26.学生時代体力テストは中の下だった。
「さて、あそこで喚いている男、煩いですが危険はありませんので嫌でなければ入れてやって下さい」
「……今、結界に入れるようにすると、あの人あそこから落下すると思うんですが」
「あの男も仮にも騎士ですから、この程度の高さ問題ありませんよ」
「仮にもってなんだー。俺は立派な騎士だぞー」
アルベルトの言葉に反応し男が、ぶーぶーと文句をたれる。
そういえば、アルベルトも昨日人外な動きしてたな体力テストとかやったら全種目新記録でそう……騎士って人間離れした人の集まりなんだろうか。
普通ビル10階の高さから落ちたら死ぬよ。潰れて死ぬよ。グチョッてなるぞ。
まぁ、アルベルトが大丈夫と言うのなら大丈夫なんだろう。何かあった時の責任は全てアルベルトがとるってことで。
入っていいぞー。と念じると、空中で止まっていた男の体は当然重力に従って落下する。
私にできることなど何も無いので、ハラハラしながら見守っていると予想に反省て男は軽やかに地面に降り立った。効果音を付けるならストンだ。
10階の高さから落ちて、ストン……。
色々とおかしいが、もう突っ込むのはやめておこう。
面倒くさい。
「……すげーなこの結界熱も遮断されてんのか。つか、灼熱地獄で死ぬかと思ったぜ。見ろ滝のように流れるこの汗を!」
「いい汗かけてよかったですね」
「よかねーわ。そもそも、アルがもっと早くお嬢ちゃんに俺の存在を知らせていれば、こんなことにはならんかったろうが!」
「1人で問題ない任務に無理やりフォルスがついて来たことに対しての可愛らしい嫌がらせです」
「全然可愛くねーよ! 火竜がいるかもしれないのに1人で行かせられる訳ないだろ! 迷い人に何かあったらどうするつもりだ!」
清々しい笑顔でとんでもないことを述べたアルベルトを鋭い眼光で睨みつけ、男は額に滲む汗を服の袖で豪快に拭った。
「ったく、嬢ちゃんも悪かったな吃驚しただろ」
「とっても」
吃驚しすぎて寿命が縮みまくっている気がする。
「正直だな。俺はフォルス、呼び捨てでいいぜ。アルベルトの同僚で同期で友人だ。アンタの名前を聞いてもいいか迷い人のお嬢ちゃん」
無事に救出された男、アルベルトの同僚で同期で友人のフォルスは、焦げ茶の髪は清潔感がある短髪に紫の瞳で、体格はアルベルトよりもガッシリしていた。
そして、爽やかスポーツマン系のイケメン。
まだ2人しか出会っていないが2人ともイケメンとは、この世界の住人はイケメンが多いんだろうか。
「沙希です。よろしくお願いしますフォルス」
「おう、外では俺等が守ってやるからな。俺もアルベルトも戦闘能力は高いから安心ていいぞ」
お辞儀をすると、フォルスに乱暴に頭を撫でられた。
力強い手で撫でられ少し首が痛いが不快ではない。
顔を上げる視線が合うと、にかっと歯を見せて笑ってくれた。
兄貴! って呼びたくなるタイプの人である。
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