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留守番したら異世界でした。  作者: 上城樹
第二章 リガルの砦と私
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29.西洋のお城は素敵だよね。

 グリフィンに揺られてどんぶらこっこっと数時間、焼野原オンリーだった景色は木々の生い茂る森になり、さらにその先、切り立った崖の上に堅牢なお城が姿をあら――――っなぁぁあぁあ、ああああ、あれはっ、に、にて、にてるっ! 素敵、美し、リヒテン〇ュタイン城に!


 あ、あこがれの城っぽい建物が目の前にっ!!!!


「サキ、危ないですから」


 力強く腰を抱き寄せられ、アルベルトの胸元に後頭部を打ちつけた。

 痛い。

 どうやら目の前にあるお城に興奮しすぎて無意識に身を乗り出していた私をアルベルトが引き戻してくれたらしい。


いかん、いかん、一生に一度でいいから行きたいと思っていた素敵なお城のそっくりさんを目の前に我を忘れてしまった。


 いくら吸着魔法で落ちにくくなっていてもアルベルトの人間シートベルトがあっても、絶対落ちないという保証はないのだ。


 落ちたら即死。落ちたら即死。気を引き締めろ自分。


「ありがとうございます」

「ふふ、どういたしまして。リガルの砦を気に入ってもらえたようでなによりです」

「それはもう。あのお城に入れるんですかっ」

「もちろんです。暫くは滞在していただく予定ですよ」

「――――っ!」


 滞在。あの素敵なお城に滞在……。


 中学時代、友人がフランス旅行のお土産でくれた美しい森とお城の絵葉書。あの絵葉書を見た時、大人になったら本物を見に行くのだと夢みていた。

 現実は厳しく、大人になっても小心者であった私は言葉の通じない海外旅行など怖くて行けなかったため、世界の素敵なお城写真集や世界の素敵な教会写真集などを眺めて我慢していた。

 一生、実物見れないまま死ぬんだろうなと諦めていたのだが……。


 まさか、異世界でこんな素敵なお城とであえ、さらに滞在することができるとは感激です。

 

「ははっ、すっげー喜びようだな」

「フォルス!?」

「おう、フォルスだぞー」


 楽しそうに笑い声を上げフォルスが現れた。私たちがいるさらに上空から。

 ずっと姿が見えないと思ったら、上にいたの。


 フォルスは私に手を振ってから、ビシッとアルベルトを指差した。


「おーい、アル。危なそうなのは一匹残のこらず狩ってきたぞ。そんな頑張った俺に敬意を表して酒でも奢れー」

「ふむ……では、カッツェで一杯奢りましょう」

「まじかっ! やりぃ、言ってみるもんだな。いやっほーい」


 肯定の言葉が返ってくるとは思っていなかったらしい。

 フォルスはグリフィンでアクロバット飛行することにより喜びを表現しだした。


「フォルス、あの(なんと、今まで危険生物退治してくれていたんですか。さすが兄貴、強いね、素敵、ちょーかっこいい、グロいの苦手なんで気づかないうちに退治してくれて助かったよ)ありがとうございます」

「おう、これからも守ってやるから安心しろ」


 アクロバット飛行の邪魔にならないよう最低限のお礼の言葉を述べつつ、心の中で崇めたえる。

 フォルスは、ぐるっと空中宙返りを決めると、体制を整えニカッと歯を見せて豪快に笑った。


 これからも守ってくれるとか……なんて頼もしい。

 後で、感謝の気持ちを込めて持ってきた秘蔵のお菓子を贈呈しよう。


 

お読みくださりありがとうございます。

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