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留守番したら異世界でした。  作者: 上城樹
第一章 異世界と私
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8.普通の出会いを希望します。

 異世界生活もそろそろ1ヶ月。 



 朝起きてゲーム、昼食を食べ畑で収穫作業、昼寝のちゲーム、晩御飯を食べ、さらにゲーム、そしてお風呂に入り寝るという平穏な生活サイクルを続けてきたのだが、本日その平穏は突如ぶち壊された。


 夕食はトマトパスタだとテンション高く家から飛び出した私は収穫する作物を入れるために持っていたザルを両手で握りしめたままフリーズした。


 これは無理だ。平和な日本で育ってきた私には刺激が強すぎる。


 届くはずのない近況報告メールをダメ元で送り、人恋しさに愚痴を言った次の日、石文字いしもじきみ(勝手に命名)がアプローチに新たらしく書いた〝ひと しばし まて〟の文字を見た時になんとなく嫌な予感はしていたのだ。


 この石文字の君、私の独り言に返事をくれる。「元の世界に返せー」には〝ふかのう いきて〟「お笑い見たい」の時は〝むり〟「ケーキ食べたい」に対しては〝じしゅせいさん がんば〟など、なかなか律儀な性格のようだ。

 ただ、彼とやりとりするためには、毎回玄関の扉を閉めて開ける動作が必要である。そうしないとアプローチ中央付近にある文字は変化しない。

 結構面倒だ。


 話が逸れた。石文字の君は、悲しむ私の姿を見て可哀そうに……と思ったかどうかは定かではないが何とかしてやろうと考えたらしい。

 その考えた結果が今私の目の前に広がっている光景だろうか、頭が痛い。


 言った。


 確かに言った。


 認めよう「人に会いたい」と言いました。


 が、これは違うでしょう。


 白くねばねばした巨大な生物(軽自動車サイズ)がべったりと我が家の唯一の出入り口がある所に張り付いていた。

 結界があるため此方には入ってこれないようだが、うねうねと体をくねらせながら結界に張り付くその姿は、サイズは桁違いに大きいが透明なガラスの下から見たナメクジにそっくりだ。


 そんな白いねばねばした巨体の腹だと思われる辺りから細長い銀色の物体がチラリ……なんてこったーあれ鎧を身に着けた人間の腕じゃありませんかー。


 巨大ナメクジの中から鎧を纏った片腕だけがコンニチハ本体は完全にねばねばボディに埋まってます。

 あぁ、見間違いでなければ鎧が少しずつ溶けて……。


 なるほどこれは、


「………………お食事中ですか」


 ゆっくりじわじわ溶かして養分を吸収。


 ナメクジって人間食べるんだー。へぇー、ほぉー、ふぅーん。


 以前、肉食昆虫のお食事風景を見た時もグロかったがコレはもう次元が違う。

 

 目の前で人間食べられてるところ見せられるって一生癒えない心の傷になるよ。チェーンソーでがっつり抉る勢いの傷だから。

 石文字の君は何がしたいの〝ひと しばし まて〟の待った結果がこれか。

 私が会いたいのは生きた人間である。死者はノーセンキューです。


 このまま、お食事を続けられるのは非常に困る。

 鎧と骨だけが残った光景が脳裏に浮かぶ……私が埋葬するの? 骨を? 

 絶対無理、断固拒否する。


 ザルを地面に置き、砂利を一握り掴み取る。


 おいこらナメクジ今すぐ移動しろ! ここで食べるな! どっかいけ!


 ありったけの力を込め巨大ナメクジに砂利を投げつけた。 

お読みくださりありがとうございます。

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