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三日目~初依頼は逃走のために~

私、一話はこの物語中で一日として書いています。

するとですね、こんなことが起きたんですよ……。

主人公の行動によって長くなったり短くなったり、です。


それとは別に今回の話は少し自信ないです……

『マスター、起きてください』

 という声で俺は目を覚ました。

  知らない天井である。

 というか頭に違和感がある。

 耳に軽い圧迫感があるし、頭の上にカチューシャが着けられている気分だ。

「あぁ、フォンか」

『マスター、既に朝です。起きたほうが賢明かと思われます』

  うるさいなぁ。

 実際そのとおりだから起きるけど、もう少し怠惰に過ごしたっていいじゃないか。

  魔王だもの。

 元だけど。

『マスター、自虐でニヒルに笑っている状況ではないかと思われます』

「なんでだよ。別にいいだろうが」

『マスター、いえ、マスターがそうおっしゃるのでしたら何も申しません』

 おぉ、物わかりが良くなったな。

 これが進化なのか?

 まぁフォンなんてどうでもいい。

 今はまず、昨日結局神に八つ当たりしてうやむやになったステータスを考えてみるか。







 とりあえず職業は無視。

  考えるとむかつくからな。

 まぁ、数値で考えると、目を惹くのが魔力と器用さか。

 この二つはどうやら神をはるかに超えてる。

 つまり俺は魔力の大きさと操作性ではこの世界で群を抜く実力者だったわけだ。

  なるほどなるほど。

 森で出会った魔獣どもは俺の魔力に惹かれて来たわけか。

 襲いかかってきたから、作ったパチンコで追い払ったが。

 で、要するにこの二極により、俺に危害を加えられる奴はほとんどいない、と思う。

  俺、やっぱ強かったんだな。

 前々から分かっていたけども。

 神が自らではなく勇者なんて反則技に頼ったほどだからな。

 それだけに筋力が普通のニンゲン並みに落ちてるのはショックだ。

  以前の俺は素の筋力でデーモンと腕相撲出来てたんだぜ?

 しかし、だ。

 問題はそこじゃない。

  えっと、体力と精神力が、ニンゲンの四分の一ってなに? どういうこと?

 あぁ、確かに引きこもりだったよ。

 そこは俺も認めよう。

 でも四分の一は下がりすぎじゃないか?

  この姿か? この姿がいけないのか?

 無酸素運動はニンゲン並みで有酸素運動はニンゲン以下って……。

 つまりこれは今の素の状態で俺がニンゲンと普通に殴り合いしたら体力的に負けるってこと?

 ………………。

 考えないようにしよう。うん。

 精神力は、もう、仕方ないさ。

 別にいい。俺、どうせヘタレだし、負け犬だからさ、へへ。

  チクショウ。

 その後、この状態で色々と何が出来て何が出来ないのかを確認し、昼過ぎに酒場で情報収集をすることにした。







 酒場に来た俺は今、何故フォンが起きた時に危険性を訴えていたのかを理解した。

 いや、別に料理が不味いとか、見た目美少女だから、定番の流れでナンパされてるとかじゃなく、ある 情報を入手したからだ。

 してしまったと言ったほうがいいかもしれない。

 それはこんな会話から始まった。

「なぁ、知ってるか? 勇者様がさぁ」

「あぁ、またそれか。何回も聞いたよ。魔王城を落としたんだろ?」

  

 ビクッ


 俺は自分の体が反応してしまったことを周りのニンゲンに気付かれないように、運ばれてきた料理を食べることに集中しているふりをした。

「知ってたのか。じゃあその後に魔王はどうなったか知ってるか?」

「勇者が倒したんじゃねぇの?」

「いや、それがどうやら逃げたらしい」

「逃げた!? 魔王なのに?」

「あぁ。魔王なのにな」

  うるさい!

 仕方ないだろうが!

 生存第一が信条なんだよ俺は!

 勇者なんて反則存在に勝てるわけねーだろうが。言わば出来レース。敗北の見えてた戦いなんてするか!

  ヘタレ? 負け犬? チキン?

 だからなんだ? 

 誇りとかを賭けて勇者と戦い華々しく散れと?

 断固拒否する。

 俺は生きたいんだよ。

「それでどこに逃げたか、偉大なる勇者様は知ってらっしゃるのか?」

「いや。でも、どうやらここらで強大な魔力を感じたらしいから近いうちこの街に来るらしいぜ?」

「へー! そうか、なら精一杯もてなさなきゃな」

「だなー。英雄の訪問だしな」

  マ・ジ・か・よ!!

 あー。

「フォン。お前、これ知ってたのか?」

『はい』

「そうか……。うんそうか」

 ………………

  よし。

 俺は一気に飯を掻き込んだ。見た目美少女なので、その奇行に少し注目されたがこの際気にしていられん。

 食べ終えると俺は再び宿屋の自室に戻った。







  ふぅーー。

「よし逃げようさぁ逃げようすぐ逃げよう」

『マスター、落ち着いてください』

  落ち着く?

 ハハハ、ナニヲイッテイルンダイ?

 俺は落ち着いてるさ。

「落ち着いて枝毛を探している」

『マスター、落ち着き方が女性です』

「っ!? とにかく! 俺は即刻この街から脱出しなければならない」

『マスター、はい。それだけです』

「……え?」

  あれ?

 勇者がこの街に向かってる?

  ふーん。

 だからなんだってんだよ。

 ただ俺がこの街からすぐに出ていけばいいだけの話だ。

「なんだよ。もー。簡単なことじゃん。ふー、焦って損したぜ」

 俺はベッドに寝転がった。

 その時に長い灰色の髪が何かに引っ掛かって数本抜けるが、無視した。

 抜けた髪はまるで糸のようだったので、つまみ上げて手の中で弄ぶ。

『マスター』

「んだよ」

『元魔王城付近に勇者一行の反応がみられます』

「うそ!?」

  

 プチッ

 

 と遊んでいた髪の毛がちぎれる。

  つーか、え? 早くない?

 勇者の帰ったグラニット王国とここは結構離れてるから、って魔法!

 魔法あるじゃん。

「時空間魔法、か」

『そのようです』

 クソ、あそこからここまでもう一日もないじゃないか!

  どうする?


コマンド

  たたかう 

  まほう

  どうぐ

  →にげる


『マスター、即決過ぎます』

 いいんだよほっとけ。

 どうせ逃げるしかないんだから。

「あ」

 しかし俺はここで重大なことに気付いた。

  行き場がねぇ。

 このまま逃げたとしても俺は一体どこに行くつもりなんだ?

 流浪の旅でも続ける気か? 

  冗談じゃない。絶対嫌だ。

 俺はどこかに定住して静かにのんびり過ごそうと、勇者から逃げたときに決めたんだ。

  まぁ、いい。

 今はそのことを考えないようにしよう。

 目的地がないと逃げることすらできないのか俺は。

 我ながら情けないぜ。

 とりあえず持ち物確認。

 昨日見た時から宝石が金になっただけで変わってない。

  うーん。

 前の野宿よりは少しでもマシにしたいから何か買おう。

 そのためにはまず、金だ。

 やっぱニンゲンは何をするにも金がいるのか……。

 現在、銀貨7枚。

 宿代で使いすぎた。

 宿で長期滞在の予定だったからなぁ。

  ふむ。

 少し心許ないか……。

 まぁ、こういう時のためにギルドがある。

 俺はギルドでどうせなら一石二鳥の護衛とか遠くに行ける依頼があるか探すことにした。 







 宿を出て街を歩いていた俺はふと思ったことを呟いた。

「俺は一体なんでこんなに宿から出たり入ったりを繰り返してるんだろう?」

 今日これで三度目だった。

 この三日間は慌ただしすぎる。

 元の魔王生活が懐かしい。

 一日中ゴロゴロと趣味に没頭したり昼寝したりしていたあの頃が。

「はぁ」

 俺は溜め息をついて、宿で寝転がっていたときにフォンに絡まった髪を後ろに流しつつ歩く。

「イタッ」

 フォンに引っ掛かっていた髪が引っ張られて少しの痛みが走る。

  長い髪が、とても鬱陶しいです。

 唯一の救いが髪の手触りがいいことぐらいか……。

 一喜一憂しているとギルドに着いた。

 中に入ってみるとなにやら騒ぎっぽいことになっている。

 どうやら一人の女が、ギルド職員になにやら喚いているようだ。

「なんでダメなんだよ! 報酬はちゃんと出るし、依頼としては簡単だろ!?」

「残念ですが、獣人を助けることをこの街のギルドでは禁止されていまして。ギルド本部のある王都に行ってもらえますと、おそらく問題なく受理されると思います。言い難いことなのですが、この街では獣人差別意識が強くて……。宿をとる時も苦労されたのでは?」

「それは、そうだったけど……」

 どうやら女は獣人のようだ。

 よく見ると頭に垂れた獣耳が付いている。

  うーむ。魔族差別の次は獣人差別か……。

 あぁ、イヤだイヤだ。

 ニンゲンってのは何かと比べて優劣とか差別とかしないと生きていけないのかね。

 今まで普通にニンゲンと獣人が手を組んでたのになぁ。

 それもこれも共通の敵だった魔族の弱体視からか。

 最近、魔族がすっごい低く見られてるからなぁ。

  なんでだろ……。

 あ、俺が消えたからか。

「くぅ……。やっと秘境の里に人間を入れる許可が長老様から出たのに……」

「申し訳ございません」

  ふむ?

 秘境とな。

 ほうほう、いいんじゃないか?

『マスター、いつまでも入口で立ち尽くすのは邪魔かと思われます』

 うっさいな。考え事してるんだから黙ってろよ。

 まぁ、退くけど。

 秘境かぁ。

 よし、丁度いいな。

「チッ、わかったよ。王都に行けばいいんだろ」

「ちょっと待った!」

「うわ! なんだ?」

「その依らひぃ!!」

「…………」

『マスター?』

  し、舌、噛んだ。

 めちゃ恥ずかしい。

「ごほん、えー、その依頼、俺に受けさせてくれないか?」

 すごく微笑ましいものを見る目で俺を見る獣人女。あとギルド職員さんも。

「……いや、いいよ。悪いな嬢ちゃん。多分まだ冒険者になったばっかだろ? アタシらの依頼はちょいと難しいからな。気持ちだけ貰っとくよ」

 いやいや。

  これでも元魔王なんだぜ?

 見よこのまりょ……。

  あ!!

 俺、見た目少女のうえに勇者の目があって魔力放出も出来ないじゃん!!

「いやいやいや、ちょっと待って。俺、こう見えて結構な実力者だから。ね? ね?」

「ふーん。なぁ、この嬢ちゃんてなんなんだ?」

 獣人女がギルド職員に俺のことを尋ねる。

  ヤメテー。

 俺まだ実績ないから!

「はい、彼女はネームをウランと言います。ランク無しで実績はまだありません」

「ち、違うって! ほら、まだ昨日登録したばっかだから!!」

「ますますだめじゃん」

『マスター、一度実力を示さなければ説得は不可能かと思われます』

  ちくせう!

「ちょっとこっち来て!」

「あ、おいちょっと引っ張るな」

 俺は獣人女を連れて街を出た。 







 森に出た。

  俺も森好きだな……。

 連れてきた獣人女が何か言っている。

「なんだなんだどうした? 嬢ちゃん、アタシは暇じゃないんだよ。一応、里の未来がかかってんだ。だから遊びには付き合えないんだけど?」

 やっぱそうなるよなー。

 俺、見た目スゲーか弱いし。

 魔力も弱く見せてるし。

 さて、ここで納得させるには

 1、魔力の解放

 2、魔法の使用

 3、その他

 なんだが、とりあえず1は勇者一行が俺を見つけやすくなるので却下。

 2は、1とほぼ変わらなくね?

 いや、一応低魔力でも複雑に組めばいけるか?

 『マスター』

  めんどくさいな。

 いっそ一瞬だけ魔法で【精神操作(マインドコントロール)】を……

『マスター、私に案があります』

  なんだようるせーな。

 うーむ、強引な策しかないしな。

  まぁいいか、言ってみ?

『マスターの髪を一本抜いて彼女に渡してください。それだけで納得するはずです』

  うそくせー。

 髪の毛一本渡してそうなるはずねーだろ。

 でも、今のところ他に案がないし、無理なら魔法使えばいいか……。

 「おーい、なに一人でブツブツ言ってんだ? おねーさん暇じゃないって言ってんだけど」

 「はぁ。よっ、つっ!」

 

 プツッ

 

 と、髪の毛を一本抜いた。少し痛かった。

 しかし、相変わらずの灰色である。

 ちぃ、昔の髪が懐かしいなぁ。戻りてー。

「はい、おねーさん」

 そして俺は獣人女に髪を渡す。

「あん? 髪の毛渡されても汚いしこま……。は? これは、え? うそ!」

  うぉ!?

 なんだ? 獣人女がびっくりしてる。ついでに俺もびっくりしてる。

「ただの灰色じゃない? ……スンスン」

  ぎゃー!

 俺の、俺の髪の毛の臭いを嗅いでる!?

 ヘンタイさんだったのか?

「ホンモノ、なのか。初めて見た……魔灰色の髪、ね」

  なんだなんだ?

 え、ちょっと本当にナニ?

『マスター、魔灰色はマスターの思うような普通の灰色ではありません。その色自体が魔力的にかなりの力を持つものなのです』

  ほぉ、で?

『魔灰色は普通、人体に存在して良い色ではありません。かつて人工的に魔灰色を肉体に埋め込む研究がされていましたが、公式非公式問わず全てが失敗に終わっています』

 …………。

『しかし、天然で魔灰色の髪を持つ生命体は存在しています。その全てが突然変異種。魔力量を神と同等以上に持っているとされています』

  あー。

『ゆえに今、マスターは』

「アンタ、一体何だい? 神、とか?」

  そういうことか。







 にしてもこの髪の毛がそんな大層なものだとはな。

 とりあえず

「いや、違うよ?」

「でも魔灰色の髪って」

「いや、違うよ?」

「神ぐらいしか」

「いや、違うよ?」

「…………」

「…………(ニコッ)」

「りょーかい、アンタは神じゃない」

「うん」

「でもアンタは神に限りなく近い力を持ってる」

「うん」

「そんなアンタがアタシらの里の復興を手伝ってくれる」

「うん」

「その理由は、言えない」

「うん。で、依頼は?」

「……いいよ。わかった。ギルドを介さずにアンタ、ウランだっけか? に直接の依頼をするよ」

「よし! わかった」

 思わずガッツポーズをとる俺。

 実際は神に近いどころか魔力単体でなら圧倒してるけどな。

「じゃあ明日の明け方にこの街を出るから準備しといて」

「はーい」

「じゃね」 







 獣人女から見事依頼をもぎ取った俺は宿に帰った。

 なんやかんやでもう日暮れだ。

 とりあえず夕飯は宿の主人特製メニュー(味を排除し栄養のみを重視)を食べたあと、部屋のベッドにダイブした。

「あー疲れた」

『マスター、お疲れ様です』

「ほんとにな」

『…………』

「そういやフォンよ」

『はい』

「魔灰色だっけか? この髪」

『はい』

「そんなスゲーならなんで誰も気付かないの?」

『魔灰色の特性は常に高密度の魔力を帯びていることです』

「はぁ」

『普通、髪とは肉体と繋がっている状態なら体から配給される魔力を常に帯びています』

「うん」

『つまり肉体から離れると普通の髪は魔力を失いますが、魔灰色の髪は失いません。しかし離れない状態では普通の髪と見分けがつきにくいのです』

「ふーん」

『さらに言えば魔灰色の髪を持つものはかなりの高魔力を持っていますがマスターは常に勇者の動向を気にして認識阻害魔法を使用しているので一般的な魔力量としか感知されません』

「へー」

『それゆえにマスターの認識阻害魔法を見破る者ぐらいしか理解できません』

「そーなんだー……」

『結果的に、全力を出したマスターの認識阻害魔法は勇者一行ですら見破れなかったので恐らく魔灰色の髪と気付く者はこの世界には存在しないかと』

「Zzz……」

 俺はフォンの説明(子守唄)に相槌を打ちながら眠っていた。

『マスター、いつも私の扱いが酷いです。でも私、こんな扱いされるのは初めてで……ふふふ。新しいマスターは私に新しい悦びを教えてくれますね』







  その晩、俺は何か恐ろしい夢を見た気がするのだった。



ということで依頼を受けました主人公。

獣人女はまだ名前すら未定です。

そしてご都合主義発動しました。

すいません……。

でも勇者のほうが……いえ、なんでもないです。


では、また来週に

あ、PV7000超えありがとうございます。

こんな駄文にもったいないくらい光栄です。

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