね。 ……仕方ないよね …………顔潰さない様にしなきゃねぇ………… 




はぁ…………気が重い…………





王室より 王室舞踏会の招待状到着。 クロエ、デビュダント 決定。 

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