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留守番したら異世界でした。  作者: 上城樹
第二章 リガルの砦と私
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39.想像していたのと違った。

 爆弾を投げつけた張本人であるリーリエさんは「そろそろ、時間だわ。お2人ともゆっくり休んでいってね」と言い残しお店へ戻っていった。


 お店が忙しいのにわざわざレモン水を持ってきてくれたんですね。ありがとうリーリエさん。

 でも、色々訊きたいことが山のようにあるんですが、投げた爆弾はきちんと処理していってほしかったな。

 この胸のもやもや、どう解消したらいいですかね。


 それにしても、年齢差が3桁。

 まぁ、ここはファンタジー世界だし、人間の寿命が三桁超えるのだって普通なのかもしれない。

 いやでも、17歳と196歳で結婚……あの筋肉実はロリコっげふんげふん。


 次にゴンザレスの顔見たら大爆笑しそうだけど、さすがにそれは失礼だし笑わないように気を付けねば。

 頑張れ私の表情筋。 


「サキ、サキ」

「はいっ」


 ちょいちょいと、いつのまにやら私の隣に移動してきていたアルベルトに腕を突かれた。反射的にビクッと肩が跳ねる。


「すみません、驚かせてしまいましたね」

「いえいえ、大丈夫です。ゴンザレスとリーリエさんの歳の差のほうが驚きましたし」


 なんといっても179歳差ですから。


 私がそう言うとアルベルトがなるほどと頷いた。


「この世界でもゴンザレスと奥方ほどの歳の差結婚は珍しいです。が、何組か前例もありますよ。エルフ族である彼らは人族と違って長寿ですから、人と恋人になったり結婚したりすると自然とすごい歳の差になってしまうんです」


 へー、そうなんだ。と相槌を打ち、はて? と首を傾げる。


「エルフ族?」

「はい、エルフ族です」


 エルフって、先端の尖った長さ何十センチあるんですかって尋ねたくなるような耳をお持ちで、身軽でほっそりした長身の森の妖精代表をトップで走り続けている美形で有名な。

 ありえないくらい長寿で北欧神話を初めとし世界各地にさまざまな伝承を大量に残している。

 ファンタジー小説、映画、漫画、アニメ、さらにはRPGゲームで結構重要な立ち位置任されているあのエルフですか。

 

「誰がですか?」

「ゴンザレスがです」


 …………ふむ。


「エルフって耳がこう、長いじゃないですか」


 某呪われた島で戦う美人エルフを脳内に描き、両手を耳の横から左右に広げ長い耳を表現してみる。

 筋肉とスキンヘッドにばかり目がいっていたが、ゴンザレスはエルフの特徴ともいえる長い耳を持っていなかったはずだ。


「ふふ、いえ確かにエルフ族の耳は人族と違い先端が尖ってはいますが、そんなに長くはないですよ」


 エルフ族の特徴長い耳説が、あっさり否定されてしまった。

 どうやら、この世界のエルフは耳が長くないらしい。がっかりだ。


「それにほら、彼らは基本森の中で生活していますから耳が長かったら森の中を移動する時危ないでしょう? 木の枝とかに引っかかったり刺さったり裂けたり……ね」


 がっかりしているところにアルベルトのさらなる追撃。

 木の枝とかに引っかかったり刺さったり裂けたりって、リアルにありそうな例え話しやめて怖いよ。


 血どろみになった長い耳を想像していまい、反射的に自分の耳を両手で覆い安全を確保する。


 痛い、痛い、痛い。絶対痛い。


「み、身軽な長身美形が多いって」

「確かに身軽ですらっとした体系が多い種族ですが個人差があります。そこは、人族も同じですね。ですからゴンザレスのような体格のエルフも珍しくないですよ」


 つまり、この世界のエルフ族、耳の先端が尖っていることを除く外見は人間と変わりないってことですか。

 ゴンザレスは正真正銘のエルフ族だと……筋肉ムキムキエルフ。

 

 私の中の幻想的で美しいエルフ像が一瞬で粉々になった。

 

 現実ってきびしい。


「あーえっと、耳が長いエルフは無理ですけど、身軽で長身美形なエルフでしたらどこかにいますよ。一緒に探しましょう」


 ひどく落胆した表情をしていたようで、アルベルトが一生懸命励ましてくれたが、気分は低空飛行のままだ。


「そうだっ、帰る前にリーリエの店で人気の菓子パン買ってきましょう。で、ロウゼル殿にお茶を淹れてもらって3人で一緒に食べましょう、ね?」

「はい、ロウゼルさんのお茶楽しみです」


 あたふたするアルベルトの姿に、だんだん申し訳なくなってきたので、一先ず幻想的で美しいエルフはひとまず横に置いておくことにして、アルベルトさんの言葉に同意して頷くと、彼はほっとしたように柔らかく微笑んだ。


 ご迷惑おかけしました。





 砦に帰り書類仕事をこなしているロウゼルさんの部屋へ、アップルパイ、ドーナッツ、チョココロネなどの菓子パンの入った紙袋を持って突撃訪問してみる。


「おや、ちょうど甘いものが欲しかったのですよ。ありがとうございます。すぐに紅茶を淹れましょう」


 顔をほころばせ、両手を広げて歓迎してくれた。

 

 ロウゼルさんは、今日も素敵に紳士である。


 ロウゼルさんの淹れてくれた紅茶はとてもおいしかったし、途中どこからともなく現れ「腹減った!」と乱入してきたフォルス含め4人で分けて食べた菓子パンもこの世界で口にした物の中で一番おいしいと感じた。

 そういえば、大勢わいわいにぎやか楽しく食事をすると食べ物をおいしいと感じる効果があったような……。



 夜は沢山歩き疲れがたまっていたのか、シャワーを浴びベットに寝転がるとすぐに睡魔がやってきた。

 お休み3秒である。


 明日、筋肉痛になりそう。

 ……痛いの嫌だな。くるなよ筋肉痛。

お読みくださりありがとうございます。

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