1.職場の人間関係は円満です。
カシャンと音を立てタイムカードに退勤時間を刻印するタイムレコーダー。
ただいまの時刻は17時35分である。
本日の勤務終了。今日も良く働いた。
この店は17時前後がクリーニング済みの商品引き渡し時刻であるため毎日戦場である。
できれば、16時には退勤してしまいたい……なんてことを考えてしまうが万年人手不足であるこの店で、そんな我儘は言えない。
ロッカーと小さな木製の白いテーブルそして折りたたみ椅子が2脚置いてある畳4畳程しかない更衣室兼休憩室で制服から私服に着替える。
仕事用のボールペンやメモ帳などを入れロッカーの扉を閉める。
木製の白いテーブルの中央に最近友人に勧められハマった一口大の小さなチョコ菓子ケロルチョコを一つ目立つようにセットしてから更衣室の扉を開けた。
このケロルチョコ外はパリッと中はトローリの新食感チョコ菓子で値段もお値打ちなことから若い女性から絶大な人気を誇っている。
「お先に失礼します」
「はーい、お疲れさま。気を付けて帰るのよー」
店員が出入りする店の裏口の扉へ向かいながら声をかけると、店内で一人黙々とタオルで返却されたハンガーを磨いていた、できる女性店長である尾瀬さんがにこやかに見送ってくれた。
「この間話してた新発売のケロルチョコ机の上に置いておいたので、良かったら仕事後にでも召し上がってください」
「まぁ後で食べるわ! ありがとー」
タオルとハンガーを持ったままバンザイのポーズ、普段仕事できるオーラがキラキラと輝いている尾瀬さんは、お菓子を献上すると無邪気に全身を使って喜びを表現する大変可愛らしい人だ。
輝きが増した笑顔で見送られた私は店の裏手のスタッフ用の駐車場兼駐輪場へ向かう。店の壁面に設置された2本の蛍光灯に照らされた駐車場は以外に明るい。
尾瀬さんが愛用している卵型の軽自動車より手前に止めてある我が愛車の鍵を上着のポケットから取り出し、ロックを解除する。
本日は木曜日。某シリーズゲームの待望の最新作の発売日だ。もちろんすでに予約済みである。
この日をどれだけ待ちわびたことか。嬉しさのあまり、今日の私はいつの2割増し笑顔で接客していたこと間違いなしだ。
お気に入りの薄いベージュ色の肩掛け鞄から財布を取り出し予約券が入っているか最終チェック。
「行くぜ相棒」
銀色に渋く輝くボディを持った私の愛車……購入4年目になる3段変速付自転車のハンドルを軽く撫でる。目指すはいきつけのゲームショップ。
勢いよく走りだした愛車は、ここ数カ月油をさすのを忘れていたせいか、ペダルを回す度にギシギシと不穏な音を奏でた。
明日になったら油さすので是非後2年は現役で頑張って欲しい。
お読みくださりありがとうございます。




