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ヌーヴォー・アヴェニール   作者: 龍槍 椀
泣き言は言わない
21/111

クロエ ”お友達”とお話する

行動すると、何かしら起こります。


誤記、修正いたします。


ご指摘有難うございました。

 




 翌日……





 朝さ、いつも通り起きて、鍛錬を始めようとした訳よ。 鍛錬着に着替えてさ。 まだ、ほの暗いのよ。 夜も明けきってないし、灯火も、すっごく絞ってあるし、部屋の中、暗いのよ。 まぁ、剣術の七十二の型の鍛錬だから、明るさなんて、いらないしさ。




 でね、いるのよ…… ぼぉぉっと薄暗がりの中、メイドズ、三人が……




 まぁ、時々、ラージェなんかには、基本の型なんかを教えてあげてるから、居てもおかしくは無いのよ。 ただね、黙ったまま、蹲る様にして居ると、心臓に悪いわよ。 マジびっくりした。 どんだけ恐怖体験(ホラー)よ。 そんでね、エッグ、エッグすすり泣く声がしてるわけよ。 怖いよぉ……これは。 なまじ、綺麗な三人だから、余計にね。 なんか、されたんかな? 





「何事ですか! 誰かにイジメられたのですか? ……それとも、エスコートさんに、何かされたのですか! ならば、イヴァン様に苦情を……」


「「「ごべんなざい~~~!!!」」」


「えっ? なんで、謝るの? なにがあったの? 教えて! う、うわぁ!」


「「「おじょうざま~~~~」」」





 びっくりした~~~。 声をかけると、三人が飛び掛かって来たよ。 そんで、足とか腰にしがみついて、エッグ、エッグから号泣に変化したのよ。 もうね、パニックよ。 想像を絶する怖さよ。 しがみ付いてくる三人を纏めて抱きしめて、 落ち着くのを待ったよ。 ほら、泣いてる女の人は、基本放置だから。





「あんな中に、クロエお嬢様を、お一人にしてしまって……」


「あんな、非道をされるなんて……」


「” 今、近寄っては、いけない ” って、連れ出されて……」


「「「ごめんなさい!!」」」





 あぁ、昨日の話ね。 別に気にしてないよ。 リュート弾けたし、楽団の人と楽しくおしゃべりできたし。 なんも、困ってないよ? もう、やだなぁ…… そんなに気にしてたんだ。 寝てたから判んなかったよ。


 まぁ、舞踏会の間中は、ほぼ ボッチで、立ってるだけだったけどね。 いわゆる壁の花? みたいな。 でもね、おかげでいろんな人、観察できたよ。 ほら、私、耳いいから、コソコソが聞こえるのよね。 大まかな状況だいたい把握できたし。 まずは上々だよ。





「気にする必要はないわよ? 貴方達は、貴方達が必要とする知識の吸収と、貴族たちの、 ” お話 ” を、収集する、 ” お仕事 ” が、有るんだもん。 それで、情報は集まったの?」





 泣いてばかりじゃ、困るよ。 それが目的で、わざと距離取ってるのにねぇ。でも、流石はうちのメイドズ、ショックを受けながらも、ちゃんとお仕事こなしてたわ。 うんうん、そうでなくちゃ! 


 でだ、第二王太子、かなり婚約者の私の事、嫌ってるね。 ” どこの馬の骨ともわからない ”って言う枕詞は、王妃様から、第二王太子へ受け継がれてたみたい。 


 私がボッチで壁の花してるのを、笑ってたって。 取り巻きの皆さんと。 んで、なんか、容姿についても色々言ってたみたい。 さらにね、遊女(あそびめ)の子供って事になってるらしい。 メイドズ泣いてたよ。


 踊ってるとこ見てないから、踊れないとか、ドレスが小汚いとか。 ん? それは、頂けない言葉だなぁ…… って言うか、ドレス作って呉れた職人さんに謝れ! この良さがわからんのならば、お前らの目は、節穴以下だ! 



 あの馬鹿(私の婚約者殿)は、そんな事言って、取り巻きと盛り上がってたってさ。



 閉会の辞、云わないもんだから、三々五々人波は途絶えてって、有力者たちとのお茶会に縺れ込んだって。最後まで居たのって、変人なんだって。



 うふふ、変人。



 結構いい響きじゃない? リュート、弾いて、楽団と音楽会してたんだもんね、十分変人だね。 そこは、認める。 でも、その事を奴らは知らない。 楽しかったんだぞ。


 取り巻きは、大公家が一家、公爵家が五家、侯爵家が結構沢山、男3女7位の割合。 でもって、その大公家のお嬢様が、第一王太子のご婚約者さん。 いいのか、それ? でもって、こ奴らが、ある事、無い事、「噂」回しまくり。


 あの舞踏会の会場のほぼすべてが、私に対しての、「悪感情(ヘイト)」持ちってわけ。 だいたい、全校の七割強かな。 そうだねぇ……そのうち、なんかあるんでないかい?


 朝の鍛錬を三人娘と終えて、シャワーを浴びて、御着替えして、朝ご飯に、食堂に向かった。 メイドズは先に行ってもらって…… なんで、行かないの?





「後ろから行きます。 周囲を確認します」





 ハイハイ、よろしくね。 んじゃいこうか! まだ、暑いし、鉄扇持って行こ! 骨が鋼線の扇子。丁度いい重さなんだよね。 自己防衛用なんだっ! ヴェルに貰ったんだ! いいだろ! 




 エル、なんで、微妙な顔してるんだ?








 *************







 トコトコ歩いて行くと、食堂に向かう廊下に十人余りの女生徒がたむろしてた。 そのうちの何人かが、私の姿を見つけたみたい。 コソコソ耳打ちしとるね。 昨日の今日だから、きっとこんな事だろうと、思ってたよ。 さて、どうしようか?  


 真ん中に居た女生徒が、なんか、上から目線でこっちを見た。 なんだ? やる気か? 



 ハラリ



 一枚、ハンカチが廊下に落ちた。 綺麗な刺繍がしてある。 うん、その女生徒が落としたみたい。





「あら、落としてしまったわ そこの貴女、拾ってくださらないかしら?」





 でたよ。 早速、上下関係確認儀式マウンティングだ。 小首を傾げて相手を見る。 まぁ、”何を言っているのだ?” の、視線だが。 モチロン、表情は「氷の微笑み」標準装備でね。





「あぁ、なんだ、あなただったの。 早く拾ってくださいな」


「お落としになったのは、貴方ですわね。 なぜ、わたくしが?」





 水を向けてみた。 うん、さぁ、遣り合おうぜ! 久しぶりの生徒さんとの会話だ。 是非、不毛な会話にならない様に、しっかりと戦おうぜ!





「まぁ、非常識な方ね。 流石は、遊女あそびめの娘ね。 躾がなってないわ。 黒龍大公家も色々と黒い噂のあるお家ですものね。 遊女あそびめの娘を、恐れ多くも、ミハエル王太子殿下の婚約者に押し込むなんて、なんと、非常識なのでしょう! 流石は、犯罪に手を染めて、傍系の方々を失った、悪徳大公家と云ったところかしら。 いったい、どこまで龍王国を蝕めば気が済むのでしょうね。 下賤な身の者が、栄えある王立魔法学院に在学するなど、慄くばかりですわね」





 ニヤッと卑し気な笑みが浮かぶ、その女生徒。 周囲の女生徒も同じような、卑し気な顔をしてるね。 うん、良いね。 戦う気、満点だよ。 私の事はいい。 別に、何言われたってさ。 でもね、貴方、超えてはいけない処を超えてちゃったね。 判んなかったのかな。 どっちにしてもさっ、馬鹿じゃん。 


 さて、周りをザッとみる。 エルが一人の男性を引き連れて来た。





「お、おい! マーベル! お前、何をやってるんだ? 行くぞ」


「嫌よ、” お友達 ” である、 ” 下賤な者 ” に、物の道理を教育しなくちゃ!」


「いいから、行くぞ」





 ちょっと、待て、そこの兄ちゃん。 まだ、落とし前ついてないぞ。 その子に、自分の言動についての、 ” 責任 ” について、考えて貰わなくちゃならんからな。 言葉の重みを感じてもらえるまで、放さんよ。


 鉄扇で、自分の太ももを一発叩く。 まぁ、気分は、 ” 拍車 ” を、当てた感じだね。 




 パッアアン




 うん、いい音鳴った。 兄ちゃん、ビクッてしてた。 ちょっと笑える。





「わたくしは、クロエ=カタリナ=セシル=シュバルツハントと、申します。 以後、お見知りおきを。 貴方は?」





 一応上位者に送る礼をする。 上級生だしね。 本来は、従臣に送るものでいいんだけどね。 兄ちゃんに、名前を問う。 逃がさんぞ。 仕方ないって顔で、兄ちゃんが名乗った。





「エルヴィン=トーマス=コンダンレート子爵だ。」





 冷たい「氷の微笑」を、最大発揮する。 ジリって後ろに下がる、コンダンレート子爵。 この家名、白龍大公家の傍系だ。 貴族名鑑にあった。 そんで、エルヴィンって名前、次期当主だ。 長男なんだよね。 よし、これはいける。





「コンダンレート子爵様、御噂は、かねがね、聞き及んでおります。 白龍大公家にとって片腕ともいえる、コンダンレート公爵家の御長男ですね」





 もう一回、カーテシーを決めとく。





「さて、卑賎なる身、浅学なわたくしに、御教えを頂きたいのですが?」


「な、なにか?」




 引いとるな…… 侵攻開始。 状況固定、退路遮断、目標固定、攻撃準備完了。 さぁ、始めるかぁ




「御家は外交を持って、私たちの祖国、ハンダイ龍王国に仕えられていると、聞き及びます」


「うむ」


「仮定の話をいたします。 判りやすいように。」


「うむ」


「龍王国と同規模、もしくは、それ以上の経済力、軍事力を備えた国から、この学院に留学生として、みえられていると、 ” 仮定 ” 致します。 その方は、正王妃の御子では御座いません。 更に、その方が、他の王族とご結婚の予定が有るとします。 外務を担当する家の御家族が、 ” お友達 ” と、称して、その方を、” 遊女(あそびめ)の娘 ” と、呼称する事、 その方の籍がある国を、 ” 悪徳国家 ” と、呼称する事は、外交儀礼的に、常識なのでしょうか?」





 兄ちゃん、返答は? 判り切ってるでしょ? さぁ……早く、返答を。 鉄扇が唸るよ?




 パッァァァン!






「え、いや、しかし」




    パッァァァン!




「ご返答は?」


「い、いや……儀礼的には間違っている」


「良かった。 わたくし、黒龍大公家で、お教え頂いて参りました、 ” 常識 ” と、白龍大公家の大切な、御家の方々と、その認識が、かけ離れて居たら、どうしようかと思っておりましたわ」


「い、いや、その」


「振り返って、我が身で有りますが、わたくしは、黒龍大公家の養女として、この学院に参っております。 わたくしに関しましての御噂等、別段、気にもなりませんわ。 私的な事ですし、私が関知しなければ、どうと言う事も御座いません。 しかし、黒龍大公家に対する侮蔑、間違った情報による誹謗は、これを看過する事が出来ません。 お分かりですね」


「……うむ」





 よし、追撃に入るよ。 常識的に考えて見れば、誰が何といっても非は、あっちにある。 糾弾させてもらうよ。





「私をダシに、黒龍大公家に含むものが有るとすれば、これは、ウラミル黒龍大公閣下にお話申し上げねばなりませんね。 ご存知とは思いますが、主家の預かり知らぬ場所で、行われた犯罪でも、主家はその責を問われます。 たとえ、犯罪を犯した者が、陪臣格の御家で有ろうと、そのお家は、お取り潰しに成ります。    、主家の御一族の誰かがその罪の責を取る為に、貴族の籍を失います。 先ほど、そちらの方が、おっしゃっていたように、子爵様も、ご存知の事と思いますが?」


「…………」





 兄ちゃん、返答は? 都合が悪くなると、黙るな此奴。 さぁ、考えろ、退路はあるぞ……遅いな、早く返事しろよ! 腹へってんだよ!




 パッァァァン!




 うはっ! ビビってるよ。





「ご返答は?」


「し、知っている」


「では、私が名も知らぬ、 ” お友達 ” の、発言は、どう解釈すればよろしいのでしょうか? 明らかに、黒龍大公家に対して、悪意が御座いますね。 わたくしの一存では、処理しきれませんので、閣下おじさまにお話……」


「い、いや、そんな事は無い。 妹もそういう意味で言ったわけでは無い筈だ。 私から良く言い聞かせるので……」





 後ろで私を睨みつける少女が目に映る。 ほほぅ、まだ、やる気だ。 んじゃ、とどめ差しとくか。





「後ろをご覧ください」


「!!!!!」





 理解力の無い人を、身内に持つと、当主は死ぬね。 うん、そんな人に成らない様に、閣下おじさまの邪魔にならない様にしよう。





「お判りですね。 さて、朝食をとる前に、筆を執る必要が御座いますね」


「い、いや、ま、待ってくれ、……、待ってください。 お願いします!! おい、なに遣らかしてくれたんだ! 馬鹿野郎! 家が、家名が無くなるぞ!!」





 兄ちゃん、ちゃんと理解してんじゃん。 よしよし。 後ろの少女、 ” 御兄さま ” に怒鳴られて、なんか、茫然としてるね。 知るか!!





「……傍系家の不始末で、追いやれれる者の痛みは、わたくしは知っております。 わたくしの御爺様の名前は、カール=グスタフ=シュバルツハント。 例の事件で貴族籍を失った男です。 主家の中でも何の関係も無かった近衛騎士団所属でしたのにね。 痛みを知る、わたくしは、そんな人を作り出すような事をしたくありません。 今回の事は、不問に付します」


「あ、有難うございます!」


「今回だけですよ? 妹様の御理解が足りない様に見えます。 一度、御家でお話し合いをされた方が宜しいかと。 ……落とされたハンカチに、美しい刺繍が御座いますね。 庶民の方々の間では、御針子テーラーが、足りないと聞き及びます。 ……良かったですね、食べて行けますよぉ」





 土下座せんばかりの、最敬礼だった。 そんなの要らないのに。 普通にしてればいいのよ。 ” 普通に ” にね。 





「誠に、申し訳ございませんでした!!! 妹は、家に連れて帰って、 ” 物の道理 ” を、再教育いたします!!!」


「きちんとした、ご理解が出来る事を、希望します」


「はひぃぃぃ!」





 よし、これで大丈夫。 でっかい釘打ち付けて置いた。 周りも引くぐらいね。 さぁ、朝ごはん食べよう! うん、ホントに引いてる。 兄ちゃんが、妹の手を強引に引っ張ってた。 それでも動かない妹、思いっきり、引っ叩いてた。 うはっ、初めて見た。 引っ叩かれて、真横にぶっ飛ぶ、お嬢様。 悪さして、殴られてた開拓村の悪ガキ思い出したよ。 


 そのまま、歩いて、食堂に行こうと思ったら、まだ、集団がぐずぐずしてる。





「道を開けて下さらないかしら?」





 極めて冷たくそう言ってみた。 効くかな? うん、効いたみたい。 私の前、二つに割れたよ。 まぁ、怖がられるね。







これで、確実に、ボッチ確定だよ。




 

ボッチ街道を驀進するようです。


良い子なんだけどなぁ・・・

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