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色んなことからの脱出日

○○少女が書きたかっただけです。

○○は次回わかります。

ただの作者の趣味ですが……

  失敗した。

 もうどうしょうもない。このままでは俺は殺されるだろう。

 気付いたときは遅かった。

 遅すぎたと言ってもいい。

 勇者は既に俺の城を半壊させている。

 俺の腹心だった四天魔たちも殺された。

 状況は最悪だ。

 だから俺はすぐに殺せと言ったんだ。

  恨むぞアスデモウス。

 何がいつでも殺せる小さい存在だ。

  どうする?どうする?

 このまま迫りくる死を受け入れるのか?

 抵抗?

  無理だ。

 きっと殺される。

 物語の主人公は向こうなのだ。

 いくら俺が魔王で最強でも運命によって決められた敗北からは逃げられない。

 つまり戦闘は真っ先に却下すべき選択肢だ。

  じゃあどうするんだ?

 もはやこの城には俺しかいないとみていい。

  クソが!

 どうするどうしようどうすれば?

  俺は死にたくない!

 ……よし。

  逃げるか。







 こうして全魔族を支配し人間や亜人たちを恐怖させた魔王は勇者から全てを捨てて逃げ出した。

  プライド?なにそれおいしいの?

  誇り?あぁ、あれ昨日売られてたよ銅貨五枚で。

  これはそんな俺こと魔王の逃亡記である。







 まず最初にすることは認識阻害魔法だ。

 これは実は俺、得意である。

 仮にも魔王である俺が行使する認識阻害はもはや存在そのものを認識不可能とすることができる。

 だがきっと勇者にはバレる。

 確実にバレる。

 ただの気休めにしかならないことを理解してる。

 天運は向こうにある。

 クソッタレな神達が厄介な加護を与えたり、明らかな贔屓をしている勇者はありえないぐらい運がいい。

 言うなれば運命が味方なのだ。

 生き残るには俺の、魔王の能力をフルに活用しても難しい。

 おそらくだが命乞いは無駄に終わる。

 脱出できなければ確実に死ぬ。

  くそ!

 当時の俺はなにを考えてこんな城を作ったんだ!

 抜け道くらい用意しとけよ。地下深くに部屋作って待ち構えるとか傲慢過ぎるよ俺。

 昔に戻って城を根幹から作り直したい衝動にかられたが今も此方に向かってきている勇者の存在を思い出し考えに戻る。

  逃亡すらままならないのかよ俺は!

  

 ドンッ

 

 と上の階層から音がする。

  あぁ、これ最終防衛ライン超えられたなぁ。

 そんな事を片隅で考えて策を練る。練る。練る。

 ……仕方ない。男の尊厳を捨てよう。

 閃いた策を実行するには俺の中のプライドや尊厳、その他もろもろの俺を魔王たらしめていたものを捨てる必要がある。

 それでもうまくいく可能性は五割以下だ。

 しかし、俺は生き延びたいのだ。なんとしても。

 生き延びてからどうするかなんて考えてられないし考えたくない。

 それでも俺はこの策を実行するしかないのだ。

 俺は覚悟を、決めた。

  グッバイ、魔王人生。

  ハロー、底辺生活。

 俺は今から、そっちに行きます。







「ふぅ、遂にここまできたね」

「そうですね。やっとです。勇者様のお力が無ければ魔王をここまで追い詰めることは不可能でした」

「いえ、そんな。僕だけの力じゃないですよ。みんながいてくれたから」

「いいや。そのみんなはお前がいたから集まったんだ。お前のおかげだよ勇者サマ」

「あー、確かにな、アンタがいなけりゃ俺はここにはいなかったからなぁっと。お話はここまでにして」

「はい。行きましょう、最後の、魔王との戦いに」

「うん。僕らは魔王を倒して平和を取り戻してみせる!」

 と、扉のむこうから声が聞こてくる。

  いやいやなに?

  え? 平和?

 俺を倒したところで魔族全員が倒されたわけでもないし新たな魔王が生まれるだけだから。

  むしろ俺って結構平和主義な方だったんだぜ?

 つーかアンタらなんなの一体。

 じゃあ魔族の平和はどこに行くんだよ……。

 っと、ダメだぞ俺。敵意を抱くな。精神を乱すな。

 ここに俺の命が掛かってるんだ。

「まぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 叫び声を上げて入って来る勇者たち。

 こちらに剣を向けて戦闘態勢。

「覚悟しろ! そのいのちぃ? アレ?」

  よっし! 第一間門突破。

「う、うぅう。……ぁ? ゆ、うしゃ、さま?」

 上記の声は俺である。

 キモイとかいうな。必死なんだよこっちは。

「え? なんでこんな所に女の子が?」

 そう、勇者の言うとおり、俺はニンゲンの女の子になっていた。

 認識阻害魔法の中でも最高位にある【変化】だ。

 この魔法により俺は無力で無害な女の子に化けている。

 堂々と出れないのなら勇者の下に一時的につき、隙をみて逃げ出せばいいのだ。

 生存第一。

  プライド? 知るか。

  誇り? さっき売った。

  矜持? そんなんで生きれんの?

「怖かった、こわかったよぉ……」

 泣きながら勇者に近付く俺。

「! 止まれ! 貴様、なんだ?」

  うぉおおおおお!!

 勇者のお供である剣士がこっちに剣を向けてきた。

  やめい! ちょ、おま、マジでやめて。お前が剣を向けたから勇者も敵意を抱き出してるだろうが!

 キツイってこの圧力。

 お前いっぺん立場替わってみ? 泣くからこれ。心折れるわ。

 なにこの力。勝てるわけないだろ。

 くぅ、かくなる上は、俺のとっておきに生存術を見ろぉ!

 

 しょろろ、ぽた、ぽた

 

「ひっ! うぅ。あうぅ……」

 あ、やっぱあんま見ないで。こんな俺の姿をあんま見ないでくれ。

  何したかって? 

 漏らしたんだよ。尿を。

「「「「…………」」」」

 うわ、スッゲー気まずい雰囲気が向こうに漂ってるよ。

 そりゃそうだよな。

 魔王倒しに気合入れて来たのに最後にいたのがニンゲンの少女で泣きながら漏らしてんだから。

 「あの、ルーウェン。この子は流石に関係ないと思うんですけど……」

 「そ、そうだよね。えっと、君どうしてこんなところにいるのかな?」

 来たか、その質問。

 だが俺にはすでに答えが用意されてある。

 「ひっく。き、今日、は。私の、番だったんでず」

 「番? なにがだ?」

 おぉっと、伝わらなかったか。

 ニュアンス的に十分だと思ったんだがな。

 まぁいいだろう。

 そうだな、少女である俺があまり詳しく知ってるのはおかしいから。

 「しりま、せん。でもぉ、毎晩、女の人が魔王……さまの部屋に、呼ばれて。うぅ……それから戻ってこなくなるんでず」

 どうでもいいが、鼻声でいちいち『す』が『ず』になるのがうっとおしいな。

 信憑性上がるからいいけど。

「毎晩」

「女の人が」

「部屋に呼ばれて」

「帰ってこない?」

 一言ずつ声に出した勇者一行。

 その表情は完全に憤怒一色だ。

  ひぃ! やめて! そんなに俺に殺意を抱かないで!

「それで、君の番、ね。魔王め。絶対に許さない」

「もう大丈夫ですよ。怖かったね?」

「うぅ……」

 現在進行形で怖いです。息が詰まりそうなんだけど。

  殺気抑えて! いったん落ち着こう?

「君の名前、教えてくれるかな?」

 勇者が優しそうな決め顔で言ってきた。

  うざいぐらいカッコイイ。

 異性なら落ちたんだろうがあいにく俺には魅了は効かない。

 しかし名前、名前か。

 えーと、俺の本名はバルドロス・リンスタ・ロード・ウラギニクスだから

「……リン」

「リンちゃんか。それでリンちゃん、魔王がどこに行ったか知らない?」

「奥の方に行って、消えたの……」

「奥か。バロル! なにかあったか?」

「あったぜぃ。魔方陣っぽいなありゃ」

「知らない陣です。魔族専用でしょうか?」

 適当に書いただけです。大した意味も効果もありません。

 だが、うまくいった。

  これで、抜け出せる! まだこいつらは俺を疑ってないからな。

 さっさとしなけりゃバレるから早く俺を上に連れ出してくれ!







 こうして俺は、結構簡単に自分の城から逃げ出した。

 その代わりに捨てたものは大きかったが。



次回、一週間後に。

ちなみに主人公こと魔王の名前はすぐに違う偽名に変わるので今回の偽名は覚えなくてもいいです……。

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