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留守番したら異世界でした。  作者: 上城樹
第二章 リガルの砦と私
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40.リアルホラーは断固拒否したい。

 願い叶わず、やってきたよ筋肉痛。

 一応昨夜ストレッチをしたのだが効果はいまいち。

 しかも痛いの内股の付け根の筋肉だからグリフィンに乗った時……つまり2日前の筋肉痛である。

 昨日のぶんの筋肉痛は明日くるんだろうな。

 ……にしても2日遅れで筋肉痛とは、もう若くないってことですかね。

 結局この日は、昨日できなかった生活用品の購入で1日終わった。



 翌日はパンを砦に届けにきたリーリエさんが部屋を訪ねてくれたので、お茶会をしてのんびりすごした。

 大半は旦那、つまりゴンザレスのノロケ話。

 甘すぎて本気で砂糖吐くかと思った。



 さらに次の日、フォルスに町を案内してもらった。

 遅くなってしまったが、リガルの砦へ来るとき守ってくれたことへの感謝の気持ちを込めた秘蔵のお菓子(某有名メーカー不九家のミロキーキャンディー3粒)をようやくフォルスに渡すことができた。

 最初はまるっと一袋渡すつもりだったが、気軽に家に帰れないと分かったので3粒だけ渡すことにした。


 大きな掌に小さなミロキーをのせ、照れくさそうに「あたりまえのことしただけなんだが……ありがとな、お嬢ちゃん」と微笑むフォルスに、心が痛む。


 フォルスいい人、ミロキー3粒ですいません。また今度何か差し上げるから許して。


 フォルスはミロキーの包みをはがし興味深そうに眺めた後口に含んで、一時停止。

 数十秒後一時停止が解けたフォルスは、残り2粒のミロキーを腰に付けていた革袋の中にそっとしまい私の頭をぐしゃぐしゃと無言で撫でまわす。


「すげーうまいなコレ」


 口をモゴモゴしながら、しみじみと呟いた。

 どうやら予想外にミロキーのおいしさに吃驚して一時停止していたらしい。


「そうでしょう、そうでしょう。ミロキーはおいしいんです。母の味ですから」

「……お嬢ちゃんとこの飯は甘いのか」

「……何故そんな結論になった」


 確かにうまいけど飯が甘いのは、ちょっとつらいな。と苦笑するフォルスに思わず素で返してしまった。

 ご飯が甘いのは私も嫌だ。


「でもコレ母の味なんだろ?」

「はぁ、まぁ」


 キャッチフレーズが母の味でしたね。 


「母の味は、飯の味だろ」


 なるほど、フォルスの頭の中では母の味=ご飯の味直結だったのね。


「……いえ、母の味というのは母親の愛情をイメージして作った……的な謳い文句だったと思います。ご飯は甘くないですので安心してください」

「……愛情のイメージか」

「愛情のイメージです」


 フォルスが真剣な表情で頷いたので、私もキリッとした表情で頷いておく。

 なんだろうこの会話。


「そうか、愛情か…………うまいなミロキー」


 お気に召したようでなにより。


 再開した町案内の途中でちらちらと革袋に視線を向け、そわそわと落ち着きのないフォルスの様子に私は一つ決意した。

 次はミロキー一袋まるっとフォルスに渡せるように家から沢山お菓子を持ってこようと。




 そんなこんなでリガルの砦にきてから3週間。

 何度か、アルベルトに瞬間移動のことを話して一度家に帰ろうとも考えたが、いっくん曰く〝おくのて ないしょ する いい てき だます みかた から〟だそうなので、お言葉に従い内緒にしている。



 シャワーを浴び濡れた髪をタオルで乱暴に拭く。

 ここでの生活にもずいぶん慣れた。ベットに腰掛ぼけーっとする。

 そうだ、カーテン閉めるの忘れてた。と思いだしベットから立ち上がり窓へと視線を向けた瞬間、金縛りにでもなったように全身が硬直した。


 窓ガラスの向こうにナニカが、いる。

 暗闇の中で蠢くナニカ。

 どろりとした纏わりつくような視線を感じる。


 私の部屋は塔の上の方に位置する。窓の外に人がいるなんてことはありえない。

 心臓がドクドクと脈打ち額に脂汗がにじむ。助けを呼ぼうにも、喉が引きつって声が出ない。


 リアルホラーだ。

 無理。本当に無理だって。

 あぁ――いっそこのまま気絶したい。

お読みくださりありがとうございます。

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