クロエ 歓迎舞踏会で咲く、花になる
遅くなって、ごめんなさい。
やっと、舞踏会書けました!
渾身の一話です。
お楽しみください!
朝~~~!! 外はまだ真っ暗!! 舞踏会当日だね。
早速だけど、いつもより早い。 もう、早朝って云うより、まだ夜って感じになり始めてた。 だって、鍛錬の数半端なく多くなってるんだよ? 毎日の日課が、なんか、膨れ上がっている感じ。 爺様の型の鍛錬でしょ、婆様の呼吸鍛錬でしょ、ダンスのおさらいでしょ、そんで、リュートとピッパの運指でしょ…… で、婆様の呼吸鍛錬の時間は、朝日が昇る時だから、まぁ、他のを先にやる訳よ……
ほんと、早起きになったもんだね、私。
で、最後の呼吸鍛錬を終わった頃、普通の人には早朝な時間、こっそりって感じでノックの音がした。 素早くミーナが出てくれた。 ビジュリーが、臙脂色のローブの女の子と立っていた。
「ごめんねぇ 朝早くにぃ~ あのねぇ ちょっと、お願いが有るのぉ 聞いて貰えれば、うれしいんだけどぉ~ クロエ様ぁ~」
うん、いつものビジュリーだ。 この人、この口調、狙ってやってる訳じゃ無いんだけど、ぜってぇ、断れないよね。 なんでだろう。 それと、その子、誰?
「何なりと、ビジュリー様。 ……あの、その子は?」
「ありがとうぉ~ あのねぇ~ リュートを貸してもらえないかなってねぇ、思ってるんだけど、よろしいでしょうかぁ?」
ちょっと、目をパチクリさせた。 あのリュートでしょ? 元はビジュリー家のモノなんだし、ドゾ、ドゾ。 で、その子、誰?
「はい、大丈夫ですよ。 かなり弾いてしまったので、調律がくるっているかもしれませんが……ごめんなさいね。 ……エル、お願い、リュートを」
エルが、さっそくリュートを箱にしまって、持ってきてくれた。 でだ、その子、誰?
「どちらのお嬢様ですか? わたくしは、クロエ=カタリナ=セシル=シュバルツハント と、申します」
「……あ、あの、す、すみません! こ、これ!」
差出される、あの可愛い紙袋。 あぁ、この子だったのね。 で、誰よ?
「いつも、扉のお外に置かれておりますね。 貴方の御名前は?」
「は、はい……ま、マリアベル=ナーナ=エクスターです」
ほう、これは。 白龍大公家の傍系血族筆頭家のエクスター公爵家のお嬢様でしたか! なんで、エリーゼ様に最も近しい家系の人が来るんだ?
「あ、あの、兄さまが、どうしても渡したいって……そ、それで、私が」
えっ? なに、男の人が作ってたの? これ? う、うわぁぁ~ エル!!! あんた、千里眼かなんかなの?
「そ、そうなのですか……しかし……」
「ご、ゴメンなさい。 どうしても、エリーゼ姫姉様には、見つかりたくないって……」
なんかねぇ…… ボリス=フォン=エクスター子爵だろ、この子の兄さまって。 エリーゼ様親衛隊の筆頭じゃん。 いつも、御側に侍ってんじゃん。 それなのに、なんで? よく分からんなぁ ……まぁ、取り敢えず、受け取っておく。
「ありがとうございます。 いずれお礼でも……」
「い、いえ……エリーゼ姫姉様に知られるとダメなので…… ホントは、私も姿を見られない様にって……」
「……そうですか。 では、貴方から、ボリス様に、お礼を申し上げてくださいませんか? 勿論、私と会ったと云わず、黒龍の”御養育子”に、見つかったと」
不安そうな瞳がゆれ、安堵したかのように息を吐き出す、マリアベル。 そんなに、マズいのか! エリーゼ様、一体どんな事言ってんだ?? きちんと、淑女の礼をして来たので、私もそれに、きちんと応えた。 人として当たり前よね。 でも、マリアベル、なんか、目を丸くしてた。 そんで、踵を返すと、一目散にどっかへ消えた。
「変な子ですねぇ~~」
ビジュリーに云われてやんの! まぁ、これで、差出人が特定できた。 白龍の一派のそれも中枢近くの男の人が、クッキー?? なんだ、これ? あとで、メイドズに調べて貰おう。 私が動くと、余計な事態に発展しそう。 自重、自重! ついでに、これもマーガレットに届けて貰おう。 明日でいいけどね。
「ビジュリー様、これを」
「ありがとうぉ 助かったわぁ」
ビジュリーにリュートをしまった箱を渡す。 ニッコニコだね。 うん、やっぱりその笑顔が大好きだよ。 もう、返しちゃってもいいよ、それ。 黒龍のお屋敷で使ってたの、持ってきてもらおうかと思ってたし、それ、なんか有名な楽器なんでしょ? 弾きやすかったから、ついつい、手元に置いてたけど、本当は、私が使える様な楽器じゃないんでしょ? 私の事はいいからね。
「今日がぁ、終わったらぁ、また、持って来るからねぇ。 ゴメンねぇ 今日一日だけ、借りるわぁ」
そんな事、言わないで! ほんと、いいのよ。 大事な楽器でしょ? ……なんか、申し訳ないなぁ……
*************
ビジュリーが去って、忙しい時間の到来だ!! 先ずは水浴びからね。 そんで、ドレスアップ。 私からなんだってさ。 だろうね、一番、魔法をかける時間が掛かるんだもんね。 ゴメンね。 でも、出来るだけ協力して、手早く済ますから。 貴方達の支度だって、時間欲しいもんね。 エル! ラージェ! ミーナ!
で、私は、戦装束の装備も完了! 髪型も編み込み完了! お化粧もして貰ったしね。 最後に御飾り……って、宝珠なんだけどね。 これ、普段どうしよう……やっぱ、袋の中に入れて、首からぶら下げとくしかないよね。 なんか、良い魔法ないかな…… こんど、黒龍大公翁とこに、行った時に、”預けてある、「例の本」”に、なんか無いか、調べとこ!
完全装備で、姿見の前に立つと、やっぱり別人が、同じ動きしてた。 とっても、変な感じ。 自分で何度見ても、なんど確かめても、自分じゃないみたい。 ほんと、戦装束の魔法って凄いね。
奥様、ソフィア様、……有難うございます。
――――――――――
エスコートの到着を待つ時間が出来た。 エル達も、完全装備したよ。 ちゃんと、贈ったチョーカー付けてくれてるね。 嬉しいよ。 それぞれに合った、魔除けの精霊加護、符呪してあるからね。 ちょっと、時間が出来た。 みんなで居間のテーブルに付いて、お喋りだね。
「エル、さっきの女の子の話、調べてね」
「はい、お嬢様。 何となくですが……嫌な予感がします」
「白龍大公様のお身内ですものね。 ……しかし、エリーゼ様にも、判らない様にとは……」
「別な方面からの御依頼……かも……」
ちょっと、本当に気味悪いね。 マーガレットの報告が欲しい。 でも、まだ、調べてるって言ってたし……こんど、聞いてみよう。
そうこうして居るうちに、時間は過ぎていく。 ソフィア様が言ってたよ。 学院舞踏会では、挨拶する人のパートナーは、その方がエスコートに、お部屋まで来られるって。 ソフィア様の時は、第一王子が同学年って事で、フランツ殿下が来てたってさ。 そんで、かなり早い時間だって。 ボールルームに一番に入って、新入生の挨拶受けるんだってさ。
来ないね。
もうすぐ、メイドズのエスコートさん達来る時間だよ? やっぱりね。 ほら、来ないじゃん。 来年は、ぜってぇ出ねえぞ!! 何となくだけど、ミハエル殿下、エリーゼ様の処に行ってる気がするよ。 ほら、去年のパートナーだったしさ。 なんか、また、兄弟喧嘩に発展しそうな予感…… まぁ、王族だし、つかみ合いなんか、しないだろうけどねっ!
昨年と同じ時間に、エスコート三人組到着! 扉のノックの音だけで判るよ。 なんか、硬いの。 そんで、メイドズは、身を固くしてんの。 うはぁ……顔、赤いよ? 大丈夫? いそいそ、扉を開けるエル。 外に立ってたのは、去年の三人組。 みな庶民階層の人だけど、年喰ってるけど、同じ二年生。 ほんと、イヴァン様、いい仕事をするね。 卒業までに、いい感じになればいいね!
そんな、エスコート三人組、なんでか、私をみて、息をのんでた。 そりゃそうね。 本来居る筈ないもんね! 私のエスコートは当然、まだ来てない。 さぁ……どうしようか。 一人で行くのもなんだし、御一緒させてもらうか。
ホント、この時点てアウト! だよね。 お願い、聞かなきゃよかったよ。 にこやかに微笑みを浮かべて、エスコートさんに、ご挨拶!
「ごきげんよう、 申し訳ないのですが、御一緒させてもらっても、よろしいでしょうか」
「「「勿論です! クロエ様!」」」
よし、許可貰ったぞ。 ゴメンね、メイドズ。 あっちへ行ったら、去年みたいに、離れるから。 で、貴方達は、情報収集、宜しく!!!
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七人一緒に、ボールルームへ到着。 人一杯。 私達、最後の方ね。 もう、主催者とか、殿下達は、上座に陣取ってるよ。 私? うん、一度、ソッチに行って、ばっちりカーテシー決めとく。 なんか、引き攣った笑いを浮かべて、ミハエル殿下が頷いてた。 まぁ、知ったこっちゃねぇけどね。 取り敢えず、挨拶は大切。 とっても、大切。 隙は見せないよ。
私の今年の装いは、皆様の度肝を抜いたようね。 息を飲んでるのが判る。 奥様とソフィア様の渾身の作品だ! どうだ! 去年馬鹿にした奴、出てこい! なんとか、言ってみろ! にこやかに、周囲に愛想を振りまいといた。 奥様直伝の社交外交でな。
どんな時も、慌てず、騒がず、様子をじっくりと確認して、有利に事を運ぶのさ。 王室関係者の極意だそうだ。 うん、これなら出来そう……。 上座で、開催を宣する為に集まっていた王族関係者もこちらを見て、ビックリした顔をしている。
さて、歓迎の舞踏会も始まりだ。 入り口固めたね。 もう、入れない。 遅参には、でっかいペナルティーが、有るんだと。 今年の、これ以降の学院の、 ” 催し物 ” への参加不可。 来年まで、お預けだって。 社交に命かけてる貴族科の皆様は、それは、それは、お早いお着きだそうだ。
ミハエル第二王子の挨拶が、華やかなボールルームに、響き渡る。 声はいいんだよね。 声は。
「出席してくれた、紳士、淑女の皆。 ようこそ学院舞踏会へ! 今日は今年度入学した者達のお披露目でもある。 みな、楽しんでくれ! 今年は、我が敬愛する兄上も出席されている。 最初に踊る名誉を、兄上に捧げよう! さぁ、兄上、お願いします! 良き音楽を!!」
ミハエル殿下、最初に踊る権利をフランツ殿下に渡しちゃったよ。 フランツ殿下、なんとも言えない顔をして、エリーゼ白龍大公令嬢の手をとったね。 そうだね、一番序列の高い人が、最初に踊るんだよね。 ミハエル殿下、考えたね。
舞踏会が、美しい調べと共にスタートしたね。 ミハエル殿下、踊るフランツ殿下とエリーゼ様を眺めながら、にやにや顔で、私を見やがった。 うん、確信犯だね。 そんなに、私の相手するの嫌なのか? だったら、呼ぶな。 招待状も送るな!!
フランツ殿下、ダンス上手ね……いや、エリーゼ様が、【もう一つ】なのか? 二人の差がアリアリと判るよね。 きっちりと、華麗にリードしてるフランツ殿下。 難しいステップになると、すっ飛ばして、誤魔化してるエリーゼ様。
もうちょっと練習すればいいのに…… エリーゼ様、王妃になるんだよ? 大丈夫なの? ほら、外国の人とも踊る事に成るんだよ? ダンスの腕、磨いとかなきゃ、王室外交で、失点になるよ?
あぁ……終わっちゃった…… なんか、ぎこちないね…… ありゃ? ミハエル殿下、フランツ殿下に何やら言っとるぞ?
「兄上、華麗なダンスでした。 わたくしも、兄上に倣い、踊りたいのですが、過分なお願いとは、思いますが、未来の王妃様の手を取ってもよろしいでしょうか?」
「……うむ。」
「有り難き幸せ! では、エリーゼ=ナレクサ=ブランモルカーゴ様、お手を!」
私の前をわざわざ横切るのよ、この二人。 どうよ? 何なのよ? 喧嘩売ってるの? 買おうか? マジで。 でも、暴れたら、きっと、黒龍の閣下が、悲しむ…… 出来ないよね。 あっちで、エル達が、心配そうに見てる。 彼女達に見えるように、首を横に振っておいた。 そう、今はなにもしない。
そんな、私を見て、エリーゼ様、物すっごく上から目線で、笑いかけて来た。 ハイハイ、そうですね。 貴方は、第一王子の未来の嫁さんで、第二王子にも気に入られているんですね。
よかったねー。 奥様の薫陶が無かったら、マジで、素に戻りそうだったよ。 こんな事で、心が揺れるなんて、私、まだ修業が足りないみたい。
ダンスが始まったら、壁際に移動したよ。 うん、邪魔になるしね。 氷の微笑を浮かべてさ。 「氷の令嬢」だからね、気にしないけど、なんか、私の周り、冷気が漂ってるのかな、誰も近寄ってこないよ。 また、空白地帯作っちゃったよ。 あははは!
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そんな中、一人の第二皇子の取り巻きのが、近寄って来たよ。 エドガー=パンナレル子爵だったかね? たしか、そんな名前。 黒髪に天使の輪が光ってるよ。 もう可愛い系モロダシだね。 黒檀の様に黒い瞳に、侮蔑の色を浮かべなら、私をダンスに誘ってきやがった。 こいつも、確信犯だね。
「クロエ嬢、お手を」
「いえ、結構です」
断られたのが、そんなに気に入らないのか? ” 呪うぞ、コノヤロー! ” 的な視線を送ってきやがった。 勿論、氷点下以下の視線で弾き飛ばしたけどね。
「エリーゼ=ナレクサ=ブランモルカーゴ 白龍大公令嬢様の様に、華麗に踊れないのですね、お可哀そうに」
ムカッ…… おい、お前、ダンスの礼儀作法知らんのか? 独身の男女ならば、その場のノリと、雰囲気で踊れたり、踊れなかったりするけどさぁ、こちとら、曲がりなりにも、ミハエル第二王子殿下の、婚約者なんだぞ?
こんな、公の場の、舞踏会で、最初に婚約者以外と踊るのは、完全にルール違反だぞ? 下手こいたら、婚約の契約すら御破算になるんだぞ? 許されているのは、婚約者よりも序列の高い人で、それも、許可を受けなければならないんだぞ?
貴族の端くれなら、知ってて当たり前だぞ? 知りませんでした! では、済まないんだぞ? よそで、こんな事遣らかしたら、いきなり決闘に持ち込まれるぞ? 馬鹿のか? いくらなんでも、馬鹿すぎるぞ? 仕方ない、ちゃんと説明して、お断りしよう。
「申し訳ございませんが、わたくし、いまだ、婚約者のミハエル第二王子殿下と踊っていないので、他の殿方のお相手は出来ません」
常識的な理由を添えて答えた。 そしたらよう、チッと舌打ちしやがった、エドガー=パンナレルがな! やっぱ、知ってて、やったのか。 万が一私が受けたら、それこそ、奴らの思う壺だった。
極めて、冷めた、氷点下以下の視線を浴びせかける。 意識して、冷たくして見た。
きっと、鷹の目との相乗効果で、マジ、温度が下がったんでないかな? いわゆる、不機嫌の極みって奴。 馬鹿が、ちょっとたじろいだ。 本当に、不機嫌の極みよね。 あまりの雰囲気の悪さに、更に、周りから人が居なくなった。
壁の花どころか、 荒野の一輪に、成っちまった。
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「済まない…… こんな事に成るのなら、無理に参加してもらわなければよかった」
「残念ですわね。 せっかく作って頂いたドレスも、これでは、単なる壁の花……奥様、ソフィア様に何とお詫びしたらよいか……」
フランツ殿下が、私の周囲のブリザードを掻き分け、寒さを堪えつつ、寄ってこられた。 場を和ませようとされてるのね。 私は、一人でも快適ですわよ? 去年みたいな、露骨なヒソヒソ、無いんですもの。
一年間で、二回も斬りつけられた様な、危険な香りのする私は、噂するだけでも、災難が降りかかりそうなんでしょうとも!! 談笑のつもり……か? フランツ殿下、なんとか、ブリザード級の寒さを如何にかしようと、一生懸命話掛けられている。
「シュバルツハント。 貴方の胸に掛かるのは、宝珠なのですか?」
「ええ、そうです。 天龍様から、頂きました」
「綺麗な色ですね。 まるで、貴女の様だ」
「有難うございます。 これは、わたくしの魔力の色です。 私の色と云ってもよろしいかと」
「そうなんですか。 ……その、リングは?」
きたよ……そうさ、あんたに貰った奴だよ。 返そうか? まぁ、デザインで、宝珠の御飾りと一体化してるから、毟り取らないといけないけどね。 面倒だから、誤魔化そう!
「以前……と言っても、まだ、黒龍の家に御厄介になる前に、頂いたものです」
よし、間違いでは無い。 連れて来られて、下働きさんと間違われて、赤龍のお屋敷で働いていたからね。 うん、間違いないよね。
「そ、そうでしたか…… てっきり……」
「は?」
「いえ、なんでも……」
よし、ミスリード完了! ほんと、エル、面倒なデザインにしてくれたな…… 綺麗だけど……ね。 目にして下さい、この子、目立たします! って、物凄い主張するデザインなのよ……
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―――なんか、フランツ殿下、頑張ってるね。 なんか、私の側にビチッと張り付いてて…… 貴方は、エリーゼ様の所へ行っててよ…… もう、いいよ。 放って置いてよ…… オトナシクしとくからさぁ……
何曲か演奏があり、美しい調べがボールルームに響いているねぇ。 音楽会、立ち見って事で。 でも、気に触るのが、ミハエル殿下、色んな女生徒とダンスを踊ってんのよ。
私に見せつけるようにねっ! 曲が終わる度に、高位貴族の令嬢たちが、ミハエル殿下の元に群がるのよ。 殿下が、その度に、私を見るのね。
”僕と、踊りたければ、この輪の中に入って、乞うてみよ。 ただし、選ぶかどうか分からんけどね”
そんな感じの目だった。 なまじ、見目麗しいから、余計にイラってくる。 絶対に絡まないって、再度心に誓った。 そんな事されたら、さらに、私の周りが凍り付くよね。
これ、私のせいじゃ無いよ? 敢えて言わせて貰えば、あのバカの行いが原因。 王族なら、何をしても良いって、思ってやがるな。
「君には、本当に申し訳なく思う」
まだ、居たのか。 フランツ殿下。 もう、いいじゃん。 此処に居たら、冷え切るよ? そんな事考えてたら、殿下、とんでもない事、言い出した。
「おい、ミハエル!」
「何でしょうか? 兄上」
薄ら笑いを浮かべながら、我が婚約者様が、曲の合間に来た。
「私は、お前より序列が上だ。 お前に命ずる。 シュバルツハントと踊る」
「いくら、兄上の命とはいえ、わたくしにも先約がございまして……」
フランツ殿下が、据わった目で、ミハエル殿下に、低く底冷えするような声で言ったのよ。
「誰が踊れと云った」
「は?」
「私が、シュバルツハントと踊るのだ。 良いな」
「えっ……ええ」
「よし。 クロエ=カタリナ=セシル=シュバルツハント、お手を」
うわぁ……マジで? ついにフランツ殿下、切れちまった。 まぁ……いいか。 王位継承権一位の王子様の命令だし…… ” お詫び ” って、ことなの?
あれ? あれれ? ビジュリー! なんで、楽団の方に行くの? コンマスって、貴女のお兄さんでしょ? 何をゴニョゴニョと…… お兄さんの席に座った? あれ? お兄さん、リュート持ってんじゃん。 何をやらかすつもりなの!!
フランツ殿下に手を取られて、ボールルームの真ん中に来たよ。
「レオポルト叔父様より、聞き及んでおります。 大変お上手だと」
「……」
そうか……王室舞踏会の日……居なかったよね。 後から、レオポルト様に聞いたんだろうね。 あの怒涛のダンス三昧。 騎士の人達に耐久試験されたみたいになった奴。 あぁ……そう言えば、あれ、デビュタントだったねぇ……なんか、遠い昔みたいだ。
前奏が始まった。 やだ! ビジュリー! これ、『ミーコック』の円舞曲じゃない!! 超絶難易度のダンス曲じゃない!! どうすんの! フランツ殿下に恥かかすつもり?
「あ、あの……殿下、『ミーコック』の円舞曲ですが……」
「レオポルト叔父様に鍛えられました。 クロエは?」
「だ、大丈夫です」
「それは、よかった」
爽やかに笑いやがった。 自信が有るんだね。 思い出した! これ、ソロあるんだ!! くそっ!! ビジュリーめぇ……いいよ、判った。 全力だしちゃるよ。 付いて来いよ!!
ワン、ツー、スリー、フォー いけぇぇぇぇ!!
超絶ステップなんのその、優雅に、のびやかに、しなやかに、思うがままに体が動く!! よし、掴んだ! あとは、一気に行くぞぉ!!! 覚悟しろよ!!!
飛び切りのダンスを披露出来たと思う。
伴奏ビジュリー、コンマスの御兄さま、そして、宮廷楽団の全力。 めちゃ難易度の高い曲だよ。 でも、物凄く乗ってる。
楽しい!!!
楽しい!
楽しい!!
楽しい!!!
久しぶりに、楽しい!!
目の端でね、見えてるのよ、フロアーにいた何人かが、ステップの難解さについていけずに、途中退場。 ダンス自慢だったのにね。 無理もない。 これは、本当に難曲。 普通無理。 相当に熟さないと、ステップが歪む。 毎朝の鍛錬、やっててよかった!!!
ソロ部分 ちょっと、スカートを持ち上げて、軽やかに踏んだ。 フランツ殿下も、お喜びだね。
私も、いつの間にか、素の笑いが出てた。 ホントに楽しい!!
でも、そんな時間も……やがて終わる。 二曲も三曲も同じ相手と踊る事は、婚約者持ちの私には出来ない。 でも、一曲でいい。 ホントに楽しかった。 殿下に大きく頭を下げて、お礼をした。
「たのしいひと時でした。 有難うございました、フランツ殿下」
「そうだね、クロエ。 また、何かの機会に……お願いしたいな」
「もったいない、お言葉……」
「うん、社交辞令じゃないよ。 レオポルト叔父様に自慢話が出来たよ」
とっても爽やかな笑顔で、そんな事、言われた。 うん、フランツ殿下の謝罪、受け取ったよ。 楽しませてもらった。 あの曲の後……誰も踊れなかったみたいだ。
どうにも、難しいね。 頃合いだと、フランツ殿下が、ミハエル殿下に挨拶を促すも、なんかとっても悔しそうな顔をして、何も言わずにボールルームを出てくのよ。 もう、フランツ殿下も、ミハエル殿下に、何も言う事は無いのか、ちょっと眉を寄せただけで、皆に挨拶をした。
「今宵の宴は、なかなかと興味深かった。 一年生の諸君! これからの学院での生活。 困った事が有れば、上級生に問え! 上級生は一年生を良く指導せよ。 かつて自分達がして貰ったように。 一年生の諸君、学院は、君たちの入学を心より歓迎する!」
流石はフランツ殿下。 よく、この舞踏会の趣旨を判ってらっしゃる! あのバカより、ずっと上等な人だ。 フランツ殿下の挨拶を聞いて、一年生の方々、みんな一様に、安心したような顔になってるね。 これがカリスマ性ってやつか。
そう言えば、お腹すいたな。 良く動いたし。 殿下も、近習の人達に連れられて帰ってったし、後は、喰ったり飲んだりしよう。
しかしだ、ビジュリー、
お前、説教な!
ブックマーク、評価、それに、感想、誠に、誠に、有難うございます。
モチベーションと、書きたい事が、一杯です。
こんなに長くなってしまいました。
それに、いつもより、三時間、予定より、六時間遅れの投稿となりました事、どうぞ、お許しください。
本当に有難うございます。




