クロエ 食堂で敵を殲滅し、教室に入って驚愕する
学院卒業式がいよいよ、目前に迫って来たね。
最高学年の人達が、引っ越し作業に大わらわだ。
貴族科のお嬢様、お坊ちゃま方は、王都シンダイのお屋敷とか、領地のお屋敷に戻っていくからねぇ。 魔法科、行政科でドラゴンズリーチに職を得た人達は、内務寮、外務寮、財務寮、宮廷魔術師寮とかにお引越し。 騎士科の多くの人は、赤龍大公閣下の元、郊外の練兵場に行く事に成る。
あぁ、行政騎士科の人は、いきなり指揮官だから、そんなに、きつい事は無いかな。 内務寮、外務寮、財務寮とかだったら、いきなりの長時間労働が待ってるからねぇ…… 魔術師たちは、いつも、何考えているか判らんし。 まぁ、身の振り方が、決まる期間だもんね。 なんか、落ち着かない。
メイドズ達は、それぞれ、御呼ばれしてる。 専攻先の情報を得に、あっちこっちの使用人達と、御茶会してるよ。 良い事だね。 現役の生徒よりも、その生徒の課題を、まる投げされている、使用人達に話を聞く方が、手っ取り早いし、正確だもんね。 しっかり頑張るんだよ!
でだ、私は、” お暇 ” になった。
卒業を目前に控えた、上級生たちがウロウロする中庭に行きたくないし、かといって、マリーの【サロン】は、まだ準備段階だしね。 第一、こないだ申請を出したばかりだから、部屋すら決まってないよ。 何かと、面倒なんだって。 お昼近くまで、進級してから使う教科書を眺めていたよ。 なかなか面白そうだよ。 近郊の森での合宿とかもあるし。
私は、行政科と魔法科の兼科するから、かなり忙しくなるのよ。
まず、行政科。 三年生になったら、自分の専門に専念するから、二年生では、一通り各科目を勉強する
行政科の科目は、「内務」、「外務」、「軍事」、「財務」の四つ。 まぁ、内容は、社会情勢、外国語、基礎体力訓練、算学の四つ。 どれも、黒龍の御家で、勉強してたよね。 私、どのくらい出来るんだろうね。 まぁ、おいおい判るけどね。
もう一つ、魔法科 こっちは、基礎を学ぶの。 初歩の、火、水、土、風の基礎魔法、連結魔法、重ね掛け魔法の初歩。 辺境暮らしなら、結構、行けるんじゃないかな? あっちは実践ばっかだから、此処で理論を学べば、より精度がでるしね。 こっちは割と気楽。 教科書も読んでみたら、難しくないし。
時間割を確認して、教室確認して、イベントの時期を見て、色々忙しかった。 気が付いたら、お昼回ってた。 今日は、メイドズいないし、久々に学園の食堂にいってみっか。 普段は、お昼食べないんだけど、ラージェが言ってた、人気のセットごはん、美味しそうな感じだったもんね。 一回、食べてみようって、思ってたし。ちょうどいいや。
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まぁ、予想通り、食堂もごった返してたよ。 名残惜しそうにしてる、上級生やら、いい所に就職できたのかな、なんか、取り巻きが、” よいしょ ” したおしてるのも居る。 カウンターに行って、お昼セットご飯を頼んで、チケットを貰うのよ。 そんでね、そのチケットを食堂の別のカウンターに持ってったら、中のお姉さんが、綺麗なお盆にご飯を乗っけて、渡してくれるのよ。 有難いねぇ……
とっても、美味しそうね。 お盆を持って、ウロウロ…… 食堂の真ん中あたりに、誰も座ってない、円テーブルがあったんで、其処に着席。
頂きます!!
白パンも、スープも、お魚のフライに真っ白なソースが掛かってるのも、とっても美味! 夢中でぱくついてた。 勿論、食後の珈琲も貰ってある。 全部一式ね。 もしゃもしゃ、食べてると、なんか、近くのテーブルから、よからぬ会話が耳に届いた。
「あれ、例の奴か?」
「だね。 あいつのせいで、”女男爵” ネー様の貴族籍が剥奪されて、学籍が喪失したんだ。 そうですよね。”女男爵”」
「悲しい事に、その通りですわ。 しかし、今、再審の請求を出しております。 もうすぐにでも、撤回されますわよ」
「そうでしょうとも! 貴方ほど、法務官に適した御方は居られません! それが、なぜ!」
「すべては、あの娘の差し金ですわ。 シュバルツハントの家名で圧力を掛けたに違いありません」
「な、なんと卑劣な!!」
やっぱ、判ってなかったか……アルフレッド様、貴方の処分に、意味はあったのでしょうか? もういいや、関りに成りたくない。 美味しいごはんの味が一気に無くなった。 早く席を立とう。 あら? なんかデカい奴がこっちに来たよ…… だれ?
「お前か! この下郎が!」
「おやめなさい、ゴフリット様。 その様な者に、貴方のような高貴な家の人がお声を掛ける必要はないわ。 貴方の家名である、エルフィンダート伯爵家にも、圧力が加わるとも知れませんわ。 お気を付けあそばせ」
「ふん! シュバルツハントの名のみで、何ができる! おい、下郎、なんとか言え!」
”下郎”ねぇ…… こっちを向いて吠えている、デカい男。 会話から、ゴフリット=エルフィンダート伯爵子息だね。 エルフィンダート家って、かつては何人も、”法務大官”を、輩出した銘家なのにね。 こいつ、馬鹿か? なんか、まだ吠えてやがる。
「どうした、怖気づいたか! 下賤なお前は、大公家の名を騙るしかないのだからな! そうだ、その、お前の隠れ蓑に、”女男爵”の貴族籍復帰を頼め! 罪滅ぼしくらい出来るだろう! ……おい、なんで、黙っている!」
うん。 こいつ、ダメだ。 マントに天秤の紋章が付いてるね。 こいつ、法務官候補になれたんだ。 ……法務院の人事局、仕事しろよ…… よし、殲滅対象決定。 衛兵は……いるね。 人は、うん、いっぱいいるね。 大人の人は……ほう、法務官、飯食ってるね。 学院内の法務、学生会から取り上げたもんね。
うん、状況確認、必要条件は満たした。 法務官、聞き耳立ててるね。 ごはんも、食べ終わったしね。 薫り高い、珈琲も頂いた
よし、やるか!
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おもむろに立ち上がる。 鉄扇を握る。
「先程から、何か言われていたのは、わたくしに対してでしょうか?」
鷹の目になったよ。 自分でも判るくらい、目に力が入る。
「なんだ! その眼は! さっさと、黒龍大公に嘆願書でも書け!」
「ゴフリット=エルフィンダート様、何か思い違いをされて居られませんか? 処分は何処から発令されましたか? なぜ、私が、処分に対し異義を唱えねばならないのですか? 根拠は? わたくしは、あの傷害事件の、被害者です。 当事者、および、その関係者が処罰されるのは当たり前だと思いませんか?」
「何を生意気な事を! では、なぜ、”女男爵”の貴族籍が剥奪されるのだ!」
こいつ、ホントに法務官候補か? 事実確認を全くしてない。 だからエルフィンダート家は過去の家に成っちまったんだよ。
「何故?とお聞きに成りますの? 天秤の記章を付けておられる、貴方が? ふぅ…… 敢えてご説明しますが…… 龍王国法典には、連座と言う制度が御座います。 わたくしに直接、手を出された方は、今、重監獄にて禁固刑に服しており、御実家は降爵のうえ、彼の者の貴族籍は、剥奪されております。 その原因となった、わたくしに対する、 ” 懲罰委員会 ” を開催されたのは、あなた方が言う、”女男爵” ネー様 ですのよ。」
こいつ等に対する視線は、更に冷たさを増したんだ。 もう、本当に馬鹿の相手はこれっきりにしてほしいもんだよ。 法を弄ぶ奴等には、その法が断罪する。 己が役目を忘れ、役割を放棄したものに、かける情けなんざねぇよ。 続けるよ……
「 ―――権限の逸脱、過剰執行、不当断罪。 この方たちの言動は、完全に連座が適用されます。 あの場で出来るだけ穏便に済ます為、指導官で在らせられた、アルフレッド様が、あの方々の天秤の記章を剥奪されましたのよ。 それを、暴走された方を諫めるでもなく、” 煽って ”らした御様子。 現、グランリーブラ様より、お話を頂いておりますのよ? 現在、あの方の貴族籍が剥奪されているのも、連座適用ですわね。 ご不信な点でも?」
「っ!!! クソ!! お前の様な下賤な者が、高貴な者に対して、なんという無礼な事をいうのだ!! 恥を知れ!! ネー様に、跪いて、謝罪しろ!!」
はぁぁぁぁ。 もうね、でっかい溜息しか出ないよ。 仕方ない、退路は用意したんだけどね……
「ゴフリット=エルフィンダート様、貴方様も、胸に銀の天秤の記章を付けておられます。 では、その記章の意味も、ご存知な筈。 ” ハンダイ龍王国が存続する為に、初代国王様が制定され、今も護り継がれているモノに、絶対の忠誠を ” と、法務寮にて、宣誓されませんでしたか? お忘れですか? ハンダイ龍王国、【不磨の大典】を。 彼の法典には、身分の上下を問わず、龍王国国民は皆、法に従うと有ります。 国王陛下に置かれましても、その例外では御座いません。 その法に則り、裁定を下されたのです。 証人、証拠は全て整っております。 何故、覆るとお思いですか? 裁定が気に入らないからですか? 馬鹿を言わないでください」
「何を生意気な! お前のその小賢しい口で、黒龍大公を丸め込んだのだな! アレもこんな下賤の者に、云われるがままに成るとは、龍王国の品位が損なわれるな!」
ブチッ!!
切れた。 こいつ、閣下を下に見やがった。 序列を考えてモノを言え。 あぁ、そうか、法務官候補に成れたから、全ての貴族を下に見たんだな…… 馬鹿だろ…… ホントに。 自分の都合の良い事だけ覚えてやがる。
そうさ、捜査権を持つ、法務官は、貴族序列を無視して、話しかける事が出来るんだ。 ただ、それは、あくまでも捜査の段階だ。 此処は、公の場所。 完全に侮辱罪に当たる。 うん、私が証人。 他にも、たくさんいる。 ほら……あそこの法務官、立ち上がったよ。 でもね、あの人が来る前に、こいつを……
潰す
「以前にも、そこな、あなた方が言う、”女男爵”にも問うたことがある、質問をします。 ゴフリット=エルフィンダート、 ” 本当にいいのですね ”と」
「何がだ! 無礼にも、俺を呼び捨てにしたな!」
「貴方が言った言葉は、今なら撤回する事が出来ます。 そして、謝罪が有れば、受け入れる事も出来ます。 もし、どちらも拒否されるのであれば、相応の覚悟があると、そう判断します。 ですから、本当にいいのですねと、お聞きしました」
「何を馬鹿な事を! 這い蹲って、”女男爵”に、許しを請うのはお前の方だ!!」
「……ゴフリット=エルフィンダート 貴方は、伯爵子息にして、無冠。 ウラミル黒龍大公閣下に対し、事実無根、根拠無き悪意を向けられました。 貴方を 「 不敬罪 」 で、告発いたします。 更に、そこな女性、貴方は、学籍を喪失しているにもかかわらず、学院内におられる。 これは、学院規則、および、国法によって禁止されています。 即刻の退去を」
「怒怒怒、云わせておけば!!! このっ!」
パァァァン!!
派手な音が、私の頬から出た。 横面を張られた。 うん、狙ってた。 こいつ、ホントに、堪え性が無い。なんで、あんな言い方したのか、判ってない。 やっぱ、馬鹿だ。 脳みそイカレテル。
「公の場において、女性に手を挙げられましたね。 判りました。 追加で、暴行も告訴いたします。 御覚悟があっての所業と判断しました」
叩かれても、一向に こたえない私。 そんな私を睨みつける、馬鹿。 もう一度、今度は拳を振り上げた。 何人かの悲鳴が聞こえる。 うん、これ、ヤバい奴。 サッと鉄扇を構える。 で、来た拳を軽く躱して、手首を打ち据える。 なに、簡単な事。 一発、張られてるから、過剰防衛は取られない。 うん、私はお咎めなしだね♪~
綺麗に入った鉄扇は、確実に骨砕いたよ。 パキッて、いい音したもん♪ 慌てて、法務官と、衛兵が走って来た。 事情は、さっきから聴いてたはずだしね。
「法務官様、告訴、告発の件、すぐにお願いします。 この者に、龍王国の【不磨の法典】の重みを知らしめてください。 私は、決して許しません。 いいですね」
「勿論です。 このような暴挙、許される筈は、御座いません。 それに加えて、こいつの胸には、天秤の記章。 お恥ずかしい限りです」
「何卒、よしなに」
「ははっ! おい、衛兵、縄を打て。 傷害現行犯、緊急逮捕だ。 仮監獄に連れて行け…… いや、懲罰房だな先に………… おい、ちょっと待て、お前の任官は、この場で剥奪する”」
そう言って、法務官は、ゴフリットから天秤の記章を剥ぎ取った。 茫然としているゴフリット。 縄を打たれ、後ろ手に括られ、されるがままになってたよ。 もうね、腹の底から笑えてきた…… こんなのが、次代の法務官なんだよ。 ホントに大丈夫か、龍王国? でだ、あっちの女、なんかプルプル震えてるね。 知らんよ。 放り出されろ! 自分から動かないもんだから、両側から、衛兵に捕まれてやんの……
「ゆ、許さない!」
ネー元男爵令嬢のキンキンした声。 その声を聴いて、口の端がキュゥゥゥって上がったよ。 鷹の目で、力一杯見詰めながら、ちょっとした、別れの御挨拶。 いいよね、これくらい。
「アルフレッド様の温情が完全に無駄になりましたね。 なんとも、情けない……もう、わたくしを見ても御声をかけないでくださいね。 ” 庶民が、貴族に口を利く事すら、おかしい ”、でしたわよね。 それでは、二度とお逢いする事も御座いませんわ、……元男爵令嬢様、ごきげんよう!」
鉄扇をパッと広げ、顔を隠す。 張られた横面がちょっと、腫れてきたからね…… 踵を返す後ろで、なんか、大きな声と、悲痛な叫び声が聞こえた。 内容は……いいや、もう。 関係ないし。
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エルに説教喰らった。 ……目を離すと、いつもケガをして帰って来るって…… だって、トラブルが私の事、好きなんだもん。 全力で回避して、コレだよ? 黙って帰って来いって? 嫌だよ、閣下が侮辱されて、そのまま放置は出来ない。 大事な家族って言ってくれた人なんだもの。
エル達三人から、大きな、大きな、溜息を貰った。 判ってくれたんだよね。 私は、私が大切にする人に対して、暴力や侮辱を加えた人を、絶対に許さないよ。 ホントにね。 たとえ、自分が悪く言われたって、此ればっかりは譲れないよ。
卒業式で………… 前代未聞な珍事が発生したよ。 南門の前に全校生徒が揃って、学院長の話を聞くんだ、そん時、わざわざ、七人の名前を読み上げて、その人達の学籍剥奪、および、全ての記録の破棄、抹消を宣言された。
要は、その七人、” 最初から入学してなかったよ ” って事にしたらしい。 言わずと知れた、あの法務官ごっこをしてた人達。 連座が適用されて、五人が、七人に成ってた。 ふ~ん、法務院人事局、仕事したんだ……。
そうそう、あの馬鹿、せっかく法務官候補に就職できたのに、今回の事で、全てを無かった事にされてたよ。 風の噂では、エルフィンダート伯爵家から、縁を切られたって。
法務院に家族名簿からの離脱が申請されたって……あぁ~あ、家族にまで見放されて……まぁ、ガタイがデカいから、力仕事なら、出来そうだけどね……あっ、手首粉砕しちゃってた! 力仕事も出来ないかぁ……。 まぁ……自業自得かな…… もういいや、忘れよう。
ほんと、嫌な事件だったよね♪
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自分が嫌な笑いを浮かべると、必ずしっぺ返しが来る。 これ、いつものパターン。 うん、運命を司る精霊様、いつも、バランスを取ってるんだね。 良き行いには、良き報いを、そうでないなら、それなりに……
二年生初めての授業。 最初の教室。 真新しい教科書。 ワクワクしながら、教室の扉を開けた。
でたよ…… つうか、居たよ……
私の、婚約者様…… そんで、パッと見ただけで判る、その取り巻き…… キラキラしたオーラが噴き出ている。 なんか、ごっついのも居る。 眼つきの悪いのも、 渦巻きの記章付けたやつとか……。 なんか、すんごく蔑んだ目で見られたよ。 わたし、背がちっこいから、本当に上から見られたよ。
机の上に、学籍番号が書いた紙が置かれているから、探してみた。 なんで、床に落ちてるの? パパって周りを見て、空いてる席見つけた。 婚約者と、その取り巻きが、薄ら笑いうかべてやんの…… はぁ……相変わらずだね。
ほんと、腐った女みたいな奴らだ。 だいたい、行政科って、ほとんど男だったりする。 普通はさぁ……ほら、もうちょっとねぇ……いや、別に、ちやほやしてほしい訳じゃ無いよ? ただ、もうちょっと、穏やかにねぇ……
先が思いやられるよ……
やっと、始業時間が来て、この面々を指導する教官が入って来た。 そうそう、此れから一年宜しくお願いしますね。 後から、二人ほど、助教の人が入って来た。 キラキラ感が、爆増した。
「あぁ……本年は、ミハエル第二王子殿下がこの組に、入られた。 本来ならば、侍従の方が助教に着くのだが、王子教育の一環として、本年の助教には、フランツ王太子殿下が入られることになった。 みな、心してくれ。 フランツ殿下、ご挨拶を」
にこやかに、前に進みでるフランツ殿下。 生徒を見渡してる。 おや?ミハエル殿下、ガッチガチに緊張しとるな。 ケケケケ、これで、無茶、出来まい! ナイスな王子教育だ!
問題児の監視も出来て、一石二鳥だしな!! そう言えば、フランツ殿下、イヴァン様とタメ張るくらいに、優秀な方だったもんね。 うはぁ! こりゃ、おもしれ~~。 ミハエル殿下の暴走止められっかな?
「皆、この一年、宜しく頼む。 助教として、君たちを導く事になった。これも、王子としての、勤めの一つだ。 お互いに、成長するように、頑張ろうな!」
なんだ、この無駄に爽やかな人は……
ん?
なんで、目が合うんだ?
なんで、すんごくいい笑顔なんだ?
なんで、軽く頷いているんだ?
どうして…………
なんで、私が、目を付けられているんだ?
私が、一番の、問題児つう事なのか!!!
ブックマーク、ご感想、誠に、誠に、有難く!
ホントに、ホントに、感謝多謝!
食堂での、一連の遣り取りを、別の席に座っていた、同じ学年の生徒が見ていました。
彼らの会話を、ちょっと聞いてみましょう!
「みたか、今の・・・」
「ああ、流石と言うべきかな・・・」
「色々と問題のあった、学生法務官制度・・・根底からぶっ壊したんだったよな」
「そうだよ、上級生とはいえ、横暴な奴らだったし、嫌っている奴も一杯いたが、なにせ、バックは本物の法務官だ、もの申す事すら出来なかったんだぜ」
「一撃だぜ、全く」
「それに、あの表情みたか? あれ、俺達と同じ一年生だぜ?」
「こっちまで、ブルったよなぁ。 あの目で、睨まれて、あの扇で叩かれたら、絶対にチビる」
「まったくな! でも、なんか、良いな、凛として清楚だし。 他の令嬢みたいに、ドレスでウロウロする事も無い。 中庭の「大公家のお茶席」にな・・・一度でいいから行ってみたいよな」
「へへへ・・・うちのメイドが、「大公家のお茶席」に、行っててな、お茶菓子貰ってきてくれた。 俺も分けて貰った。 なんでも、「氷の令嬢」が自らお作りに成られたって・・・うまかったなぁ・・・」
「なにそれ! もう無いのか?」
「ある訳ない。 うちのメイドと取り合いになった」
「く~~! 是非とも、お近づきに成りたい! あの冷徹な目で、思う存分弄られたい!」
「おまえ・・・やっぱ、嗜好が変だ。 いや、そうでも無いか・・・ たしか、「氷の令嬢」は・・・ 行政科か! うん、近いうちに逢えるかも・・・い、いや、言葉なんか交わさなくていい。 ちょっと近くで、匂いとか嗅いでみたい」
「おまえの、大概だなぁ~~。 まぁ、気持ちは判る。 でも、「氷の令嬢」、すこぶる優秀なんだぞ? 知ってたか?」
「ああ、うちの教官、絶賛してた。 あの凄い量の課題、全部一人でこなして、質問にまで来るって・・・」
「どこまで・・・。 いや、俺たちもやらねばな! 是非とも、お近づきに成って、匂いを嗅がねば!」
「その、動機って・・・まぁ・・・そうか・・・お互い、頑張ろうな」
「ああ、 そうだな」
クロエの周りに居る、関係の無い人は、平和です。




