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留守番したら異世界でした。  作者: 上城樹
第二章 リガルの砦と私
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45.旅フラグが立った。

 はちゃめちゃ話は、私の緊張をほぐすための冗談(ただし九割事実)だったらしい。

 色々吃驚しすぎて全身脱力状態ですから、彼らの思惑は成功したというわけであるが。


 なんか、心がもやもやしていまいちすっきりしないのは何故だろう。


「うっし、いい感じに場が和んだところで次いくぞ」


 パンパンと手を叩き場をしめるフォルスに言いたい。

 脱力してるだけで全然和んでないから、勘違いだよ。と。


 さて、本題に入ったのだが。


 私は3人が話し合っている姿を眺めるだけなので、とても暇だ。

 いや、大事な話なのは理解してるんだけどね。これからの私に関係あることだし。

 ただね。私がここで何か発言したところで何が変わるわけでもないと思うわけで……。


 で、暇すぎるので心の中でこっそり参加してみることにした。


「襲撃はチャイズか、その友好国だ。使用されていた術式が独特のもんだったから特定しやすかったぞ」


 でた、迷い人に酷い国代表チャイズ国……とその愉快な仲間たち。


「でしたらチャイズよりもコリーカの可能性が高いかと、あそこチャイズには逆らわないですし事実上使い勝手のいい駒ですからね」

「あー、ありえるな。都合悪くなったら切り捨てやすいし……」


 アルベルトの言葉に同意するフォルス。


 駒とか、切り捨てとか哀れコリーカ国。しっかり現実見て外交がんば……いや、チャイズ国もコリーカ国もどちらも迷い人に対して酷い国だった。

 そんな国は頑張らなくていいよ。


「くそっ、情報が少ねぇな。襲撃犯逃がしたのが痛かった」

「フォルス過去のことを悔いてもしかたありません。今は、奴らの目を欺き一刻も早くサキ嬢を王都へ送りとどけるのです」


 ロウゼルさん旅フラグ立てないで。まだ、心の準備できてないから。


「では、ゴンザレスに魔法でサキの幻影を作り出してもらいこの地にサキがいると思わせている隙に王都へ向かうのどうでしょうか」

「…………ふむ、そうですね。それでいきましょう」


 アルベルトの提案に対してロウゼルさんは目を伏せ黙考した後重々しく頷いた。


 ゴンザレス魔法つかえたんだ。あきらかに物理攻撃得意ですって外見してるのに……あぁ、そういえばエルフだったねゴンザレス。一瞬忘れてたよ、ごめん。


「あれ、あいつ魔術苦手じゃなかった?」


 エルフなのに魔術苦手……って、いかんいかん思い込みはよくない。


「1日10分ぐらいなら大丈夫だそうですよ」

「へー進化してんだな」

「毎日こっそりこつこつ練習してたみたいですから」


 微笑ましいですよねとアルベルトが笑う。


 ゴンザレスがこっそり魔術の練習している姿を想像してみる。筋肉ムキムキのスキンヘッド男性がひと気のない場所でこっそり何かをする光景――――微笑ましいか?

 日本だったら通報されそうだけど。


「グリフィンでは目立ちますし、時間はかかりますが馬での移動がいいですね。ちょうど明日、魔宝石を王都へ運ぶ荷馬車が何台かありますので、それにまぎれて出発なさい。手配は私がしておきましょう」


 なるほど〝魔の森〟特産物である魔宝石を王都へ運ぶ商人たちの一団にまぎれて出発と同時に町で私の幻影を作り出し敵の目を撹乱する算段ですか。


 そんなことより気になるのは旅フラグが長期旅行フラグにランクアップしたことである。

 なんてこった。そんなランクアップは望んでない、お断りだ。

 馬移動なんて、筋肉痛でもがき苦しむ未来しか見えないじゃないか。


 心の中で抗議してみるが当然そんなもの届くはずもない。

 少し席を外しますね。そういってロウゼルさんが席を立ち部屋を出て行った。

 今から手配するんですね。

 猶予期間一切なしですか、そうですか。 


「アル、ちょっといいか」

「えぇ」


 フォルスとアルベルトが部屋のすみで声を潜め何やら話し合っているのを横目で眺めながら、あくびを噛み殺して目を擦る。


 だめだ、ねむい。

 閉じそうになる瞼を根性で持ち上げ耐える。

 

 いつもならもう寝ている時間なんだよ。

 黒い靄に襲われて精神的にも疲れてるし、アルベルトの抱擁で吃驚した心臓の鼓動が普段の三倍ぐらい脈打ったりして大変な一日だったし、もう寝かせてほしい切実に。


 ふかふかな布団で寝たい、ごろごろしたい、だらけたい。


 フォルスと話しているアルベルトに寝かせろオーラを飛ばそうと気合を入れ直している最中に「すみません。もう少しだけ寝るの我慢してくださいね」と先に申し訳なさそうに言われてしまった。


 さすが、アルベルト。

 一緒に出掛けると喉が渇いたなと思うと横から飲み物を差し出し。

 歩き疲れたなと感じると計算されたように喫茶店の前ですぐ休憩。

 お腹をすかして砦内を徘徊していると、どこからともなく姿を現しリーリエさんのお店フルールのパンをそっと差し入れしてくれる気遣い屋さんは今日も感が冴えてる。



お読みくださりありがとうございます。

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