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ヌーヴォー・アヴェニール   作者: 龍槍 椀
泣き言は言わない
20/111

クロエ 貴人麗人を眺める

すみません、サブタイトル変更します。 6/20




 

「クロエお嬢様、この、御荷物は何なんですか?」





 エルを筆頭にメイドズが私の部屋に雪崩れ込んできた。 うん、来るだろうなって思ってた。 でもって、知ってる、その荷物の中身。 って言うか、私が頼んだ。 ソフィア様に。 メイドズ、社交用のドレス、持って無かったったんだよ。 学院じゃ基本、いらないってね。 翡翠色の制服が彼女たちのお仕着せみたいになってた。 


 でもね、やっぱり必要じゃん。 今回みたいな、舞踏会に制服はないでしょう。 だからね、お手紙書いたのよ、「ソフィア若奥様」宛てにね。 ソフィア様、去年まで、 ” ここの ” 学生だったしね。 よくご存じなはずでしょ。


 それに彼女達、黒龍大公家の、”御養育子(はぐくみ)” だから、彼女たちが蔑まれる事は、黒龍大公家が蔑まれることになるのよね。 ダメでしょ。


 ついでに今回の舞踏会、彼女達のデビュタントにしようと思ってる。 んで、ソフィア様を通じて、リヒター様、イヴァン様に話を通した。 ダンスのお相手は、決まったみたいね。 ” かっこいい人お願いね ” って、お願いしておいたからね。 当日にエスコートしに、迎えに来てくださるそうよ。 良かったね。





「一緒に来たお手紙、読みました?」


「ええ……」


「差出人は?」


「……そ、ソフィア様でした」


「だったら、四の五の言わないでね」


「……お嬢様……」





 うん、困ってる。 困ってるね。 綺麗な顔が曇ってるよ。 でもね、これ、貴方達の大切なお仕事になるからね。 ホントにそうよ。 なんとなくだけど、私、 ” ボッチ ” まっしぐらだからね。 きっと、お茶会とか、貴方達の方が誘われるわよ。 うん、確実にな! 


 でだ、私としては、積極的に出てほしい。 もちろん、私の代わりって面もある。 けど、それは、きっと貴方達の力になるよ。 ホント、悪いこと言わないから、云う事、聞いてね。





「中身は舞踏会用のドレス。 着てみて、ドレスアップ出来たら呼んで。 私からも、”渡す物”有るから」


「えっ?」


「時間は有限よ? 合わなかったりしたら、お直しいるでしょ?」


「は、はい」





 なんか、釈然としない顔で、三人は出て行ったよ。 多分、私も、あんな顔してたんだろうなぁ……。 でも、絶対に綺麗だって信じてる。 だって、素材が最高なんだもの。 モチロン、ミーナが言った事だよ。 さて、魔法使い達の変身に期待しようかなぁ。





――――――





 ええっと、ココは……妖精の森ですか? 何ですか! 貴方達は! もう、神様、反則です。 エルはお日様のような明るい「オレンジ色」、ラージェは彼女の目の色と同じ「朱赤」、 ミーナは、彼女の好きなラベンダーと同じ、「薄紫色」のドレスだった。


 今風の綺麗なドレス。 でも、そんなにゴテゴテしてない。 うん、とっても素敵。 体のラインもバッチリ…… もう、神様の……ばか…… 不公平って言葉知ってますか?





「お嬢様……このようなドレスを……」


「いいでしょ。 誰のお見立てかは、知らんけどね。 多分、みんなで考えてくれたと思うよ」


「そ、そうなのでしょうか……」


「当たり前じゃん! お屋敷のみんな、あなた達の事が好きよ。 準備時間が無かったけど、何とかなったね」


「あ、有難うございます」


「今度、お屋敷に帰ったら、ソフィア様と、アンナさんに、お礼、言っといた方がいいわね」


「え、アンナ様?」


「貴方達の服のサイズ知ってるの、アンナさんくらいでしょ? そうそう、コレ、私から」





 チョットしたもんだけどね。 チョーカーなんだけどね。 それぞれに貴石がくっ付いてる。 エルには、魔術師になるから、魔術師の縞瑪瑙。 ラージェには、少なくとも剣士になるから、剣師の碧玉。 ミーナには、行政官の印だから、官吏の紫水晶。 そんでもって、精霊の加護を封じてある。 とっても大変な時、きっと手助けしてくれると思うから。


 メイドズの首に其れを付けてあげる。 うん、綺麗だよ。 まぁ、石はありきたりの物で、学校に入る前に街に出た時に買った物だけどね。 





「なんと言っていいか……」


「なんか、自分じゃ……無いみたい」


「変な気分です」





 そうかい、そうだろうね。 メイドズの大魔法は、自分達にも効くんだねぇ。 今の気分、ずっと私が感じてるんだよ? 判ってくれた? どう? 居た堪れないでしょう……へへへ。 喜んでもらえたら嬉しいな。





 *************





 王立魔法学院の新入生歓迎の舞踏会当日。




 朝の鍛錬が終わって、朝食を学校の食堂で頂いた後で、部屋に戻った。 今日は、全校的に休み。 休みなのに、一年生は舞踏会で強制参加が義務付けされているんだ。 納得いかないね。 仕方ないけどね。 


 そんで、メイドズと一緒にその準備をしてたんだ。 お風呂入って、乾かして、下着付けて、髪を結って、薄化粧して、ドレス着て…… うん、大変。 まぁ、四人でお互いの準備をするんだから、少しはね……


 結局一番時間の掛ったのが私。 そうだね、自分じゃ出来んもんね。 手伝ってもらって、ドレスを着たよ。 ほら、例のパステルグリーンの職人さん渾身の作。 かなり、別人感漂っているけど、まぁいいよね。 今日は別人が四人も居るし…… ね、鏡の前で固まるでしょう? 判った? 私の気持ち。




 コンコン




 ノックだ! 来たぞ。 ウフフフフフ。 どんな人かな~~



 扉を開けると、其処に背の高い男性が三人。 うん、三人。 めっちゃ見目麗しい。 やったね! イヴァン様! 人選、苦労してくれたんだね。 有難う!! 三人はそれぞれ、この学院で勉強している、宮廷魔術師の卵、騎士見習い、官吏見習いだって。


 ほほっう。 それは、まさに、正しい人選。 そんで、その人達、ちゃんとお相手の御名前ご存じだった。 うん、イヴァン様、抜かりないね。 おや? メイドズ、顔が赤いぞ? ……いいか、別に。 愛を育んでもね。 こんな出会いが有ってもいいよね。




 そんじゃ、出陣するか!






――――――






 ――――まぁね。



 ある意味、予想はしてた。 うん。 本当にね。 







 学園の一番広いホールでの舞踏会。 この会場の人達の全てのドレスを広げたら、運動場一杯になるね。 なんか、目がチカチカするよ。 ところどころに原色の何かがいるしね。 人いきれも凄いよ。 まぁ、五分前到着だったし。 あまりの人の多さに、さっそくメイドズ達とはぐれた。 と、云うより、自分から距離を置いた。 今日は楽しんでよね。




 さてと、前に行っとくか。 お話聞いて、一曲踊れば終了でしょ?




 そうこうして居るうちに、ミハエル王子の登場と相成りました。 うわっ! なんだ? あれ。 お花畑の真ん中に、悠然と微笑んでいる王子が居たよ。 ……あれ? 見覚えがある顔が、王子の直ぐ横に居るね。 あれって……ああ、エリーゼ様だ。 いいのか? お前婚約者、持ちじゃね? それも、第一王太子のフランツ様だぞ? なんで、そんなに熱っぽい目で、ミハエル王子をみてんのさ





「出席してくれた、紳士、淑女の皆さん。 ようこそ学院舞踏会へ! 今日は今年度入学した者達のお披露目でもある。 みな、楽しんでくれ! さぁ、音楽を!」





 いやいやいや…… お前も、今年入学だろ? その挨拶でいいのか? ……いいんだ。 王族だからか? まぁ、いいや。 こっちに気が付いてるみたいだし、来るかな?





「この場の、最高位の令嬢とまずは、踊ろう! 皆、よいな!」


「「「「はい」」」」





 うえぇぇぇ。 なんだ、コレ? ほう。 王子、エリーゼ様の手を取ったね。 ふーん、そうなんだ。 序列決めなんだね。 出入り口は……一応封鎖されてるね。 うん、これは、あれだ。 蔑みだ。



 判った。



 氷の微笑モードに変更しよう。 口元に扇を広げてっと。 楽し気に踊ってるね。 壁際に下がろうか。 うん。 なんかヒソヒソが始まってる。 まあ、聞こえないふりして、誰がなんて言ってるのか、よく、覚えておくよ。 いいね、この位置。 とってもいい。


 そんでもって、初めて見るミハエル王子の顔をよく見て置く。 ぜってぇ絡まねぇからな。 輝くような金髪と濃い茶色のアーモンド形の目。 きりっと引き締まった口元。 割と長身。 うん、将来楽しみだね。


 上面はね。 あっ、目が合った。 あはははは! 目逸らせやがった。 小心者だなぁ。 嫌がらせするんだったら、堂々とすればいいのにねぇ…… なんか、虚しくなって来た。


 何曲も、何曲も、曲が流れ、ずっと立ちっぱなし。 疲れて来たよ。 そんで、誰も近くに寄ってこない。 こんなに人がいるのに、私の周囲ぽっかりと穴が開いたみたい。 うわぁぁぁぁ…… なんだ、コレ? 序列最低に固定? ……まぁ、王家に睨まれたら、こんなもんだけどね。 しゃぁねぇな。


 どのくらい、曲聞いたかな? 二十曲目くらいまでしか、記憶ないよ。 いつの間にか、王子どっか行ってるし、それに引きずられて、淑女?の皆様も、どっか行ったし……残ってるのは……あんま、印象の無い人達ばっかりだね。


 ん? メイドズは? ……あぁ、エスコートの人達に連れてかれたね。 どっかで、有意義な話をしてるんだろうね。




^^^^^^^^






 段々、音楽がしょぼくなって来た。 そりゃ、踊る人いないもの。 あれれ……学生さん、殆ど、居なくなったヨ。 んじゃ……私も、ちょっとだけ楽しんでいい?





「とても、素晴らしい音楽ですね。 皆様、ありがとう」





 楽団の人達、キョトンとしてる。 そりゃそうだ。 あって当たり前の物に、誰も関心を払わない。 けどね、この人達、ある意味職人よ。 ずっと、途切れることなく音楽を奏でていたんだもの。 もう、ほとんど誰も居なくなったから、ちょっとお礼を言ってみたかっただけ。





「もったいなく……なにか、ご希望でも?」





 目の端にリュートが入った。 うわぁ~~ 懐かしい! 弾きたいなぁ…… 私だって、ちょっとは、楽しみたいしなぁ。 ダメかなぁ~~ 聞いてみるくらいは、いいよね。 





「もう、他の生徒さんは、いらっしゃらないので、我儘、言ってもいいですか?」





 居る事は、居るんだけどね、なんか喰ってる奴とか、寝てる奴とかだもんね。 この際だ、ちょっとだけ、我儘、言わせて貰おうかな。





「何なりと」



「あの、不躾で申し訳ありませんが、あのリュート、弾かせてもらえませんか?」


「えっ? お嬢様が?」


「ダメ…………でしょうか?」


「―――ええ、構いませんが」





 やっほい! 久しぶりにリュートを手にする。 リュートの先生、思い出したよ。 そんでもって、あの小劇団の伴奏! よっしゃ! やったるか!


 流石は学院に来る楽団。 調整バッチリだよ。 さぁ、お祭りだ!


 楽団の人、この劇知ってた。 途中から、伴奏……合奏……フルオーケストラになってたよ。 みんなニッコニコだよ。 ははは、楽しんじゃえ! どうせ、誰も居ないしなっ! 






 遣り過ぎた……・・






 エンドロール入ったら、指が痛い。 久しぶりだったもんね。 なんか、喰ってる奴、目をまん丸にしてた。 寝てた奴、踊ってた。 まぁ、いいか。 楽しかったし。


 とっても、お礼を言って、部屋に戻った。 まだ、エル達は帰ってない。



 お風呂入って、寝るか!




ボッチ、まっしぐら。


この舞踏会、最初から仕組まれてたんですかね。 クロエを孤立させる為の、王子側の作為的行動ですかね。


次回、 「まだまだ続くよ」 っす。

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