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留守番したら異世界でした。  作者: 上城樹
第二章 リガルの砦と私
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33.おじ様ができました(強制)

 2杯目の紅茶を飲み終えた瞬間、再びロウゼルさんが紅茶を注いでくれた。

 注がれた紅茶は熱々である。執務室から一度も外に出ていないのに、いったい何時紅茶を淹れなおしたのか。


「ありがとうございます」

「いえいえ、どういたしまして」


 軽く会釈をしお礼を言うと、ロウゼルさんが笑い彼の目尻が下がる。

 目じりに皺を寄せ笑うその表情が数年前に亡くなった祖父と重なり、親近感を覚える。

 瞳は若草色、白髪は素敵ポニーテール、長身のロウゼルさん。

 外見はこれっぽっちも祖父と似ていないが、いつか、お爺ちゃんと呼びたい。


 3杯目の紅茶を半分ほど飲んだところで、口内サハラ砂漠状態が解消された。

 いやぁ、しつこいモサモサだった。

 あのクッキー擬き、凶器認定しておこう。



 のんびりと紅茶を飲んでいる間にも話は進んでいた。


「リガルの砦のごく一部の者しかサキ殿が迷い人だということは知りません。今後他者と接する場合、サキ殿は両親が魔物に襲われ亡くなったため、親戚である私が引き取った娘で王都から私が帰ってくるまで一時的に砦で預かっている……という設定で振る舞ってください」


 なるほど、私はここでは団長の親戚設定ですか。


「アルベルト、フォルスと一緒にグリフィンで中庭に登場してますけど疑問に思われるのではないですか?」


 いくら団長の親戚とはいえグリフィンで空から登場は普通に考えて無い。

 中庭のようなところに降りたし、沢山目撃されてそうだ。


「問題ありません。サキ殿のことを心配した私が部下を迎えにやったことにしていますので」


 親戚の娘溺愛設定ですか。

 部下迎えによこすって、職権乱用しすぎでしょう。


「これからサキ殿のことは、サキと呼ばせていただきますね。私のことはギルおじ様とでも呼んでください。本当の親戚だと思って接してくださいね」

「えっ」


 とんでもないこと、言いだしたよこの人。


「さぁ、失敗しないためにも呼び方の練習してみましょう。はい、ギルおじ様」

「えっ、あの」

「遠慮しないで、さぁ」


 遠慮してないですよ。まさかの呼び方ギルおじ様一択に吃驚して、軽く引いてるだけだから。


 団長は、ニコニコしながら私を見詰めている。


「ギルおじ様ですよ。ギルおじ様」


 彼は私が呼ぶまで粘るつもりだ。


 アルベルトに視線で助けを求めてみた。

 にっこり笑顔を返された。


 フォルスに視線で助けを求めてみた。

 にやにやされた。


 ロウゼルさん……は、優しいまなざしで私達を見守っている。


 逃げ道無しですかー。


「ぎ、ギルおじ様」

「はい、よくできました」


 よしよしと上機嫌で私の頭を撫でる団長……改めギルおじ様。


 笑顔が素敵のロマンスグレーギルおじ様。……親戚であることが嘘だとばれないように気を付けないと。

 最悪、笑って誤魔化せば大丈夫ですかね。日本人の愛想笑い全快で頑張ろう。


「いいですか、サキ自身迷い人であることは口にしてはなりませんよ。どこから他国に情報が漏れるかわかりませんから、ね」


 もちろんですとも。チャイズ国のような狂った国にだけは絶対知られたくない。

 素直に頷くと再び頭をよしよしと撫でられた。


 ……頭撫でられるような歳でもないんだけどな。

 いったい何歳に見えているのやら。


「団長、そろそろ」


 私の頭を撫で続けるギルおじ様にロウゼルさんがストップをかける。


「もう、時間か。後は頼んだよアルベルト」

「はい、団長もお気をつけて」

「では、失礼するよ。またねサキ」

 

 最後にぱちりとウィンクを1つ残し、ギルおじ様はロウゼルさんを伴い颯爽と執務室から立ち去った。


 小島紗希こじまさき25歳、新しい親戚のおじ様ができました。

 

 なんか、この世界に来てから流されやすくなったような――高校、大学、祖母に言われ家から一番近いところへ。旅行、友人がプラン作成強引に誘われて――あぁ、違うわ。私、元々流されやすい性格でした。

お読みくださりありがとうございます。

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