?日目~スカーリッチ~
ほぼ勢いで書きました
リッチは魔法の研究のため人を捨てた者たちである。
ニンゲンたちには魔法を使う魔物だと認識されているが、彼らはただの魔法の研究者である。
そんなリッチの中に、通常のリッチよりも上位の存在として認識されるスカーリッチと呼ばれる者がいる。
スカー、つまり単純に傷を持つリッチだが、ニンゲンたちは彼らをリッチの上位とみなしている。
しかし彼らの実態はただ研究により負傷したリッチである。
ただ傷が付いて強そうに見えるだけなのだ。
見た目効果さまさまである。
リッチ達の朝は無い。
彼らは魔法研究のため人をやめたので睡眠などは必要ないのだ。
「博士、ここの魔力反応がどうも上手くいきません」
「ふむ、何か悪かったのだろうか? 助手よ、とりあえずは失敗だ」
「はい。残念ですが、研究番号111293は失敗ですね」
「どうにも魔質の完全変化は難しいものだな……。まぁ、いい。まだ誰も到達したことのないことなのだから仕方ない」
「はい、博士。魔質の変化は我々がリッチとなり300年、永遠の目標です」
「うむ。さて、魔核融合の方はどうだね?」
「……すいません。未だ進展の無いままです」
「そうか……まぁいいさ。我々にはいくらでも時間があるのだ」
「はい。博士」
「……ところで、最近なにやらネズミが多くないかね?」
「はい博士。ここには彼らの巣に好ましい条件が揃っていますから」
「そうか。まぁ、別に研究の邪魔さえしなければいいさ」
「はい。博士」
「さてと、うーむ、なかなか上手くいかないものだな。む? 助手よ、この研究番号111299はなかなか良い反応を示しているぞ!」
「おぉ、これは……」
チューチューチュー
「む?」
「え?」
ガンッ! パリーン!!
「博士! ネズミが研究番号222785を落としました!!」
「なに!? いかん!! 研究番号222シリーズは魔核融合だ!! 退避!! 退避ーーー!!!」
「うわぁアアアアアアアアアアアアあああああ」
ドォオオオオオオオンンン!!!!!!
「助手よ……無事かね?」
「はい博士。なんとか自己修復に影響が出ない範囲です」
「そうか……」
「博士」
「なんだね?」
「そのお顔は?」
「ふむ、どうやら破片がぶつかったらしい。治るには治るが、完全には無理だな。君の顔にもあるぞ? まぁ、気にすることもなかろう」
「ですね。ところで博士」
「なんだね?」
「次の研究所ではまずネズミを抹殺すべきです」
「……奇遇だな助手よ。私もそう思っていたところだ」
「な、なんだなんだ!? いきなり山で爆発が……」
「すげぇな……。一体何が原因なんだ?」
「おぉーーーい」
「どうした?」
「それが、爆発地帯に行ってみるとよ、二体の傷が付いたリッチがいたんだよ」
「なに!? じゃあリッチがあの爆発を?」
「わかんねぇ。すぐに逃げてきちまった。でも、もしそうなら新種のリッチか?」
「あぁ、多分な。傷付きリッチ……。恐らくリッチの上位種だろう」
「山の一部が吹き飛ぶ魔法か……。強いな」
「あぁ。だろうな」
こうして、二人のスカーリッチが生まれた。
彼らは今日も今日とて研究三昧の日々を送っている。
彼らは爆発の直前で一応防御のための魔法を使っております。