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留守番したら異世界でした。  作者: 上城樹
第二章 リガルの砦と私
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42.風呂(シャワー)上りのイケメンは水も滴るイイ男。

 

 黒い靄をアルベルトが追い払ってから、はや数十分。

 

 現在、細身なのに鍛え上げられた素敵筋肉質体系なアルベルトにがっちり抱きしめられ身動きがとれない状態です。

 少しでも動こうとする腕の拘束が強まるので、こてんとアルベルトの胸元に頭を預けボンヤリと虚空を眺める。

 私いつまでこのままなんですかね。


 アルベルトの髪はたっぷり水分を含んでおり時折水滴がぽたりと垂れてくる。胸元からは、ほんのりと石鹸の香りがただよい鼻腔をくすぐる。

 視線を上に向けると上気した頬がつやっぽいアルベルトと目が合い、反射的にへらりと微笑む。


 シャワー浴びてる途中で急いで駆け付けてくれた勘満載ですね。リラックスタイムに緊急出動して頂きありがとうございます。


 ところで少ししたら離れるって言っていましたが、アルベルトの少しってどのくらい? 結構時間たっていると思うのですが。

 もうね、緊張で心臓がバクバクです。下手したら爆発しそうなんですけど……まだ? ねぇ、まだ離れてくれないの?


「おーい、アル。そろそろ、部屋移動しねー? 俺、立ってるの疲れたから座りたいんだけど」


 声のした方へ顔を向けると、壁にもたれかかったフォルスがいた。

 こちらもシャワー途中で緊急出動をかけられたのか、肌蹴たシャツを羽織り、髪はしっとりと濡れたていた。

 気だるげに濡れた髪をかきあげるその姿は格別に色っぽい。


 2人して何だその色気、羨ましい。


 嫉妬を練り込んだ視線に気が付いたフォルスはひらひらと手を振り「よっ、無事でなによりだ」と笑った。


「ずいぶんと遅い登場ですねフォルス」

「いやいや。大本潰しに行って、さらに警備強化するよう指示だしてからここにきたからね俺。遅くないから、むしろ早いから」

「きちんと潰しましたか?」

「あー、わりっ、逃げられた」

「そうですか……厄介ですね」


 すっと目を細め黙り込むアルベルト。


 もし、考え込むの私を解放してからにしてくださいよ。の気持ちを込めてぺしぺしと拘束している腕をタップすると


「……サキ」


 感極まったように瞳を潤ませたアルベルトが、ぎゅっと抱きしめる力を強めた。

 拘束力が増してしまった。何故だ。

 思わぬ事態悪化に、思考が停止する。


 まて、なんで首元に顔埋うずめる。髪がくすぐったい。

 あ、そこで呼吸するのもやめて、ぞわぞわするから!


 この理解しがたい状態から助けてもらうべく、フォルスに視線を送った。

 すると、フォルスはアルベルトが顔を埋めている逆の肩にぽんと手をおき微笑んだ。


「アルはな、怖い目に合ったばかりなのに他者の心配ができるお嬢ちゃんの優しさに感動したんだよ」

「そう、なんですね。なるほど……」


 俺も感動したぞ! とキラキラ輝く瞳に見詰められ気まずくなってスッと視線を逸らす。


 とんだ勘違いである。

 苦しかったから抱きしめるのを止めてほしくて腕をタップしただけとか――言えない。

 絶対言えない。




 さて、この辺りは日中は暖かいのだが夜になると気温が下がる地域だ。普段着に上着を一枚羽織っても少し肌寒く感じることもある。

 そんなところに免疫力の低い人間がシャワーを浴び髪を乾かさないままいるとどうなるかというと――そう、高確率で風邪をひく。


 何を隠そう免疫の低さには自信がある。

 中学時代、1年間で15日欠席、30回以上早退したことあるから、もちろん理由は体調不良だ。


 あ、鼻がむずむずしてきた。ダメだ我慢できない。

 せめて口元を両手で押さえたいが、腕の上から抱きしめられているので無理である。


 ふぇっくしょん。


 アルベルトとフォルスから顔を背けて、豪快にくしゃみをした。

 鼻水垂れてないといいな。

 

「あぁ、随分体が冷えてしまいましたね。気づかなくてすみません」

「……いえ」


 可愛さの欠片もないくしゃみを豪快に披露しスンスンと鼻をすすっている私の頬に手を添え申し訳なさそうに謝罪するアルベルト。


 そう思うなら、今すぐ抱きしめるのやめてテッシュをくれませんかね。


「これ以上サキの体が冷える前に移動しましょう。フォルス」

「わーってるよ。師匠呼んでアルの部屋に行けばいいんだろ。ついでに熱い茶も持ってく」

「頼むよ」


 そう言ってアルベルトは軽々と私を片腕で抱き上げた。

 まさかの子供抱っこ再びである。


 今回は抵抗はせず、大人しく運ばれますよ。腰が抜けて動けないままですからね。


 とりあえず、ようやく両手が自由になったので、素早く鼻水が垂れていないことを確認を……。


 よかった、大丈夫だった。

お読みくださりありがとうございます。

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