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ヌーヴォー・アヴェニール   作者: 龍槍 椀
誇り高く、穢れなく
105/111

クロエ 奮戦す 後編

 




 天幕を出ると同時に、怒られた。 なんか…… 笑いながら、怒られた。




「お嬢! まったく、貴女あんたって人は!」


「何でしょうか?…… でも、貴方は、知ってるでしょ? 私の性格。 やる時は、全部まとめてやりますよ。 まぁ、それでも、レオポルト様に、『あの方々』の処分は、丸投げしましたけど、王弟様、敵前逃亡は軍事裁判なしで処刑しますよ。 ご自分も、” 武 ” の、人ですからね」


「いや……まぁ……そうか。 では、作戦の具体案を、提示してください」


「はい、王弟様より、全十二部隊の指揮権を移譲されました。 先ずは、皆様をお呼び下さい」


「御意!」




 ―――――




 街の外れのちょっと開けた場所に、十二部隊の指揮官さん達が集まってくれた。 そんで、十三番隊が全軍の指揮権を移譲された事をお知らせしたの。 すんごく、嫌な顔された。 でもね、正規の命令系統からの、殿下の命令だから、従うのよ。 この人達は。 だから、きちんと遇するの。




「若輩者ですが、どうぞ、よしなに」


「おう……迎撃戦を行うと言うが……どうするんだ?」


「縦深防御戦闘は捨てました。 全軍は、ヨロー渓谷のこちら側で、重防御隊形にて待機。 突撃命令を以てして、押し上げます」


「全軍でか? 後詰めは?」


「現状で一次攻撃にすべてを懸ける以外に、勝機はありません」


「相手は、不死化アンデッド兵だぞ? 持つのか?」


「それは、考慮に入れていません。 無効化しますから」


「「「無効化??」」」


「はい、こう見えて、わたくしは、魔法騎士なんですよ。 大丈夫、任せてください」


「……そうか……まともな、いくさが出来るのか」


「そのつもりです」




 では、準備しなきゃね。 各指揮官さん達は、みんな持ち場に戻ってもらったよ。 私は、仲間と一緒にヨロー渓谷の向こう側の入り口に、向かったの。 何回か、偵察部隊に逢ったけど、全部、殲滅してくれたのよ。 腕良いわよ、ユージンさん達。 流石ね。 見てる間に、殲滅してくれたのよ。


 まぁ、不死化アンデッド兵の弱点知ってるし、少数なら、彼等の敵ではないわね。


 数が、多いと、ほんと厄介になるけど。


 到着して、周辺の探索。 良かった、敵兵も居ないみたいね。 早速、罠を張っていくか。 魔力を伝える為に魔法糸を用意して、 特別製の【 土壁グランドウォール 】の魔方陣を連ねて、魔法糸で綴っていくの。 そんで、魔方陣の上にうっすらと土をかぶせて、【 隠遁 】の魔方陣を重ね掛けして、発動しとく。


 もう、パッと見、わかんないよね。


 で、糸を繰り出しながら、二十五リーグを戻るのよ。 探索糸としても、役に立つから。あっちこっちにばら撒いたよ。 戻って来たのは、丸一日駆けたあと。 他の隊の指揮官さん達は、見事な重防御突撃態勢を取ってくれて居たね。 


 流石は、龍王国、レオポルト王弟様直下の近衛親衛隊、鍛え方が違うね。 みんな、戦意を隠そうともしてないし。 漲ってるねぇ…… そんでね、断崖の上に斥候も出して呉れてた。 連絡糸で結んで、此処まで、報告が来るって。


 凄いね。 私の魔法糸だけだったら、ちょっと、正確さに問題があったから、有難かった。




「作戦骨子をお聞きした時、全てを、クー殿に任せるのも、なんだなと思いまして、勝手働きしました」


「助かります。 ”目” と ”耳” は、多い方が良いです。 別系統なら、更に」


「ご理解いただき、有難うございます」


「まだ何か?」


「はい……実は、重装騎兵なのですが」


「はい?」


「我等には、専門の重装騎兵がおりません。 みな、中装備なので……」


「ええ、理解しております。 本来は、軽快な動きで敵を翻弄するのが、「御役目」 わたくしが、無理、言っているのも、存じております」


「命令に不服は御座いません。 我等、騎士ですので。 調べました所、重装騎兵の訓練を受けました者達が、相当数おりました。」


「はい」


「司令部、幕僚達の護衛任務に就いている者達が、重装備、及び、装備の予備を大量に持ち込んでおりました」


「はい……それで?」




 ニヤッと笑いながら、指揮官さん達が続けたのよ。 なんとなく、……ほんと、何となくだけど、予想は付いたの。




「この一戦に、全てを掛けるという、貴女の御言葉に、我等も乗りました。 では、全てとは? 全装備を、この作戦に向けて、最良のものに、更新することです」


 彼等の後ろに居る、兵は、皆、重装備。 カッパぎやがった…… そしたら……司令部天幕の護衛って……


快く・・、装備を差し出してくれましたよ」


「そうですか……ご厚意に、感謝しなくては」


 口元が、綻びたよ。 悪い意味でね。 こんな場所では、ほとんど裸同然の、軽装備渡したんだね…… でも、まぁ、抜かれたら、何着てようが、変わりないしね。


「作戦を成功させることが、彼等にとっての、感謝となるのでは?」




 喰えん人達だ。 まぁ、その通りなんだけどね。 ほんと、ただの脳筋じゃ無いよね、この人達。 爺様も、父様も、こういった人達だったんだろうね。 なんか、嬉しいね。 




「ご協力、感謝します。 このいくさ、負けられませんね」


「我々は、最善を尽くします。 指揮官……クー殿。 頼みました」


「了解しました。 決して、無駄にはしません」




 騎士の礼を交わすの。 真剣よ。 もう、事、此処に至っては、誰にも止められない。 だから、私も、真剣に受け止めた。 予備兵力無し、たった一度の、攻勢に、全力すべてを懸けるわ!



 私達、第十三番隊は、ヨロー渓谷の出口の、” 一番近い場所 ” に、布陣したの。 横列隊形。 中央、一人突出してる所が、私の位置。 この位置、意味が有るのよ。 もうすぐ、奴等の一陣が、渓谷に入って来るの。 探索糸でそれは、判ってたの。 伝令兵さんが、奴等の渓谷侵入を大声で知らせていた。 罠の入り口に入ったね。


 口元に、笑みが零れる。 ほんと、判りやすいね。 さて、大魔法の用意だ。 魔方陣は複雑だけど、やる事は単純だから。 父様の「例の本」第一巻を読んで、大魔法の構造が詳しく判ったから……制御が楽になったよ。 ほんと、まるで、父様がこんな事もあるだろうからって、教えてくれたみたいなモノよ。


 教えに従って、魔方陣を構築。 強度を高めて、多重化構造に変更、更に、間に自動修復の魔方陣を挟み込んで…… 出来た。 イメージバッチリ!




    ⦅多重改変大魔方陣、【 不死者浄化ターンアンデッド 】 展開!⦆




 私の目の前、半リーグに、でっかい魔方陣が展開されたよ。 重厚な奴ね。 そんなに魔力を使わなくても、作り上げられた。 まぁ、練りに練った魔力だからね。 渓谷の端から、端までを覆いつくすの。


 これで、奴等、不死化アンデッド兵を、殲滅する。


 だから、私が一番前に居なきゃならないんだ。


 探索糸が、続々と侵入する敵軍を捉え続けているの。 報告も次々に入る。 半分くらいが、侵入したみたい。 最後尾が見えたって…… 敵本陣、司令部組織のようなモノも、一緒に進軍してるって。 向こうだって、余裕なんか無いよね。 判ってたよ。 


 そんで、そいつらの最高指揮官は…… 奴だよ…… このいくさで、勝利しないと、もう、身の置き場が無いからね。必死なんだろうね。 そりゃ、ミールフルールとの約定を違える訳には行かないよね。 本国、ミルブール王国から、教団の解体命令出ちゃったし。 もう、ミールフルールに、大きな力を渡す事が出来なくなりそうだもんね。 だからって、龍王国の中枢に食い込もうって…… 甘いわよ!




    ボディウス=ラウム=ハルファス教皇猊下




 貴方だけは、絶対に、許さないよ。







 ―――――






 ヨロー渓谷の奥の方から、装具の触れ合う音が聞こえだした。 かなり、近づいてるね。 もうちょっとだね。 奴等の上げる、オドロオドロシイ声が、渓谷の壁に反響して、ものっそい音になってるよ。 街の人達、怯えてるよ、きっと。 ゴメンね。




    でも、キッチリ、片は付けるから。




 不死者兵達が、突っ込んで来る峡谷。 空気まで重いよ。 精霊様達も退避してる。 なにせ、ミールフルール来てるんだもの。 で、その御当人。 結構、苛立ってるのが、私でも見て取れた。 約束より遥かに少ない魂……遥かに少ない精霊。 術者に当たるね、きっと。 ” 約束を履行しろ! ” ってね。 伝令兵さん達から、峡谷に敵の本隊が入ったって、連絡が来た。 さて、罠を閉じるか。





「敵司令部、渓谷に進軍。 渓谷に入りました!!」




 なんか、ものっそい黒い微笑みが、口元に浮かんだよ。 魔法糸の端に、私の置いた、特別製の【 土壁グランドウォール 】の起動魔法用の魔力を流したの。 




 ドーン!

     ドーン!




 凄んごい音が響き渡ったわ。 伝令兵さんが伝えて来た。




「罠は閉じた!」




        やっほい!! 




 綺麗に発動出来たんだ!! これで、想定通り。 敵さん、もう、向こう側には逃げられないよ。 慌てふためく奴等の姿が目に浮かぶよ…… よっしゃ、始めるか。 みんなに聞こえる様に、大声で話そう。 当然、全部隊が、聞き耳を立てている。 半身になって、後ろを向く。 




「これより、敵を殲滅する。 みな、動くものは屠れ。 良いか、行くぞ アゴーン! 」




     「「「  アゴーン!!!  」」」


 「「「  アゴーン!!!  」」」


         「「「  アゴーン!!!  」」」




 もうね、すんごい、鬨の声! それまで、響き渡っていた、あいつらの声を、完全に圧倒したわ。 ヨロー渓谷の奥に向けて、駆けだしたのよ。 クリークと一緒に。 直ぐに、敵の部隊との遭遇。 普通だったら、装具の激突する音が響くはずなんだけど、する音は、クリークの蹄が、装具を砕く音だけ。




    ほら、やっぱり




 魔法の練度は、私の方がかなり上だったみたいね。 不死化アンデッド兵が、半リーグ先に、展開された、大魔方陣、【 不死者浄化ターンアンデッド 】に触れると、そのまま浄化されて、塵に戻るのよ。 魂は、大切に、遠き時の輪の接するところ、刻が意味をなさぬ場所に、送り届けられるの。 そういう魔法よ。 囚われし、魂。 みな、安らかに眠り給え。


 クリークと私。 そして、第十三番隊。 その後に続く、十二部隊。 ほぼ、一丸となって突き進んで、行くのよ。 鬨の声は、渓谷中に響き渡ってるの。



  「「「 アゴーン!!! 」」」


        「「「 アゴーン!!! 」」」


   「「「 アゴーン!!!  」」」




 なんか、飛んでくるなぁ……って思ってたら、矢だった。 あぁ、そうか、不死化アンデッド兵以外にも、生身の兵も居たんだった。 ちょっと、対応が遅れた。 でも、目の前で、その矢が空中に止まったんだ。


 あれ? なんでだ?




「お嬢は、あの大魔法の維持を! お嬢の身の安全は、俺達が担う!!」




 両脇にね、オッちゃん二人が居たよ。 あぁ、この人達、あれだ。 【特設シュバルツハント遊撃隊】の仲間で、魔法に長けた人。 目の前に【 物理防御 】 と、 【 魔法防御 】 が、張られていたよ。 




      ありがとう!




 他の人達は……あぁ、私の行く方向で、生き残った、” 生身 ”の兵、攻撃してた。 まぁ……あの人達、一騎当千だから……


 あっという間に、二十リーグ、駆け抜けたよ。 見えた…… 敵本陣。 必死で、防壁立ててるね。 そんで、失った、不死化アンデッド兵の呼戻しをしてるらしい……


 無駄だよ。 もう、魂は彼岸に行った。 帰ってこない。 だから、敵兵は増えない。 魔力を失うだけだよ。 見てる間に、距離が詰まる。 司令部らしきものの周りは、やっぱり、” 生身 ” の人が多いね。 でもね、こっちは、重装騎兵引き連れてるんだ。 蹂躙してあげる。 此処まで、来た事を、後悔なさい。


 残余の敵兵は仲間たちと、重装騎兵さん達が掃討しちゃった。 本隊最後尾に居た司令部集団に肉薄できた。 仲間が、その人達を掃討。 問答無用だった。 で、その人達、殆どが国教会の導師。 中央に、ボディウス教皇猊下がいた。 あの弓の得意な人もいたから、近寄ってもらった。 彼から、矢を一本貰って、魔法を掛けたの。




   【 スタン 】をね




 お願いして、逃げ回ってる、ボディウス教皇猊下に射かけてもらったの。



        パシュン!



 命中。 呆気なく、倒れちゃったよ。 もうちょっと、粘るかと思っていたけど…… そうか、ほとんど、魔力失っていたのか……なら判る。 そんでね、彼の近くに行って、クリークから降りたの。 周りを仲間に囲んでもらってね。



 決着を付けよう。 




「誰かと思ったら、ボディウス教皇猊下ではないですか。 ご機嫌麗しゅう」


「くっ! 誰だ!!」


「貴方に引導を渡しに来た者です。 さんざん、殺そうとした相手の、声すらもお忘れですか?」


「な、なに!!」


「もういいです。 じゃぁ、貴方の大事な物を呼んであげますから」


「や、やめろ!!」




 虚空を見詰め、きっと、その辺で、聞き耳を立てている、ミールフルールに語り掛けたの。 こんな奴に、精霊様の言葉である、古代キリル語は不要。 それに、人語も理解できる事は、実証済みだもんね。




「ミールフルール、此処に、あなたを、心より信奉する、ボディウス教皇猊下が居られます。 かかっている魔法の制御を渡す代わりに、この場より、妖魔の世界に戻りなさい。 そして、二度と、龍王国に関わらないで。 見合った対価でしょ? なにせ、貴方をこの世に縛り付けた、人なのですから」




 虚空……闇よりも暗い、虚空から、嘲笑の声が響いたの。 仲間たちの肌が粟立ち、恐怖が襲ったようね。 大丈夫よ、標的は、こいつだから。 周囲の仲間達に、口元の微笑みだけ、見せたの。 ちょっと、安心したらしい。




「い、いやだ!! いかない!! まだ、まだ、行かない!! そうだ、新たな契約だ! どうだ、ミールフルール、こいつの魂を遣るから、見逃してくれ!!」




 いや、無理だよ。 貴方、妖魔精霊と約定交わしてるんだよ? そんで、その約定、守れなかったんだろ? そんな奴の言う、新しい約定なんか、聞くわけないじゃん。 いくら妖魔精霊だって…… 馬鹿じゃないの?


 虚空から、黒紫色の手が出現したの。 うわぁ……見たくねぇ…… そんで、ボディウス教皇猊下の頭を握りしめたのよ。 吸い取るのかな? って思ってたのよ。





「 うわぁぁぁぁ!!! やめてくれ!! あsかjlらあjl!!! 」






 そのまま、虚空に引きずり込んで行ったよ…… 



 あぁ……精霊界に連れ込まれたのか…… 玩具にされるな……そんで、魂を削り取られるんだ…… 簡単には……死ねないね。 そんで、彼岸にも行けない……混沌の海の中で、彷徨い続けるんだ……



 自業自得だ……



 じゃあな、ごきげんようアバヨ



 術者が居なくなって……残余の不死化アンデッド兵が全部、倒れた。 静寂が、ヨロー渓谷を包んだの。 


 一言だけ…… そう、一言だけ、私は、言ったの。






「  戦闘終了  」






 周囲……近い所から……呟くような声がした。




「アゴーン」




 仲間の一人だった。 十三番隊に瞬時に広がったの。




「「「 アゴーン 」」」



 そしたらね……立ち止まっていた、十二部隊の人達も、それに、合わせて、鬨の声を、勝利の雄叫びを上げ始めたの。




    「「「 アゴーン!!! 」」」


  「「「「 アゴーン!!! 」」」」


    「「「「「 アゴーン!!! 」」」」」




 渓谷に木霊する、勝利の雄叫び。 耳をつんざく、雄叫び。 あんまり煩かったから、【 土壁グランドウォール 】を、解除したのよ。 音が反響して、ぐるぐるし始めたもの。


 砂になって崩れ落ちる、【 土壁グランドウォール 】。 その向こうの景色……多分忘れる事出来ないと思うわ。 一面に、敵軍が残した装備が広がってるの。 術者が居なくなった、不死化アンデッド兵の残骸……  きっと後詰ね。 




 風がね……


 一陣、吹いたのよ。


 残骸がね……


 塵になって……


 天高く舞い上がったの。



 終わったよね。


 これで、全部。


 勝利の雄叫びは、


 まだ、


 響いていたよ……





 **********




 撃滅した敵を見ながら…… ヨロー渓谷を戻り始めたのよ。 こっち側の被害は、重傷者一人、軽傷者十三人……だったの。 重傷なのは、不意打ちを喰らった人が一人だったから。 ポーションと、回復魔法で、一息ついて、一緒に戻れたの。 



 良かったよ。 



 人的被害は、それだけ。 みんな無事に戻れた。 これが、一番嬉しいよね。 司令部天幕にね、報告に行ったのよ。 周りの人達は、休憩に入るって。 で、オッちゃん達が付いて来たの。


 天幕に入るとね、幕僚の人、五人倒れてた。


 


「クー、戦闘を終了いたしました! 敵主力、撃滅。 敵指揮官……ミールフルールにより、混沌に連れ去られました。 約定により、彼が戻る事は無いと思われます」


「うむ……よくやった」


「指揮権、お返しいたします!」


「受け取ろう。 ……あぁ、こいつらは、敵前逃亡罪で、刑死した。 私が処罰した」




 倒れる、男達に一瞥をくれて、レオポルト王弟様がそう、仰られたの。 はぁ……まぁ、なんだ、応えとこう。




「はっ!」




 そうなると、思ったよ。 なんか、道を開けようとしてたもんね。 そんで、相手が強大なのを、最初から知ってたしね。 ……筆頭幕僚まで、居やがったのか…… もうね、なんも言う事無いよ。 結局、白龍大公閣下は、ボディウス教皇猊下と組んで、龍王国に君臨しようとしたって事よね。



     許されない事なのにね。



 密約とか、後始末とかは、レオポルト様にお任せしよう。 私が出て行っても、良い事無いもの。 そんで、立ち去ろうとしたのよ。




「まて、クー。 第十三番隊……いや、全軍の指揮官として、何かあるだろう」


「御座いません。 第十三番隊、クーは、この戦いに参戦し、善戦しました。 以上です。 栄誉は、他の方々に……」


「どこへ行く?」 


「人探しを。 どうしても、逢いたい人が居りますゆえ…… それでは、また、いずれ、お逢いしましょう」




 騎士の礼を捧げ、その場を後にしようとすると、仲間のおっちゃんが云うのよ。




「またか……」


「状況は判って居りますでしょ?」


「まぁな。 また、逢えるか?」


「ええ、勿論。 辺境のクーは、辺境におりますから」


「判った。 それならいい」


「それまで……ごきげんよう」


「あぁ……お嬢、また招集される事を、心から待っている」




 司令部天幕の外へ出たの。 青空が眼に沁みた。 風が柔らかくってね……光も、輝いて見える。 そっか、精霊様達、戻って来て呉れたんだね。



     ありがとう。



 空気が澄んで、心地よかった。 ミールフルールが去って、本当に、精霊様達が安心しているのが判る。 龍王国の安寧と平穏、つかみ取ったよ。 後は、人の所業。 そんで、私は、そこには、関わらないの。 だって、もう、死んじゃってる事になってるじゃん。 良いのよ。 みんなで相談しながら、練り上げる案は、多少の不満があっても、自分達で作り上げたモノ。


自信に繋がるモノ。 そうで無くては、いけないもの。 





       これで、



       本当に、



      私の役割は、



      終わったよ。



      頑張ったよね。







        私。






クロエ 奮戦す 後編です。


連続投稿になります。


はぁ・・・18000文字は、一話では、多く過ぎますよね。


前後編に分けても、まだ、多いです。


お楽しみいただけたら、幸いです。


それでは、また、明晩、お逢いしましょう!!

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