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留守番したら異世界でした。  作者: 上城樹
第一章 異世界と私
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19.石文字の君、進化する。

 激動の1日に疲れ切った体を引きずりお風呂へ向かう。


 時刻は22時35分、普段なら布団にもぐり携帯ゲーム機を起動して遊んでいる時間だ。


 適当に顔と頭と体を洗って湯船に浸かり天井をぼーっと眺める。

 ふと、私をリガルの砦へ連れて行く気満々な爽やかに微笑むアルベルトが脳裏に浮かんだ。それと同時に思い出すのは結界の外に生息する生物、魔獣の姿やその食事風景だ。


 結界の外に出るってことは、肉食昆虫やら巨大ナメクジに襲われる可能性があるってことだよね。


 湯船に浸かっているにもかかわらず、ぶるりと震える体を両腕で抱きしめる。


「………そとこわいそとこわいそとこわい、ぜったいむりだって、しぬって、いやだって、そとやだそとやだそとやだ、せんそうにいせかいじんまきこむなよまじで、むりむりむりだよ」


 この時、私は死んだ魚のような目をしていたと思う。




 浴槽からでて洗面所で歯を磨き、髪の毛をドライヤーで乾かして部屋に戻る。

 ベットに仰向けに転がり、枕元で充電していたスマートフォンに手を伸ばす。無意味と知りつつも一日の最後に新着受信メールチェックをすることにしている。

 どうせ何もないだろう。そう思っていた。


「うそっ」


 ピカピカとライトを点灯させるスマートフォン。慌てて上半身を起こしロックを解除。


「……メールきてる。誰からっ」


 画面を確認するとアドレスはIsimozi*****@.***.**と表記されていた。


 ……Isimozi? え、これはまさか。


 いそいそと画面をタップしてメールの本文を読む。

 

〝めーる できた これから これで おはなし できる りがるのとりで いく したほうがいい ろーれりあていこく まよいびと やさしいくに いやだったら ねがう する ここ もどる いちど いく する ねがう する そこ いける〟


 なるほどなるほど国名はローレリア帝国ですか。そして私は一度行ったことある所になら瞬間移動みたいなことができると。とっても便利ですねぇ…………。


「……………」


 ブツッと真っ黒になる画面。

 動揺のあまり無意識にスマホの電源を切るボタンを押していたらしい。


 あ、あれ、い、い、い、石文字の君がスマホにメールをっ、呼び方どうしよう! もう石文字じゃないからメールの君? なんかダサい却下だ。スマホの君? いや違う、アドレスにIsimoziって入ってるってことは石文字の君って呼び名のままでいいってことですか!?


 ベットの上に崩れ落ち頭を掻き毟る。


 まてよ。メールに〝これから これで おはなし できる〟って書いてあった。ということは、もう毎回玄関を開け閉めしなくても石文字の君とやりとりができるってことだ。つまり、疑問に思ったこともすぐに質問できるし返事もすぐにもらえるようになったってことだ。


「電源、電源」


 真っ黒だった画面に光が点き、ピロンと電子音が流れ新たなメールを受信した。

 そこに綴られた〝そう これから めーる おくる さき どあ あけしめ なし おーけー あと ぼく いっくん よんで〟の文字を読んで表情がゆるむ。


「おぉー」


 石文字の君改めいっくん。なんか可愛いな……あれ、石文字の君の呼び方どうしようとか玄関のこと口に出して言ったっけ? 


 疑問に思い首を傾げると、ピロンっと再び電子音が流れたので画面をタップする。


「えーなになに? 〝かわいい ちがう ぼく かっこいい さき おもう する ぼく わかる〟……ははは」


 どうやら、いっくんは口に出さなくても私の思考を読めるように進化したようです。

 どの程度、私の思考がいっくんに漏れるのかとっても気になる。

 ……駄々漏れじゃないことを切実に願う。

お読みくださりありがとうございます。

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