クロエ 歓迎舞踏会の準備をする
50,000PV 越えました。 ひとえに皆様のお陰です。
これからも、頑張ります。
宜しくお願い致します。
テーブルの上に載った不審な紙袋。
あて先は「私」 で、差出人は「不明」。 ええい、名前を書け、名前を!! お礼すら言えんだろうが!! コレ、素敵で、可愛いパッケージ。 中身は、美味しいクッキーらしい。
らしいってのは、食べて無いから。 婆様から、見ず知らずの人に貰った物は喰っちゃいかんって、言われてたから。 婆様がロブソン開拓村に、辿り着いた頃、村に子供攫いが多発したらしい。 なんでも、子供を攫って、都会で売るんだと。 完全に違法。 そん時でも、知られれば間違いなく極刑。 でも、一杯攫われたらしいね。
でね、その手口が、子供に辺境では珍しいお菓子を渡すんだって。 勿論、色んな薬入り。 で、自分が誰か、何処に住んでたかも、分からなくなるらしいのよ、それ食べたら。 婆様、異様に怖がっててね、母様も子供の頃、すんごく云われ続けたらしい。 反動で、母様、道端の草喰ってたって。
あぁ……血筋か…… わたしも良く、道端の草、喰ってたなぁ・・
さぁ、困ったぞっと。 エルが言ってた。 気が付いたら、扉の前に置いてあったと。 「クロエ様へ」って、物凄く可愛い書体で書いてあったしね。 もし、婆様の言葉知らなかったら、あっさり喰ってたね。 フフフ、知らない内に、私にも、誰か思ってくれてる女生徒がいるんかなってね。 エルからの突っ込み、
”女の人とは限らないのでは?”
………………ちょっと引いた。 この袋、めっちゃ女子力高いよ?
で、困った私は、其れを持って、こういう事を良く知っている人に、聞きに行ったよ。 そうさ、中庭の御茶会にね。 マリーはゆったりとお茶してた。 そう言えば、マリーのサロン開きの打ち合わせする事に成ってたんだ。 丁度良かった。 うん、私を嵌めた奴らも雁首並べてるよっ!
「ごきげんよう! マリー様、マーガレット様、アスカーナ様、ビジュリー様!」
うんうん、綺麗な絵図だねぇ……なんか、中庭に豪華な花束が有るみたいだよ……ニヨニヨしながら、みんなの元に行く。 マリーニッコリ笑いかけてくれた。
「ごきげんよう! お忙しそうですね、クロエ様」
「すみません。 なかなかと時間がなくて……マリー様、サロン「大公家のお茶席」開設、おめでとうございます」
「有難うございます、クロエ様。 その節は……でも、まだ、お部屋が空きませんから……もう少しで、使えるようになるのだそうです。 青龍の屋敷から、使用人をお願いいたしましたから、十分なお世話が出来ると思いますわ」
「左様で御座いますか、それは、楽しみです。 規約などあれば、お知らせいただければ嬉しいのですが?」
「ええ、後程、うるさく言われて作成した規約を、お送りいたしますね」
「有難うございます。 なんだか、ワクワクしますね♪」
マリーのサロン開設に関しては、色んな所から横槍が入ってたみたい。 なにせ、最後の超大物なんだって。 フリーなの。 で、一番、マリーの事欲しがってたのが、エリーゼ様。 そりゃ、そうよね。 四大大公家の一家なんだもんね。 近くに置きたいよね。 残念でした!!
で、細々した嫌がらせを、されたんだってさ。 マリーの御父様である、青龍大公様、”これも勉強だ”って、ほとんど手伝わなかったって。 そんな風に、マリーは、言ってたけど、絶対に手を出してると思うよ? だって、あのエリーゼ様が嫌がらせしてんだよ? 普通じゃ突破できないって!
でも、まぁ、正攻法で捥ぎ取ったみたいだし、マリーも満足そうだし、そこんとこは、敢えて言わないよ。
で、問題の贈り物。 みんなに見せた。 一様に食べないって。 差出人不明なモノは、様子を見るって。 やっぱり、貴族様だね。 ちゃんとしてた。 で、マーガレットが中身を調べてあげようかってさ。
「御口に入る物だからね。 何が有るか判らないし…… クロエ、敵多いから……ね」
「そうですわね……お願いします」
うん、そう。 敵多いよ。 ミハエル殿下筆頭にしてね。 そんなのが婚約者だよ……凹む。 でも、持つべきものは友人だね! マーガレットは、その道のプロみたいなもんだから、任せよう! うん、そうする。 自分で調べるより、安全で確かだ。 でも、危険な事は、しないでね?
「私も食べないよ。 ちゃんと調べるから。 ちょっと時間貰うよ?」
「お願いしますわ。 ホント、嬉しい。 頼れる人が居るって、いいですね」
「……なに、言ってんだよ~」
なんか、デレた。 ……可愛い…… おっと、いかん。 この中じゃ、ダントツに私が一番、女子力低いからねぇ……
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行政騎士科の授業に出てたんだ。 それで、私はまた、救護係。 白衣、白帽で、演習場の片隅で待機中…… つまらん。 私にも剣を振らせてくれ! なんかウズウズして来るよ……。 そんな中、演習場の中ほど、お付きの騎士達が二、三人固まって、遣り合ってる人達を見てた。
一人は、 フンベルト=オスカー=クラインハルト子爵 デカい模擬戦斧振り回してる。 強引な力技。 太刀筋はあんまりよくない。 というより、無茶苦茶。 破城槌とかの方が、ええんじゃね? 対するは、ギルバート=クロイツ=ルベルグラディウス子爵。 これまでだったら、同じような棹状武器もって、ぼろっぼろに、されてたよね。
嬉しいな。 ちゃんと、自分の大切な使命思い出してくれてた。
軽装片手剣で、うまく受け流してる。 まだ、ぎこちない足捌きだけど、相手がフンベルトのオッサン顔だから、十分に対応できてる。 よしよし。 きちんと、11番と、17番、出来てるじゃない。 太刀筋が綺麗だよ。 うん、もうちょっと地力がついて来たら、さらに良くなるよ。
あっ、フンベルト、形勢が悪いって思って、思いっきり、砂蹴り上げよった。 私だったら、前に出て視界確保するけど、ギルバート様、後ろに下がっちゃったよ……あれ、目に入ったよね。 うん、視界が片方塞がれた。 ……まぁ、そんな事も戦場じゃ、よくあるよね…… これは、ギルバート様の判断ミス。 で、模擬戦斧叩きつけられて、ゴロゴロ転がってた。
教官が止めに入って、模擬戦終了。 なんか、爽やかに握手してら…… ギルバート様、肋骨一、二本持ってかれてるよ、きっと。 フンベルトの苦虫を噛み潰したような顔が面白かったから、許す。 で、早くこっちへ来い! 治療するよ!
苦笑いと、苦痛に顰めた眉が、変顔になってるよ? 痛いんでしょ? 早く横になりなよ! ギルバート様を誘導して、高さの低い、野戦用簡易ベッドに寝かせた。 軽鎧を外す。 案の定、肋骨一本折れてた。 ポーションの瓶の蓋を切り、ギルバート様に渡す。
「飲んでください。 楽になります。 回復には、少し時間が要りますね」
「ありがとう。 まだまだだね……」
「いい線行ってましたよ? 戦斧相手に、あのくらい出来たら、オークなら倒せますよ?」
「そ、そうかな……」
「ええ、オークの腕力は凄いですけど、足の捌きは、全然ですからね。 積極的に膝と、足首を狙うと。 オークなら、仕留められます。 後は、棍棒、躱すだけですもの。 ギルバート様、棹状武器の時より、ずっと、動きが、洗練されましたし……」
「よく、オークの弱点しってるね。 本か何かで?」
「いえ、実際に狩ってましたもの」
「えっ?」
し、しまった! つい、喋り過ぎた!! 眼をまん丸に開いて、絶句してる。 ちょっと、慄きながら、ギルバート様、口を開かれた。
「本当に?」
「ええ、辺境の私の家の周りには、度々出てましたから……討伐部位は両方の手首ですよね」
「……クロエ様……」
あら? 血生臭かった? ゴメンあそばせ、オホホホホホ。
「あの、クロエ様…… 少しお話が。 貴女に、お礼がしたいのです。 自分の愚かさを自覚しました。 吹っ切れた……とも言えますね。 何のために騎士を目指しているのか。 もう一度、自覚しました。 わたくしが出来る事ならば、何なりと、仰ってください」
「……えぇっと…… その様なお気遣いは、ご遠慮いたします。 それは、ギルバート様が、御自分で悩み、御自分で見つけられた答えなので御座いましょ? わたくしが、何かを言ったからでは、御座いませんわ」
「いえ、とても大切な事を思い出す切っ掛けを頂きました! ですから……」
なんで、子犬の様な目で見るんだ! う~~~ん どうしよう。 このまま懐かれたら、また、めんどい事になるよね。 なんか無いかなぁ…………
そうだ、一個あった!
「では、一つお願いが。 わたくしの友人が、サロンを開きました。 一緒にその場にいらしてほしいのですが、宜しいでしょうか?」
「えっ? ご友人の? クロエ様のでは無く?」
「ええ、 彼女は大変内気で、勇気を振り絞って、やっとサロンを開設したそうなのです。 ご招待いただいていますが、なにぶん、初めての事ですし、これからの事も有りますので、是非とも、赤龍大公閣下の御三男と言う、高位の方が出席された方が、彼女の為になると思いまして…… ダメでしょうか?」
よし、女子の技の一つ、必殺 ” ダメでしょうか ” だ! 眼つきのキツイわたしでも、何とか使える、おねだりの顔。 閣下と、黒龍大公翁は、これで落ちる。 どうだ! 考えとるな。 うん、やっぱ、効かないか…… あれは、奇跡だったと思う事にするよ……
「判りました。 ご招待いただけたなら、いつでも参じます」
やっほい!
マリー、まともな騎士様、確保したよ!!! ほんと、此れで、四大公家の内、三大公家の人が集まる、「大公家のお茶席」になるね!! マリーの社交性向上の為に、私の下手な媚売ったよ。 買ってもらってよかったよ。
「有難うございます。 近々、ご招待状をお送りいたしますね」
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一年生への、歓迎舞踏会が在るって通知が来たよ。 もう、悪い「想い出」しかない奴だよ。 まぁ、お陰で、ビジュリーと友達になれた事は、良かったけどね。 王族とは絡まない事に、越したことは無いからね。 ほら、同じクラスでも、ミハエル殿下全く声かけてこないしね。 さっくりと、欠席に〇付けて送り返して置いたよ。
ん?
なんで、教官室に呼ばれてるんだ、私? で、なんで、目の前に助教のフランツ第一王太子殿下が居るんだ? で、なんで、欠席に〇付けた歓迎舞踏会の通知を、テーブルの上において、険しい顔をしているんだ? 嫌がらせ? お怒り? ほら、王族って変な所にスイッチ有るじゃん。 押しちゃった?
「……もちろん、事情は知っている。 前年の弟の非礼も聴いている。 しかし、今年は私が居る。 非礼はさせない。 きちんと、シュバルツハントを、婚約者として遇するようにする。 だから、出席してもらえないだろうか?」
「……有難い御言葉です。 が、何故ですか?」
「君に対しての謝罪だ」
「……無用に御座います。 出来れば……」
「いや、出席してくれ。 王家の品位に関わる」
「……御意にございます……」
うはぁ~~ でたよ、 ” 王家の品位 ” 言い換えれば、王家のメンツ。 顔を潰すなって事。 何が謝罪だ! ふざけんじゃねぇ…… 沸々と怒りが湧くが、相手は王家の人間。 断れば、黒龍大公閣下に迷惑が掛かる。
絶対に圧力かけるよ……この人達。 でだ、そうなったら、閣下の立場がなくなるし、なにより、悲しそうな顔をする。 ……しゃぁない、どうやっても出る事に成るんだったら、出てやるよ。
たぶん、「壁の花」になるけどね。
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エル達にも告げた。 「王子命令」だよって。 でっかい溜息と一緒にね。 そしたら、エル達なんか猛然とやる気を出してね。 黒龍のお屋敷と色々連絡を取ってた。 同じ部屋に居るから、何となく判るんだ。 でだ、今年は、エル達に遣られた。 歓迎舞踏会の前々日に、デカい箱が黒龍のお屋敷から届いた。 小さいベルベットのケースも一緒に。
うん、これ、多分ドレスと御飾り。 なぜか、三人組は私から宝珠を取り上げた。
「少々お借りします。 大切なモノと存じております。 でも……何卒」
あんまり、真摯にお願いされたから、仕方なく渡したよ。 ……ゴメンね天龍様。 中身はたっぷりと入ってるから、長い事は持つけどね…… ちょっと不安。 ミーナと、ラージェが、箱の中からドレスを出したよ。 これ、多分あの、仕立て屋さんの作品。 うん、もう「 作品 」だよね。 二人が、トルソーに着せてる。
今回のドレス、全体に物凄く渋いの……私が着ていいモノなのだろうか? だいたいねぇ、今まで、どこぞの妖精みたいなドレスだったのが、いきなりの、 ” 大人 ” な雰囲気よ。 どうよ? コレ?
シェイプは似てるよ……飾りっ気の少ないトップ、ふんわりボトム、今回は袖なし。 でね、長手袋が付いてくんのよ。 デコルテむき出し…… 無い胸どうすんのよ。 それに、此れじゃぁ、宝珠を入れてる袋、首から掛けられないじゃん!!!
更にお色!!! なんで、ミッドナイトブルーにサテンの薄物が、掛ってるのよ。 スカートの裾にマルーンの差し色……腰帯から、バックにデカいリボン。 これ、ちょっと色目の違うナイトブルー……ものっそい、大人の雰囲気だよ。 私じゃ、無理だよ……
「これを……」
エルがベルベットのケースを差し出して来た。 言われるがまま、開けてみた。 ……息をのんだ。
宝珠を取り囲むように銀の装飾。 しっかり固定されていて、宝珠が落ちる事無さそうね……その下に、なぜかある輪っか……そう、例の指輪……ちょっと太めの銀のチェーンがくっ付いてる……これを掛けろって?
雨粒みたいな透き通った緑色をした宝珠。 エルが首から掛けてくれた。 お胸のちょっと上くらいにトップが来る。 鏡の前にたった。 綺麗だった。 本当にキラキラして……綺麗だった
「よくお似合いです」
聞いてみたら、この宝珠を止める為の特注品で、エルが最終加工出来るように、宝飾店に頼んでたんだと。 宝珠の大きさは、私が沐浴している時に、エルがこっそりと確認してたんだと。 そん時に指輪も見つけたから、デザインに組み込んだんだと……もうね、やり過ぎ。
まさか、ドレスのサイズが入らないって事に成ったら、えらい事だから、全部着てみた。
髪も編み上げてもらった。 ちょっと長くなってきて、いま、肩越してきたらからね……
化粧はしてない。 でもね……………… なんか、ホントに別人が鏡の中に居た。同じように動くのが、とっても不思議な気がした……
「エル…… これ…… 凄いね」
「はい、お嬢様。 よくお似合いです」
「作ってくれた人の、想いが伝わるね」
「はい、お嬢様。 奥様と、若奥様が一生懸命に考えておられました」
「うん……判るよ。 これは、あの曲をイメージしたんだよね」
「御明察です」
そうだよね。 うんそうだ。 夜の帳が上がり、新たな日が昇る直前。
「新しき未来へ」の扉
だよね。
うん、感謝と共に受け取るよ。
本当に有難う。
いつも、ご愛読、有難うございます。
本日頂きました、感想で色々と不備が御座いましたので、読み直し修正できる部分は修正しております。
拙い文章では御座いますが、何卒、宜しくお願い網上げます。
今後とも、どうぞ宜しくお願い致します。




