面接
この作品は、お題を元に書きました。
どんなお題であったかは、あとがきに記します。
吹き出します。
思い切り笑って下さい。
今日はバイトの面接だ。
バッチリ決めてやる。
まずは身だしなみだ。
第一印象が大事なんだ。
よれよれのジーンズで行って落ちたヤツが何人もいる。社会の掟を甘く見るからだ。バイトの面接だから遊び着でも大丈夫だろうと軽く考える、その甘さが駄目なんだ。
ワイシャツは白だ。ネクタイもおとなしい色合いの紺系にしておこう。遊びではないんだ。
スーツのしわ、汚れ無し! よしっ! 髪型の乱れ無し! OK! 髭も剃って、スッキリ爽やか! 歯も磨いた、キラリーン。うん、完璧だ。
花粉症対応ゴーグルとマスクは玄関に用意してある。
14時集合だから、まだ1時間ある。チャリで商店街を抜ければ30分で着く。余裕だ。
おっと! 携帯電話を忘れるところだった。
面接会場で1時間たっぷり説明を受けた。
順調だ。後は別室で個別の質疑応答を済ませて採用の声を待つばかりだ。
担当者が訊いて来た。
「そのファッションには、特別な思い入れがあるのですか?」
「はっ?」
「そのモヒカン刈りは混迷の現実社会に対する強いアンチテーゼですか?」
「いえ、そんなものは……」
「企業が社会的使命を果たさず、安易に外国へ逃げる現状に業を煮やして、その脆弱性をバッファロー精神で叩き直してやろうという気概を髪型に込めたのでは?」
「いえ、何も込めてません」
「スモークゴーグルにマスク着用とは、何か深い意味があるのですか?」
「いえ、花粉症対策です」
「では、ゴーグルとマスクを外して下さい」
僕が言われた通りにすると、担当者はハッと息を呑み、やがて呟きを漏らした。
「ダブルとは……」
そして、こう言い渡したのだ。
「当社の規定で、モヒカン刈りと、ダブルリング鼻ピアスの方は採用できないのです」
―了―
お題は
商店街
携帯電話
花粉症
でした。
この作品は、おそらく僕の作品の中で、最高傑作です。