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ヌーヴォー・アヴェニール   作者: 龍槍 椀
泣き言は言わない
29/111

クロエ 生涯の友人達を得る ごー

南アフィカン王国の妃殿下の名前の表記に間違いが御座いました。

申し訳ございません。




 精霊祭。





 そうだよ、精霊祭だよ。



 お祭りだよ、  お ・ ま ・ つ ・ り !!



 降龍祭に劣らず、ハンダイ龍王国の人達には大切なお祭りだよ。 その日は、夏の暑く燃える様な日、皆で精霊様にお祈りする日なんだ。学院の中庭にも風の精霊様の祠と、光の精霊様の祠があるんだ。 そこに、祈りに行こうねって、言ってたのよ、みんなにね。


 黒龍のお屋敷に居た時は、勉強ばっかで、なんにも、出来なかったけど、今は寮に居るからね。 【精霊祭】、楽しみだったんだぁ。 開拓村でも、【精霊祭】楽しかったよ? でも、王都シンダイでは、規模が違う。 【降龍祭】は、王族やら、高位貴族達のお祭りで、舞踏会とか夜会とかが集中する日。 でも、【精霊祭】は庶民のお祭りで、街中がにぎやかになる日。


 色んな精霊様居るからね。 自分が加護を受けたい精霊様の祠を綺麗に飾り付けて、聖句を口に祈るの。 そんで、その後、みんなで楽しく、飲んで、歌って、踊るんだ!! 社交ダンスじゃぁ無いよ! 音楽だって、庶民の歌曲だから、高尚でも何でもない。 ただ、精霊様と自分達で楽しんでるだけなんだもんね。



 そんでもって、社交シーズンの始まりの日だったりもする。 




  学院は、夏季休暇に入ってるんだ。 だから、高位貴族の人達とか、王族の人達は、実家に帰って、社交シーズンの準備か、夜会始めてるんだって。 へぇ、私には招待状一枚も来てないよ。 マリーは残念ながら、お屋敷に帰ってる。 ” 夜会……行きたくないなぁ~ ”って呟いてた。 彼女主催のパーティは、しないって言ってたからね。 


 マーガレットも、御実家の方に呼ばれているらしい。 なにかと、忙しいんだって。 ビジュリーに至っては引っ張りだこ状態なんだって。 当然よね、パーティだもんね、楽士の一番忙しいシーズンだもんね。 ” 御父様にはぁ……逆らえないからぁ…… ”って、溜息ばっかりついてたね! いつも寝てんだから、しっかり働いておいでよ。


 そんで、私。 私はお屋敷に居所が無いし、呼ばれても居ないから、帰らないよ。 学院で残ってる人達と、精霊祭やるんだ! それに、夜会とか舞踏会とか言っても、お屋敷にはソフィア若奥様が居るからね。 居候な、お邪魔虫は、お屋敷には帰りませんよ。 そんで、エル達には、お屋敷か実家に顔を出すように言いましたよ。 でもさぁ~ あっさり、拒絶されちゃったんだ。





「クロエお嬢様一人にしたら、また、何を成さるか判りませんので」


「私達が、クロエお嬢様を・・・・・・・、見守る様にと、言いつかっております」


「お願いですから、多段重装型猫鎧(最強の飼い猫)を、絶対に御脱ぎに成らない様に!」





 ええ、そうね、バッチリ監視されてますね。 大丈夫よ、あんな事もう無いと思うし。 いやぁ~~、自分でもびっくりだよ。 僅か半年の内に二回も切り付けられるってね。 ここって、辺境なの?


 御茶会に来てた人達も、あらかた、御実家や別宅に帰ってしまって、中庭の御茶会も、スッカスカですね。 でも、まぁ、こじんまりと【精霊祭】するものいいかなぁって思っておりました。


 ヴィヴィ王妃様が、あんな事云いだす前は。





 *************





「のう、クロエよ」


「はい、ヴィヴィ様?」





 精霊祭の前々日、夏の休暇用にって先生方が下さった、大量の課題をこなした後、中庭に行って涼んでたら、ヴィヴィ王妃がスルスル寄って来て、ちょっと理解できない事を言って来たの。





「おぬし、黒龍大公家の娘じゃったな」


「はい……左様で御座いますが?」


「おぬしの、実家から、夜会の招待状が届いておっての、おぬしの名も記載されておるぞ? わらわは、今夜出立するが、おぬし、いいのか? まだ、此処におって?」


「は……はぃ? い、今、何と?……や、夜会ですか? わたくしが?」


「そうじゃ、ほれ」





 差出された招待状は、まさしく、黒龍大公家より出された物だったよ。 私の名前も、バッチリ乗っかってた。 主催者の方でね…… 知らんよ、まじで。 エルに視線を合わすと、青い顔して、首を横に振ってた…… なんで、誰も知らんのじゃ!!





「か、確認します。 御前、下がらせてもらいます」


「うむ、…… 大変じゃの」





 ちょっと、残念な物を見る様な目で見られた。 早速、連絡を取ろうと、部屋に戻った処に、アンナさんが来てた。





「クロエお嬢様! 大変です!!」


「コッチモタイヘンです!!!」





 部屋に招き入れて、問い質そうとしたのに、言葉を遮られて、信じられない事言われたよ。





「奥様が、別宅で夜会を開かれます。 主催者の一人にお嬢様の名前を記載した招待状をもう出されていて、お返事まで頂いていたそうなのです!!」


「わたくしも、先ほど、南アフィカン王国の、ヴィヴィ副王妃殿下より、聞かされました!! 一体何があったのですか!」


「欠席する事は、無礼に当たりますので、これより、別宅へ急ぎ参りませんと、間に合いません!!」





 アンナさんの言葉に、うっかりと本音が漏れたよ。





「……結局……コレかよ……」


「クロエお嬢様!」


「承りました。 しかし、わたくしは学生の身分です。 今からドレスは無理です。 準備も出来ていません。 身に付かない姿は、黒龍大公家に恥をかかせるようなものです。 ……学院の制服で出席します。 ”御教育子(はぐくみ)”も、同様とします。 いいですね」


「……宜しいかと」


「では、出立します。 わたくしは、二、三約束が御座いましたので、お断りの連絡を入れてから、参ります」


「何分と、時間が御座いません。 学院正門前に馬車を用意しておりますので、お早く」


「承知しました。 エル、ミーナ、ラージェ、聞いた通りです。 支度を! 整い次第、学院正門前で。 いいですね」


「「「 はい、御嬢様! 」」」





 えらいこっちゃ! 約束してた、【精霊祭】。 ゴメン、行けなくなった!!! 近しい人達に直ぐ連絡取らなくちゃぁ!! メイドズと、アンナさんを部屋に残して、飛び出して、残ってる人達に謝り倒しに行ったよ…… 奥様……何てことするんだ!!






 *************





 時間が無かったのは、本当の話。 奥様の住まわれている、黒龍大公家別邸は、ウラミル閣下おじさまの領地にあるんだよ。 王都シンダイに隣接しているとはいえ、北に馬車で一日の距離にあるんだよ。 みんなに、 ” ご挨拶 ” 、兼、 ” 謝罪 ” をして回って、学院正門前に付いたのが、お日様が西に傾く頃。 アンナさん含め、五人で馬車に乗り込み、急いで、ご領地へ向かった。


 黒龍大公家の領地は、王都シンダイの北に隣接している。 大公領フーダイって所。 森があちこちに点在する、丘陵地でね、葡萄畑とかあって、いいワインの産地でもあるんだ。 でも、今は観光なんか出来る訳ない、ひたすら馬車に揺られていたよ。 


 慌てて持ってきた、荷物の確認とか、する事、山積みだった。 夜明け前、一度、休憩を挟んだ。 みんな、疲れ果てて眠っている。 私? モチロン、鍛錬するのに起きてたよ。 なんか、日課が途切れるのって、気分悪いじゃん。



 朝日を見ながら、呼吸鍛錬をしてる時に、 ” ふっ ” と、思ったの、 奥様、寂しかったんだってね。



 ……なんとか、別宅へたどり着いた。 後、丸一日しかない。 急ぎ、別宅に入る。 そこで閣下おじさま、リヒター様、ソフィア様と鉢合わせ。 あちらも、ビックリしてた。 連絡済みだと思ってたって。 其処に、綺麗なお化粧をした、悪の総本山って感じで、エリカーナ奥様登場! 白塗りじゃ無いよ? めっちゃ、清楚な凛とした奥様。 余計に、悪巧み感マシマシだよ……





「まぁ、遅いお着きで。 危うい所でした」


「左様に御座います。 あと、一日遅れておりましたら、間に合わなかったと、思います。 ギリギリ・・・・の、お知らせ、ありがとうございました」




 此処で奥様、言語切り替え。 アフィカン語に変更されましたよ。




 ⦅お召し物は?⦆


 ⦅現在、わたしくは、王立魔法学院の一介の生徒に御座います。 よって、学生の正装である、制服を着用いたします⦆




 またもや、言語切り替え。 今度は、キリル語になりましたねぇ




 《それは、よき判断です。 下手に身に合わぬドレスよりも、清潔感があり、ご招待のお客様も、喜ばれるでしょう》


 《ありがとうございます。 エリカーナ奥様、一つご質問が》


 《何なりと》


 《ご招待のお客様は…… 諸外国の方々で、御座いましょうか》


 《その通りです。 けっして、対応を間違えぬように》





 今度は、私が言語を、切り替えた。 古代キリル語にね。





≪知識の実戦の場を与えて頂き、感謝を捧げます、奥様。 有難うございます≫





 ビックリしてた。 そんで、ニッコリと笑った。 とってもいい笑顔だった。


 多分、奥様の意図は、其処に有ったんだと思う。 実際ある事だからね。 突然の異邦人の到来、それも複数国。 交渉内容は多岐に渡り、一時に処理が不可能。 王室の人間が、準備時間を稼ぎ出す為に、纏めて、一気に、異邦のお客様を、 ” 接待 ” する事になる。


 そう、今までも、そんな事は沢山あった。 王室の一員になるかも知れない、第二王太子の、” 婚約者たる私 ” に対する、 ” 元王室関係者 ” の奥様からの、 ” 贈り物 ” だと、そう感じた。 いささか、意地は悪いけどね。


 やってやろうじゃん! 受けて立つよ! 奥様の指導は、いつも厳しいけど、身に付く。 エリーゼ白龍大公令嬢の【御命】が助かったのも、奥様のご指導、ご鞭撻があったおかげ。 此処で、出来ませんは、言わない。



 泣き言は言わない。



 正面から受け止め、ご指導、ご鞭撻を身に着けたと、証明せねば!!!


 みんな、茫然と見てたね。 途中から言語が代わって、二人の間で何話してんのか判らないから、余計にね。 ソフィア様が辛うじて……って所かしら。 で、私と奥様は連れだって、奥の間に行ったのよ。


 よくまぁ、これだけって思う程、色んな様式の家具、調度と、色んな精霊様の祠が、揃えられていた。 それだけの数の国の人が来るんだね。 【精霊祭】の夜会だね。 わかった。 





「奥様、お時間を、下さい。 身支度をいたします」


「よろしくね。 わたくしも、支度があります。 本日夕刻、お客様の一陣が到着されます。 出迎えお願い出来るかしら?」


「よろこんで!」


「しっかり、頼みますよ、クロエ」


「はい、奥様」





 ゴングは鳴った。 さて、必要な準備をしようか。 先ず湯浴みだ。 でもって、予備の新品の制服に着替えるよ。 髪型は、出来るだけ清楚に。 派手でなくね。 ……そう言えば、奥様……もう、清楚なお化粧が、とっても綺麗だったよ。 ザ・黒龍大公家正妻様って感じ! 



これからは、ちゃんと、エリカーナ奥様って呼ぼう……






―――――――――――






 結果的に、大惨事は免れた。 奥様とのいくさはとても役に立った。 来られたお客様は、全二十八組。 全部バラバラの異邦の御方達。 最上位は、南アフィカン王国 ヴィヴィ王妃。 大きな国の領事ご夫妻とか、小国の王子様と、その婚約者様とかもうね…… 


 奥様の仕掛けまだあったのよ……。 各位に、民族正装での御出席をお願いしてた。 で、私は、見慣れない正装から、判断を下すのよ……頭ン中、こんがらがって、脳みそ痙攣しそうだったよ。 それに、相手が民族正装なら、こっちは、それに合わせて各国の礼法を使っての御挨拶だよ…… 


 頑張ったよ、頑張って頑張ったよ。 見かねて、ヴィヴィ王妃様が、ちょっと手伝ってくれた。 主に南の国々に関してね。 あんまり知られてない、裏情報をコッソリ耳打ちしてくれた。 あとで、あの頭の高い奥様が、ヴィヴィ王妃にお礼を言ってたのが、印象深かった。





「ヴィヴィ王妃様、我が姪にお力添え頂き、誠に恐悦至極に御座います」


「なに、戯れじゃ。 気にするでない」


「有り難き幸せ……クロエは幸せ者に御座います」


「ほほほほ、 自慢の娘御(・・)じゃな。 エリカーナ」


「娘…… 御意に」





 おおおお!! びっくりした! まぁ、恙なく夜会は終わった。 招待のお客様、皆さま満足げにお帰りになった。 小国のお客様は、なんか感動してた。 せっかく龍王国に滞在しても、あんまり、呼ばれないんだって。


 小国の悲哀をヒシヒシと感じてたんだって。 エリカーナ奥様、知ってたんだよね。 そうゆう事も……流石は王族だねぇ…… ちょっと、真似できないかも……





「いずれ、貴女もしなくては成らなくなりますよ。 こういう事は、早くから、肌で感じるのが、一番学べますからね」





 穏やかにそう言ってくれた奥様…… だったら、もうちょっと説明とか…… 無理か…… 最初にたたかい、挑んだのわたしだもんね。 ゴメンナサイ、反省してます。 それから、……今後とも宜しくお願いします。


 ソフィア様、リヒター様、始終オロオロしてたけど、何とかなってホッとしてた。 閣下おじさま、とっても険しい顔されてたけど、奥様の最後の言葉を聞いて、納得したのか、破顔され、奥様の手を取ってた。 奥様、なんか幸せそうだったね。 良い事だ。


 この夜会………… 一番、めんどい事してたの、奥様。 一番めんどい事に成ったの、私。 戦果は……  引き分け。 でもって、対異邦の方々への対応スキル、爆上げ!!!




 結果…………  私の一人勝ち!!!



 奥様……本当に有難う御座いました。





 *************





 でもさぁ……やっぱり、疲れんの。 とってもね。 でね、奥様に許しを乞うてね、早々に学院に帰って来たのさ。 あっちで、家族団らんしてもらってさ、私は抜けるのさ。 奥様の拗くれた性格も、徐々に解消されて来てるしさぁ…… 閣下おじさまとの夫婦仲も良くなればいいなぁ……


 アンナさん、なんか、どっと疲れが出たみたいね。 私と一緒に黒龍のお屋敷に帰って来たよ。 マリオと、黒龍大公翁にご報告申し上げるって、呟いてた。 予断を含まず、事実を述べてね、って言っといた。


 きっと、黒龍大公翁おじいちゃんも判ってくれると思うよ。 あの方、ああ見えて、結構柔軟な思考の持ち主だからね。 さもなきゃ、ゲームマスターの称号保持できないって!


 さぁ、学園に帰ろう。 帰ったら、ちょっと寝かせて!! まる三日寝て無いのよ~~~。 王族って本当は、体力馬鹿じゃないの?





――――――――――――





 結局……お祭りには参加出来なかった。 黒龍のお屋敷に戻った時に、メイドズは、アンナさんにお願いした。 休ませてあげてってね。 了承された。 代わりに、オトナシクするんですよって、約束させられたよ…… 私、どんだけ信用無いんだ?


 学園に帰って、惰眠を貪って、鍛錬して、課題片付けてた。 で、空き時間作って、癒しの空間に行ったのよ。 そう、麗しの中庭にね。 一人分のセットを持って行って、眩しい光を眺めつつ、東屋の中でお茶するの。 気分いいわよ~~~。 ほんと。 


 なんでか、知らんけど、アスカーナ=ホテップ男爵令嬢が、隣で紙の束を真剣に読んでんの。 何も食べて無いのよ。 珍しい……





「それは?」





 彼女は、紙束から目を離さずに答えてくれた。





「……ゲームマスターの会報……とある、グランドマスターからゲームの時系列の盤面と内容の詳細が書かれているの……この盤面……無理よ、こんな思考見た事無い……味方だったらいいけど、敵だったら……だれ? この相手。 ……匿名だから…… 一度、会ってみたいわ、この方に……」





 なんか、自分の世界に入り込んでます。 そうだよね。 此処に最初から来てた人って、何かしら変な所あるんだった。 その時、一陣の風が吹いて、彼女の持ってる、 ” 会報 ” とやらが、二、三枚、飛んだ。 彼女慌てて、追いかけた拍子に、手に持ってた紙束落としたのよ。 一緒に集めてあげたわ、当たり前の事でしょ?


 そんで、その紙見たのよ。 ……黒龍大公翁おじいちゃんの筆跡だよこれ……あの諜報戦の盤面だよコレ…… 何が漏れないだよ…… 自分から漏らしてんじゃん! ちょっと書いて有る事読んでみた。





     馬鹿ぁぁぁぁぁ!!!!



        これじゃぁ、私が、極悪人じゃん!!!!!











ブックマーク、有難うございます。


読んでもらって、本当に嬉しいです。


段々、更新時眼がずれ込んできています。

やばし! 出来るだけ、0:00 と思っているのですが・・・


何分、書き溜めていないもので・・・


すみません! 精進します!

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