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留守番したら異世界でした。  作者: 上城樹
第一章 異世界と私
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18.正座の悲劇。

 正座をすると多くの人が苦しむ現象がある。

 そう、脚の痺れだ。

 酷いと、動くことすら満足にできなくなり、悪戯に脚をつつかれると軽く殺意が湧くこともある。

 そんな痺れが、今アルベルトの脚に猛攻撃を仕掛けていた。


「大丈夫ですか?」

「……すみません」


 机に手を付いた中腰状態で固まっているアルベルト。

 居間に布団を敷くために、ちょっと移動してもらおうとしたのだが、慣れない正座で脚が痺れて動けなくなっている。


 世界が違えど脚の痺れで人が苦しむのは共通でした。


「謝らなくていいから。立った方が痺れ早く治りますけど……立てます?」

「これでも騎士ですから問題ありませんよ」


 口元が引きって笑顔が固い、無理してるのばればれだよアルベルト。

 よたよたしながらも壁際へ移動します。彼の脚がとってもプルプルしてます。まるで生まれたての小鹿のよう。


「……足マッサージしましょうか。痺れとれますよ」

「いえ、お気になさらないでください」


 噴出して笑いそうになるのを堪え声が震えないように注意しつつ、両手を胸元の前に上げわきわきと指を動かし尋ねたら、速攻拒否された。

 痺れた脚を掴まれたイケメンの反応を見ることができなくてとっても残念。


 アルベルトの寝床を作るため、居間の中央をでーんと陣取っている机を彼が寄りかかっている反対側の壁に寄せ、押入れからお客様用の布団を出すため気合を入れ腕まくりをする。


 我が家のお客様用の布団は綿布団で結構重い。羽毛布団だったら出し入れ楽なのに。


「私が持ちますよ」


 腕を広げ布団を掴み、さぁ持ち上げるぞとなった所で頭上から声がふってきた。

 見上げれば脚の痺れから解放されたらしいアルベルトが後ろから私に覆いかぶさり布団に両手を添えていた。

 普通なら顔を赤く染めてときめく場面なんだろうけど、さっき小鹿のようにぷるぷるしてるところ見てしまったためか全然ときめかない。



「ありがとうございます」


 半年前に仕事中にぎっくり腰やったばかりで、なるべく重たいもの持ちたくなかったので素直に申し出を受ける。

 いやーまさか、アイロン持ち上げてぎっくり腰になるとは思ってもみなかったなぁ。……クリーニング店のアイロンって重いよね2㎏はあったと思うよ。それに加えて中腰のままアイロンがけしてたから余計に腰に負担がかかっちゃったんだよね。

 その後は、コルセットつけて仕事してました。すごいよねコルセット有と無じゃすごい違い。

 さすがに腰に負担がかかるアイロンがけは免除してもらって、代わりにズボンのスチームがけ頑張ってましたよ。専用機械にズボンをセットしてボタンを押すと蒸気がシューってなって皺が無くなって楽しいから結構好きな作業です。


「そこにおいてください」

「はい」


 するりと布団とアルベルトに挟まれた状態から抜け出し先ほどまで机があった場所を指差す。

 アルベルトはひょいっと布団を持ち上げ、私が示した場所にぽんとおいた。

 さすが騎士様、力持ち。まさか敷布団、掛布団同時持ちするとは。



 布団を敷き、トイレの場所と使い方を教え喉が渇いた時用にミネラルウォーターを入れた水差しとコップを机の上におく。


「えと、1階は好きに使ってもらって大丈夫です。ただ、物は壊さないようにお願いします」

「はい、寝床まで用意して下さりありがとうございます」

 

 低反発枕が珍しいのか手のひらで押して枕の感触を楽しんでいたアルベルトが、立ち上がりいそいそと私の傍によるとの手を握り微笑んだ。

 ここで手を握る必要があるのか……いや、ないよね。

 そっと、アルベルトに握られた手を抜き後ろに2歩下がる。とたんに残念そうに下がった眉毛とか見てないよ。


「……おやすみなさい」

「おやすみな」


 アルベルトが最後まで言葉を発する前にスパンっと襖をしめ階段を駆け上がり2階の寝室に入って鍵をかけ溜め息を吐く。


 なんだあの心臓に悪いイケメンは!


 発狂したいのを我慢して、ベットにうつ伏せに倒れた。もう、疲れた。

お読みくださりありがとうございます。

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