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二日目~現状確認とステータス~

ステータスって項目考えるのが面倒ですよね。


「ふぅ」

 溜め息をついて空を見上げると太陽が昇っていた。

 そして朝が来たのかと思う気持ちと一緒に夜が明ける前に街に到達できなかったという気持ちも俺を襲ってきた。

 端的に言うと

  俺は道に迷っていた。

「森、ウゼェ……」

『マスター、全てを森の責任にしてしまわれるのはどうかと思われます』

 フォンが俺に喋りかけてきたが無視。

 こっちはもう体力が限界に近づいてきている。

 この体になって体力が低下してるんじゃないか?

 と思ったりもしたが、毎日城でふんぞり返っていたツケがきたのではないかという恐怖からフォンには聞けずにいる。

「街、どこだ……」

『マスター、私の能力の一つ≪世界地図≫をお使いになられたらいかがでしょうか? もしくは私が音声案内も出来ますが』

「お前なんでそれを今言った? なんで一晩中歩き続けてる時に言わなかった? 馬鹿なのか? やっぱお前馬鹿なんだろ? ふざけんなよ。俺は確かに男の尊厳は失ったかもしれんがプライドとかはちゃんと拾い直したつもりだぞ?」

『マスター、そういったものは一度捨てるとなかなか取り返しができないものかと思われます』

「うっせーばか。いいからとっとと街に案内してくれ。もう俺は疲れた。回復魔法つかってやろうか」

『マスター、ではまず回れ右をして真っ直ぐ行って下さい』

「俺今まで逆方向歩いてたの!? 言えよ! もうホントなんなんだよお前。あー回復魔法使うぞもう」

 俺はフォンの案内に継続回復魔法を使って疲れた体を無理矢理癒しながら従った。







 フォンの案内を聞きながら一時間程歩くと街に着いた。

 街と言ってもそこそこの大きさしかない。

 街か村かでかろうじて、村? ……いや街、だな。みたいな感じだ。

 言い忘れてたが俺の着ている服は褐色のワンピースだ。

 別に高価そうでもないし強いて言うなら俺の肌の白さが無駄に目立つぐらいだ。

  ある意味引きこもりだったしなぁ、俺。

 とりあえず、現在の俺の装備と持ち物を確認する。


 フォン(いらない)

 ワンピース(汚れてる)

 木の棒(森で拾った)

 パチンコ(作った)

 石ころ(パチンコの弾用)

 木の実(非常食)

 髪に引っ付いてた虫(見つけた瞬間潰した)

 宝石(魔王城から数個持ち出していた)


 といったところか。

 さてと、最初に行くところは道具屋だな。

 宝石を鑑定してもらって売ろう。

 ニンゲンは何をするにも金、金、金だというしな。

 これらの宝石はなかなかいい値段で売れると思うし、とりあえず金の心配はなくなって、衣食住保証された生活に

『マスター』

「ん? なんだ?」

『持ち出していた宝石ですが、マスターの魔力放出の際に傷がつきすぎていますので恐らくは半額以下で買い叩かれると思われます』

「…………」







「あー、こりゃもったいねぇ。傷さえなきゃかなり高値で売れたんだろうが、全部で金貨2枚にしかならないねぇ」

  くそぅ! くそぅ!

 なんであの時俺は!!

 いや、仕方なかったんだ。

  仕方なかったんだよ……。

「はぁ、じゃあもうそれでいいです」

「そうかい。じゃあ、ほい。金貨2枚。もう用はないかい?」

 おっと、そうだった。

 結構重要な事を忘れるとこだった。

「すみませんが、ギルドの場所を教えていただけませんか?」

 道具屋に敬語で道を尋ねる魔王。

 やっぱ礼儀くらはちゃんとしとかないとな。

『マスター、もう魔王ではないと思われます。色々な意味で』







「ここがギルドかぁ。ふーん。思ってたよりでかいな」

『マスター、ギルドは基本的に街で最大級の建物です。何故なら』

「いや、説明とかいいから」

  なぜ俺はギルドに来たのか?

 それはギルド登録をするためである。

 ギルド登録は金さえあれば何歳からでも普通にできる。

  なぜ登録するのか?

 思ったより少ない収入のため生活費稼ぎの意味もあるが、もっと大きな理由がある。

 それはステータスカードだ。

 ステータスカードとは分析などを得意とする電脳神の奴が作り出したカードで、だいぶ前からニンゲン に普及されている。

 ステータスカードはギルド登録時にもらえて自分の能力をリアルタイムで確認できるのだ。

  自分の身の程をまずは知らなければ。

 というわけで、早速登録。

「あの、ギルド登録したいんですが」

  もはや敬語を使うことに疑問すら持たない俺。

『マスター、不憫です』

 という声が聞こえたが無視した。

「はい、では名前を教えてください」

  うーん名前か……。

 リンはもう嫌だ。

 あれは黒歴史として封印する。

 もしかしたら勇者に会ったときにからまれるかもしれないし。

  だいたいあの時とは髪色が変わってるしな!

 どうせ名前なんてステータスカードに本名が自動で記載されるんだ。

 ギルド側も大して気にしないしニックネームのようなものと思えばいい。

「ウランで」

 結局、俺の名前、ウラギニクスからとった。

「ウラン様ですね、えーと、ギルド説明はどうしますか?」

「いいです」

 部下でギルドに加入していた奴がいたので聞いている。

 確か

 ギルド登録時はランクが無しで、その後一ヶ月で受けた依頼の数やランクで決まるらしい。

 ランクはE~S。

 Sランクは依頼の報酬が国から出るらしいからかなり裕福に暮らせるようだ。

 それにしてもこの受付、子供相手にキチっとしてるな。

 今の俺は見た目10を超えたぐらいの少女なのに大人とみなしての対応。

 仕事人の鏡だな。

 部下に見習わせたいって、あ、もう部下いねーや。

  あはは。

『マスター……』

 うるさい何も言うな黙れ。

  哀れみなど……くぅ!

「ではこちらがウラン様のステータスカードとなります」

「ありがとうございます……」

「では登録料金、銀貨8枚となります」

「え?」

 確か登録料は金貨一枚と聞いていたんだが。

 受付を見ると

「…………」

 微笑みながら口元に指を当てていた。

  う、受付さん、あなた……。

「あ、ありがとうございます!」

 俺は受付さんに頭を下げて感動に震えながらお礼を言った。

 受付さんは何のことですかって顔に目で「どういたしまして」と語っていた。

『マスター、銀貨2枚まけてもらっただけですよ……』

  うるさい。

 人に優しくされたのは初めてだったんだよ。

『マスター……』







 さてと、俺はギルドの外に出て街を出ると森の中の適当な切り株に腰をかけてステータスカードで自分のステータスを閲覧した。

 一応言っておくが、一般の大人のステータスは基本数値が100。魔力はニンゲンの宮廷魔導士で300、上級魔族で600、神や高貴魔族で800だそうだ。

 前に部下が言ってた。


名前:バルドロス・リンスタ・ロード・ウラギニクス

職業:負け犬

ランク:無し


 魔力:997

 筋力:100

 体力:25

 器用さ:998

 精神力:25


詳細

 勇者からプライドを捨てて逃げ出した魔王。逃げ出した過程で男の尊厳やその他諸々も失った哀れな負け犬。【神魔の祝福(フォン)】の効果で少女状態に存在を固定され元の姿に戻ることもできなくなったためステータスに変化が起こった。引きこもりのため体力が無い。筋力も少女になったため落ちているがその分魔力が上がり直接戦闘力は変わらない。器用さは魔王城で自ら装飾品を作ったり凝った魔法的ディテールを施したりしているため有り得ないほど緻密なことが出来る。精神力は勇者の威圧で漏らす程弱い。

追伸

 何故勇者から逃げたの? 恥を晒して生きるぐらいならとっとと死ねばよかったのに。さっさと死ねばいいのに。今すぐ死ねばいいのに。規則で直接勇者に居場所が教えられないけどそれとなく教えるから、さっさと女装趣味の変態は死ね。

by電脳神クルゥドミナより 


「……ふ、ふ、ふふふふふ」

  おい。

 おい、ふざけるなよ。

 職業おかしいだろ。

 負け犬って、負け犬って。

  舐めるな!

 戦ってすらいないんだから負けてもいねぇよ!!

『マスター、それはもっとダメなのでは……』

 あと女装趣味じゃねぇから。

 ほぼ強制的なんだけど。

 つーか詳細を見たトコ明らかにわかってて言いやがったなコイツ。

  …………ふぅ。

 いいだろう、俺を怒らせるとどうなるか、教えてやるよ。

「……生命魔法、【創生(クリエイト)】、電脳破壊魔物(ウイルス)潜み喰い増える寄生虫(ワーム)】作成。合成、闇雷魔法【電脳侵入(ハッキング)】開始。くふふふはははははははははっはははは!!!!」

  甘い甘い甘い!!

 なんて穴だらけの電脳侵入阻害(セキュリティ)なんだ!

  この俺の技術を甘く見るな!

 器用さ998だぞ!?

 神よりも遥かに上なんだよ! 

『マスター、今、とても魔王っぽいです』

  そうだろう、そうだろうとも!

 だって魔王だもの。

  あ、元だけど。

「ほらほらほらぉ! 脆弱なんだよクルゥドミナ! あの根暗め! 死ね! っと、危ない危ない。バレちゃ意味ないからな。ここらへんでいいか。あんま使ってないっぽいし。ここに【潜み喰い増える寄生虫(ワーム)】を放出。フフフ、いつ気づくんだろうな。お前の管理している情報全て喰いつくされる前に気付けるといいなぁ、あははははは!!!」

 ふぅ、ストレス発散完了。

  これからどうするか……。

 とりあえず今日は宿に止まって寝よう。

 歩きっぱなしの上、結構上級の混合魔法を使って疲れた。

  よし、行くか。

『マスター、そっちは森です』

  ……知ってたさ!

 ちっ、今フォンを役に立つと思ってしまった。

 疲れてるからだな。

  うん。きっとそうだ。

「早く寝よう」

 俺はフォンの案内に従って宿屋に着くと、ベッドに倒れ込み寝た。

 どうやらこの体になったことで想像以上に疲れていたようで、俺は次の日の朝まで目覚めなかった。







 その後、約1200年もの間、電脳神クルゥドミナは【潜み喰い増える寄生虫(ワーム)】に気付くことなく、気付いたときには自身の補助情報記憶装置(ハードディスク)の中身が【潜み喰い増える寄生虫(ワーム)】に埋めつくされ、神界の情報網が狂い、神界戦争にまで発展することになるのだが、この時の俺は知る由もなかった。


ステータスカードなんてもう滅多に出てきませんから

この魔王は魔力と器用さがチートなんだな

と思っていただければそれでいいです。


ドンドンとストックが減っていきますね……。

でわでわまた来週に

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