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留守番したら異世界でした。  作者: 上城樹
第二章 リガルの砦と私
38/48

37.うっかり、いっくん。

 ポイントが貯まったら、どのゲームソフトを貰おうかなー。

 1本は絶対RPGソフトだとして、もう1本はどうしよう。

 以前から気になっていた2足歩行の動物たちとほのぼの村ライフものにするか、それとも証言の矛盾を指摘して真実を暴く法廷バトルものにするか、新ジャンル開拓で背筋が凍るホラーものでも――やっぱりやめておこう。家にいるの私だけだし、夜トイレに行けなくなったら困る。


 なんて、初ポイントゲットに浮かれていた私だが、この後すぐにメールの続きを読み困惑することになる。



〝つたえ わすれ あった いっかい ねがう する いどう したら つぎ さんじゅうにち まつ する しないと だめ いどう むり ごめんなさい〟


「…………うん?」


 スマートフォンを一旦ベットの上にそっと置き、大きく深呼吸。

 心を落ち着かせて、スマートフォンに手を伸ばす。

 先程と変わらず同じ画面を眺め、もう1度ベットの上にスマートフォンを置き、親指と人差し指で眉間を揉み解す。


 メールの文章がちょっと理解できない。

 というか理解したくない。


 つまり、伝えるの忘れてたけど1度瞬間移動の能力を使ったら、もう1度瞬間移動の能力を使うために30日間を開けなければなりません。ということであってますかね? いっくんや。


 脳内で話しかけると、すぐに返事のメールがきた。


〝そういう こと です〟


 いやいや、そういうことですって……。

 

 我が家に1度帰ると30日過ぎないとリガルの砦に戻ってこれないってことは――。

 どこ〇もドア感覚で旅行したり、自由に家に帰ってお風呂に入ったり、着替えやお菓子を取に一時帰宅する。なーんてことも不可能に……。


 それは困る。 

 何とかして瞬間移動の回数を増やしてもらわねば。


〝いどう ふやす むり あきらめ だいじ〟


 先手を打たれた。が、1度のダメだしで諦める私ではない。

 

 30日に1回って片道切符状態はきりも悪いし。せめて、行ったら帰ってこれるよう往復で30日に2回とかどうだろう。


〝むり です〟


 そこをなんとか。


〝むり です〟


 私の輝かしい未来のためにっお願いします!


〝むり です〟


 60日過ぎたら2回瞬間移動できる的な、積立式に変更! これならどうだ。


〝むり です〟


 脳内で必死にいっくんに語りかけるも、バッサリである。

 取り付く島もない、毅然とした対応。


 そんな殺生な。 


 瞬間移動に制限ありと最初に説明されていなかったので、騙された気分である。

 がっくりと肩を落とし項垂れていると、スマートフォンがメールを受信し振動した。

 

〝だます ちがう うっかり つたえ わすれ してた てへ〟


 てへ。じゃねーよっ!

 全然悪いと思ってないでしょうこれ。

 もう、世界の安定のために各地を旅するなんてやってられるか、自宅とリガルの砦の往復で一生過ごすぞ。


 怒りの感情にまかせてスマートフォンを枕へと叩きつける。

 ボフッと音をたて柔らかい枕に沈んだスマートフォンが再び振動しメールを受信したので、画面をタップ。

 そこにはこう書いてあった〝それ こまら〟と。

 こまらって何?

 首を傾げ意味を考えていると、すぐに次のメールを受信した。


〝まちがう した それ こまる ないしょ じゅう ぽいんと ぷれぜんと する ゆるす して〟


 スマートフォンの画面を凝視する。

 10ポイントだとゲームソフト2本か……。

 いや別に、揺れてないよ。10ポイントぐらいで揺れるなんて、そんな――


〝にじゅう ぽいんと ゆるす する〟


 そんな――


〝さんじゅう ぽいんと ゆるす おーけー〟


 そんな――まぁ、危険な場所に近づかなければ30日ぐらいなんとか生活できると思うし、いい歳した大人がこれ以上駄々こねるのもみっともないし、許そうじゃないか。


 ……別にポイントに釣られて許したわけじゃないよ。

 うん。違うから。


お読みくださりありがとうございます。

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