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留守番したら異世界でした。  作者: 上城樹
第二章 リガルの砦と私
33/48

32.迷い人の扱いが酷い件。

 

 ロウゼルさんが紅茶とクッキーのような菓子を用意してくれた。

 喉が渇いていたのでありがたく、紅茶を飲む。ものすごく美味しい。ほんのり香る甘い匂いに全身の力がすっと抜けた。

 ほっと一息。


「おいしい」

「そうだろう。ロウゼルの淹れる紅茶は帝国一だからね」


 思わずこぼれ出た言葉に、団長は嬉しそうに頷き自らも紅茶を飲む。


「さて、では今後のことをお話し致しましょう」


 カップを机にもどし穏やかな微笑みを浮かべた団長が話し始めた。


 長い話をさらっと纏めると、ローレリア帝国としては私の身の安全のためにも、なるべく早く王都へ連れて行き現れた迷い人が正式にローレリア帝国に保護され後見周辺国へ発信したいそうだ。


「リガルの砦はローレリア帝国の領土内であるなら、私はすでに帝国に保護されているのでは?」


 王都とか欲望と嫉妬が渦巻いているイメージしかないし。面倒くさいから行きたくない。

 私の言葉に団長は首を横に振る。


「残念ながらなりません。正式に認められるためには王都にある神殿で儀式をおこなわなければならないのです」 


 なんでも、王都の神殿で儀式をおこない、さらに直接王様から保護認定受けるまでは他国の者が迷い人を略奪することが可能。という、はた迷惑な条約が各国で結ばれているとか。


 迷い人の扱い酷い。

 まぁ、最悪の事態になる前に絶対安全地帯に逃げるけど。そう考えながら団長の話を聞いていると、とんでもなく恐ろしいことが判明した。


 なんと、ローレリア帝国の隣にあるチャイズ国は迷い人を見つけ次第両足の腱を切り捉えろと命令が出ているとか。居るだけで、国が豊かになるのだから逃げられないようにして閉じ込めてしまえという考えだそうです。


 ふざけるな! である。

 強制的に異世界連れてこられて、存在するだけで世界の安定に貢献している迷い人になんて扱いだ。

 どんな国かしらないが、今後の迷い人達のためにも滅ぶように神様にお祈りしておこう。



 チャイズ国の迷い人に対する理不尽な処遇にイライラ、甘いものを食べて落ち着こうとクッキーっぽい菓子を一口かじる。


「………むぐぅ」


 味は可もなく不可もなくだったのだが、モサモサした触感……これはクッキーっぽいお菓子じゃない、クッキー擬きだ。

 口内の水分を根こそぎ奪われ、一瞬にしてサハラ砂漠状態に。

 一口でこの威力。さっさと呑み込んでしまおうと頑張ってみる。


 もぐもぐ、もごもご、むぐむぐ…………。


 無理だ、モサモサしすぎて呑み込めない。


 紅茶はすでに飲みカップの中は空っぽだ。万事休す。

 絶望に打ちひしがれているとロウゼルさんがティーカップに紅茶のおかわりを注いでくれた。


 神様っ。


  


「では、私は王都へ迷い人保護の報告へ行かなくてはなりませんので、サキ殿の護衛は引き続きアルベルトに一任します。おそらく一月ほど砦に滞在していただくと思いますので、何かあった時は彼を頼ってくださいね」

「お任せください」


 クッキー擬きを呑み込むの頑張っていたら、いつのまにやら話がどんどん進んでいたもよう。

 私抜きで。

 隣のアルベルトが真剣な顔で頷いたので、私も一緒に頷いた。

 口の中には、まだ呑み込めていないクッキー擬きが滞在中で話せない。


「フォルスもアルベルトの補佐をお願いしますよ」

「はっ」


 団長もアルベルトもコレ食べてたよね。なんで普通に話していられるの。保持している口内水分量の違いですか。

 横目でアルベルトをチラ見すると輝く笑顔を返された。


 とりあえず、リガルの砦に一月お世話になるようです。

 ……着替え2日分しかないよ。

 一度、家に瞬間移動で帰ろうかな。

お読みくださりありがとうございます。

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