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逃亡初日~勇者の親切がすごい迷惑なんだけど~

 見事?魔王城(俺の城)から逃げ出した俺は一刻も早く勇者から離れようとしていた。

  いつバレてもおかしくないからな。

 しかしこの勇者

「本当に大丈夫? なんだったら僕らが街まで送ってってあげるけど」

「いえ、ほんとに大丈夫です。魔王のお城から連れ出してくれただけで充分です」

「でも……」

  しつっこい!

 なんだこいつ? めっちゃ世話焼きなんだけど。

 ウザイよもう。親切とか優しいとか通り越してウザイ。

 普通の子供ならイチコロの微笑み顔とかみせられても俺からしたらうっとおしいとしか思えない。

 と、そんなことを思っていると

「おいおい勇者サマ、お前ちっと過保護過ぎっぜ? 本人が大丈夫って言ってるんだし、大丈夫なんだろうよぉ」

「そうですよ。いくら勇者といえど他人を自分の好きに縛る行為は魔王と同じです」

 勇者お供たちからの援護射撃。

  そうだそうだ。もっと言ってやれ。

「でもこの子はまだ幼いんだよ?」

「勇者よ、それは違う。幼くとも立派に生きていける者は多くいる。君は少し傲慢になってきているぞ」

「うぅ、わかったよ」

  おぉ、やっと納得したか勇者よ。

 じゃあ、俺は今すぐお前から離れるよ。

「あ、そうだ。せめてこれあげるよ」

 と、別れの挨拶をしようとしたところで勇者が言ってきた。

 その手にはなにやら奇妙な耳あて?のようなものがあった。

「コレは古代超異物(アーティファクト)アイテムで【神魔の祝福】って言ってまだよくわからない物なんだけど、君にあげるよ。神様から聞いた話だと全部で13の特殊能力があるんだって。耳あてとして使うみたいだから僕は【勇者の兜】があるし仲間たちもそれぞれの防具があって使えないんだ」

 そう言って勇者は俺に奇妙な耳あてを着けてきた。

 まぁ、便利なアイテムっぽいから貰っといても損はないだろう。

「うん。似合ってるよ。可愛い可愛い」

「あ、ありがとうございます」

  うっせーよ! 好きで可愛くなったんじゃねぇから!

 っと危ない危ない。

 もう少しで勇者から離れられるんだ。

 耐えろ俺ー。

「じゃあ、僕たちはもう行くね? 逃げた魔王をほっておけないから。またどこかで」

 そう言って勇者一行は俺から去っていった。







 ふぅううううううううううううう。

 やぁっっっっっっっと!! 

 どこかに行ったか。

 あー、ずっと魔力と敵意を抑えてたから肩がこって仕方ない。

 俺は勇者が完全に存在を感知できなくなったことを確認して元の姿に戻った。

 すると不意に耳元から

『【神魔の祝福】の能力≪存在固定≫により元の姿に還ります』

 と聞こえてきた。

「は?」

 そして俺はまた少女の姿になった。

  え? 

 どういうことだ?

 どうやらさっきの声は耳あてから聞こえてきたようだ。

 ……≪存在固定≫?

  は、ははは。

 まさかな。

 元の姿へ。

『【神魔の祝福】の能力≪存在固定≫により元の姿に還ります』

 少女に戻る。

 元の姿へ。

『【神魔の祝福】の能力≪存在固定≫により元の姿に還ります』

 少女に戻る。

 元のすがt『【神魔の祝福】の能力≪存在固定≫により元の姿に還ります』

 少女に。

 もと『【神魔の祝福】の能力≪存在固定≫により元の姿に還ります』

  …………あ?

 ふっざけんなぁああああああああああああああああああああああああ!!!!

 なんだこの耳あて。

 どこらへんが? どこらへんが祝福?

  こんなもんいらん!

 と、俺は【神魔の祝福】を耳からはずそうと、はずそうと、はず、はず……はずれない。

『【神魔の祝福】の能力≪呪い≫により取り外し不可能です』

  今≪呪い≫って言った!?

 おいおいおいおい!! こいつ今≪呪い≫って言ったぞ!

  詐欺だ!

 俺はなんとかはずそうと試みる。

『【神魔の祝福】の能力≪呪い≫により取り外し不可能です』

『【神魔の祝福】の能力≪呪い≫により取り外し不可能です』

『【神魔の祝福】の能力≪呪い≫により取り外し不可能です』

『【神魔の祝福】の能力≪呪い≫により取り外し不可能です』

『【神魔の祝福】の能力≪呪い≫により取り外し不可能です』







 うっぜぇええええええええええええええええええええ!!!!

 もういい!

 無理矢理元に戻ってやるよ!

 俺は今まで抑えていた魔力を解放し、全魔力をもって元に戻ろうと試みる。

 ズォオオオオオオオオ

 と俺から濃密な魔力が吹き出した。

『警告。魔力によって≪存在固定≫が乱されています。警告。魔力によって≪存在固定≫が乱されています』

 そんな声が耳元、というより耳あてから聞こえてくる。

「いけるか!?」

『≪存在固定≫の設定を上書きします』

  え?

『髪色を「魔灰色」に設定し高濃密魔力耐久をあげました』

  は?

  ジュン

 と音がして俺の少女姿の茶色の長い髪は全て灰色に変わった。

『設定完了しました。≪存在固定≫安定』

 俺はその場に崩れ落ちて泣いた。

 ちなみに俺の元の姿の髪は漆黒である。

  せめて髪だけでも救いはないんですか?







 さて、立ち直った俺はまだこの耳あてをなんとかしようと頑張っていた。

 そしてわかった事がある。

  能力の≪存在固定≫は正直、かなりヤバイ。

 どうやら俺の存在をこの世界に固定しているらしく、

 俺=魔灰色の長い髪を持つ少女。

 としている。

 そしてこの状態から乱すことは出来ないのだ。

 例えば俺はさっき髪を切ってみた。

 ロングからセミロング位に。

 すると

『【神魔の祝福】の能力≪存在固定≫により元の姿に還ります』

 と声がして髪の長さは元に戻っていた。

 そしてふと思いついた俺は少し怖いが魔法によって指を切り落としてみた。

  まぁ、薬指の先3ミリ程だが。

 するとやはり

『【神魔の祝福】の能力≪存在固定≫により元の姿に還ります』

 と声がして元に戻っていた。

 結果として。

 俺は不老不死となったのだった。

 いや、不老かどうかはまだわからないが、正直、少女と設定されているから老いることはないんじゃないかな、と思っただけだ。

 まぁ、つまりだ。

 俺は男の尊厳を失った。

 魔王城から勇者と脱出した後に拾い直そうとしていた男の尊厳が完全に消失してしまったのだ。

  くそぉ!

 あと、もう一つの能力≪呪い≫。

 これはもうあれだな。

 【神魔の祝福】って名前変えろ。

 お前にこの名前は相応しくないから。

 ≪呪い≫ってただの呪われた装備じゃなく能力として≪呪い≫があるため浄化すらできない。

 つまり呪われた装備よりもタチが悪い。

  【神魔の呪怨】にしたほうがよくね?

「マジふざけんなよー」

『マスター、私への悪口を言い過ぎかと思われます』

「事実だろうが。何故かお前も大して使えんし」

『マスター、私への誹謗中傷が激しいかと思われます』

 この俺へいちいち言い返してくるのは何を隠そう【神魔の祝福】の能力の一つである≪自己進化形意思≫だ。

 【神魔の祝福】は意思があるらしい。

 つまりはインテリジェンスアイテムの一種なんだろう。

 耳あての内側から聞こえてくるので声は俺にしか聞こえないらしい。

  どうでもいい。

「この耳あて、マジうぜぇ。恨むぞ勇者。つーか死ね」

『マスター、耳あてではありません。私、【神魔の祝福】はヘッドバンド型ヘッドフォンです。訂正を 要求します』

  あーもう。

「うっさいぞフォン。お前は黙ってられんのか。頼むから少し黙ってくれ」

『マスター、「フォン」とはなんですか? 私は【神魔……』

「フォンでいーだろもう。それに能力に≪呪い≫がある装備を祝福とは呼ばない」

『マスター、了解しました。ではこれより装備名【フォン】と名乗らせていただきます』

「了解したんならもう黙れ頼むから」

『…………』

  ふぅ。

 やっと静かになったか。

 あぁ、残り10の能力は不明だ。

 フォンが説明しようとしていたがそのうち外す予定なので聞かないことにした。

  やれやれ、これからどうするか。

 もう魔王は廃業したしなぁ。

 まぁ二度となりたいとも思わないが。

 引き継ぎとかもしなきゃならんから、とりあえずはアイツに会いに行くか。

 魔力量とかは前と変わらないから身の危険はないだろう。

 あっても【フォン】の能力≪存在固定≫で死ぬことはないけど。

  いや、その前に一度ギルドに行くべきか?

 ニンゲンの姿だから怪しまれることもないし、ギルドで確認すべきことがあるしな。

  うん、そうしよう。

 ならまずは森を抜けて街に向かうか。

 俺は歩き始めた。





はい、ということでただヘッドフォンを装備した少女を書きたかっただけです。

すいません。

ちなみに勇者は当然のように四次元道具袋を所持しています。

さすが勇者様ですね!

でわまた来週。



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